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 昨年9月の鳩山政権発足後、初の本格的な予算となる2010年度予算が3月24日、成立した。子ども手当の創設や高校の実質無償化などの新たな施策を実施するものの、財源不足などから公共事業費は大幅に削減された。港湾関係予算(国費ベース)は1818億円で、前年度比29.2%減。災害復旧事業等は前年度同額が確保されたが、港湾事業、海岸事業はともに二桁の減少となった。ただ、国土交通省では国際コンテナ戦略港湾や国際バルク戦略港湾などの検討を現在進めており、2011年度以降、一定の港湾施設に集中的な投資が行われる可能性もある。

港湾関係予算は前年度比29.2%減
 2010年度予算は、公共事業費があらゆる分野で削減された。政府全体の公共事業関係費は前年度比18%減の5兆7731億円。自民党政権時代にも前年度比10%を超える削減があったが、これほど大きな削減率となるは初めて。特に2009年度の補正予算分を含めた公共事業費(9.4兆円)と比べると、実に39%減の大幅マイナスとなり、建設業だけでなく、地域経済への影響も懸念される。
 国土交通省所管分の公共事業関係費は同15%減の4兆8585億円。既存の補助金を統合した2.2兆円規模の社会資本整備総合交付金(仮称)を創設した。この交付金が別枠計上してあるため、道路や港湾、河川など各項目ごとの削減幅はさらに大きくなった。
 港湾関係予算は国費ベースで1818億円。単純な前年度比較では29.2%減となるが、2010年度予算の各事項ごとの経費に合わせて2009年度予算を組み替えた数値と比較すると14.4%減。内訳は港湾整備事業1655億円(組み替え予算による前年度比12.2%減)、港湾海岸事業102億円(1.8%減)、災害復旧事業等13億円(ゼロ)、非公共48億円(60%減)。


次世代高規格コンテナターミナルを整備
 港湾整備事業の重点事項は「国際競争力の強化」「地域の活性化」「安全・安心の確保」「地球環境問題への対応」の4項目。このうち、国際競争力の強化では▽スーパー中枢港湾プロジェクトの充実・深化▽産業物流の高度化の推進などの施策を展開する。
 スーパー中枢港湾は現在、京浜港・伊勢湾・阪神港の3地区が指定され、これらの港湾コストの低減(2002年度比約3割低減)やリードタイムの一日程度への短縮に向け、官民の関係者が一丸となった施策を展開中だ。具体的には2010年度までに、アジアの主要港をしのぐコスト・サービス水準を実現するため、次世代高規格コンテナターミナルの整備を進める。国内外をつなぎシームレス物流網を形成するため、港湾サービスの24時間化など、コンテナ物流の総合的集中改革プログラムも引き続き推進する。
 一方、産業物流の高度化に向けた社会実験を新たに開始する。穀物、鉄鋼石、石炭の3品目を対象に、拠点港湾に立地する企業と共同して、大型船での一括大量輸送による効率的な物流が可能かどうか検証するとともに、品目別に拠点港湾のターミナル機能や施設配置などの計画、複数港連携のための輸送計画などを示した基本計画を策定する。
 地域の活性化では、離島交通の安定化に向け、船舶の就航率の向上、大型化に対応できる離島ターミナルの整備を西郷港などで実施する。また、地域経済を支え、地域の雇用を創出するため、港湾背後地の企業立地に適切に対応した多目的国際ターミナルの整備を水島港や苫小牧港などで行う。海外からの観光の玄関口となる旅客ターミナルなどの整備も博多港、那覇港などで実施する。

港湾施設の耐震化を引き続き推進
 安全・安心の確保では▽港湾施設の耐震強化の推進▽基幹的広域防災拠点の整備および運用体制の強化▽航路の保全・管理の強化▽既存施設の計画的かつ適切な維持管理の推進▽遠隔離島における活動拠点の整備などを行う。
 このうち、耐震岸壁の整備は2006年に策定した「耐震強化岸壁緊急整備プログラム」に基づいて整備を進める。2010年度末に耐震強化岸壁整備率70%(プログラム策定時は55%)の目標達成を目指し、徳島小松島港や清水港などで引き続き耐震化事業を展開する。ちなみに耐震岸壁は2010年1月末で、全国配置計画336バースのうち216バース(整備率64%)で整備を行っている。
 航路の保全・管理では、国際・国内海上輸送ネットワークの根幹となる開発保全航路を対象に、航路の拡幅・増深、航路標識の設置、必要水深の維持などを行う。具体的には東京湾口航路や関門航路などで引き続き事業を進める。八重山諸島の地域住民や来訪者の船舶航行の安全を確保するため、竹富南航路の指定範囲の追加や航路整備などの事業化に向けた検証調査に新規着手する。


