![]() |
![]() |
![]() 松原 勉 氏 20歳で入社し、これまでの25年間、ずっと起重機船一筋でやってきた。船に乗りたくて入社した訳ではないが、船での仕事が自分の性に合っていたのかもしれない。「最初に3,000トン級吊りの『翔隆』という船に甲板員として乗り込んだのですが、何をすればいいのか分からず、先輩に危ないから引っ込んでろと、よく怒鳴られました」。ただ、船長は可愛がってくれて、「(船長に)信頼されるような仕事を早くしたい」と、思っていた。 甲板員を10年担当し、30歳の時に甲板長に抜擢された。「これまでは指示されて仕事をしていたのですが、今度は自分が指示を出さなければいけない。当たり前の話ですが、仕事に対する責任を強く感じました」。その3年後には、1,400トン級吊りの「新建隆」の船長に。弱冠33歳での就任だった。 起重機船は自走しないため、曳船など数隻と船団を組んで動く。起重機船の船長は自船の乗員と船団の船長さんらをまとめていかなければいけない。「自分の判断ひとつで、乗員、船団の船長、さらには会社に多大な迷惑をかけてしまうと思うと、緊張の連続でした。とにかくコミュニケーションが第一と考え、船を降りれば、無礼講でざっくばらんにみんなと付き合いました。チームワークを良くするには、お互いのことを理解し、信頼しあうことが一番ですから」。 その後、以前乗っていた「翔隆」、3,000トン級吊りの「新寄隆」の船長を歴任。起重機船での実績を着実に重ねた。そして一昨年11月、新造船の4,000トン吊りの「洋翔」の船長になった。 「船にはそれぞれ特徴というか〝クセ〟があります。この船は横風がくると、引っ張られやすいとか、ジブを倒した時にはバランスに注意しなければいけないとか。そうした船のクセは、先輩の船長に話を聞き、ある程度事前に知識を得ていました。だが、今回は新造船ですから、そうした船のクセは自分で一つ一つ確認していかなければいけません。今まで、先輩方に助けられてきた分、これからは自分がその役目を果たさなければいけないと思っています」。 洋翔は、国内初のボックストラスジブ構造で「ジブ・スライド格納式」を採用。ジブの先端にある三角形のフライングジブを折りたたみ、ジブの基部もスライドさせてコンパクトな状態にできる。強風などの横揺れに強く、長距離でも安全に回航できる。完成後、すでに5現場で作業を実施。東日本大震災で被災した釜石港でも、陸に打ち上げられた大型船を吊り上げる作業に従事した。 「起重機船はとにかく風に弱い。今の目標はこのジブを格納して、今まで行けなかったところでも作業をしたいと思っています。それで、寄神の名前を少しでも多くの方に知ってもらいたい。さらに欲を言えば、お施主さんから寄神に頼んで良かった。また頼むよと言われたいですね」。 今年は、外洋での仕事も計画されており、その目標がかないそうだ。 |
![]() |
釜石港で乗り揚げた本船「アジアシンフォニー」を撤去する洋翔。
|
![]() |