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 港湾・物流分野の海外展開を具体化させるための官民組織「海外港湾物流プロジェクト協議会」(座長・小林栄三伊藤忠商事会長)の動きが加速してきた。7月末の同協議会の会合で、国・地域ごとに設置された5つのワーキンググループ(WG)がこれまでの成果を報告。日本が案件形成に積極的に関与したベトナム・ラックフェン港プロジェクトの手続き状況などの説明も行われた。日本の優れた制度や技術・ノウハウをパッケージで海外に売り込む事業は、今後どうなっていくのか。同協議会の動きをまとめた。
(日刊建設工業新聞社)
5つのWGがこれまでの活動を報告
 海外港湾物流プロジェクト協議会には、国土交通省に加え民間75社、関係13機関が参加している。外務、財務、経済産業の3省もオブザーバーとして名を連ね、官民共同で港湾・物流分野の海外展開を検討している。2010年11月5日に初会合が開かれ、3回目の会合が今年7月25日に都内で開催された。
 3回目の会合では「インドネシアWG」「メコン・ベトナムWG」「インドWG」「ミャンマーWG」「制度WG」の5つのWGが2011年度の活動を中心にこれまでの活動状況や成果を報告した。
注目されるインドネシア北カリバル開発
 インドネシアWGには、三井造船や日本工営など57の民間企業が参加。2011年7月29日の第3回WG会合では、来日中のインドネシア運輸省海運総局のケマル港湾浚渫局長を招き、意見交換などを行った。インドネシア側は「国家港湾マスタープラン」や「北カリバル開発、チラマヤ開発プロジェクト」などを、日本側は社団法人日本埋立浚渫協会が港湾建設プロジェクトの早期実施に資する「大規模急速施工技術」や「大水深港整備の工法」などをそれぞれ説明。両国の参加者からは詳細な内容を求める意見が出された。
 インドネシア国有港湾運営会社(ペリンド2)のリノ社長ら幹部を招いた講演会も2011年10月18日に都内で開催された。今年2月29日にはインドネシア・ジャカルタで「日インドネシア海事・海保・港湾合同セミナー」が開かれ、日本側から民間企業や日本大使館、国土交通省など各省庁の担当者ら110人が参加。港湾分野でのパッケージ支援を視野に入れ、国土交通省港湾局が「港湾開発にかかる日本の技術全般と港湾管理運営」、社団法人日本埋立浚渫協会がインドネシア側のニーズに合わせた「日本の港湾建設技術」、株式会社国際協力銀行(JBIC)が自行の「投資メニューやPPPのプロジェクトファイナンス」、独立行政法人国際協力機構(JICA)が「ODA資金供与メニューや今後の開発への協力」をテーマにそれぞれプレゼンテーションした。
ベトナムはラックフェン港などPPP案件が増加
 メコン・ベトナムWGには伊藤忠商事やオリエンタルコンサルタンツなど59の民間企業が参加している。2011年9月20日に都内で開いた第3回WG会合では、ベトナム運輸省海運総局(ビナマリン)のティエン副総理を招き、「ベトナム港湾の開発マスタープラン」「PPPのフレームワーク」「今後の貨物需要や個別プロジェクト(ラックフェン港、カイメップ・チーバイ港、バンフォン港)の計画」などの説明を受けた。この中で「今後ベトナムでラックフェンをはじめとするPPP案件が増加していくため、日本にも協力を願いたい」などの発言があったという。
 インドWGは新日本製鐵や五洋建設など45の民間企業が参加。2011年8月10日に都内で開いた第2回WG会合や、同9月29日にインド・ムンバイで開いた日印港湾セミナーの内容などが報告された。このうち、日印港湾セミナーは日本企業のPRとインド側のニーズを把握する目的で開かれたもので、日本側から民間企業の担当者33人、国土交通省の担当者7人が参加し、ビジネスマッチングなどが行われた。
港湾分野のパッケージ支援を視野に
関心の高いミャンマーのティラワ港開発
 ミャンマーWGは51の民間企業が参加している。今年3月15日に都内で開催されたミャンマー運輸省港湾公社(MPA)講演会では、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)の担当者が最近のミャンマー情勢と日系企業動向を説明するとともに、MPAのチョウ・タン・マウン総裁らがミャンマーの港湾開発の現状と将来計画を報告した。6月4日にはWGの初会合が都内で開かれ、国土交通省港湾局がティラワ港開発に関するアクションプランやミャンマーの全国港湾調査の実施内容などを説明した。
 制度WGには民間企業27社が登録。今年3月15日の初会合では国土交通省港湾局が海外プロジェクトに参加する際に提出が求められることがある工事実績証明書の申請手続きの簡素化や、わが国の港湾関連技術基準類の海外展開の状況などを説明した。
4件の海外港湾案件形成調査を報告
 協議会では今後の各WGのスケジュールなども報告された。インドネシアWGは第4回会合を8月に開催、第5回会合を2013年1月に開く予定。メコン・ベトナムWGは10月に第4回会合と日越港湾セミナーを開催。インドWGも10月に第3回会合を開く。ミャンマーWGは8月に第2回会合と交通運輸技術連携セミナー(ミャンマー)を、11月に第3回会合をそれぞれ開く。制度WGは11月に第2回会合、本年度末に第3回会合を行う予定。
 また、協議会では2011年度に実施したインドネシアのチラマヤ新港開発推進調査、同国の新バリクパパン港の石炭ターミナル計画、メコン流域フィーダー輸送網形成計画、インドタミルナド州のエンノール港ROROターミナルプロジェクトの海外港湾案件形成調査結果も紹介された。
表−1 報告された海外港湾案件形成調査の内容
カイメップチーバイ航路浚渫工事(ベトナム)
2020年度までに海外受注高2兆円に
産業立地一体型の開発プロに注目
 一般社団法人海外建設協会の調査によると、2011年度の日本の建設企業の海外建設受注実績は件数1,820件、金額1兆3,503億円となっている。受注額を地域別にみると、アジア9,863億円、北米1,243億円、中東1,164億円。分野別では港湾・海岸分野は全体のわずか約4%しかない。
 8月に閣議決定された社会資本整備重点計画では、この海外受注額を2020年度までに2兆円にする目標を掲げている。これを達成するには、アジア各国で進みつつある港湾整備プロジェクトを確実に受注につなげていく必要がある。また、港湾施設だけでなく、港湾背後の産業用地も含めた一体型の開発を提案していくことも重要になる。日本政府はODAを活用して、港湾とその背後地のインフラ整備も一体的に行う「産業立地一体型港湾の開発プロジェクト」を各国に提案しており、今後こうしたプロジェクトの具体化が期待されている。国土交通省のある担当者は「港湾背後地の産業用地に日本企業が進出することで、国内企業の海外立地を促進にさせる。一方で、相手国には雇用創出や税収拡大のメリットがある」とし、産業立地一体型港湾の開発プロジェクトに積極的に取り組む姿勢を示している。「点」から「面」の開発に展開することで、インフラ整備の受注チャンスは確実に広がっていくだろう。
 日本の優れたインフラ技術をパッケージで海外に輸出するためには、官民がこれまで以上に連携を強化する必要がある。日本のインフラは官民が切磋琢磨して築き上げたもので、そのノウハウは官民双方にあるからだ。官民がお互い得意な分野を持ち寄り、足りない部分を補う。情報を共有化する。こうした新たな官民の連携が海外プロジェクトの受注拡大につながっていくことは間違いない。
表−2 港湾・海岸分野の受注実績推移
●産業立地一体型港湾の開発プロジェクトモデル●
動き出した海外の港湾プロジェクト
ラックフェン港プロジェクトにおける官民分担(案)
入札手続きに入ったラックフェン港開発(ベトナム)
航路浚渫や防波護岸などを順次発注

