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 「港湾の開発・利用と環境の保全・再生・創出は車の両輪」。2005年3月に交通政策審議会がまとめた答申では、港湾行政のグリーン化を唱え、港湾開発で劣化・喪失した自然環境の再生や、開発の各段階での環境への配慮を強く求めた。これを受け、国土交通省では「海の自然再生」に向けた環境配慮型の各種施策を展開中だ。なかでも最近注力しているのが生物共生型の護岸や防波堤。今回は、現在取り組みが行われている生物共生型護岸・防波堤などを紹介する。

◇1年後には130種類の生物を確認◇
横浜港湾空港技術調査事務所構内に整備された「潮彩の渚」
 生物共生型護岸や生物共生型防波堤の取り組みが始まったのは2000年度前後から。高度経済成長期に機能性や安全性を最優先してコンクリートや鋼矢板による直立・急傾斜型などの護岸が数多く建設された。そうした施設がちょうど10年前ぐらいから更新時期を迎え、そのリニューアルとあわせて環境配慮型の対応が行われるようになった。
 国土交通省は2007年度から生物共生型護岸の整備に本格的に着手した。関東地方整備局横浜港湾空港技術調査事務所では、構内の老朽化した桟橋を撤去し、その跡地と前面に1000m2規模(長さ約50m×幅約20m)の干潟や磯場を造成した。
 「潮彩の渚」と呼ばれるこの護岸は、地震に強い港湾施設と海の生物が共存できる構造を再現。自然と同じような傾斜を維持し、船舶の航行水域を狭めないように棚式(3段の階段式)構造が採用された。潮の満ち引きを利用し時間ごとに陸地化する範囲が変化。潮位100cm以下で1段目の干潟が干上がり、150cmで2段目の干潟が顔をのぞかせる。また、干潟の両脇や前面には磯場を設けた。
 2008年3月に完成し、その後地元のNPOらと共同で市民参加型調査である「自然体験活動」を定期的に実施している。完成後約1年が経過した今年2月末にはアサリやゴカイ、ハゼ、ウミウシ、コトヒキ、カニなど約130種類の生物が確認され、良好な生息環境が形成されていることが報告されている。
 生物共生型護岸は東京港運河域にも導入。東京都が芝浦運河の護岸整備にあわせ、掘込式の潮溜まりやカニパネルを用いたカニ護岸なども整備している。

◇秋田港、新潟港など5港で整備中◇
図1
生物共生型護岸の整備港
 生物共生型護岸は現在、▽秋田港(秋田県)▽新潟港(新潟県)▽堺泉北港(大阪府)▽北九州港(福岡県)▽石垣港(沖縄県)の5港で整備が進められている=図1=。各港とも護岸の耐震性の向上だけでなく、護岸の構造形式に合った干潟や藻場などを同時に整備し、生物相の改善効果などを調査するのが目的だ。
 秋田港(大浜地区)は護岸前面に「砂泥性藻場」と「岩礁性藻場」を整備。新潟港(西港地区)は護岸改良と同時に、消波機能を併せ持つ生物共生床を前面に設置する。堺泉北港(堺2区)は「捨石緩傾斜タイプ」「干潟タイプ」「魚礁ブロックタイプ」の3タイプの生物共生型護岸を整備する。北九州港(二島地区・戸畑地区)は護岸前面に干潟と藻場を整備。石垣港(新港地区)は、珊瑚の移植に適した小段型の護岸を設ける。これらの生物共生型護岸は現在整備中で、整備終了後は生物の生息状況などを定期的に調べる=図2=

図2生物共生型護岸の実施例
図2ー1.秋田港大浜地区
(砂泥性藻場、岩礁性藻場を整備)
図2ー2.新潟港西港地区
(生物共生床を整備)
図2ー3.堺泉北港堺2区
(捨石緩傾斜・干潟・魚礁ブロックの
3タイプを整備)
 
図2ー4.北九州港戸畑地区
(干潟と藻場を整備)
図2ー5.石垣港新港地区
(珊瑚の移植に適した小段型護岸を整備)
 

◇生物共生型の防波堤の整備にも着手◇
 国土交通省は護岸だけでなく、防波堤についても生物共生型への改良を検討中であり、本年度より数カ所で整備を進める。
 生物共生型防波堤では、釧路港の島型防波堤の背後(港内側)に盛土と捨石マウンドを行い、その上に被覆ブロックなどをリーフ状に並べることで、越波による港内の静穏度の確保を図るとともに、海藻群落形成による生物生息機能が向上した例がある。こうした事例を参考にしながら整備を進めるほか、既設防波堤を通水構造とし、港外で浄化された海水を港内側に通水するなどの方式も導入する予定。
 同省では海域環境の改善をさらに進めるため、ハード・ソフトの両施策を有機的に組み合わせた環境配慮施策を展開するとともに、港湾管理者や民間企業が保有する護岸の改修でも生物共生型施設が安価に整備できるような技術的ノウハウ等を取りまとめていく方針。また、大水深航路などの整備で発生する浚渫土砂を活用し、浅場・干潟造成、深掘り跡の埋め戻しなどの事業も進める予定だ。

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