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 日本埋立浚渫協会は2021年12月6日、設立から60周年を迎えます。この間、会員企業各社は港湾・空港を中心に数多くの社会資本整備のプロジェクトに関わり、日本の経済発展や豊かな国民生活の実現に貢献してきました。60周年を迎えるのを機に、ここ四半世紀ほどの間に会員企業が手掛けた時代を画する主要プロジェクトを取り上げ、その意義や事業から得られた教訓などを施工現場の第一線で活躍した技術者を中心とする関係者の座談会で振り返ります。第2回は、関西国際空港に2本目の滑走路が整備された「関西国際空港2期工事」を取り上げます。
2016年11月5日撮影 提供:関西エアポート株式会社
 大阪・泉州沖の大阪湾を埋め立て、関西空港が滑走路(3,500m)1本で開港したのは1994年9月4日。それから13年後の2007年8月2日、最初の空港島のさらに沖合を新たに埋め立て、第2滑走路(4,000m)がオープンした。これによって関西空港は国内で唯一、長距離滑走路2本を擁し、24時間のフル運用が可能な世界標準の国際拠点空港へと生まれ変わった。この新たな空港島を造成し、第2滑走路を整備したのが関西国際空港2期工事である。
 最初の空港島を建設した1期工事には1兆5,000億円が投じられ、着工から7年の歳月を要したが、2期の空港島はその規模、自然条件の厳しさとも1期を大きく上回るものとなった。当時、関西空港の運営に当たっていた関西国際空港株式会社の経営は厳しく、2本目の滑走路整備への反対論がメディアをにぎわすなど、2期工事は強い逆風にさらされた。一方で、アジアの経済成長による航空需要の急拡大を予測し、関西空港の機能強化を急ぐよう求める声も強かった。
 2期工事の用地造成の着工は1999年7月。関西国際空港株式会社と用地造成工事のために設立された関西国際空港用地造成株式会社が掲げたスローガンは「1期に学び、1期を超える」「早く、安く、より良く」である。
 2期工事の条件の厳しさは、具体的な数字を1期工事と比べてみるとよく分かる。埋立面積は1期の510haに対して545ha、護岸延長は1期の11.2kmに対して13kmに及んだ。建設場所が1期よりも沖に位置するため、水深は1期より1m深い平均19.5m、海底の分厚い軟弱地盤のために予想された平均沈下量は18mと1期の11.5mを大きく上回った。この結果、埋め立て土量は1期の1.4倍近い2.6億㎥にも達した。
 こうした過酷な条件の下、2007年供用開始というスケジュールの厳守が求められた。それを克服できたのは、1期工事の経験から学んだ創意工夫と、最先端技術を導入した高精度・高効率施工によるところが大きい。
 埋立工事は1期と同じ工法で行ったが、2期では当初から夜間工事を計画し、1期の経験を踏まえて綿密な施工計画を立案した。大量の資材を短期間で調達するための事前準備にも1期の経験が生かされた。
 1期を上回る沈下予測に対しては、最終的な地盤高を確保する二次揚土という工程を追加。単に土を盛るのではなく、薄層締め固め工法を採用して1層60㎝の層状に造成した点が特色だ。これによって均一で非常に強固な地盤に仕上がった。特に滑走路の工事では、現地走行試験で確認した地盤の耐久性などを舗装設計に反映させたため、舗装構成を1期の約110㎝に比べて約60㎝まで薄くでき、大幅なコスト縮減につながった。
 雨水排水管などの地下埋設物設置工事を造成工事に合わせて行ったことや、航空灯火の設置と舗装工事を一体施工したことも効率化につながった。連絡誘導路と一般幹線道路が交差するアンダーパス工事では、事前に沈下を見越して早期に着工し、止水や土留め工事を省く工夫をした。
 最新技術として、作業船や重機の位置確認など随所にGPSを用いたほか、海底面の形状を面的に把握できるナローマルチビーム音響測深機、磁気伝送水圧式沈下計などを採用。取得した膨大なデータをパソコンで一括処理・管理し、次の工程に反映させることで、効率的で精度の高い工事を実現した。中でもGPSを搭載した土運船や揚土船による土砂投入や、ブルドーザーや振動ローラーによる締め固め作業は、常に適正な作業位置を把握できるため、無駄の少ない高精度の施工に役立った。
 作業船の円滑で効率的な運航と、一般船舶や操業漁船なども含めた安全確保も大きな課題だった。そのため、工事情報の一元的な管理、工事周辺海域における警戒船の管理・運用、一般船舶の航行や漁業の情報収集・提供を行う「航行安全センター」、作業船に対する運航管理を行う「JV航行情報センター」を設置した。これを中心とした航行安全と運航効率の向上システムが構築され、工事期間中24時間体制で行われた。
 1期に学んだ設計・施工上の工夫や、1期を超えた効率的な工事、大量の資材の効率的・安定的な調達などが奏功し、2期工事は1兆1,400億円の予算に対し、9,000億円までコストを圧縮して完成した。
サンドドレーン(SD)船による地盤改良工事 2002年8月護岸概成
水上 純一
国土交通省国土技術政策総合研究所副所長(関西空港)
江村 剛
関西エアポート㈱T1 リノベーション部長(関西空港)
岸本 和重(司会)
東洋建設㈱国際支店マニラ営業所マリキナ作業所長(護岸1工区)
野村 康行
東洋建設㈱国際支店工事部部長(護岸1工区)
相川 秀一
東洋建設㈱国際支店ヤンゴン営業所ティラワ作業所長(護岸1工区)
丸林 秀樹
あおみ建設㈱名古屋支店蒲郡工事事務所(護岸2工区)
川俣 奨
五洋建設㈱東北支店土木営業部長(埋立5工区)
殿垣 真一
若築建設㈱東京本社建設事業部門国際部インドネシア事務所
