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国土交通省港湾局計画課 課長補佐 嶋崎 賢太
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1.基本方針とは
 国土交通大臣は、港湾の開発、利用及び保全並びに開発保全航路の開発に関する基本方針を定めることとされています(港湾法第3条の2第1項)。この「基本方針」は、国の港湾行政の指針であり、また港湾管理者が個別の港湾計画等を定める際の指針となるものです。例えば、港湾法において「港湾計画は、基本方針に適合し、かつ、(中略)に適合したものでなければならない」(第3条の3第2項)とされており、また特定貨物輸入拠点港湾における特定利用推進計画、国際旅客船拠点形成港湾における国際旅客船拠点形成計画についても、「基本方針に適合したものでなければならない」(第50条の6第4項、第50条の16第4項)とされています。
 このような規定に基づき基本方針は、港湾計画の策定等の主体が全国の港湾管理者である我が国において、各種の港湾施策の指針となる国としての考え方を各港湾管理者等に示し共有するという役割を担っています。
 港湾法において基本方針には、以下の事項を定めるものとされています(第3条の2第2項)。
 1 港湾の開発、利用及び保全の方向に関する事項
 2 港湾の配置、機能及び能力に関する基本的な事項
 3 開発保全航路の配置その他開発に関する基本的な事項
 4 港湾の開発、利用及び保全並びに開発保全航路の開発に際し配慮すべき環境の保全に関する基本的な事項
 5 経済的、自然的又は社会的な観点からみて密接な関係を有する港湾相互間の連携の確保に関する基本的な事項
 6 官民の連携による港湾の効果的な利用に関する基本的な事項
 7 民間の能力を活用した港湾の運営その他の港湾の効率的な運営に関する基本的な事項
図1
2.基本方針の抜本的な見直しの背景
 国土交通省港湾局では、社会経済情勢の変化に対応して、節目ごとに港湾政策の中長期ビジョンを策定し、それに応じて、港湾法に基づく指針である基本方針の抜本的な見直しを行ってきました。
 昭和60(1985)年に戦後初めて策定された中長期ビジョンである『21世紀への港湾』では、成熟化により港湾整備に求められる要請が多様化・高度化したことを受けて、「物流・産業・生活に係る機能が調和した総合的な港湾空間の形成」を目指すこととされ、これを踏まえて、昭和62(1987)年に基本方針の抜本的な見直しを行いました。その後、平成7(1995)年に策定された『大交流時代を支える港湾』では、経済のグローバル化に合わせ、中枢・中核港湾を指定し、港湾の機能分担や拠点化等により効率的配置や投資の重点化を図ることとされ、これを踏まえて、平成8(1996)年に基本方針の抜本的な見直しを行いました。
 近年、世界経済の多極化や、我が国における本格的な人口減少、少子高齢化、生産年齢人口の減少、頻発化・激甚化する自然災害等、国内外の大きな社会情勢の変化の中で、港湾政策における国や港湾管理者、民間企業、地域団体等が連携し取り組むべき内容は大きく変化しています。
 こうした我が国が直面する課題・問題意識を踏まえ、国土交通省港湾局では、今後の港湾政策の基本的な方向性として2030年を見据えた新たな中長期ビジョンとして、「中長期政策-PORT2030-」を平成30年7月にとりまとめたところです。
 この「中長期政策」のとりまとめを機に、我が国を取り巻く新たな状況認識のもと、「中長期政策」の方向性や施策を踏まえつつ、約20年ぶりとなる基本方針の抜本的な見直しを行うこととしました。そして、交通政策審議会港湾分科会における5回にわたる審議や港湾管理者からの意見聴取、パブリックコメント等の手続きを経て、新たな時代を迎えた令和元年6月27日に新たな基本方針を告示しました(図1参照)。
3.新たな基本方針の「基本的な考え方」
 新たな基本方針では、はじめに「基本的な考え方」として、我が国が直面する課題・問題意識や物流・人流等を取り巻く情勢、それらへの対応の考え方等について整理しています。第Ⅰ~Ⅴ章の各章の内容は、全てこの「基本的な考え方」を踏まえて整理したものとなっています。
 以下、「基本的な考え方」からいくつかエッセンスを抜き出し、目的意識を紹介します。
 国内外の社会経済情勢の急激な変化や、頻発化・激甚化する自然災害による将来の不確実性がある中で、我が国の経済・国民生活を支えてきた港湾においては、新たな状況認識の下に、直面する個別の課題の解決に注力する従来の考え方から脱却し、その先の中長期的な発展や変化を見据えるとともに、世界的な空間スケールの視点に立った対応をする必要があります。
