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 日本埋立浚渫協会(埋浚協、鈴木行雄会長)は7月16日、2015年度港湾技術報告会を東京都千代田区のルポール麹町で開催しました。「海洋開発」と「安全・安心な国土形成」の2部で構成し、それぞれ基調講演と会員会社6社による技術発表が行われました。基調講演では吉田栄内閣官房総合海洋政策本部事務局内閣参事官が「わが国の海洋政策の現状について」、渡辺弘子氏(月の泉技術士事務所)が「東日本大震災からの復興を通じた資源循環型社会へのアプローチ」をテーマに講演。会場には鈴木行雄会長をはじめ、関係者約130人が参加し、講演者の話に熱心に耳を傾けていました。(日刊建設工業新聞社)
基調講演Ⅰ 「我が国の海洋政策の現状について」
内閣官房総合海洋政策本部事務局 内閣参事官 吉田 栄
内閣官房総合海洋政策本部事務局
内閣参事官  吉田 栄 氏
 「我が国の海洋政策の現状について」をテーマにお話をします。まず、わが国の海洋をめぐる状況ですが、日本の場合、国土面積は38万km2と狭いのですが、周辺に小さな島を領有しているため、領海と排他的経済水域の面積は合わせると447万km2で、国土面積の12倍になります。これは世界で第6位というランキングです。離島の数は6,847もあり、海岸の延長も世界第6位です。また、日本列島の周りにはメタンハイドレートや熱水鉱床、レアアース泥など海洋資源があり、それらを利用できれば日本は資源大国になることも夢ではありません。
【海洋基本計画】
 私が所属する内閣官房総合海洋政策本部は、内閣総理大臣が本部長を務め、関係する国務大臣で構成される、各省横断的な組織です。所掌事務は、海洋基本計画案の作成および実施の推進、関係行政機関の総合調整などです。海洋基本計画は平成19年に1期目ができ、現在は平成25年4月に閣議決定された第2期計画の期間中で、本年度はその3年目になります。この2期計画は4つの大きな柱があります。
 1番目が「海洋の開発及び利用と海洋環境の保全の調和」で、メタンハイドレートや熱水鉱床などの海洋資源の開発や風力発電事業の実施、さらには水産資源の開発及び利用です。2番目は「海洋の安全の確保」。周辺海域で広域的な常時監視体制を整えるということです。3番目は「科学的知見の充実」。4番目は「海洋産業の健全な発展」と続きます。こうしたテーマを今後5年間で国として実施していくのが海洋基本計画です。
【海洋の鉱物資源】
 海洋の鉱物資源の話をします。まず海底油田や海底ガス田ですが、日本の近海には有望なものは発見されておりません。次にメタンハイドレートですが、これはメタンが塊になったような状態のものです。メタンは普通気体ですが、水深500mよりも深い海底下では超高圧・極低温の状況下にあるため、固体になっています。減圧するとガスに変わるため、そこで初めて採取できます。日本の近海にも随分存在し、太平洋側は砂の中に細かいものが入り、日本海側は塊の状態で海底にあります。平成25年1月から3月にかけて愛知県沖で初の産出試験が行われ、世界で初めてメタンハイドレートを海底から産出しました。
 商業化するには長期にわたって安定的に、しかも大量のガスを産出させなければなりません。このため、第2次産出試験を来年度にも実施できるように準備を進めています。平成30年ころまでに基礎技術が確立できるよう研究を進めています。
 海底熱水鉱床は海底火山が噴火して出たマグマの中に溶けていた銅や鉛、亜鉛、レアメタルなどの熱水鉱床のことです。沖縄トラフおよび伊豆・小笠原海域の辺りにたくさん存在することが分かっています。採掘方法などを現在、研究開発中です。これ以外にコバルトリッチクラストがあります。これは熱水鉱床よりももっと深い1,000mとか2,000mに存在しますので、現在調査を進めています。
【海洋再生可能エネルギー】
