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一般社団法人 日本埋立浚渫協会 国際部会
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 国土交通省港湾局主催の「航路の維持管理セミナー」(2018年12月20日)および「日アセアン港湾技術者会合」(12月21日)がカンボジアのプノンペンで開催された。一般社団法人日本埋立浚渫協会の国際部会はこれらに参加し、アセアン諸国に日本の港湾施工に関する技術を紹介した。あわせてシアヌークビル港の視察、国際協力機構(JICA)及び日本大使館への訪問、日系企業のODA無償工事の現場視察を実施し、海外事業の課題等について調査を行った。
1.概要
1-1調査日程及び参加者  調査日程を表-1、参加者一覧表を表-2に示す。
表-1 調査日程 表-2 参加者一覧表
1-2カンボジアの概要  1970年からベトナム戦争や内戦により経済が疲弊したが、91年の和平協定締結後、国連カンボジア暫定統治機構が2年間にわたり復興を支援。その後、同国政府は日本をはじめ各国の協力を得つつ国の復興・経済発展を図る取組みを進め、GDP成長率(2004~2007年)は10%以上を記録した。その後、世界同時不況の影響を受けたが、2011年以降は7%前後を維持している。
表-3 カンボジアの概要 図-1 カンボジア王国 位置図
2.航路の維持管理セミナー
 本セミナーは、航路・泊地の埋没対策に関する現状や最新の技術、取組みを共有することを目的としたもので、アセアン諸国の港湾技術者約80名が参加した(写真-1)。
 第一部では、九州大学の中川康之教授より「底泥による航路埋没の問題と現地調査の事例紹介」と題して研究発表があり、当協会からは国際部会専門委員の水流氏(五洋建設)より「我が国の浚渫技術の発展の経緯と将来展望」と題して発表が行われた(写真-2)。第二部では、当協会の国際部会を代表して4名が、カルシア改良土の埋立、浚渫関連技術、堆砂抑制技術およびICTの活用事例について発表が行われた(写真-3)。発表後、活発な質疑応答が交わされ、日本の港湾の施工技術への関心の高さがうかがえた。
表-4 航路の維持管理セミナーの議事次第 写真-1 セミナーの様子
写真-2
挨拶する種村首席国際調整官㊧、発表する九大中川教授㊥、水流氏㊨
写真-3 発表の様子
左から鈴木氏(司会)、村田氏、黒田氏、寺尾氏、金谷氏
3.日アセアン港湾技術者会合
 港湾技術者会合は、2003年10月に創設された「日アセアン交通連携」の枠組みの一環として設置され、3年毎に一つのテーマに関して研究が行われてきた。2017年度から「航路・泊地の埋没対策」がテーマとされ、「航路の維持管理ガイドライン」を策定することを目標としている。九州大学の中川教授、国際部会の水流専門委員をはじめとするアセアン諸国の港湾技術の専門家約30名が出席し、当協会から国際部会遠藤部会長、岡本副部会長、協会鈴木調査役がオブザーバーとして出席した(写真-4)。
 国土交通省港湾局が提示した航路の維持管理ガイドライン(案)について、河川による影響や浚渫後の戻り量などについて議論が展開された。また航路埋没対策に関する研究・調査結果が報告され、解析モデル、シミュレーションモデルなどに関する情報交換が行われた。
表-5 港湾技術者会合の議事次第 写真-4 港湾技術者会合の様子
4.JICA・大使館訪問
 JICA及び日本大使館を訪問し、対カンボジア支援の現状と今後の計画についてヒアリングした概要を以下に記す。
 カンボジア政府が「復興」から「経済成長」に舵を切ったことに伴い、我が国は、対カンボジア国別開発協力方針を「産業振興」、「生活の質の向上」、「ガバナンスの強化」と定め、基礎的なインフラ整備や保健、教育施設の整備・システム強化などを進めている。
 タイ、ベトナムとを結ぶ南部経済回廊の強化において国道1号線、5号線の改修を実施している。日本の無償資金協力で建設された「ネアックルン橋(つばさ橋)」に対するカンボジアの評価は高く、500リエル紙幣に日本国旗とともに描かれているほどである(写真-5)。今後は国境部も含めた整備を実施するとのことである。都市交通の整備においては無償資金協力でバス80台、信号100基を供与し、バス会社の運営や信号管制にも技術協力を行っている。プノンペン市内と空港を結ぶ新交通システムの建設計画や駐車場などの交通環境の整備、交通安全への意識向上にも注力していく予定である。
 シアヌークビル港の開発整備には、これまで日本のODAによる支援がなされてきた。新たな開発計画として、事業期間を2030年までとする短中期計画とそれ以降の長期計画が策定された(図-2)。現在、短中期計画のPhase1として、新コンテナターミナル建設の早期着工に向けて調整中である。またJICAは同港を運営するシアヌークビル港湾公社(PAS)に出資しており、経営にもコミットする日本の姿勢に対して、港湾事業者だけではなくカンボジア公共事業運輸省からも高く評価されている。
 一方でカンボジアへの中国進出は目覚しく、カンボジアの借款の半分は中国といわれている。プノンペンの建設現場で中国語が見られないものはないほどである。カンボジア政府と中国民間企業間で結ばれたBOT方式による高速道路建設の計画や、シアヌークビルにある中国の経済特別区の拡張工事が進められるなど、今後も中国による開発が予想される。
写真-5 500リエル紙幣 図-2 新コンテナターミナル開発プロジェクト
(出典:シアヌークビル港湾公社パンフレット)
5.日系企業ODA現場視察
 大林組が施工しているチュルイ・チョンバー橋(日本橋)改修工事の現場視察を行った(写真-6)。この橋は1961年に我が国からの資金協力により建設されたが内戦で爆破され、1992年に我が国の無償資金協力にて中央径間を含む改修が実施されて再び開通した。本工事の施工区間は971m(主橋部541m、取付橋部169m、取付道路部261m)であり、鋼橋の塗膜除去には環境に配慮したエコクリーンブラスト工法、構造強化のために鋼繊維補強コンクリート(SFRC)舗装を採用するなど日本の技術が活用されている。また品質確保のためにコンクリート打設を夜間に施工するなどの配慮をしている。表-6に大林組の辻本所長にヒアリングした事業環境について示す。
写真-6 現場視察状況 表-6 事業環境に関するヒアリング内容
6.シアヌークビル港視察
 シアヌークビル港にはプノンペンから国道4号線をバスで移動した。視察に先立ち、PASのTy Sakun局長、Chenda港総裁秘書、同港駐在の藪中JICA専門家と意見交換を行った。その後、陸側だけではなく、交通船に乗船して海上からも港湾施設、経済特別区を視察した(写真-7・8)。