既存の国有港湾施設を対象に長寿命化計画を策定
 既存の港湾施設については、将来の改良・更新コストの抑制を図るため、施設の長寿命化などに関する計画を策定し、事後的な維持管理から予防保全的な維持管理への転換を進める。2012年度までの時限措置として、既存の国有港湾施設を対象に長寿命化計画を策定する。
 地球環境問題への対応では、複合一貫輸送ターミナルの整備などを進め、陸上輸送から海上輸送へのモーダルシフトを促進させるほか、リサイクルポートプロジェクトや海面処分場の計画的な整備などを進める。リサイクルポートは総合静脈物流拠点港と呼ばれるもので、港湾区域内に循環資源を取り扱う岸壁や循環資源取扱支援施設、民間リサイクル施設などを整備するもの。現在、全国で21港が国から指定を受け、酒田港や姫川港などで整備が進められている。一方、港湾海岸事業は津波・高潮対策に67億円(前年度比63%減)、浸食対策に29億円(同38%減)、補助率差額等に7億円(同50%減)をそれぞれ充てる。高潮対策は津松阪港海岸、高松港海岸など、津波対策は和歌山下津港海岸、撫養港海岸などで整備を進める。浸食対策は冬季波浪などの高波で浸食被害を受けている新潟港海岸、福井港海岸などで事業を進める。
(日刊建設工業新聞社)
EEZ・大陸棚の保全新法を国会提出へ
「特定離島」指定し港湾施設整備、南鳥島などに岸壁を建設
 政府は「排他的経済水域及び大陸棚の保全及び利用の促進のための低潮線の保全及び拠点施設の整備等に関する法律」案を2月9日に閣議決定し、国会に提出した。同法律は、排他的経済水域(EEZ)や大陸棚の保全・利用を促進させるもので、EEZの限界線の基準となる「低潮線」の保全や、拠点施設整備の基本計画の策定などを行い、EEZや大陸棚の利用・保全を図るのが目的。国土交通省は2010年度予算に「遠隔離島における活動拠点の整備」をすでに盛り込んでおり、南鳥島の港湾施設の整備や沖ノ鳥島の現地測量調査などに新たに着手する。
 日本は、国土面積の約11倍の広さとなるEEZを抱えており、天然資源の開発や海洋環境の保全といった面から、EEZや離島などの維持・保全が緊急の課題となっている。前原誠司国土交通相も「離島の維持保全に関する政策が不可欠」として、新法を制定する方針を表明していた。
 新法は低潮線を含めた周辺水域を「低潮線保全区域」として指定し、同区域内での海底掘削などを規制する。低潮線などの保全に支障を及ぼすおそれのある掘削などを行う場合は国土交通大臣の許可が必要になる。
 また、EEZの利用上、重要な役割を担っている離島を「特定離島」として指定する。指定された特定離島では国土交通大臣が必要な港湾の施設を「特定離島港湾施設」として建設、改良、管理する。同施設周辺の一定水域に対しては占用等の規制も行う。
 現段階では、南鳥島と沖ノ鳥島などが対象として想定されている。2010年度予算では南鳥島における港湾施設の現地着工費等として7億円を計上。南鳥島では6年程度かけて大型船舶が停泊可能な岸壁などが整備される計画で、2010年度は現地調査、設計を行い、工事に一部着手する。沖ノ鳥島は係留施設等の港湾施設整備に向けた現地測量調査と概略設計に入る。新法は、内閣官房総合海洋政策本部事務局と国土交通省の共管となる。
港湾整備の「選択と集中」が本格化
2011年度予算に国際コンテナ戦略港湾と国際バルク戦略港湾の予算を反映
 鳩山政権が進める港湾整備の基本的な方向性は、「国際競争力の強化」と「安全・安心の確保」の二点の強化だ。前原誠司国土交通相も港湾整備の「選択と集中」を進め、
 「日本の港湾のアジアにおける国際競争力を強化するとともに、我が国の輸出入量のほぼすべてを依存している外航海運の競争力強化および安定輸送を推進し、経済・国民生活の基盤を確保する」方針を打ち出している。