 海洋エネルギーには波の力、潮流、海流、海洋温度差などがあります。これらの自然エネルギーを利用して、電力に変えていくのが海洋再生可能エネルギーです。日本は海に囲まれていますので、ポテンシャルはあります。ただ、波力や潮流を活用した再生エネルギーの商業化はできていません。商業化では唯一洋上風力発電だけが進んでいます。現在、研究段階のものが国内でいくつか建設されています。千葉県の銚子沖や福岡県の北九州沖では着床式の洋上風車を研究目的で動かしています。長崎県の五島沖は着床式ではなく、浮体式です。2MWの発電能力を持つ非常に大きな風車が浮かんでいます。福島県沖の洋上風力は経済産業省のプロジェクトとして浮体式で、現在建設中です。茨城県の鹿島港沖、酒田港の沖合で建設されているものはいずれも着床式です。
 海外では特にヨーロッパを中心として、毎年洋上風力発電施設の建設が進んでいます。イギリスが最も多く、デンマーク、オランダ、ベルギーがこれに続きます。これらの国に比べると、日本は少なく、取り組みが緒についたばかりという状況です。
 政府は今年5月に将来のエネルギーバランスを示した「エネルギーミックス」を発表しました。2030年度のエネルギーバランスとして、洋上風力発電は陸上風力と合わせて約1,000万kwの能力を持つとしています。発電量にすると若干違ってくるのですが、182億kwhということで、これは日本全体の1.7%という数字です。この数字はいま計画されている陸上風力や洋上風力がどの程度あるのかなどを調べ、実現性の低いモノはエイヤッと切って、合わせて1,000万kwと試算し、その案分の比率で陸上と洋上を918万対82万に割っています。そうすると、洋上風力は2030年に82万kw程度が期待されているということが言えます。もちろんそれ以上建設してはいけないというものではありません。
 風力1本の発電量がこれまで2,000kwが普通でしたが、これからは多分5,000kwとか6,000kwというものが整備されます。1カ所当たりのウィンドファームで言えば、20本程度の風車を作りますから、出力は10万kwぐらい確保できる。それが8カ所できれば80万kwですから、82万kwという数字は必ずしも無謀な数字ではありません。
【大陸棚の延長】
 最後に大陸棚の延長の話をします。大陸棚は大陸の周縁に分布するきわめて緩傾斜の海底で、平らな棚状の地形を指します。海岸線から12海里は領海である、これは自分のものだということができます。その先200海里が排他的経済水域で、独自の経済権益を持つことができます。もちろんその中にある大陸に存在する地下資源は、すべて日本のものだということができます。大陸棚の延長というのは、200海里を超えた部分に関しても、ある一定条件が整えば日本のものになり得るということです。
 日本は平成20年11月に大陸棚の地質データをたくさん集め、国連の大陸棚限界委員会に申請しました。平成24年4月に勧告があり、地質データなどを見ると、日本のものと言えるということで、昨年10月1日に新たに日本の大陸棚ということで、国内法を改めて整備し、政令を施行しました。これ以外の部分でも小笠原海域や南硫黄島海域で、関係国との調整を行っている海域があります。
 必ずしも日本の海洋政策を全部網羅的にお話するということはできませんでしたが、海洋の資源の問題、洋上のエネルギーということを中心に話をさせていただきました。
基調講演Ⅱ 東日本大震災からの復興を通じた資源循環型社会へのアプローチ
月の泉技術士事務所 渡辺 弘子
月の泉技術士事務所
渡辺 弘子 氏
 「東日本大震災からの復興を通じた資源循環型社会へのアプローチ」についてお話します。国連防災会議が3月に、仙台で「震災体験を未来の糧に」というテーマで行われました。国連防災会議は国際的な防災戦略について議論する国連主催の会議で、第1回は横浜、第2回は神戸、第3回が仙台で開催されました。仙台では「仙台防災枠組」と「仙台宣言」が採択されました。
 採択された内容をみますと、「よりよい復興による災害後の復旧・復興」、「学術界および科学研究機関との連携」、あるいは「企業、業界団体、民間金融機関との連携」などが挙げられ、その中の一つに「女性と若者のリーダーシップの促進」というのもありました。そうした内容も踏まえ、「あれから4年4ヵ月」、「震災がれきと微利用資源の有効活用」、さらには「資源循環型社会形成へのアプローチ」、番外編として「女性も輝く社会へのアプローチ」についてお話します。
