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国土交通省 東北地方整備局港湾空港部長 中島 洋
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はじめに
  東北港湾の復旧・復興にあたり、本誌読者の皆様方に様々な形でご協力・ご指導を頂いていることに改めて感謝を申し上げます。本誌では過去に発災時の対応や災害復旧工事の状況等が報告されていますので、重複を出来るだけ避けつつ、集中復興期間における東北港湾の復旧・復興の取り組みを振り返りつつ、復興の兆しが現れ始めた近況を報告します。
 東日本大震災(以下、大震災」)によって、東北管内では、北は八戸港から南は小名浜港まで9の国際拠点港湾・重要港湾と13の地方港湾(当時)で、一時的に港湾機能が全て麻痺する甚大な被害が発生しました。官民関係者が連携して航路啓開や応急復旧を行い、緊急物資輸送船舶の入港を可能としましたが、その後の港湾施設の本格復旧に先立ち、復旧する港湾施設の優先順位や施設間での工事工程等の調整、復興の観点から今後必要となる機能など港湾毎に「産業・物流復興プラン(以下、復旧復興方針)」がとりまとめられ公表されました。
 当局はこの復旧復興方針に沿って復旧工事を実施し、釜石港及び大船渡港湾口防波堤、相馬港沖防波堤の3防波堤を除いて、国有港湾施設の復旧を完了しました(写真−1)。大船渡港は2016(平成28)年度末、釜石港及び相馬港は2017(平成29)年度末までを完了目標に復旧工事中です(写真−2、図−1)。主要な外郭・水域・係留施設以外の港湾施設や防潮堤など海岸保全施設では、まだ復旧途上のものがあり、各港湾管理者・海岸管理者が鋭意復旧工事を実施しております。
写真−1 八戸港復旧完了式典の様子(2013年8月10日)
写真−2 湾口防波堤と防潮堤による多重防護(釜石港)
図−1 粘り強い防波堤整備(相馬港)
集中復興期間の取り組みを振り返って
 各港湾の復旧復興方針に示された工程は、絶対確実なものではなく不確定要素を含む努力目標的なものでしたが、一部施設で工程遅延はあったものの概ね予定通り復旧出来ました。その要因を私見も含めて述べれば、以下の点にあったと思います。協定に基づく迅速な現地調査や航路啓開及び防災エキスパート、TECFORCEやゴミ油回収船派遣等の初動対応、災害査定の増額変更、資機材や技術者・労務者が不足するなか、大型発注など入札契約手続きの緩和、スライド条項適用や復興係数導入、直轄ケーソンヤードや作業基地の存在、時限での定員増員と全国からの応援職員派遣、建設コンサルタントや港湾関係公益法人の業務支援、なかでも建設業者(大手元請企業、地元企業、全国からの下請企業や専門工事会社、資材業者等)の献身的な取り組みなど港湾関係者の総力戦で実現出来たと考えています。一方で、民間企業の専用港湾施設の復旧と比較すると必ずしも迅速と言えない部分もありました。災害査定や入札・契約手続きなど公共調達制度が異なることも影響している部分があり、非常災害時に使いやすい制度の充実が必要と感じています。
 港湾背後に立地する企業が相当の被災をしながら、復旧復興方針の公表を聞いて再建を決意したとの声も頂きました。新産業都市として昭和40年代から本格整備され、東北地域の経済を牽引している八戸、石巻、仙台及び小名浜の各港湾で港湾施設が復旧し、防潮堤等の海岸保全施設の整備が進捗する中、背後に立地する臨海工場の大部分が操業再開し、被災地の雇用・地域経済再生に大きく貢献しています(写真−3)。
写真−3 港湾背後の50社のうち48社が操業再開(石巻港)
港湾取扱貨物の回復状況
 港湾の回復状況を取扱貨物で見ると、被災4県の全体貨物量では2013(平成25)年で震災前の水準に回復しているように見えますが、品目別では、水産品の取扱いが震災前の7割など回復状況に差異があります。コンテナ貨物量では2015(平成27)年速報値で仙台塩釜港仙台港区、八戸港及び釜石港で過去最高を更新し、貨物量の増加に対応し航路も増加しています(表−1、写真−4)。