(日刊建設工業新聞社)

新規事業を展開する重点港湾40港を選定
 2010年度国土交通省関係予算の港湾整備事業をみても、各事業の性格によって予算配分にメリハリが見られる。事業費はほとんどの項目で前年度実績を下回っているが、その減少幅は国際競争力の向上につながる「スーパー中枢港湾プロジェクト」(単純な前年度比6%減)や、安全・安心の確保につながる「港湾における地震災害への対応力強化」(同24%減)は小さく、「一般内貿ターミナル整備」(51%減)や「小規模施設の整備」(62%減)は大きくなっている。
 さらに、港湾の国際競争力を早期に高めるため、現在の重要港湾103港から重点港湾(仮称)約40港を今後選定し、新規の直轄港湾整備事業の着手対象を原則、その重点港湾に限定するつもりだ。
 重点港湾(仮称)は地域拠点性や貨物取扱量実績によって絞り込みを行い、港湾管理者などからの意見聴取を経た上で、決定する。限られた予算を薄く広く配分するのではなく、一定の港湾に戦略的に配分することで、アジアの中で港湾の国際競争力を向上させていく考えだ。

3カ所のスーパー中枢港湾を1〜2カ所に
 港湾整備の「選択と集中」を徹底させるため、港湾に関する検討会も設けられている。昨年12月に国土交通省の成長戦略会議の下に設置された「国際コンテナ戦略港湾検討委員会」と「国際バルク戦略港湾検討委員会」の二つの検討会だ。すでにコンテナ委員会は2月中旬に、国際コンテナ戦略港湾の「あるべき姿」や「選定基準」を策定。選定基準に沿って国際コンテナ戦略港湾の公募(3月現在)を現在行っている。
 国際コンテナ戦略港湾は、スーパー中枢港湾3カ所を1〜2カ所に絞り込んで投資を集中させ、2020年度までに東アジアの主要港として世界に選択される港湾を目指すというもの。選定は貨物量や物理的条件による「基礎評価」と、国際コンテナ戦略港湾に求められる「目標・施策の優位性評価」の2段階で評価。港湾管理者らから計画書の提出を求め、プレゼンテーションなどを行った上で、6月ころに決定する見込み。
 応募対象はスーパー中枢港湾と、スーパー中枢港湾と同程度の貨物量・サービス水準を実現し得る港湾の港湾管理者、埠頭公社。スーパー中枢港湾は京浜港(東京港・横浜港)、伊勢湾(名古屋港・四日市港)、阪神港(神戸港・大阪港)の3湾6港で現在整備中だが、6港が単独でもチームでも応募できる。

2月1日に開催された
国際バルク戦略港湾検討委員会の様子
自治体と地元経済界らが協議会を設置し優位性をPR
 基礎評価は2015年時点の貨物量と、大規模岸壁を効率的に整備するための物理的条件などが審査される。一方、優位性評価は「国際コンテナ戦略港湾のあるべき姿」に盛り込まれた各項目の実現可能性が審査される。
 具体的には▽コンテナ埠頭の公設民営化やターミナルの一体運営化によるターミナルコストの低減▽内航フィーダー網の強化▽ターミナルゲート・オープンの24時間化▽コンテナ船の大型化に対応した港湾整備▽民の視点による戦略的港湾経営の実現などの可能性について、目標・位置付け、実現のための方策、実現のための体制の観点から審査する。すでに応募可能な港湾を抱える自治体などは、地元経済界などと協議会を組織し、各港の優位性などのアピールを進めている。

バルク戦略港湾は穀物、鉄鉱石、石炭の3品目が対象
 一方、国際バルク戦略港湾はバルク(ばら積み)貨物向け産業港湾を絞り込んで集中投資する港湾を選定する。対象となる品目は穀物、鉄鉱石、石炭の3品目で、これらの品目を運ぶ船舶の入港を行う港湾をバルク港湾とする。現在、各品目ごとに国際バルク貨物の輸入企業などにヒアリングを行っており、選定基準などを早急に作成し、早ければ4月ころにも公募を開始する。
 国土交通省では、選定された国際コンテナ戦略港湾と国際バルク戦略港湾について、2011年度予算から予算的な措置を行い、集中的な投資を進める。



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