【あれから4年4ヵ月】
 東日本大震災は非常に大きな震災でした。被害状況はみなさんもよくご存じだと思います。あれから4年4ヵ月が経過し、いま被災地のインフラの復旧状況はどうなっているのかという話をします。道路や海岸、河川、復興住宅などは、工事着手はしていますが、まだその1割5分から4割程度しか復旧していません。集中復興期間終了まで、あと8ヵ月です。当初の5年が集中復興期間で、その先の5年を復興期間とされていますが、あと8ヵ月でどの程度まで回復できるのか、前途としてはあまり明るくないなというイメージです。
【震災がれきと微利用資源の有効活用】
 被災地では大きな揺れと津波で震災がれきが大量に発生しました。震災がれきは岩手県では平年処理の11年分、宮城県では19年分が集まったと言われています。今まで震災がれきは埋め立てられるのが一般的でした。関東大震災のときには山下公園ができましたし、阪神大震災のときには大阪フェニックス計画が行われました。ただ、今回は再生利用が可能なものは極力再生利用する、埋め立てないという方向だということが環境省から震災3カ月後に発表されました。例えば、海岸平野部では防潮堤に使うといった提言です。
 今回の震災は津波被害が一つの特徴ですが、技術屋から見ると、このがれき処分の方法も、震災後の対応として大きな特徴だと言えます。
 現地処理が必要ながれきは大別すると3つあり、1つ目がコンクリートがれき、2つ目ががれきを焼いた焼却残渣、3つ目が津波の堆積土砂。日本埋立浚渫協会さんもコンクリート殻の骨材転用による資材不足の緩和を提唱されました。具体的にはコンクリート殻を用いたポストパックド方式によるリサイクルコンクリートを防波堤ブロックの一部に適用されました。このほかにも、コンクリート殻はいろいろなところに再利用されています。再生砕石として再利用した例、ケーソンの中詰め材として活用した例、ケーソンの被覆石として活用した例など、再生資源を利用することで、工事価格の低減にも寄与しました。また、ソイル・セパレータマルチ工法という津波堆積物の分別・分級・有効利用の技術で、良質な建設資材として有効利用もされています。
 そもそも土木・建設業界はがれきの有効利用に対する素地があり、今回被災した構造物を再資源化して再利用したわけです。現在、インフラの老朽化対策が喫緊の課題になっていますが、未利用資源、微利用資源の利活用もこれからの課題の一つです。老朽化した施設の更新などの際も、建設副産物が発生しますが、これを再資源化することができれば、いろいろな再利用の道が開けます。
 私は未利用資源のことを「微利用」資源と申し上げているのですが、まったくの未利用ではないというのが私の感覚です。ちょっとは使われているので「微利用」ではないかと思い、造語として使っています。なかでも微利用となっているのが、鉄鋼スラグ、石炭灰、シリカヒューム、下水汚泥、都市ごみ焼却灰、紙パルプ焼却材、水産系廃棄物などです。これらの再利用は研究の段階は過ぎていて、実際に使えるということにはなっていますが、さまざまな制約の中で、大量に使えるとところまで至っていません。
 なぜ、再利用が進まないのか。一つは生産や流通施設の不足が挙げられます。使いたいが使うところが近くにない。もう一つは材料の品質の問題です。再資源材料でも当然ある一定の品質を満たしたものでないと使えない。それ以外にも利用を阻む要因があります。未利用資源に携わっている人が多すぎて、皆さんが自分の手を離れたところで安心してしまって、そこから先は誰かが再資源化してくれるだろうと思っていることです。つまり再利用する道筋を一貫して管理ができていないのです。こうした状況を今後打破していかなければならないでしょう。
【資源循環型社会形成へのアプローチ】