中部ジャワ作業所長(護岸4工区)
大本 泰久
みらい建設工業㈱技術本部副本部長(護岸5工区)
岩城 正典
東亜建設工業㈱常任顧問(護岸6工区)
石川 泰朋
東亜建設工業㈱土木事業本部土木部担当部長(護岸6工区)
「全体一工区」の精神、円滑推進の原動力に
岸本1999年の関西空港2期着工から約20年、2007年のB滑走路供用から13年が経過した。1期工事では工事費が当初の1.4倍に膨らみ、工期も1年延びたことから、2期工事では当初から「1期に学び、1期を超える」を合言葉に、1期工事の経験を最大限生かし、創意工夫や技術的なマネジメントで1期を超えることが求められた。一方で1期工事よりも施工場所がさらに沖合になり、水深は深く軟弱層は厚くなり、施工条件は厳しくなった。予算面でも逆風があった。
江村今、関西は外国人観光客であふれているが、関西空港に2期があるからインバウンドを取り込めている。昨年の離着陸回数は19万回。1本の滑走路で処理できるのは12万~13万回が理想で、マックスが16万回と言われる。現在の回数だと2本ないと立ち行かない。ただ順調にここまで来たわけではない。2期着工後、発着回数が伸び悩み、一般紙の社説で2期工事を休止せよという記事も出た。そこでコスト縮減行動計画をまとめ、事業費縮減が実現できることを世に示し、逆風を乗り越えた。そこには「1期に学び、1期を超える」という姿勢で、発注者、施工者一体で取り組んだ様々な工夫を書き込んだ。2期事業を中断することなく進められた原動力は、皆さんの技術の力そのものだと思う。
水上結果として1兆1,400億円の予算に対して9,000億円まで圧縮できた。皆さんの身を切るような努力が実ったものといえる。
岸本2期工事では施主・請負者が一体となって取り組む必要があるということで、請負者側ではJV建設協力会が組織された。
岩城私は2期の開港前後に建設協力会の会長をさせていただいた。国内の同様なプロジェクトでは、海上航行安全上の不備や地元調整の不具合で工事の中断を余儀なくされた事例も多いが、関西空港2期では気象条件以外の要因で工事が中断したことは一度もなかった。順調に進んだのは、着工当初から建設協力会の必要性と有効性に着目された2期建設実施本部の幹部の方々の先見性があったから。事業を円滑に進めるには、不測の事態を未然に防ぐことや、万が一の場合は迅速・公平に対処することが重要だ。そこで従来の「各工区単独対応型」の業務体系を改め、「全体一工区」とする新たな組織として建設協力会が設立された。協力会の活動に伴い、地元の方々との信頼関係が築かれ、事業を応援していただける場面も多くなった。プロジェクトの成否は地元調整にかかっている。建設協力会が利害の異なる施主・地域住民・施工者間の潤滑油となり、有効に機能したと自負している。
岸本2期工事では計画段階から各社が日本埋立浚渫協会を通じて検討業務に協力してきた。
相川協会の技術委員会の中に海上空港部会があり、そこで関西空港2期工事についていろいろな勉強をさせてもらった。工事が始まる時に現場の担当になったので、勉強していたことが現地で再現できることになり、大変面白かった。その経験が自身の技術屋としてのベースになっている。特に大規模・急速施工ということで効率的な施工や施工管理が求められ、当時の最新技術だったナローマルチビームやGPSが導入された。発注者である用地造成会社が各社に技術を競わせる場をつくったことで、各社が積極的に技術開発を進めることができた。一方で、各社のシステムの違いによるばらつきが生じないように全体レベルの統一も図られた。
岸本施工マニュアルや施工管理システムが整備されたこともうまくいった要因の一つだと思う。このような大規模・急速施工では、大量の資材をいかに安価で安定的に調達するかも課題になる。地盤改良では国内の海砂に加え、輸入砂や洗砂も活用した。
川俣輸入砂は通関手続きや生態系への影響など多くの課題解決がなされた上で、海外から大型船で運ばれ、安定的な供給となって各工区に配られた。協力会を通じてその配分が決められた。セレクト材なども使った。
岸本護岸構造はほとんどがサンドドレーン(SD)+緩傾斜石積護岸。1期工事の反省を踏まえ、いかに高品質の砂杭を造成するかが課題で、船体検査や潜水士による杭頭調査が行われた。
殿垣SD船が8隻あり、それで工区割りをすることになっていろいろな組み合わせのパターンを検討した。各船によってケーシングパイプの貫入方法が違うので、共通の貫入・着底基準を設け、高品質の砂杭による均質な地盤ができるようにした。SDについてはかなり勉強し、苦労した。GPSやナローマルチビームを使った施工管理は今では当たり前になったが、管理の統一基準を作るという発想は関西空港で教わった。
岸本通常発注者は保守的に考えるので、確立された技術を採用する傾向がある。関西空港2期の場合はGPSもナローマルチビームも先取りして導入された。
水上施工管理については相当勉強していた。1期の時は機械やコンピューターの性能が追い付いていなかったが、2期ではいろいろな武器が使えるようになったので、皆さんにどんどん投げ掛けてみた。
相川1期工事の時に既に発想があった座標式工程表や施工展開図を使った全体の管理などが2期工事でアウトプットとして出てきた。それでみんなが工事の進捗状況を共有でき、非常に良かった。コンピューターの性能が格段に上がり、入ってくるデータも充実していた。1期で考えていた理想を2期で実現できたといえる。
岸本6工区は他の工区と違ってサンドコンパクション(SCP)+セル護岸や深層混合処理(CDM)+直立消波ケーソンといった構造が多く、新たな工夫がなされた。