 これら貨物量の増加要因は、復旧資材である砂利・砂、セメント、住宅用建材の輸移入、発電所燃料用石炭やLNGの輸入、北米向けタイヤ等の製品輸出の増加であり、これら品目からも港湾が地域の復旧及び経済活動を下支えしていることがわかります(写真−5)
表-1 被災4県の港湾取扱貨物量
写真−4 新規コンテナ航路の第1船入港(仙台港区)
写真−5 復旧資材輸送拠点・作業基地の役割を果たす(宮古港)
東北港湾の強靱化に向けて
 大規模地震津波発生時にも緊急物資輸送対応など必要最小限の港湾機能を麻痺させることなく、また経済活動維持に必要な港湾機能を速やかに回復させるため、主要港湾毎に関係行政機関や関係業界団体・企業による協議会(以下、「各港協議会」)の場を活用して、港湾機能継続計画(略称「港湾BCP」)の策定を進めています。政府目標より1年間前倒しで、本年3月初旬に管内全ての主要港湾で策定を完了しました。
 また、大震災において太平洋沿岸港湾が被災した際に日本海沿岸港湾がバックアップ機能を果たしたことを踏まえ(写真−6)、広域かつ重大災害時に管内港湾が相互にバックアップすることで港湾機能を維持するとともに、優先度を考慮した港湾機能の回復を迅速に行えるよう、各港協議会の主要メンバーを構成員とする東北広域港湾防災対策協議会(座長:小野憲司京都大学防災研究所総合防災研究グループ社会防災研究部門特任教授)(略称「東北広域協議会」)の場を活用して、2015(平成27)年3月に東北広域港湾機能継続計画(略称「東北広域港湾BCP」)を策定しました。
 今後は、港湾BCPと東北広域港湾BCPに基づいて対応することとしています。またそれらが有効に機能するよう、建設会社のBCP策定を促す「災害時建設業事業継続力認定」の実施、港湾管理者、港湾関係業界団体との包括的災害協定締結を行うことで、東北港湾の強靱化に取り組んでいます(写真−7)。そして、協議会メンバーの理解促進と実効性を高めるための訓練等の活動を通して、災害対応力のスパイラルアップに努めて参ります(写真−8)。
写真-6 仙台塩釜港の代替として完成自動車を取り扱う(秋田港)
写真−7 東北広域港湾機能継続協議会
写真−8 地震津波総合防災訓練での航路啓(けい)開訓練(塩釜港区)
新たな「東北港湾ビジョン」の策定
 震災前の状態に戻すだけの復旧に留まらず、震災後に新たな港湾関連プロジェクトがいくつも動き始めたこと、さらに復興道路(三陸沿岸道路)・復興支援道路(宮古盛岡横断道路、東北横断自動車道釜石秋田線及び東北中央自動車道)の整備も始まるなど、社会経済情勢が大きく変り、前回ビジョンの前提が大きく変更したことから、震災後の東北地域で港湾の果たすべき役割と港湾の将来像について、有識者懇談会での意見も踏まえ、当局及び管内港湾管理者で構成するビジョン検討委員会において「東北港湾ビジョンー行動する東北!ACT構想ー」としてとりまとめ、2015(平成27)年3月に公表しました(図−2)。
 本ビジョンでは、太平洋と日本海の双方に面した地理的特性を活かし、物流の効率化と産業振興を進めるとともに、相互連携による災害対応力の強化や賑わい・交流の拡大を目指すこととしています。このため、太平洋と日本海の2軸(Twinaxis)の活性化(Active)と連携(Connective)の強化の頭文字を取って、「行動する東北!東北港湾ACT構想」をキャッチフレーズに、ビジョンの実現に向けて取り組んでいます。
 また、現在策定作業中の東北地域における国土づくりの将来像や地域戦略等を示す「東北圏広域地方計画」、その実現に必要な社会資本整備を示す「東北ブロックにおける社会資本整備重点計画」に、東北港湾ビジョンのエッセンスを反映しています。
図−2 東北港湾ビジョンの概要
復興・創生に向けた取り組み
