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 国土交通省、海上保安庁などの関係省庁と地元地方自治体などが連携して、海域の環境改善対策や汚濁負荷削減対策などを進める「海の再生プロジェクト」。現在、東京湾や大阪湾など4カ所で、市民団体らも参加して各種施策を展開中だ。自然豊かな海を取り戻すために、どのような対策を進めているのか。1月13日に広島市内で開かれた「第4回海の再生全国会議」で報告された広島湾の取り組みを中心に紹介する。

◆保全・再生、親水性などを目標に掲げる◆
 広島市内で開かれた「第4回海の再生全国会議」では、地元の広島湾の再生プロジェクトの活動状況などが紹介された。講演者は中国地方整備局企画部の角田文敏広域計画課長、広島市都市活性化局観光交流部交流課の香川寛治水の都担当課長、特定非営利活動法人(NPO)瀬戸内里海振興会法人会員の川上佐知氏の3氏。
 広島湾は沿岸域に約180万人の人口が集積し、石油化学工業地帯などが海岸線に広がっている。南部地域には多島美をはじめ豊かな自然が残されており、また広島県のかきは全国の60〜70%の生産量を誇り、かきの養殖地としても有名だ。ただ、近年は「赤潮が毎年5〜10回程度発生している」(角田文敏広域計画課長)ほか、干潟・藻場も減少するなど、海域の環境悪化が指摘されていた。
 中国地方整備局や第六管区海上保安本部、中国四国地方環境事務所、広島県、山口県、広島市などで構成する「広島湾再生推進会議」は、こうした状況を踏まえ、2007年3月に「広島湾再生行動計画」を策定。この中で「森・川・海の健やかな繋がりを活かし、恵み豊かで美しく親しみやすい『広島湾』を保全・再生し、次世代に継承する」という目標を掲げ、保全・再生、親水性などに向けた、三つの個別目標を設けた。計画期間は2016年度までの10年間。

海の再生プロジェクト
背後地に大都市を抱えた閉鎖性の高い海域では生活排水などが大量に流れ込むのに加え、外海と海水の循環も起こりにくく、富栄養化による赤潮が発生しやすい。有機汚濁による貧酸素水塊も生じやすく、水産動植物に影響を与えるなど、さまざまな問題が指摘されている。海の再生プロジェクトはこうした問題を改善する目的で、2002年の「東京湾再生プロジェクト」を皮切りにスタートした。現在、東京湾や大阪湾、伊勢湾、広島湾の4カ所で▽陸域からの汚濁負荷の削減▽海域環境の改善▽環境モニタリング▽海域の環境教育▽市民参加型のイベントなどが進められている。

◆具体的な数値目標となる「目安」を設定 ◆
 個別目標の達成状況を評価するため、「行動指標」と「状態指標」の二つの指標を設定。このうち、行動指標では各種施策の数値的な目標となる「目安」を設けている(表1を参照)。また、アピールエリアとして「宮島周辺」「太田川河口部〜五日市」「海田湾」の3カ所を指定。この3地区を多様な主体の連携による再生効果の実証や地域住民への取り組みのPR、地域住民との参加・協働などが期待できる場所として位置づけている。
 各施策の推進体制としては同推進会議の下に「陸域対策」「海域対策」「モニタリング・環境教育」の3分科会を設置し、各種施策に取り組んでいる。また学識者らで構成する「アドバイザリーボード」を設置し、アドバイザリーボードの助言を得ながら進めている。これまで進めてきた具体的な施策は表2の通り。角田広域計画課長は「2010年度はこれまで実施してきた施策の第1回中間評価を行う年度になる。できるだけ多くの市民に広島湾の再生に理解と協力をお願いしていきたい」という。


◆「水の都ひろしま」構想を展開中◆
 広島市では、海の再生プロジェクトをスタートさせる前から、川や海を市民の身近なものにする取り組みを進めている。2003年に市民と行政の協働で「水の都ひろしま」構想を策定。広島市が太田川デルタ上に発達した都市という地の利を活かし、「水辺と一体となったまちづくりや市民による水辺の活用、水辺のネットワークづくりなどを進めている」(香川水の都担当課長)。
 この構想で注目されるのが、河川区域内でのオープンカフェの設置。広島市は2004年に国から「河川利用の特例措置を適用する区域」として京橋川右岸および本川・元安川の指定を受けた。この特例措置を利用し、現在京橋川沿いなどの河川区域内に8店舗のオープンカフェが設けられている。「この区域は以前、人通りがなく、不法駐輪などが多かったが、オープンカフェの出店でにぎわいが創出された」(香川水の都担当課長)。
 広島市はこうしたオープンカフェだけでなく、河岸緑地等を利用した水辺のコンサートや各種の市民活動、水上交通ネットワークづくりも進めている。「水の都ひろしま」構想の取り組みは海の再生プロジェクトの中にも位置づけられている。

◆NPO法人など多様な事業主体が参画◆
 海の再生プロジェクトは行政機関だけが各種事業を行うだけでなく、住民やNPO法人など多様な事業主体も参加している。NPO法人瀬戸内里海振興会は海辺の自然体験活動や環境教育の振興、瀬戸内海をベースとするまちづくりの推進などを目的に2003年に発足。これまで住民参加型の各種イベントなどを開催している。
 2009年には広島湾の魅力発見ミーティングを2月と11月に実施。1回目は「広島湾の魅力って何ですか」をテーマに、地元住民ら約50人が参加。瀬戸内海沿岸での地域資源などについて意見を交わすとともに、クルーズ船デッキから広島湾を展望した。2回目は1回目の意見を踏まえ、「魅力ある広島湾はどんな状態?」をテーマに開催。日常的に広島湾を見てきた漁業関係者から意見を聞く一方、無人島探索、簡易水質調査なども行い、広島湾の実態を把握した上で「広島湾の豊かさ、親しみやすさ、美しさなどを参加者に採点してもらい、改善案などもまとめた」(川上氏)。こうした活動を通じ、川上氏は「まずは地元住民が広島湾の豊かさを再認識し、その現状を確認、情報の共有を図るきっかけを作りたい。そして、地域で海を再生する行動へとつなげていきたい」という。
広島湾の再生プロジェクトは2010年度に1回目の中間評価を迎える。その結果をフィードバックさせ、多様な事業主体は連携を図りながら、引き続き各種施策を展開していく方針だ。

海の再生に向け情報交換 第4回海の再生全国会議を開催
「第4回海の再生全国会議」が1月13、14の両日、広島市中区の広島YMCA国際文化ホールで開催された。会議には地元関係者など約200人が参加。冒頭、国土交通省港湾局の塩崎正孝国際・環境課長は前原誠司国土交通相のあいさつを代読。この中で「閉鎖性海域では社会のさまざまな活動により、大きな負荷がかかっている。この閉鎖性海域の水循環を改善することができれば、それを世界に発信することができる。この会議で情報交換が進み、海の再生がさらに進展することを大いに期待しています」と読み上げた。同会議では広島大工学研究科の岡田光正教授と写真家の脇山功氏が基調講演を行ったほか、広島湾をはじめ、東京湾、伊勢湾、大阪湾で展開されている海の再生に向けた取り組みなどが紹介された。 14日の現地視察では広島市水産振興センターや広島港宇品地区〜五日市地区の景観、環境修復事業などを見てまわった。
 
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