石川SCPおよびCDM(壁式)の採用箇所は開口部の早期締め切り、ケーソン部の早期供用が必要な箇所だった。1期もSCP+鋼板セルの組み合わせはあったが、2期では、SCP改良部の上部はSD杭に変更となった。2期では環境に配慮し、CDMやSCPの盛り上がり部も環境面、有効利用を目的に改良した。特にCDM部の盛り上がり高さは次工種の基礎捨石層厚がケーソン下面の支持力安定性に影響するため、施工面のみなならず設計検討を含め協議を行いながら次工種につなげていった。CDMは、1期ではラップ時間を考慮して遅硬性セメントが使用されたが、2期では事前試験結果を踏まえ、大阪湾内の工事で使用実績がある高炉B種が採用された。
丸林2期島は200m沖に出したので、沖合側の護岸はボーリングデータがなく、チェックボーリングをやって初めて地盤情報が分かるという状態だった。そのため護岸の高さの見直しが大変で、特に施工が先行していた2工区は高さ合わせに苦労した。
岸本盛砂工はいよいよ本体ということで、いかに早期に均一にやっていくかが議論された。これが全体の工期にも影響するが、着工が2カ月ぐらい遅れ、当初は供給量も不足していた。建設協力会で資材配分計画に沿った配船などを行っていたが、最大48隻もの土運船の運航管理はかなり厳しかったのではないか。
野村関西空港2期工事の前半は主にガット船、後半に土運船の運航管理を担当した。関西空港株式会社さんの航行安全センター内にJV航行情報センターを設置し、運航管理委員会、協力会の調整部会、山土連絡会の5者が緊密に連携して、24時間の管理体制を組んだ。大量急速施工が要求される中、運航効率の向上と安全運航を図るため土運船には運航管理支援システム「VS-10」を搭載し、JV航行情報センター側で土運船全船の動静を一元的かつリアルタイムに把握し、必要な情報提供および指示を行った。工事海域内の出入域調整、障害物の位置、土砂投入作業支援など、土運船側はいろいろな情報が取れる。気象・海象、漁船の情報なども役に立ったと思う。土運船のルート上に魚礁があり、かなり神経を使った。建設協力会で情報提供船をルート上に6隻配備し、万全の形で漁船と一般船、作業船の安全を確保した。
岸本漁協にも協力していただき、我々への信頼も厚くなった気がする。地元の信頼を得られて、協力的になっていただいたことが、工事が円滑に進んだ大きな要因だった。盛砂工の施工はどのように行われたのか。
相川均一でなるべく層状にということで、各工区でシミュレーションし、それを用地造成会社主導で設計図にした。その設計図をベースに土の配分などが決まった。大きな島を造るとか、大プロジェクトは設計図をつくることが大事だと分かった。施工のイメージをつかむためレゴブロックで盛砂の進捗を再現し、写真を撮りながら何日はこれ、次の日はこれという確認を事前に行いながら施工を進めた。そこまで突き詰めれば良いものができるだろうと思う。
岸本 和重氏(司会) 江村 剛氏 岩城 正典氏 殿垣 真一氏
水上 純一氏 相川 秀一氏 川俣 奨氏 丸林 秀樹氏
野村 康行氏 大本 泰久氏 石川 泰朋氏
最新技術を積極活用、広報活動の先駆けにも
江村1期と2期を比べると、実は2期の方が不同沈下は少ない。沈下量は2期の方が圧倒的に大きいが、その割に不同沈下が少ないということは2期の薄層均一施工の観点で沈下管理がとてもうまくいったということ。
大本1期島との連絡誘導路には両側の海水を行き来させる通水管が横断している。この通水管の施工には苦労した。全長430m、径が2.5mで2条、8分割された管を海底に沈めつないでいく工事。最長98mの管をどうやって精度よく海底に設置するのか、どうやって埋めるのか、1期島の沈下もあるので、3次元FEM解析を行い1期島と2期島の挙動を予測し検討を重ねた。施工後、ROVで管内の状況や接続部を計測し通水管の健全性が保たれていることを確認した。
川俣2期工事では、埋立造成は面的に層状に施工するという基本方針から、土運船を使った土砂投入に際し、ナローマルチビームを用いた。現状起伏に応じて、船形の違いによる堆積形状の特徴を予測しながら均一に施工していく難しさがあった。土運船の直投工事をここまでシステマティックに行ったことは過去にはないと思う。また、埋立5工区には開口部が南北に2カ所あり、施工場所に応じた航路の切り替えや、この開口部をいつ締め切るか、圧密放置期間をいかに確保するかという観点で調整にも苦労した。
丸林担当していた護岸2工区でも北側に開口部があった。護岸の早期概成が求められる一方で、埋立作業を行う土運船の航行や潮流による埋立作業への影響から開口部を開けておいてほしいとの要望もあり、調整が難しかった。
石川2工区開口部の締め切りにより、土運船航行が6工区の開口部に集中し、開口部背面の広大な中埋部他の施工に支障を与える状況が予測された。結果的に、圧密放置面(敷砂②盛砂①層厚)見直しにより次施工着手の前倒しが可能となり、そうした事態は回避された。この際、6工区は、当初よりナローマルチに加え自主土質調査・試験等を積み重ねてきたが、この圧密放置面の強度検証等にも役立った。
岸本捨石と被覆石の施工中には台風の襲来もあり、対策が必要になった。
丸林護岸2工区は波当りの強い淡路側の一番北側の工区で、護岸の進捗を早くしろ、早くしろと言われた。私は工事課長の立場で、技術委員会にも参加しており、その場で議論されていた各社の台風対策を共有し対応に当たった。当時は大変で苦労も多かったが、20年たって振り返ると、ラクビーではないがワンチームになって良い仕事ができたと思う。
