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 国土交通省は8月28日、2015(平成27)年度予算の概算要求を発表した。一般会計の総額(国費)は前年度当初予算比15.7%増の6兆6,870億円で、うち港湾局関係予算概算要求額は同15.6%増の2,872億円となった。国際コンテナ戦略港湾政策の強化や南海トラフ地震対策での港湾海岸整備などを盛り込んでいる。(日刊建設工業新聞社)
1.概算要求の基本方針
 国土交通省の公共事業関係費は前年度当初予算比16.4%増の6兆120億円で、うち政府が設定した「新しい日本のための優先課題推進枠」には総額1兆3,440億円を要求している。大地震などに備えた防災・減災対策やインフラ老朽化対策を進めるとともに、成長戦略を実現するための新たな基盤整備も展開する。一般会計とは別枠の東日本大震災復興特別会計には同48.3%増の8,833億円(復旧・復興8,410億円、全国防災423億円)を計上した。予算編成段階で公共事業関係費など裁量的経費は一律10%削減されるものの、優先枠で要求基礎額(削減後の裁量的経費)の最大30%まで予算獲得が可能となるため、その限度額(前年度比17%増)の要求総額となっている。
 港湾局関係予算概算要求は、政府の「経済財政運営と改革の基本方針」、「日本再興戦略改訂2014」の実現に向け、①東日本大震災からの復興の加速②成長戦略の具体化③地方の創生、人口減少の克服④国民の安全・安心の確保の4分野の取り組みを強化する。
2.東日本大震災からの復興の加速
 要求額(国費)は復旧が613億円(前年度比71%増)、復興が297億円(7%増)。いずれも復興庁要求分となる。東日本大震災で被災した港湾施設のうち、相馬港では大型LNG船(10万DWT級)に対応した航路・泊地を整備する。火力発電への燃料供給拠点整備となる小名浜港では、滞船の解消や大型ばら積み船(12万DWT級)に対応できるように−18m岸壁を整備する。
3.成長戦略の具体化
(1)国際コンテナ戦略港湾政策の深化と加速
 要求額(国費)は港湾整備事業793億円(同32%増)、国際戦略港湾競争力強化対策事業等21億円。国際コンテナ戦略港湾政策推進委員会の最終とりまとめ(2014年1月)に基づき、「集貨」「創貨」「競争力強化」の3本柱の施策を総動員し、国際コンテナ戦略港湾政策を深化・加速させる。
 「集貨」では港湾運営会社が基幹航路の維持・拡大のために実施する事業に対し、港湾管理者と連携しつつ支援を行う。内航船などから外航船に積み替えるための貨物を優先的に扱う「国際コンテナ戦略港湾貨物積替機能強化実証事業」を行う。
 「創貨」では、国際コンテナ戦略港湾などの背後への物流施設などの企業集積を図るため、港湾物流の高度化を促進する地域を指定し、地域内で荷さばき施設または保管施設(倉庫)を整備する民間事業者に無利子貸付を行う。
 「競争力強化」では、国際コンテナ戦略港湾のコンテナターミナルを国が整備し、港湾運営会社に貸し付けることで、低廉な港湾利用コストを実現する。阪神港と京浜港でコンテナ船の大型化に対応できる国際標準仕様(水深、広さ)を有する大水深コンテナターミナルの整備を進めるとともに、特例港湾運営会社を経営統合し、広域的・一体的な運営を実現して港湾運営コストの削減を図る。臨港道路の整備などコンテナターミナルゲート前の渋滞の緩和策なども実施する。
(2)遠隔離島における活動拠点整備
 要求額(国費)は同6%増の127億円。日本近海にあるマンガンクラフトや海底熱水鉱床などの海洋資源の開発を支える活動拠点を整備することで、海洋資源の開発・利用を促進し、新たな産業創出を図る。沖ノ鳥島や南鳥島などで、船舶の係留や停泊、荷さばきなどが可能になる活動拠点(特定離島港湾施設)の整備を推進する。
(3)資源・エネルギー等の安定的かつ安価な輸入の実現に向けた効率的な海上輸送網の形成
