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東日本大震災からの復旧・復興や、中央道笹子トンネル事故で必要性が顕在化したインフラ施設の老朽化対策を背景に、公共事業費が増額される見通しとなった。自公政権への交代に伴い予算編成作業が遅れたため、2013年度予算案はまだ国会審議中だが、2012年度補正予算が成立し、国土交通省は1兆8,144億円の公共事業費(国費ベース)を確保した。2013年度予算案と合わせた「15カ月予算」として考えると、公共事業費は6兆3,035億円(同)となる見込みだ。年度をまたいだ金額なので一概には比較できないものの、2012年度の同省公共事業費が3兆9,346億円であったことを考えると、久しぶりに一定規模の公共事業費が確保されることになりそうだ。 |
●「15カ月予算」で一定規模の港湾予算を確保 |
成立が遅れているものの、国交省の2013年度予算案は、国費ベースで前年度比12%増の5兆0,743億円、うち公共事業関係費は14%増の4兆4,891億円となった。地域自主戦略交付金の廃止や、東日本大震災復興特別会計への繰入額計上という特殊要因があり、これを除けばそれぞれ前年度並みになるという。ただ、2月26日に成立した2012年度補正予算で、国交省は国費ベースで総額1兆8,801億円、うち公共事業費1兆8,144億円を確保している。「15カ月予算」として考えれば、全体で6兆9,544億円、うち公共事業費は6兆3,035億円となる計算だ(表−1)。 2013年度の港湾局関係予算案を見ると、前年度比5.9%減の1,911億円(国費ベース)となった(表−2)。このうち公共事業の大半を占める港湾整備事業は4.8%減の1,732億円、港湾海岸事業は22.6%減の106億円(受託工事費を含む)。一見、かなりの減額になるようだが、同様に2012年度補正予算と合わせた「15カ月予算」で考えると、港湾整備事業は2,299億円、港湾海岸整備事業は148億円となる。2012年度予算と比べた場合、それぞれ26%増、8%増となる見通しだ。 2013年度の港湾局関係予算案は、政府の緊急経済対策(1月11日閣議決定)に沿って、「復興・防災対策」「成長による富の創出」「暮らしの安心・地域活性化」に重点配分された。 「復興・防災対策」では、東日本大震災からの復興の加速化を最優先させるとともに、笹子トンネル事故で顕在化したインフラ老朽化問題を踏まえ、港湾施設の老朽化対策に力を入れる。 東日本大震災からの復興の加速化では、復旧に517億円(前年度比304%増)、復興に159億円(5%増)を計上した。湾港防波堤や海岸保全施設ついて、政府はおおむね5年以内に復旧を行う方針を掲げていて、小名浜港(福島県)や仙台塩釜港(宮城県)で経済復興の礎となる岸壁・防波堤などの整備や、がれき・堆積土砂を受け入れるための廃棄物の埋立護岸の整備を行う。 港湾施設の老朽化対策に向けては、2012年度補正予算で緊急点検費用を確保済みだ。国有港湾施設約4,000施設のうち、特に著しく老朽化が進行している約540施設を対象に緊急点検を実施。本年6月を目標に点検結果をまとめ、更新・修繕の必要があると判断された場合には、具体的な対策の検討に着手する。 また、老朽化に伴い機能不全に陥っていることが明らかな港湾施設については、具体的な対策を推進。併せて岸壁や航路、防波堤などの港湾施設単位で策定する維持管理計画を踏まえ、各港湾ごとに保全計画を新たに策定し、ライフサイクルコストの低減を目指す。 |
●横浜港や徳島小松島港で事前防災・減災対策 |
事前防災・減災対策では、被災時に経済活動への影響を最小限に抑えるため、海上輸送ネットワークの核となる横浜港(神奈川県)や徳島小松島港(徳島県)で耐震強化岸壁などを整備し、耐震・耐津波性能を向上させる。国際海上コンテナターミナルやエネルギー輸入基地で、岸壁、荷さばき地、臨港道路の耐震化・液状化対策を進めるとともに、広域的な復旧・復興体制および物流の代替性を確保する。 改正された「港湾の施設の技術上の基準」を踏まえ、津波に対し転倒しにくい「粘り強い構造」の防波堤の整備も、御前崎港(静岡県)や須崎港(高知県)で進める(図−1)。また、日本経済をけん引する三大湾で総合的な地震・津波対策を進めるため、港湾法を改正した上で事前防災、減災対策を進める制度を創設する方針だ。 一方、港湾海岸事業では、防災・減災対策として背後に産業と人口が集積する撫む養や港海岸(徳島県)、別府港海岸(大分県)で津波・高潮対策などを講じる。南海トラフ地震に伴う津波や、台風、地球温暖化による海面上昇、施設の老朽化などに備える。 また、東日本大震災で被災地の消防団員が命を落とした教訓を踏まえ、海岸堤防などの耐震対策や、水門などの自動化・遠隔操作化を推進する制度を創設する。新たに設置された「防災・安全交付金」を活用し、自治体が緊急的に耐震対策、水門などの自動化・遠隔操作化を図ることができる体制を整える。 |
●海外展開支援へミャンマー・ティワラ港でトップセールス |
「成長による富の創出」では、国際コンテナ戦略港湾に選定された阪神港、京浜港の機能強化を推進する。国費ベースで400億円(12%増)の予算を確保。ハブ機能を強化するため、大型コンテナ船に対応できる大水深岸壁などを整備するとともに、フィーダー網を強化して貨物を集約するなどの取り組みを強化。国際基幹航路の日本への寄港の維持・拡大を図る。 我が国の港湾関連産業の海外展開支援にも力を入れる。民主化などを契機に輸出入貨物の増加が見込まれるミャンマーのティワラ港などで政府によるトップセールスやセミナーを実施。我が国の港湾物流、インフラ関連企業の海外展開を支援する。 「暮らしの安心・地域活性化」では、国際戦略バルク港湾の機能強化を図るなどし、国全体として効率的・安定的な資源エネルギーの海上輸送ネットワークの形成を目指す。資源・エネルギーなどの広域的・効率的な海上輸送ネットワーク拠点とするため、大型輸送船に対応した国際物流ターミナルを整備する。 また、ふ頭運営者が行う企業間連携の促進に向けた施設整備に対する支援措置を講じる。税制改正により、国の補助を受けて取得した荷さばき施設に関して、固定資産税や都市計画税を減額するなどの措置を講じる考えだ。港湾法の改正が前提となる。 (日刊建設工業新聞社)
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