川俣護岸3工区は南端の工区で、紀淡海峡からの波が直接当たる厳しい条件だった。フィルターユニットやワイヤーメッシュなど1期工事での対策をベースにその水理効果を定量的に確認しようと水理模型実験を行った。おかげで台風が来てもフィルターユニット自体は移動したりするが、それほど大きな被災にはならずに進めることができた。
相川当社でも平面水槽を用いた水理模型実験を行い、対策の効果と被災状況をシミュレーションした。台風で被災した後、すぐに現場に行ったら、被災状況が実験結果とまったく同じだった。その成果を後に残すため、その内容を外部へ投稿した。やはり大きな石を置けば、被災も少なくても済む。よい勉強になった。
岸本地盤改良は台風が来たら一斉避難ということで、避難場所と避難の順番などを決めていた。
野村建設協力会の規約で台風対策本部を設置することを工事開始前から決めていた。作業船も湾内の避難先関係者と運航管理委員会が事前調整できていたので、速やかに避難できた。これも2期工事の特色といえる調整技術の一つだった。汚濁防止膜の沈降・浮上の判断をどうするかも台風対策本部で検討しながら決めていた。沈降・浮上の訓練もしていたので、大きなトラブルはなかった。
岸本2期工事は、1期工事以上の大規模・急速施工ゆえに環境対策も重要だった。
水上現在、関西空港の藻場面積は59haで、大阪湾全体335haの約2割を占めている。1期では積極的にはやらなかったが、海藻が結構付いた。2期では人の手を加えてより早く付くようにしている。
岸本6工区で1期の消波ブロックを撤去したら、アワビがたくさん付いていた。
石川2期の護岸工事でもスリットの入った環境創生型ブロックが採用された。スリットはあと施工も可能だが、メーカーは当時のスリット仕様を現在もそのまま推奨しているようだ。
岸本航行安全センターには展望ホールが設けられ、一般の方にも見てもらう方策が取られた。
大本5工区は建設事務所や空港利用者が集まるエアロプラザから最も近い施工場所であり、双眼鏡で見られているので常にぴりぴりもしていた。12月になるとSD船をクリスマスツリーに見立て飾り付けしライトアップを行ったり、「みんなでつくろう空港島」として催された工事見学会用の仮設桟橋の製作・設置を行ったり、本業以外の楽しい思い出もあった。当時はまだ一般の人に現場を見せるようなことはしていなかったが、あれ以来、現場を積極的に見せようとなった。
江村広報活動には結構お金もかかったが、2期島を見渡せる展望ホールについて土木学会の関西支部からも、これからはこうして現場を見せないといけないという評価をいただいた。作業船や地層の模型を見ながら目の前の現場を見ることでお客さんにとっても分かりやすかったのではないか。
岸本一般の方に土木をPRする先駆けになったのではないか。現場は大変だったが、子どもたちが喜んで帰るのは良かった。
石川関西空港は2001年に、米国土木学会から20世紀を代表する10大事業「モニュメント・オブ・ザ・ミレニアム」の一つに選定された。「ダム」「道路」「超高層ビル」など10の部門ごとに世界で最も優れた事業を一つずつ選定するもので、関西空港はそのうちの「空港の設計・開発」部門での受賞。ゴールデン・ゲート・ブリッジやエンパイア・ステート・ビルと並んで日本では関西空港だけが選ばれている。我々は2期の護岸工事中にその朗報を聞いた。こうした歴史的な大プロジェクトに関われる可能性があることも建設会社の醍醐味である点を、学生を含め若い人達に広く知ってもらいたい。
江村関西空港では毎年、学校の教員の方々に見学に来ていただいて空港島の建設技術や空港運用の裏側などの話をしている。先生方はそれを学校で子どもたちに教える。そういう意味では、建設が終わっても次世代の土木技術者につながる活動が続いている。
岸本関西空港2期工事は、その後の羽田空港D滑走路工事にも影響を与えた。
相川羽田の現場には関西空港で苦労を共にした技術者が多く来ていた。関西空港の造り方を知っていたので話が早かった。羽田は設計・施工だったが、関西空港の時と同じように現場の条件に合わせて臨機応変に対応していった。
岸本ゼロから考え直し、合理的な結論を出すという大切さを関西空港で学んだ。ゼロから考える癖が付いたのは関西空港経験者の財産であり、それを若い人にも伝えていくべきだ。
相川決まっているものがあっても、そもそもなぜそれが決まっているのか、どういう理屈なのか、なぜこの数値なのかという、ものごとを掘り下げて考える発想だった。関西空港や羽田のような大きなプロジェクトがあると、若い人にもそれを教えるチャンスがあるだろう。
水上羽田がうまくいったのは関西空港があったからといってもよい。ナローマルチビームやICT施工、作業船の運航管理システムなど現在のi-Constructionの要素も関西空港の工事でほとんどできていた。
岸本大阪はこれから万博やIRもある。航空需要はまだまだ伸びるのではないか。
江村昨年は19万回の離着陸があり、今年は20万~21万回に増える見通しだ。2期計画で掲げた23万回が近づいている。2期島には日本初のLCCターミナルやフェデックス北太平洋地区のハブとなる貨物基地が整備された。今後の需要増にも展開できる余地があり、2期島を造って本当に良かったと思う。
岸本一時は要らないとまで言われた空港でこれだけ需要が伸びている。建設に携わった者としても大変うれしいことだ。
江村関西空港は4年前に関西エアポートに運営権が移った。フランスの空港運営会社ヴァンシ・エアポートやオリックス、地元企業などが出資した民間会社で、関西空港と併せて伊丹空港や神戸空港も運営している。私もこの会社に転籍した。空港島の沈下管理や護岸の嵩上げなど関西空港の維持管理は関西エアポートが引き続き行っていく。2018年9月の台風では越波によってターミナルが冠水するなど大きな被害が出た。これからは今までに経験していない気象条件も考え、防災工事を進めていかなければならないだろう。