 要求額(国費)は公共分が同29%増の82億円、非公共分8億円。ばら積み大型船を活用した共同輸送の促進に資する国際物流ターミナルの整備や、荷さばき施設などの整備に対する補助、税制特例措置、港湾管理者を通じた財政投融資の活用などを進める。
(4)港湾関連産業の海外展開支援
 新たに設立される海外交通・都市開発事業支援機構と連携しつつ、我が国の港湾関連産業(港湾物流・インフラ関連企業)の海外展開を支援する。
4.地方の創生、人口減少の克服
(1)地域経済を支える港湾機能の強化
 要求額(国費)は同23%増の127億円。地域経済を支える産業物流の効率化などを促進する港湾施設を整備することで、産業の立地・投資環境の向上を図り、地域の雇用と所得を維持・創出する。苫小牧港や北九州港、茨城港(常陸那珂港区)などで国際物流ターミナルや複合一貫輸送ターミナルなどを整備する。
 外航クルーズ船の寄港を促すため、那覇港などで旅客ターミナル整備などを行う。このほか、日本海側港湾の機能別拠点化に向けた整備や、離島交通の安定・安全を確保するため、名瀬港(奄美大島)や厳原港(対馬島)などで防波堤、岸壁などの整備を進める。
(2)循環型社会の創出に向けた環境の整備
 港湾整備により発生する浚渫土砂や内陸部での最終処分場の確保が困難な廃棄物を受け入れるため、事業の優先順位を踏まえ、東京港や北九州港などで海面処分場を計画的に整備する。導入が進む洋上風力発電の設置に伴う港湾機能への影響を把握し、港湾区域の管理・利用調整方策について検討する。
5.国民の安全・安心の確保
(1)大規模地震・津波に対する港湾の事前防災・減災対策の推進
 南海トラフ巨大地震や首都直下地震などの甚大な被害が想定される災害に対し、港湾施設の耐震・耐津波性を向上させる。コンビナート港湾の防災・減災を図るとともに、災害時の避難機能の確保、海上輸送網の維持への取り組み、港湾における国土強靱化を図る。
 コンビナート護岸などの維持管理状況を把握するとともに、無利子貸付制度などにより耐震改修を支援する。民有護岸等の耐震改修に対する固定資産税の特例措置を創設する。防波堤を津波に対して転倒しにくい「粘り強い構造」とするため、補強対策も行う。
 新規事業では、地域住民や港湾労働者などの協働による港湾防災拠点の形成を図るため、民間都市開発推進機構を通じた支援を行う。同機構は避難機能を備えた物流施設整備ですでに支援措置を行っている。
(2)津波・高潮・侵食被害に備えた港湾海岸の整備
 要求額(国費)は同17%増の114億円。津波・高潮などによる被害から背後地を防御するため、海岸保全施設を整備する。具体的には撫養港海岸(津波対策)や広島港海岸(津波・高潮対策)、和歌山下津港海岸(海岸堤防かさ上げ)、新潟港海岸(侵食対策)、指宿港海岸(侵食対策)などで工事を行う。水門・陸閘操作の自動化・遠隔化などを進める。
(3)港湾施設・海岸保全施設の老朽化対策の推進
 港湾の施設単位ごとに作成する維持管理計画や港湾単位で作成する予防保全計画に基づいて、施設の利用転換やスペックの見直しなど行い、計画的な老朽化対策を進める。施設の延命化や既存ストックを有効利用したふ頭機能の再編も行う。海岸保全施設の老朽化状況を把握するとともに、施設の長寿命化計画などを策定し、効率的な老朽化対策を実施する。エプロン下の空洞の危険度評価技術など維持管理技術の開発も進める。
2015(平成27)年度港湾局関係予算概算要求の規模
注1)国費は一般会計歳出国費である。
 2)数値は「推進枠」分を含む。カッコは「推進枠」分。
 3)上記計数には、内閣府分(沖縄関連)を含む。
 4)本表のほか、平成27年度要求額には以下がある。
  ①東日本大震災復興特別会計に計上する復旧・復興対策事業(港湾:287億円、災害:613億円)、全国防災対策事業(港湾:72億円、海岸:1億円)いずれも国費。
  ②受託工事費(港湾:122億円、海岸:1億円)いずれも国費。
  ③港湾関係起債事業の起債額(1,142億円)。
 5)合計は四捨五入の関係で一致しない場合がある。

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