写真-7 コンテナターミナル 写真-8 多目的ターミナルヤード
6-1シアヌークビル港の概要  同港は、タイ湾に面したカンボジア唯一の大水深海港である。PASは1998年に政府機関から独立、2017年にカンボジア証券取引所へ株式上場した。表-7に示すように1990年後半から日本のODAを活用したハード・ソフト両面からの支援が行われ、港湾関連施設の整備が進められてきた。コンテナターミナルは岸壁延長400m、水深11.0m。1999年~2009年にかけて五洋建設JVが施工した。シアヌークビル港のコンテナ取扱貨物量は国内の70%以上を占め、順調に増加して2011年以降の伸び率は約13%。主な取扱品は、衣料品、米、履物、石炭、燃油である。

表-7 シアヌークビル港における日本のODA実績
6-2多目的ターミナル  水深13.5m×延長330mと水深7.5m×延長220mの岸壁を有し、総面積は58,000㎡。コンテナ貨物以外の一般・バルク貨物の取扱能力向上のため、新岸壁の西側に多目的ターミナルが整備された。東洋建設JVが施工、2015年に着工、2018年6月に完成した。日本企業の技術力に対して高い評価を受けている。視察時には、コンクリート用と思われる細骨材(砂)や、建設資材の置き場としてヤードが使用されていた。

6-3新コンテナターミナル整備事業  既存コンテナターミナルの取扱能力が年間40万TEUに対して既に54万TEUを扱っているため、新コンテナターミナルの建設が計画されている。岸壁水深14.5m、延長350m、事業期間2018年~2023年、事業費235億円(新規円借款)である。現在、コンサルタントに日本工営が選定された。詳細設計期間は8~10ヶ月。今後のコンテナ取扱量の需要予測が大きく見込めるため、2022年の供用開始がPASの意向である。

6-4シアヌークビル経済特別区  同港に隣接する土地に経済特別区が整備され、大豊建設が施工、2012年に開所した。PASが運営している。総面積は70ha、販売面積は45haを有し、現在、日系企業3社が入居している。同港に近接・直結の立地であるアドバンテージを生かし、今後のカンボジア経済の発展と新コンテナターミナル建設の効果によって入居企業の増加が望まれる。
7.おわりに
 国際部会の海外視察は今回が初参加であった。タイトなスケジュールで、特にプノンペン-シアヌークビル間の所要時間は約6時間とハードな移動であった。もしも再訪の機会があれば、ゆっくりとアンコール・ワットを眺めようと思う。
(みらい建設工業株式会社 中島 吉近)

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