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日本埋立浚渫協会 技術委員会環境・海洋部会
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 環境・海洋部会では、「クルーズ振興に伴う寄港地の環境影響に関する調査研究」を進めております。本研究では、「クルーズの現状」「国の施策」「クルーズ船の寄港動向と港湾の整備状況」等を調査・整理し、「クルーズ船による環境影響」をまとめる予定です。今回、調査研究活動の一環として、近年クルーズ船寄港回数の増加が顕著で、官民連携による国際クルーズ拠点を形成する港湾に指定された平良港の整備状況とクルーズ船の入港状況を見学しました。さらに、内閣府沖縄総合事務局平良港湾事務所並びに宮古島市役所観光商工部観光商工課観光推進係を訪問し、平良港の概要と宮古島市の観光振興についてヒアリングを実施しました。本稿は、それらの現地見学及びヒアリングについて報告するものです。
1.平良港見学の概要
 環境・海洋部会では、「クルーズ振興に伴う寄港地の環境影響に関する調査研究」の一環として、2019年10月15日~16日に沖縄県宮古島市平良港の整備状況とクルーズ船寄港状況の現地見学、内閣府沖縄総合事務局平良港湾事務所並びに宮古島市役所観光商工部観光商工課観光推進係へのヒアリングを実施しました。
 平良港は、沖縄本島より南西約300kmに位置し、大小8つの有人島をもつ宮古地域の拠点港となっており、国の重要港湾に指定されています(図-1)。特に近年では、クルーズ船の寄港が急増しており、官民連携による国際クルーズ拠点を形成する港湾にも指定されています。環境・海洋部会が平良港を見学した16日には、クルーズ船「ワールドドリーム」(総トン数151,300トン)が寄港しており、クルーズ船寄港に関するハードとソフト両面における課題点と、それに対応した港湾整備と観光振興に取り組む必要性を実感することができました。
図-1 宮古地域位置図
2.平良港の整備
2-1.平良港の概要
 平良港は、宮古島市を港湾管理者とする重要港湾であり、国の港湾整備計画に基づく整備が進められています。平良港の定期航路は、沖縄本島(那覇港経由博多・鹿児島)や石垣島(石垣港経由台湾・中国)との間に就航し、島民の生活物資受け入れや周辺離島である多良間島への貨物積み替え拠点としての役割を果たしています。平良港は、下崎地区、漲はりみず水地区、トゥリバー地区の3地区から構成されており、それぞれの地区において機能分担がなされています(図-2)。
 近年の平良港では、クルーズ船の寄港が増加しており、2014年は年間3隻であった寄港数が2018年には143隻となり、全国でも5番目にランキングされています(図-3)。このため、平良港におけるクルーズ船の受け入れには、いくつかの問題が生じています。一例として、宮古島市の市街地から最も近い漲水地区では、RORO船との兼用となっていることから、実態は50,000トン級以下のクルーズ船については暫定的に下崎地区において受け入れています。しかしながら、下崎地区は市街地から約3km離れ、砂・砂利、鉄スクラップなどの受入岸壁であるため、クルーズ船観光客を受け入れる玄関口としては課題があります。
 さらに、50,000トンを超えるクルーズ船は沖泊し、上陸するためにテンダーボートを利用しています。また、平良港には入出国に必要な税関検査、出入国審査、検疫設備(以下「CIQ設備」)を備えた旅客ターミナルがないため、2,000人の旅客が上陸するまでに約2時間半を要すという問題があります。
図-2 平良港港湾計画図 図-3 沖縄へのクルーズ船寄港回数
2-2.官民連携による国際クルーズ拠点
 クルーズ船受入環境を短期間で効果的に整備するため、民間クルーズ船社による旅客ターミナル設備などを整備する投資と、国や港湾管理者による受入環境を整備する投資を組み合せ、官民連携による国際クルーズ拠点を形成する港湾の制度が創設されています。この制度は、民間のクルーズ船社にとっては岸壁の優先使用権を得られるという特徴があります。平良港は、国土交通大臣より2017年7月、官民連携による国際クルーズ拠点を形成する港湾に指定され、国が漲水地区に140,000トン級(当初計画)岸壁(図-4)と臨港道路を整備し、民間のカーニバル・コーポレーション&PLC(以下「カーニバル社」)がCIQ設備を持つ旅客ターミナルビルを整備する計画となっています。
 また、これに伴い宮古島市では、土地利用計画を変更して商業施設エリアなどを整備して旅客動線の快適性を向上させるとともに、将来的に新たな玄関口として期待されている下地島空港の活用等を視野に、宮古島市におけるフライ&クルーズによる発着港への発展を計画しています(図-5)。なお、クルーズ船の大型化に伴い、2018年11月に港湾計画が一部変更され、岸壁整備は140,000トン級クルーズ船から世界最大級の220,000トン級に対応することとなりました。
図-4 クルーズ岸壁完成予想パース 図-5【平良港】官民連携国際クルーズ拠点形成計画書(目論見書)の概要
2-3.クルーズ船岸壁と臨港道路の整備状況