 最後に、被災地以外の港湾も含めて東北管内港湾を取り巻く最近の特徴的な動向をご紹介します。まずはエネルギー関連プロジェクトですが、大震災による原子力発電所の停止により火力発電所、特に燃料が安価な石炭火力発電所がフル稼働するとともに新増設が計画・整備され、燃料用石炭の取扱量が増加しています。小名浜港は2011(平成23)年5月に国際バルク戦略港湾(石炭)の指定を受け、岸壁(ー18m)及び臨港道路(橋梁)等の整備を進めていることころです(写真−9)。このほか、東北管内臨海部各地で石炭火力発電及びバイオマス発電の計画・整備が進行中で、燃料用の石炭やヤシ殻等の輸入増加が見込まれています。
 一方、増加するLNG需要に対応し、八戸港ではLNG輸入及び移出基地が2015(平成27)年4月に、秋田港ではLNG移入基地が同年12月に稼働開始しています。さらに相馬港ではLNG輸入基地とともに、既設のパイプライン網に接続するパイプラインを整備中で、LNGの供給安定性と緊急時のセキュリティ確保が期待され、背後ではLNG発電所が計画されています。また、むつ小川原港、能代港及び秋田港の港湾区域内において洋上風力発電の導入計画が進められています。このほか、釜石港及び久慈港では海洋エネルギー開発の実証実験等が進められるなど、港湾の立地を活かしたエネルギー関連プロジェクトが展開しています。
 コンテナ物流では、前述した太平洋側3港のほか酒田港でも過去最高を更新中です。港湾の立地を活かし紙おむつ工場が新設・拡張され、中国等への輸出増加で航路もこの1年間で4便増加し現在は週7便ですが、工場拡張中で更なる増加が見込まれます(写真−10)。このように、港湾の立地を活かした工場や倉庫等の立地促進の支援にも取り組んでいます(写真−11)。
 全国的にクルーズ客船が増加するなか、東北管内でもクルーズ客船の寄港が少しずつ増加し、2015(平成27)年は外国船社18隻・日本船社47隻の計65隻が寄港しました。これらの乗船客はいわゆる爆買ではなく地域の歴史や文化、風景や食を楽しむ本来の観光が主体となっています(写真−12)。青森港以外はクルーズ専用ふ頭がなく、また客船ターミナルもないため、みなとオアシスを観光案内所兼物販施設としての活用に取り組んでいます(写真−13)。
 新たなフェリーが、岩手県宮古港と北海道室蘭港との間で、2018(平成30)年6月に運航開始予定です(写真−14)。ドライバー不足が懸念されるなか、復興道路・復興支援道路の整備によって東北各地及び首都圏とのアクセスが大幅に改善することで、物流はもちろん観光など交流面でも地域の活性化が期待されます。そのほか東北地域の主要産業である農林水産品及び食品を東北の港湾及び空港を活用して輸出促進する官民連携による取り組みを当局が東北農政局及び東北経済連合会とともに中心となって2015(平成27)年度から始めています(図−3)。
 港奥の水域において港湾工事の発生材を活用した人工干潟、アマモ場の造成や、防波堤整備に関連して環境共生型ブロックの実証実験による海域環境改善と賑わい創出にも、学識経験者、NPOや地域住民など関係者と連携しながら取り組んでいます(写真−15)。
 これから始まる復興・創生期間の5年間で、これらの取り組みをさらに加速し、生産性の高い高質な港湾サービスの提供に努めて、復興を実感出来る東北地域の実現を目指します。関係者の皆様方の引き続きのご協力とご指導をよろしくお願いします。
写真−9 国際バルク戦略港湾の整備(小名浜港)
写真−10 コンテナ貨物量が過去最高を更新中(酒田港)
写真−11 生産が増加している船体ブロック(久慈港)
写真−12 クルーズ客船の寄港再開(大船渡港)
写真−13 クルーズ客をみなとオアシスへ誘客するための多言語チラシ(秋田港)
写真−14 試験接岸するフェリー(宮古港)
図−3 東北農林水産品・食品の輸出促進の取り組み
写真−15 あおもり駅前ビーチプロジェクト(青森港)

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