 資源循環型社会を考えた時に、老朽化した施設を解体した際、そこから発生する建設副産物を資材化、資源化し、それを材料としてまた新たな施設の整備に活用するというサイクルが重要になります。ただ、現状では解体更新、資材化というところがまだ確立されていません。今回、震災がれきの利活用を業界の皆さんが進められ、多くの技術が開発されました。土木学会のコンクリートライブラリーにたくさんの例が載っています。今回開発した技術を活用して再資源化し、ある程度の品質を確保した新設の構造物に使っていくことが、これから先、私たちが取り組んでいかなければならないことの一つだと思います。
 そのためのアプローチですが、1つ目は流通、供給システムを確立すること。2つ目は品質に対する発想を転換すること。それから、自分の手を離れたらそこでオーケーというのではない、関係者全員の意識を共有化させることです。さらに、リサイクル材料への価格面の補助です。これは行政の方々にお願いしたいことです。
【番外編:女性も輝く社会へのアプローチ】
 最後に「女性も輝く社会へのアプローチ」という話をさせてもらいます。各業界で女性が占める割合を見ますと、国会議員で13%、自然科学系研究者いわゆる「リケジョ」で16%となっていますが、土木技術者はまだ2%です。土木技術者の女性集団の中の一つに「一般社団法人
 土木技術者女性の会」があります。設立は1983年、会員数は約190名。私はこの会の副会長を務めさせてもらっています。
 2014年4月に国交省が建設業で働く女性を5年間で2倍に増やす方針を打ち出し、女性技術者の現場への配置を入札条件にしたモデル事業も始めました。業界初の写真集や、カレンダーも出ました。日建連さんは「けんせつ小町」という愛称と、かわいらしいロゴをつくって太田国土交通大臣に報告されました。今年の8月には女性だけで構成されている工事チーム「なでしこ工事チーム」の第1号が登録されました。業界全体で私たち女性土木技術者に追い風を吹かせてくださるのはたいへん有難く思っています。
 そんな中で生意気かもしれませんが、私たちは労働人口とか建設業の人手不足を補うために働いているわけではありません。建設業界は私たちにとって働きがいのある非常に魅力的な職場なのです。ただ、女性が輝くためにはパートナーである男性も輝いてもらわないと楽しくありません。お互いに支え合っていきたいと思いますので、これからもご支援をお願いいたします。
技術報告1 ■各社が磨く海上施工技術■
大喫水浮体式洋上サブステーションの曳航について
東亜建設工業株式会社横浜支店鶴見白石工事事務所 小池 弘幸
 大喫水浮体式洋上サブステーションの曳航工事は、経済産業省からの委託事業として、商社、大学、メーカー等11社から成るコンソーシアムが進める浮体式ウィンドファーム実証研究事業の一部です。事業は浮体式洋上風力発電設備3基と浮体式洋上サブステーション(変電設備)を建設する。事業は2期に分かれ、第1期では2MWの風力発電設備1基、浮体式洋上サブステーション1基を建設。第2期では世界最大級の7MWと5MW風力発電設備2基を建設する。このうち、当社の受注は「浮体式洋上サブステーション曳航作業他関連工事」。洋上サブステーションの出渠作業が5km、南本牧沖での仮係留作業として一式、サブステーションの浮遊曳航として南本牧沖から福島沖までの380kmを曳航する。
 サブステーションは幅33.4m、高さは110mの大きさで、曳航時の喫水は32m。まず横浜の磯子のジャパンマリンユナイテッドで建造されたサブステーションを3,000トン吊り起重機船により出渠し、重査試験を行う南本牧沖のHR錨地まで吊曳航し仮係留。その後、東京湾を出て、福島沖まで曳航する。全行程を6日間として計画した。出渠時の有義波高が0.5m以下、曳航時は2.5m以下になる連続した6日間を予測し、気象予想などを調べ、作業日を設定した。7月10日に仮係留用台船の係留、翌11日に出渠と吊曳航作業、12日に重心査定検査を実施。関係諸官庁に曳航開始を連絡した後、7月13日8時に南本牧沖を出航。船長がGPSを使用して航行位置を確認しながら曳航し、福島沖の引き渡し海域には計画より3時間ほど早い7月15日の8時半に到着した。
自航式大型ポンプ浚渫船(CASSIOPEIAV)のシンガポール導入
五洋建株式会社土木本部船舶機械部 松藤 広行