 平良港において国が行っているクルーズ船受入環境の整備事業は、港湾の拡大整備により第二線防波堤となった施設を活用して、その前面(港外側:図-5の赤線部分)に延長420m(当初370m)の岸壁を築造し、その背面(港内側:図-5の緑線部分)に臨港道路を築造する計画となっています。この事業は、岸壁(-10m)築造工事と臨港道路築造工事等がありますが、2020年春より暫定的に140,000トン級のクルーズ船が受入可能となるよう、急ピッチで施工が進められていました。
 岸壁(-10m)築造工事は、ジャケット(長さ60m×幅20m×高さ9m)3基とドルフィン5基による桟橋構造となっています(写真-1)。港湾計画の一部変更によりクルーズ船が大型化したため、今回の工事では桟橋構造の岸壁延長が当初の370mから420mに変更となりました。さらに2020年春の暫定供用以降、水深を10.0mから10.5mとする計画になっています。
写真-1 ジャケット据付と臨港道路施工状況
3.宮古島市観光振興とクルーズ船
3-1.宮古島市が整備する施設
 宮古島市は、クルーズ船旅客の利便性を向上させるため、CIQ設備を持つ仮設の旅客ターミナルを整備し、その周辺に観光案内施設、二次交通車両(バス、タクシー、レンタカーなど)やシャトルバス(クルーズ船旅客を岸壁と旅客ターミナルの間で移送)の発着場を整備する予定です。なお、官民連携による国際クルーズ拠点を形成する港湾により、カーニバル社がCIQ設備をもつ旅客ターミナルを整備する計画となっていますが、建設位置に関する合意が得られずに整備が遅れています。
3-2.クルーズ船の寄港
 平良港にクルーズ船「ワールドドリーム」が寄港しているのを見学しました。総トン数151,300トンの「ワールドドリーム」(全長335m、全幅40m、定員3,376人)は約2km離れた沖に停泊していましたが、その存在感は陸からでも充分に確認でき、突如海上に巨大なホテルが現れたかのようでした。「ワールドドリーム」は沖泊の為、旅客はテンダーボート(約120人/隻、7~8隻でピストン輸送)を利用し上陸していました(写真-2)。
 テンダーボートを降りた旅客は、諸手続きのため既設の旅客ターミナルを通りますが、旅客数に対して充分なスペースと設備がないため非常に混雑していました(写真-3)。さらに、市街地へ観光に訪れようとする旅客は、タクシー乗り場で長い列を作っていました(写真-4)。このような状態を目の当たりにし、クルーズ船旅客の利便性を向上させるため、ハード面整備の必要性を強く感じました。
 一方、クルーズ船寄港と関係のない生活をしている宮古島市民にとっては、クルーズ船が滞在する短時間に非常に多くの旅客が市街地などを訪れるため、様々な問題が生じていることが判りました(図-6)。
写真-2 沖泊のクルーズ船とテンダーボート 写真-3 混雑する既設の旅客ターミナル
写真-4 タクシーを待つ旅客 図-6 クルーズ船寄港に伴い発生する問題点
3-3.宮古島市の観光振興
 近年(2015年以降:伊良部大橋開通)宮古島市への観光客数は増加の一途をたどっており、今後も下地島空港やクルーズ船の受入環境が整備されるとともに、新規ホテルの開業が計画されていることから、観光客数はさらに増加すると見込まれています。そこで宮古島市は、2019年3月に「第2次宮古島市観光振興基本計画」を策定し、観光振興に向けた施策方針を掲げています。さらに、この施策を推進するために同年7月31日には「宮古島市観光推進協議会」を設置し、そのなかで官民が連携して観光に関する施策と諸問題について実務担当者レベルで議論し、具体的な対応をしています。特に、クルーズ船旅客の満足度向上と宮古地域の振興は喫緊の課題となっています。その一例として「エコアイランド宮古島」の環境を守るためにゴミを捨てないよう観光客を対象に「マナー啓発うちわ」(外国語版)を製作、配布しています(図-6)。
 また、クルーズ船の旅客は朝から夕方までの短時間滞在に対して、飛行機利用の観光客は宿泊を伴う滞在が多いため、宮古島市では観光による地域産業の経済波及効果向上を狙い、オーバーユースとならないことを前提に、フライ&クルーズを展開させようと計画しています。さらに、宮古島市最大の観光資源である美しい自然を守り「持続可能な島づくり」を確立させるためにエコ活動を活発化している企業を「エコアクションカンパニー」として認定する制度をスタートさせています。
 この他にも、観光シーズンである3~10月以外の閑散期の対応をどのようにするか、宮古島市の水資源を守るために特定の宿泊施設(例えばプール付きのホテル)には取水制限を実施する、といった検討も行っています。急激に増加する観光客に対し、発生する問題は多岐に渡っていますが、その都度市民への理解と協力、地元企業との連携を大切にしながら、観光振興を推進している様子が伺えました。
 なお、クルーズ船自体が宮古島市(平良港)の環境(例えば水質や大気汚染、騒音など)に影響を及ぼすようなことについて質問したところ、クルーズ船が停泊する海域にはもともとサンゴの生息は無く、また滞在期間が短時間であるため、その他の影響についても現時点では確認されていないという回答でした(写真-5)。

写真-5 宮古島市ヒアリング 写真-6 クルーズ船をバックに
4.おわりに
 今回の平良港見学を通して、クルーズ船による環境影響については、受入環境の整備といったハード面と旅客の利便性やそこに住む人の快適性などというソフト面における課題があることが判りました。そしてその解決には、地域特性を考慮した上で、官民が連携して港湾整備と観光振興に取り組む姿勢が大切であると感じました。
