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1.はじめに
写真ー1 釜石港津波襲来状況
 平成23年3月11日14時46分に発生した三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の地震は、高さ15mを超える津波を伴い、東日本太平洋岸を中心とした広い範囲において、死者・行方不明者約2万1千人、建物被害(全半壊、全半焼)約40万戸という未曾有の被害をもたらした(被害概要は平成25年3月総務省発表より)。
 これらの地震と大津波は、東北地方太平洋沿岸の港湾(青森県、岩手県、宮城県、福島県)のうち21港(地方港湾含む)に被害を与え、これらの港湾施設(公共)の被害は約3,405億円(直轄・補助災害復旧額ベース)にのぼった。
 被災の特徴として、東北北部の港湾(八戸港、釜石港、大船渡港等)では、湾口防波堤など第一線防波堤の倒壊や臨港道路の浸水といった「津波」による被害が大きく、東北南部の港湾(仙台塩釜港、相馬港、小名浜港等)では、岸壁沈下・倒壊や道路・用地の陥没といった「地震」による被害が大きかった。
 このような状況から、被災直後には港湾機能が完全に失われ、関東圏まで含めた広範囲にわたり生活物資が欠乏し、ガソリン等が逼迫する等、市民生活が脅かされ、産業・物流活動も停止を余儀なくされた。
 このため、市民生活を軌道に乗せ、また、産業・物流を正常化させるためにも、物流基盤である港湾施設の早急かつ計画的な復旧・復興が不可欠となった。
 本文では、港湾の被災状況から復旧・復興に向けた取り組みを紹介する。
2.被災港湾の復旧状況
写真ー2 八戸港北防波堤被災状況
(撮影:平成23年3月)
写真ー3 八戸港北防波堤完成状況
(撮影:平成25年7月)
写真ー4 湾口防波堤の被災状況(撮影:左・平成23年4月、右・平成23年3月)
1)港湾施設の復旧状況
 港湾施設の復旧にあたっては、国、港湾管理者、地元自治体及び港湾利用者などによる復興会議を立ち上げ、平成23年8月までに全ての被災港湾において地元関係者の指針とした「産業・物流復興プラン」を策定し、地元自治体の復興まちづくり計画と連携を図りながら港湾施設の復旧を進めている。
 被災した直轄港湾施設106施設のうち、甚大な被害を受けた釜石港及び大船渡港の湾口防波堤、相馬港沖防波堤以外は平成25年度中に復旧を完了することができた(写真ー2、写真ー3)。
(1)釜石港湾口防波堤の被災と復旧状況
 湾口防波堤は、南堤670mのうち、370m(ケーソン12函)、北堤990mのうち、870m(ケーソン37函)のケーソンが滑動・転倒、開口部も300m全てにわたって崩壊し、潜堤(ケーソン10函)が基礎マウンドから滑動した。
 この被災のメカニズムは、防波堤港外側と港内側の大きな水位差(約8.2m)による直接的な津波力によってケーソンが不安定となり滑動・転倒した(写真ー4)。
 このため、復旧にあたっては、設計津波を超える津波にも粘り強く抵抗する構造を採用している(図ー1)。
 湾口防波堤を早期復旧させるには、早くケーソン製作を行う必要があるが、釜石港では港内の作業基地以外に製作する場所がなく、復旧工事に使用する大量の生コン、石材の安定的確保が困難な状況であった。
 このため、釜石港以外での製作を条件に鋼殻とコンクリートを組み合わせたハイブリッドケーソン(以下、HBケーソンという。1函の延長100m)を一部採用し、千葉港、名古屋港、津松阪港で製作したものを釜石港まで海上運搬することとした。
 平成24年6月には、湾口防波堤復旧事業1函目となる南堤のHBケーソンの据付けを行い、平成26年3月末時点で
 製作したHBケーソン6函のうち4函据付けが完了しており、現在は、開口部、北堤の整備に重点を移している(写真ー5)。
図ー1 被災メカニズム(上)と粘り強い構造による対策例(下)
写真ー5 HBケーソンの海上運搬状況(撮影:平成25年9月)
写真−6 相馬港沖防波堤の被災状況(撮影:左・平成23年9月、右・平成23年3月)