 ラックフェン港はベトナム北部で計画されている国際港建設事業。日越両国による初のPPPプロジェクトで、2016年の開港に向けて総額約1,600億円を投じてコンテナターミナルなどを新設する。ベトナム政府は6月28日に埋立・地盤改良・護岸整備(パッケージ6)の入札を公示。STEP(本邦技術活用条件)案件となるため、独立行政法人国際協力機構(JICA)が日本企業向けの事前事業説明会を同日に開き、今秋以降に施工者が決定する見通し。
 同事業では岸壁や防波堤、アクセス道路整備などに円借款、コンテナターミナルの上物に民間投資を導入。民間投資については、商船三井、日本郵船、伊藤忠商事の日系3社と現地政府系ターミナル運営会社ビナラインズの合弁会社が行う。公共投資部分は昨年に第1期円借款(港湾建設119.2億円、道路・橋梁90.7億円)が調印されている。
 初弾工事のパッケージ6以外でも、防波護岸と防砂堤を整備するパッケージ10を今年10月に、航路浚渫その1のパッケージ8と、同その2のパッケージ9を2013年1月に入札手続きをそれぞれ開始する予定。アクセス道路は総延長15.6kmのうち、海上部の約5.4km区間が連絡橋となる。資格審査を実施中で、入札開始は今秋以降になる。


位置図
F/S調査が進むティラワ港開発(ミャンマー)
後背地に経済特区構想

 ティラワ港はミャンマー・ヤンゴン市街地から16km下流に位置する河川港で、同国の輸出入貨物の9割以上を扱う主要港湾。全37バースのうち、10バースを供用、17バースを建設中、残り10バースが整備未定となっている。土地の制約上、港湾の拡張は難しく、水深が浅いため、大型船は潮待ちが必要となっている。
 独立行政法人国際協力機構(JICA)が今年5月にティラワ港のフィジビリティースタディ(F/S)調査を告示。11月には調査の中間報告を行う予定だ。このティラワ港の後背地は経済特区(SEZ)に指定される計画があり、経済産業省がミャンマー政府にティラワSEZ開発計画を提案している。SEZのF/S調査結果で問題がなければ、2013年1月以降にSEZ開発権の契約などが締結される見通しだ。


タイ・ミャンマーの発展に資するダウェイ深海港開発(ミャンマー)
日本を入れた3カ国で開発に向けた対話の枠組みを設置

 ダウェイ深海港は、メコン南部経済回廊の出口として、モーラミャイン港の南約350kmの位置に建設予定の大水深港。タイ・バンコクから陸路で同港に荷物を搬送すると、マラッカ海峡を経由せずに、インドや中東欧州に送ることが出来るため、タイ・ミャンマー両国の経済発展に資する有望なプロジェクトとして、両国政府が2008年5月に同地域の開発に関する覚書を締結した。その後、ダウェイ深海港や工業団地(経済特区・SEZ指定250km2)、タイへの道路・鉄道などの開発について、タイの大手ゼネコン、イタルタイ(ITD)社がミャンマー港湾公社(MPA)とMOU(了解覚書)締結の上、開発権を獲得している。しかし、開発プロジェクトはITD社の資金不足により停滞している。
 2012年7月10日、こうした状況を踏まえ、日泰緬の3カ国は日メコン外相会議でダウェイ開発などに関連する3カ国間の対話の枠組みを立ち上げることで合意。今後、開発内容などを3カ国で協議していく方針だ。


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