 最後に、今回のヒアリングや現地見学会を快く受け入れていただいた、内閣府沖縄総合事務局平良港湾事務所所長・與那覇健次様、工務課長・長田淳様、工務係長・國場幸恒様、宮古島市役所観光商工部観光商工課観光推進係主任主事・永田良彦様、主任主事・友利未咲様、係長・伊佐智彦様、若築・吉田特定建設工事共同企業体JV所長・大田博文様、ほか関係職員の皆様には大変お世話になりました。紙上ではありますが、厚く御礼を申し上げ、感謝の意を表します。
[執筆者:りんかい日産建設(株)新谷聡]
【出典】
1)平良港港湾計画一部変更 国土交通省(平成30年11月14日 交通政策審議会第72回港湾分科会 資料1-3)
2)平良港国際旅客船拠点形成計画(平成29年12月宮古島市)
3)平良港概要資料 令和元年10月15日(沖縄総合事務局平良港湾事務所)
4)国土交通省HP 報道発表資料「官民連携による国際クルーズ拠点」を形成する港湾を選定(平成29年1月31日 資料2)
5)工事概要書 若築・吉田特定建設工事共同企業体 配付資料
6)宮古島観光の状況について(2019年8月30日 宮古島市役所観光商工部観光商工課、建設部港湾課)
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一般社団法人 日本埋立浚渫協会 国際部会
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 (一社)日本埋立浚渫協会・国際部会では、2020年2月11日~2月14日の間、フィリピン共和国マニラ市で開催された国土交通省港湾局主催(事務局OCDI)による「航路の維持管理セミナー」および「日 ASEAN 港湾技術者会合」に参加し、会員各社の技術をASEAN諸国に広め、参加各国との意見交換を行った。また、日本埋立浚渫協会会員会社施工の「パッシグ・マリキナ川河川改修プロジェクト」の工事視察とマニラ港視察、そして日本国大使館、国際協力機構(JICA)を訪問し、フィリピン国内での港湾事情について調査を行った
1.ASEANおよびフィリピン共和国について
 ASEAN(Association of Southeast Asian Nations, 東南アジア諸国連合)は、1967年に「バンコク宣言」により原加盟国5カ国で結成された地域協力機構。1984年のブルネイの加盟後,加盟国が順次増加し,現在は10か国で構成されている。2017年にはASEAN設立50周年を迎えた。
 ASEANの目的は、地域内における経済成長、社会・文化的発展の促進、政治・経済的安定の確保や諸問題に関する協力を掲げている。事務局をインドネシアのジャカルタに設置し機構内の会議・委員会等の調整・効率化を担い、様々な事業を実施している。
 フィリピンは、1990年代まではASEAN主要国の中で最下位の経済成長率であり、アジアの中でも貧しい国というイメージが付いていた。しかし、アキノ前大統領が就任した2010年には経済成長率が7.6%まで上がり、2012年以降の経済成長率はASEAN主要国のなかでもトップクラスで、今年には一人あたりの名目GDPが3,000ドルを超えると予想されている。2020年1月8日、世界銀行が今後のフィリピンの経済成長率の予測を発表した。具体的には、2019年の経済成長率を5.8%、2020年を6.1%、2021年と2022年をそれぞれ6.2%と予測している。
 2016年より就任したドゥテルテ大統領の経済政策のもと、近年、非常に高い回復力を見せているフィリピン経済、安定しつつあるマクロ経済環境や税制改革に加えて、市場の自由化やインフラ整備への支出の増額といった政策が、その成長に貢献しているとされている。2022年にも世界銀行が定義付けした「上位中所得国」の仲間入りをする可能性が高い。
 なお、フィリピンにとって日本は最大の援助供与国であるとともに、日本にとっても重要なODA対象国の一つである。
図-1 ASEAN加盟国(10カ国)及び位置図
表-1 フィリピン共和国基礎データ
2.調査日程および参加者
 調査日程を表-2、参加者を表-3に示す。
表-2 研修会日程 表-3 参加者一覧表
3.航路の維持管理セミナー
 航路の維持管理セミナーは、2月12日(水)、マニラ市内のDusit Thani Manila Hotelにて開催され、ASEAN加盟国港湾技術者64名が参加した。
 セミナーは、航路・泊地の埋没対策に関する現状や最新の技術、取り組みを共有することを目的としたもので、表-4に発表内容を示す。
 国土交通省港湾局産業港湾課国際企画室・平澤興首席国際調整官の挨拶によりセミナーが開会し、国土交通省港湾局産業港湾課国際企画室・小木健介氏が司会進行を行った。
表-4 航路の維持管理セミナー発表内容
写真-1 挨拶する平澤首席国際調整官と小木氏 写真-2 発表する中川教授、水流氏
写真-3 発表する遠藤氏、曠野氏 写真-4 発表する鈴木氏、原田氏
写真-5 セミナー参加者全員の集合写真
4.日 ASEAN 港湾技術者会合
 日 ASEAN 技術協力の港湾分野の協力においては、2~3年をかけて特定のテーマで成果を作成している。航路維持浚渫は安全面、経済面で非常に重要な課題であり、2017年度から3カ年の計画で「航路の維持管理ガイドライン」の策定作業を実施している。
 初回の2017年度はベトナムのハノイにて、2018年度はカンボジアのプノンペンにてガイドラインの内容について議論した。最終回の2019年度はフィリピンのマニラにて港湾技術者会合(PTG meeting)が開催され、ガイドライン(最終ドラフト)の説明と各国委員との最終協議が行われた。