 我が国の港湾に物流、人流、空間形成等の観点から寄せられている多様な要請に対して、我が国の港湾は的確かつ柔軟に対応する必要があることから、以下のような対応の考え方を示しています。
●物流・人流については、我が国産業の国際競争力の強化と国民生活の質の向上を支える、効率的で安全性・信頼性が高く環境負荷の少ない輸送体系を構築するとともに、近年著しく発展している情報通信技術の活用のみならず、港湾に関するあらゆる情報を電子化し、その利活用を標準とする事業環境を形成するため、港湾関連データ連携基盤を構築し、港湾の完全電子化を推進する。更に、港湾以外の分野の情報ともデータ連携することにより「サイバーポート」を実現し、港湾の利便性・安全性・生産性を最大限高める。
●臨海部への国内外からの産業立地やクルーズ旅客をはじめとする観光客の来訪が地域の雇用及び所得を創出する等、港湾は、地域の活力を支え、個性ある地域づくりに資する限られた貴重な空間である。こうした認識の下、海に開かれ市街地に近接しているみなとの特性を活かして、物流・人流、産業活動・国民生活等を支える機能が調和して全体として高度な機能を発揮し、美しく、快適で、安全な港湾空間を形成する。あわせて、人々に精神的な安らぎや物質的な恵みをもたらす、豊かな自然を有する沿岸域の環境の保全を進め、港湾の環境を美しく健全な状態で将来世代に継承するように努める。
●大規模災害時に、港湾が被災地の復旧・復興、我が国の経済の維持に果たしてきた重要な役割を踏まえ、災害から国民の生命・財産を守り、社会経済活動を維持するとともに、観光客が安心して我が国を訪れることができるよう、経験したことがない災害に対しても柔軟に対応できる災害に強い港湾を実現し、我が国全体の防災力の強化に貢献する。
 そして、これらの取り組みを進めるに当たっては、我が国の財政が一段と厳しくなり、かつ、将来的に社会インフラの老朽化に伴う更新需要が増加することが確実視される中で、港湾間の連携や、既存ストックの有効活用、機能の集約化・複合化等による港湾空間の再編により、港湾の生産性向上に積極的に取り組む港湾への投資の重点化を図っていくという考え方を示しています。
4.新たな基本方針の構成
 今回の基本方針の抜本的な見直しに際して、基本方針が、審議会答申や港湾法改正を踏まえた部分的な追記・修正を数次にわたり行う中で、冗長的・重複的な記述が増え、港湾計画等の策定やその他の施策の指針となる考え方が認識しづらい状態となっているのではないかという問題意識がありました。
 このため、基本方針の内容を見直すに当たって、上述の「基本的な考え方」に沿って取り組むべき港湾政策のあり方が明確に伝えられるよう、文章の読みやすさや構成のわかりやすさについても配慮し、国が港湾管理者等に示す指針となる考え方が認識しやすいものとなるよう努めました。新たな基本方針の全体構成は図2のとおりです。
 例えば第Ⅰ章は、「基本的な考え方」を踏まえ、港湾政策の方向性について、「1 特に戦略的に取り組む事項」、「2 引き続き重点的に取り組む事項」、「3 時代の変化に対応するとともに生産性の高い港湾マネジメントの推進に向けて取り組む事項」に分けた上で、多様な港湾政策を網羅的に記載しています。第Ⅱ章は、第Ⅰ章で示した方向性を踏まえ、港湾政策ごとに港湾の配置、機能及び能力の観点から取り組むべき具体的な施策内容を示しました。
 この際、非常に細かい点ですが、第Ⅰ章と第Ⅱ章の柱立てを同じにしたり、箇条書き形式にしたりすることで、港湾政策の方向性と具体的な施策の対応関係が認識しやすくなり、港湾管理者が指針となる考え方をより認識した上で港湾計画の策定等を行えるよう心がけました。
 第Ⅲ~Ⅴ章も、開発保全航路及び緊急確保航路の開発等や、港湾及び開発保全航路の開発等の際の環境への配慮、港湾の開発等に際し特に考慮すべき事項(港湾相互間の連携、官民連携による港湾の効果的な利用、民間能力を活用した港湾の効率的な運営)について、我が国が直面する課題・問題意識等を踏まえ、改めて内容の整理をしました。
図2
5.おわりに
 今回の基本方針の抜本的な見直しに当たっては、国土交通省港湾局の中で、中堅・若手職員による検討チームを立ち上げて議論することから始まり、交通政策審議会港湾分科会における5回の審議や港湾管理者からの意見聴取、パブリックコメント等を経て進めてきました。その間、分科会の委員の方々や多様な港湾の関係者、国民の皆様等から多くの積極的なご意見を頂きましたことに感謝申し上げます。
 この基本方針を新たな指針として、我が国の港湾がそれぞれの地域の個性を活かしつつ、我が国経済・社会の発展の原動力として貢献できるよう、港湾施策の推進に取り組んでまいります。

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