 新たに建造したポンプ船「CASSIOPEIAV」の紹介と、シンガポールの工事への導入を報告する。本船の諸元は全長123m、全幅23m、喫水は5m。総トン数は5,903トン、排水トンは約8,600トン。対象浚渫深度は−6mから−32m。機関総出力は1万9,215kw。操船する乗組員および土木の工事を管理する職員も含め、47名が宿泊できる船内居室もある。シンガポールのASLシップヤードで建造し、2013年10月に進水、その後各艤装と試運転を行い、昨年引き渡しを受け、2014年10月から浚渫作業に入った。
 最大の特徴は自航式であり、活動範囲は世界マーケットをターゲットにしているため、遠洋区域で建造し、安全設備は各国際関係法令に則った構造で、クラスはビューローベリタス(BV)とした。ラダーポンプに2,800kwの浚渫ポンプ1台と、船内に浚渫ポンプ4,000kwを2台、合計1万800kwの浚渫ポンプを搭載。国内最大級のポンプ船と比較して約1.4倍の能力がある。高い岩盤浚渫能力もあり、アンカーブームも装備。自航時にスパッドを油圧で倒すことができ、外洋時でも重心を低くして安全に航海できる。操作系はすべて電子化されており、自動浚渫が可能である為、効率的な運転と高い施工精度を実現している。本船は現在、シンガポールで水深−23mの大規模コンテナターミナル建設工事に従事している。本船がこれらの特徴を活かし、国境を越えた港湾インフラの発展に寄与することを切に願う。
海洋インバースダムの研究
東洋建設株式会社鳴尾研究所地盤環境研究室 山崎 智弘
 海洋インバースダムは、出力変動の大きい再生可能エネルギーを含めた電力を安定的に供給するためのダムを海の中につくるというものです。その頭文字を取って「KID」と称します。KIDの目指す水力式発電ダムは、再生可能エネルギーや夜間の余剰電力により蓄電を行い、需要の大きな昼間に発電します。将来的には、縦横2kmずつの平面形状のダムを築造し、電力を宇宙経由で受送電する構想です。この実現に向けて一昨年に「海洋インバースダムの会」が発足し、昨年一般社団法人化して、「海洋インバースダム協会」として活動をしています。
 KIDの原理は、海洋に設けたダムの中に海水を落とした位置エネルギーで発電します。KIDは通常の揚水発電とは逆で、ダムが空の時が蓄電された状態になるので、インバースと名づけています。
 KIDの構造は、施工上の課題、経済性などを考慮して様々な形式が検討されています。例えば、一つ目はニューマチックケーソン工法により海底面を掘り込んで複数のケーソンをダムとして使う案。二つ目は離島間伝送のための単独の円筒ケーソン案。三つ目は内部を掘削した残土で外周を築堤、止水し、その中をダムにする人工島型案。四つ目は沈埋函のような容器を海底に設置し、落差の大きい状況で発電する沈埋円筒タンク貯水型案。五つ目は海底の下に山岳トンネル工法で貯水タンクを構築する案。六つ目が使われなくなったドライドックを有効利用する案など。これらの実現には、インバースダムそのもの建設技術や、揚水発電技術、エネルギー伝送システム技術など、これまでにない革新的・独創的な技術開発が求められています。
技術報告2 ■各社が磨く安全・安心のためのインフラ整備技術■
伸縮式ストラット工法による既設桟橋の補強事例報告
あおみ建設株式会社土木本部技術開発部 吉原 到
 弊社が開発した桟橋を耐震補強する伸縮式ストラット工法による既設桟橋の補強事例について説明します。本工法は低コストで、物流機能を低下させることなく、岸壁を供用しながら耐震補強できるもので、既設桟橋の耐震補強や延命化、増深化などを目的としています。鋼管杭をストラット部材で連結し、連結部材は伸縮構造で、既設桟橋に簡便に取り付けが可能です。部材長が調整できることから、事前に精密な杭間測量が不要となり、製作する部材もユニット化できます。設計や施工については、平成12年に沿岸技術研究センターから発行されております『格点式ストラット工法技術マニュアル』に準じています。