 九州大学の中川康之教授が中心となり、最終ドラフトの方向性について各国委員との活発な議論が展開された。当協会からは水流委員(五洋建設)、佐々木調査役をはじめとし国際部会員がオブザーバーとして参加した。
 ドラフトへの協議終了後、次年度から始まる新たな取り組みテーマ(案)について国土交通省の平澤首席国際調整官より各国委員へ提案があった。
 これらの事項は3月末に開催予定の第39回ASEAN海上輸送ワーキンググループ会合での協議を経て、11月にブルネイで開催予定の第50回運輸次官級会合、第26回運輸大臣級会合において承認を得る計画である。
写真-6 中川教授によるガイドライン(案)の説明
5.マニラ港視察概要
 マニラ港はルソン島南西部に位置するフィリピン最大の年間貨物取扱量を誇る港である。オーナーはフィリピン港湾局(“PPA” Philippine Ports Authority)で、大きく北港(North Harbor)、南港(South Harbor)、マニラ国際コンテナターミナル(“MICT” ManilaInternational Container Terminal)から成り立っている。北港はインターナショナル・コンテナ・ターミナル・サービス(“ICTSI” International Container TerminalsServices,Inc.)傘下のManila North Harbor Port Inc.、南港 は Asian Terminals Inc.(“ATI”)、MICTはICTSIに運営が委託されている。この内、国際貨物を取り扱っているのは南港とMICTである。
図-2 マニラ港(MICT, 北港、南港)
6.パッシグ・マリキナ川河川改修プロジェクト
 フィリピンは日本と同様に自然災害の多い国の一つで、特に今回視察したパッシグ・マリキナ川はマニラ首都圏を貫流し、その洪水発生は甚大な経済的、社会的影響を与えてきた。
 本プロジェクトは、パッシグ・マリキナ川の河川改修を通じ、洪水緩和並びに河川環境の改善を目的に1988年のJICA調査より開始した。建設ステージであるフェーズⅡ~Ⅲは東洋建設㈱あるいは東洋JVが施工しており、現在もフェーズⅢのパッケージ2を東洋建設㈱が施工中である。
 同工事は河川両岸にハット型鋼矢板を打設し前面に捨石を投入、その上にコンクリート上部工を施工し護岸を築造、更に河道を掘削するという工事である。この工事により整備された護岸は河川際まで開発が進むマニラ首都圏の洪水リスクを軽減し更に美しく整備された護岸は河川景観にも貢献している。
フェーズⅠ:
全体計画の詳細設計/デルパンからマリキナ橋までの29.7km
フェーズⅡ:
建設ステージⅠ/パッシグ川における河道改修事業 デルパン橋からナンピンダン川までの16.4km区間
フェーズⅢ:
建設ステージⅡ/パッシグ川における河道改修事業CP1(フェーズⅡの事業対象外区間9.9km区間)、マリキナ川下流河道改修事業 CP2(ナンピンダン~マリキナ可動堰5.4km区間)
フェーズⅣ:
建設ステージⅢ/マリキナ川上流河道改修事業およびマリキナ川可動堰建設(マリキナ可動堰~マリキナ橋7.9km)
写真-7 岸本和重所長(東洋建設㈱)による現場説明 写真-8 河川改修完成
図-3 プロジェクトの全体計画
7.大使館・JICA訪問
 在フィリピン日本国大使館とJICAフィリピン事務所を表敬訪問し、フィリピン国内での日本の技術と港湾施設の開発、日本との関係やODAによる協力状況、インフラ整備状況を確認した。
7-1.在フィリピン日本国大使館
 国土交通省から赴任されている一等書記官・堀貞治氏よりフィリピン港湾事情について詳細な説明をいただいた。意見交換では、現ドゥテルテ政権が経済成長を継続させるために鉄道を中心としたインフラ整備や環境保護に力を入れていること、港湾案件はPPPで進められODAによる案件形成が少ないことが確認された。フィリピンは2020年には中進国になると想定され円借款の対象外になるためここ数年での案件形成が急がれるとのこと。また、中国は支援に積極的であるが、日本と比較して案件の進行が遅くフィリピン側が不満を持っているようである。
7-2.JICAフィリピン事務所
 JICAフィリピン事務所では和田義郎所長と川渕貴代次長よりフィリピンのODAの見通し等についての説明をいただいた。
 意見交換では、港湾案件に関してはやはりPPPで進められるケースが多く、特にマニラ港ではこの傾向が強くあり、フィリピンは3~4年でSTEPを卒業する見通しでそれまでに対応できるものを実行していきたいとのことであった。また、マニラ港の機能がスービック港やパタンガス港に分散されることを前提とした再開発の計画がある。この場合マニラ港の埋立が重要となるが、環境問題で規制されていて、港湾開発やマニラ首都圏プランニングの大きな課題となっている。一方、地方の漁港等は老朽化が進んでいるので拡張計画が有ればODAの対象となりうる。中国については、ドゥテルテ大統領を支援しているが、中国が日本の案件に出てくるというケースは少ないとのことであった。
写真-9 JICA事務所でのヒアリング状況
8.おわりに
 フィリピンは日本と同じく四方を海に囲まれた島国で多くの港を有し、また地震や台風など常に自然災害と向き合ってきたという共通点を持っている。
 今回の港湾調査で、日本では違うイメージで伝えられているドゥテルテ政権がインフラ整備や環境問題を強力に進めている状況が見えてきた。そして日本独自の港湾技術や防災技術がこの国では必要とされる技術であると改めて感じた。

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