写真−7 陸上ヤードでのケーソン製作状況(左)(撮影:平成25年9月)と大型起重機船によるケーソン吊上げ状況(右)(撮影:平成25年12月)
(2)相馬港沖防波堤の被災と復旧状況
 沖防波堤は、全長2,730m(181函)のうち約9割にあたる159函が基礎マウンドから滑落し、傾斜・転倒した。被災のメカニズムは、釜石港湾口防波堤同様に防波堤港外側と港内側の大きな水位差による直接的な津波力によってケーソンが不安定となり滑動・転倒したものである(写真ー6)。
 相馬港は、新地発電所の燃料となる石炭を輸入しており、深刻な電力不足に対応するため、石炭の安定的な受入が可能となるよう、港内静穏度の確保が急務となっていた。
 このため、沖防波堤の復旧にあたっては、大震災前に製作していたケーソンを活用した仮設防波堤を設置したり、被災した防波堤の沖側に仮消波ブロック堤を設置するなどの応急対応を先行して実施した。
 また、本格復旧工事も同時並行して進め、ケーソンについては、そのまま利用可能な4函に加え、浮上・再利用する32函と新たに製作する110函を据付する計画とした。再利用するケーソンは、上部工を撤去して、中詰材を取り出した後、内部の海水を排水・再浮上させ据付直した。新たに製作するケーソンについては、短期間に大量に製作する必要があることから、仮設の陸上製作ヤード(同時24函製作可能)とFD(フローティングドック)を利用して製作を行った。完成したケーソンは、順次、我が国に数隻しかない約4,000トンの吊り上げが可能な大型起重機船を使用して進水させている(写真ー7)。
 なお、復旧に際しては、津波に対して「粘り強い構造」となるよう、防波堤上部工の形状の工夫やコンクリートガラを再利用した防波堤背後の腹付等を行うこととした。
 平成26年3月末時点で、ケーソン60函、延長にして1,120mの据付が完了しており、平成26年度も引き続きケーソンの据付を促進させることとしている。
2)港湾物流の回復状況
 岸壁や防波堤など港湾施設の復旧に伴い、定期航路や港湾取扱貨物量も徐々に回復してきた。
 震災前に31あったコンテナ航路は、平成26年2月時点で29航路まで回復した。また、港湾取扱貨物量は復興需要や完成自動車の生産拡大などにより、震災前の状況に回復している(図ー2、図ー3)。
図ー2 被災した主要港湾における取扱貨物量(八戸港〜小名浜港)
図ー3 被災した主要港湾におけるコンテナ取扱量(八戸港〜小名浜港))
3.東北の復興を支える港湾の取り組み
図ー4 国際物流ターミナル整備事業の整備効果
1)物流効率化に向けて
(1)仙台塩釜港仙台港区中野地区国際物流ターミナル整備事業
 仙台塩釜港は、平成24年10月の港湾統合により、「東北を牽引する中核的国際拠点」として、さらなる発展が期待されており、仙台港区はコンテナ、自動車、RORO貨物を扱う「東北のユニット貨物拠点」として、また、塩釜港区は水産加工品等の「小型バルク貨物」に対応する役割を担い、石巻港区はパルプ・製紙及び木材・木製品製造業関連等の基幹産業を支えている。
 仙台港区中野地区は、完成自動車やRORO貨物、飼料などの貨物が混在して取り扱われており、非常に稠ちゅうみつ密な利用状況となっている。また、既存岸壁の水深がー12mと浅いため、大型貨物船は喫水調整(積込量制限)や時間調整をして満潮時に入港しており、非効率な輸送となっている(図ー4)。
 こうした状況下で、仙台港区では、さらに貨物量の増加が見込まれることから、平成23年度より中野地区にある船溜まりを埋め立て、新たに水深ー14mの大型岸壁を新設する国際物流ターミナル整備事業を推進している(図ー5)。
 岸壁の構造形式は、矢板式、ジャケット桟橋式及び桟橋式の三つの構造形式を比較検討した。建設場所は航路に面し船舶の往来が多く、急速な海上施工が求められたため、ジャケット構造を基本に詳細な検討を行い、最も経済的なアーク矢板ジャケット工法(ジャケットと一体的に整備する矢板により背後土圧に抵抗する工法)を採用した。
 岸壁の整備は、平成25年度までに取付部を含む岸壁延長300mのうち、約225mの本体部の杭打ちとジャケットの据付が完了した。