 伸縮式ストラット部材を具体的に説明すると、部材はストラット部と鞘管部の2種類の部材で構成。ストラット部は径の異なる鋼管2本からなり、径の細い管が太い管の中に入っています。この細い管を太い管から出し入れすることによって部材長が変化します。この機構により、部材全長を最短時には既設杭間より短くして、杭間まで移動し、その場で部材を伸長して杭間に取り付けが可能です。さらに、実際の現場で想定される既設鋼管杭間隔のバラツキにも対応するというメリットもあります。施工事例としては平成26年3月に受注した宮城県発注の仙台塩釜港の震災復旧工事、平成26年8月に受注した愛媛県松山市の離島にある岸壁耐震補強工事などがあります。今後は施工方法等のブラッシュアップや部材製作ユニットの削減等を検討し、コストダウンに努めていくつもりです。
粘り強い防波堤として、ニューマチックケーソンの堤頭函への適用
株式会社大本組土木本部技術部圧気技術課 上村 稔
 粘り強い、そして強靭な防波堤として、ニューマチックケーソン工法を堤頭函に適用する提案をします。ニューマチックケーソン工法で防波堤を施工すると、海底地盤へ根入れすることにより滑動・転倒に強い構造となるとともに、津波の来襲により懸念される浸透流による基礎マウンドの支持力低下や、基礎マウント洗掘による倒壊の心配がなくなります。すべての防波堤でニューマチックケーソンを適用することは現実的ではありませんが、津波による基礎マウンドや海底面の洗掘が懸念される堤頭函の場合、波力をニューマチックケーソンが受持ち、越波対策と港内反射波対策を消波ブロックが担う構造を検討すれば、堤体を小型化できると考えています。海底地盤に根入れをしますので滑動・転倒にも強く、地震に強い構造となります。
 また、海底が急激に深くなるような状況では、通常のケーソンでは基礎マウンドの安定勾配が確保できないため、それ以上の防波堤の延長はできない場合がありますが、ニューマチックケーソンを用いればさらなる延長が可能です。護岸や岸壁への適用性についても、レベル2地震の際、従来の重力式構造物では、条件によっては水平変位を1m以内に抑えることは困難な場合があります。そうした条件でもニューマチックケーソンを採用し、ある程度根入れを見込むことで、耐震強化施設として用いることも可能です。使い方はいろいろあると考えていますが、今後は比較設計を行うとともに、施工方法の検証や適用可能な港湾構造物への検討を行い、その優位性について、さらに検証していきます。
SGーWall工法 ー 既存岸壁、護岸の増深・耐震化技術 ー
みらい建設工業株式会社技術本部 技術開発室 足立 雅樹
 SG−Wall工法は既存岸壁の増深、耐震化に利用できる技術として研究開発をしています。同工法は高い耐震性を有する構造体を構築でき、浚渫土と建設残土を固化処理土として利用することで有効活用ができます。岸壁(護岸)法線をほとんど変更することなく耐震強化と増深を同時に図るというものです。このため、老朽化した矢板式岸壁(護岸)のリニューアルに有効です。護岸に適用した場合、矢板と固化処理土が一体化しているため、津波や高潮に伴う吸出しによる損傷も低減できます。陸上機械での施工も可能で、工事区域をコンパクトにできます。
 実際の施工はまだ行っていませんので、施工手順のイメージを説明します。矢板が健全な場合は、まずその背面を掘削し、控え杭・タイロッドを除去した上で上部工を打設。その後固化処理土の打設、ジオグリッドを敷く手順となります。老朽化している場合は、矢板が健全ではありませんので、まずその前面に鋼管杭を打ち、その後は先ほどと同じ手順です。コストは既存の矢板で改修する場合と比べて1割程度の減少が可能と試算しています。同工法は港湾空港技術研究所、地域地盤環境研究所、五洋建設、住友金属工業、東亜建設工業、東洋建設、三井化学産資、みらい建設工業で平成18年から21年まで共同研究を行ったものです。実用化に当たり、1次元地震応答解析から変形特性などを考慮した照査用震度の算定方法や、信頼性解析に基づいた部分係数などを検討していく必要があります。また固化処理土とジオグリッド間の摩擦抵抗の評価や、矢板に対して連結材が本当にうまく取り付けられるのかなどの施工性も検討していく必要があります。

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