 平成26年度は、平成27年度の完成を目指し引き続き杭打ち及びジャケット据付と、アーク矢板の施工を行うこととしている(写真ー8)。
図ー5 整備位置図
写真ー8 ジャケット据付状況(撮影:平成26年2月)
図ー6 石炭の共同配船(2港寄り)イメージ図
図ー7 整備位置図
写真ー9 橋梁施工状況(撮影:平成26年2月)
(2)小名浜港東港地区国際物流ターミナル整備事業
 福島県は、沿岸地域に多くの火力発電所が立地しており、小名浜港はこれら発電所を含む周辺企業への石炭の供給拠点となっている。
 しかし、小名浜港には近年の大型化した船舶の満水喫水に対応した岸壁がないため、入港する多くの石炭輸送船が積載量を減らす喫水調整を行っており、非効率な輸送実態となっている。また、小名浜港には水深ー13m以上の岸壁が3バースあるが、大型貨物船の入港がこれらの岸壁に集中するため、石炭輸送船の滞船が常態化している。
 さらに、東京電力は新たに石炭火力発電設備2基を2020年代初頭に運転開始することを検討しており、小名浜港における石炭取扱量の増加が見込まれる。
 また、小名浜港では、常磐共同火力㈱を主体として東日本地域に立地する電力会社や小名浜港背後の石炭ユーザーなどが連携し、2港寄り(図ー6)や2次輸送といった大型輸送船を活用した効率的な石炭輸送が計画されており、このため、これらに対応可能な港湾施設を整備するものである。
 なお、平成25年12月19日、小名浜港は国内初の特定貨物輸入拠点(石炭)に指定されており、さらにエネルギー供給拠点としての重要性が高まるものと期待されている。
 岸壁の建設場所は、東港地区の埋立地であり、これまで、主に港湾管理者である福島県が土地造成等を、国が臨港道路(橋梁)等の建設を先行して事業を進めている(図ー7)。
 東港地区人工島と3号ふ頭地区を連絡する臨港道路は、道路延長1,805m(うち橋梁部927m)であり、航路部の橋梁の構造形式は、経済性・デザイン性に優れた「PCエクストラドーズド橋」を採用している(写真ー9)。
 平成26年度は、引き続き橋梁の施工を行うとともに、岸壁本体部の施工に着手する予定である。
2)港湾の災害対応力の強化に向けて
(1)災害時の港湾機能継続計画(港湾BCP)の策定
図ー8 仙台塩釜港のコンテナ貨物量(輸移出)
 東日本大震災では、地震・津波の被害により八戸港から鹿島港に至る太平洋側港湾の機能が一時全面停止した。
 図ー8は、東日本大震災後に被災企業に対してアンケートを実施し、仙台塩釜港においてコンテナ貨物(輸移出)の潜在的な輸送需要と仙台塩釜港の利用状況を示したものである。発災後4ヵ月で震災前の需要に回復したものの、仙台塩釜港の復旧が遅れ、物流のボトルネックとなったことが分かる。これにより代替港湾利用による輸送を余儀なくされ、輸送コスト増大によって企業及び地域経済に大きな損失をもたらすこととなった。
 平成24年、第183回通常国会に提出された「港湾法の一部を改正する法律案」の審議では、衆議院国土交通委員会において、「関係者の協働により港湾事業継続計画の策定を全国的に進め、非常災害時における港湾物流機能の維持と早期復旧が図られるよう最善をつくす」旨の附帯決議がなされている。
 こうしたことを踏まえ、東北地方の港湾の災害対応力を強化するため、大規模災害が発生した場合においても、港湾関係者が迅速かつ臨機応変に対応するための行動基準となる「港湾機能継続計画(港湾BCP)」を定めることとし、平成26年度中の策定に向け各港湾において「港湾機能継続協議会」を立ち上げ、検討を進めている。また、大規模災害発生時の東北港湾の連携のあり方を示す「東北広域港湾機能継続計画(仮称)」も定めることとしている。
4.終わりに
 東日本大震災から3年が経ち、被災地は復旧から復興へと新たな段階に進んでいる。港湾においても関係者のご協力により、一部防波堤を除き直轄港湾施設については復旧が完了した。
 これからの東北地域の復興には、港湾の果たすべき役割が重要であると認識しており、港湾機能の向上に向けた様々な施策を着実に実施して参りたい。

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