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 国土交通省は平成17年度以降、談合事件等を契機として指名競争入札から一般競争入札への適用拡大を中心とした入札・契約制度改革を進めてきた。一般競争入札は、競争性、公平性、透明性の面でメリットがあるものの、低入札工事の増加や不良不適格業者の参入などにより、公共工事の品質の低下をもたらす懸念も指摘されている。このため、国交省は総合評価方式の導入をはじめ、各種の施策を展開してきた。平成18年5月には「国土交通省直轄事業の建設生産システムにおける発注者責任に関する懇談会」を設置し、発注者責任の観点から建設生産システムのあり方や諸課題への対応方針についての検討を進めている。同懇談会の検討状況などを踏まえつつ、現在進めている港湾関係事業での公共調達改革の取り組みについて紹介する。

増え続ける低入札案件への対策
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図−1 港湾空港関係工事の落札率推移
◆落札率の推移(港湾空港関係、8地方整備局)
 図−1は、国土交通省の港湾空港関係工事の平均落札率の推移を示したものだ。一般競争入札の拡大とともに落札率は急速に低下。平成14〜16年度の落札率は95%前後で推移していたものの、平成17年度には92.6%、平成18年度89.3%、平成19年度89.4%、平成20年度88.9%と、過度な価格競争が続いており、工事の品質低下の恐れが一段と深刻になっている。
 このため、国交省は総合評価落札方式の積極的な活用、特に極端な低入札工事が頻発したことから、平成18年12月には入札時に工事の施工体制を審査する施工体制確認型総合評価落札方式の導入を中心とした緊急公共工事品質確保対策を行った。施工体制確認型総合評価方式は評価項目に施工体制評価点を新設し、低入札価格調査制度の調査基準価格を応札額が下回った場合、施工体制評価点をゼロとするものだ。また、調査基準価格を下回った応札者のうち、極端な低価格の応札者に対し、事実上の失格となる「特別重点調査制度」も設けた。
 国交省ではさらに、昨年4月と今年4月に低入札価格調査制度の調査基準価格の引き上げを実施。2段階にわたって調査基準価格を引き上げることで、ダンピング受注の排除を徹底した。しかしながら、こうした取り組みを行っても依然として調査基準価格付近での落札が多発し、工事品質の低下が懸念されており、より効果的な取り組みを求める声が業界関係者から上がっている。

新しい公共調達システムの構築
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図−2 公共調達改革への取り組み
 国交省は、これからの公共調達システムの構築に当たり、「価格と品質が総合的に優れたサービスを調達することを念頭に、良い仕事をした企業が評価され、その後の受注機会の拡大に繋がるなど、企業の実績や努力が報われるような好循環の流れが形成されるよう配慮したシステムの構築」を掲げている。
 図−2は、国交省港湾局が新しい港湾関係事業の建設生産システムの川上から川下に至る流れを概念的に示したものだ。全体のプロセスとしては、調査設計から工事の実施、そして維持管理という段階があり、その各段階の中においても、たとえば工事段階では競争参加の資格審査、入札・契約を経て落札者が決定し、工事が施工され、工事検査を受ける。そして、その評価結果である工事成績がそれ以降の資格審査、入札・契約に反映される。このような好循環な流れが形成されることを目指している。
 こうした公共調達を含めた建設生産システムを形成することで、良質な企業が活躍できるフィールドを拡大していく方針だ。

施工プロセス検査・出来高部分払いの導入
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図−3 プロジェクトX2009の体系
 国交省港湾局はさらに、工事の品質確保を図るための新たなシステム構築に向け、「施工プロセス検査」や「出来高部分払い」などを導入した試行工事(通称「プロジェクトX」)を平成19年度から進めている。
 プロジェクトXの狙いは図−3に示すとおり三項目となっている。一つ目は各施工プロセスごとに段階検査を行うことによる「品質確保」、二つ目は出来高に応じて支払いを行うことによる請負者の「キャッシュフローの改善」、三つ目はとかく発注者優位といわれる発注者、受注者間(元請、下請間)における「双務性の向上」だ。
 国交省港湾局はこれを実現するための手段として、平成19年度に出来高部分払いと施工プロセスチェックなどを試行。翌年度にはこれらの施策に加え、総価契約単価合意方式や三者連絡会などを追加。さらに、本年度は以下のような施策を総合的に試行する。これらの取り組みを行うことにより価格と品質が総合的に優れたサービスの調達を目指している。各施策の内容は次の通り。

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図−4 プロジェクトX2009の流れ
(1)入札工事説明会
 対象工事の設計思想、現場条件、技術提案で求める項目の趣旨等を説明し、双務性の向上を図る。
(2)見積参考資料の入札前開示
 発注者側の積算の考え方、扱い数量等の情報を開示し、説明責任の向上を図る。
(3)総価契約単価合意
 総価で契約するとともに、個別工種について諸経費込みの単価で事前に合意しておき、迅速な支払いに備える。
(4)施工プロセス検査
 図−4に示すように、品質監視員が施工期間全体にわたり工事の施工状況、材料確認等の施工プロセスを日々確認するとともに、主任検査職員が約1ヵ月ごとに給付のための出来高確認等を目的とした段階検査を行い、最後に総括検査職員が引き取りのための完成検査を実施する。
(5)出来高部分払い
 各段階検査を経て出来高の9割を上限に速やかに支払いを行う。
(6)クイックレスポンス
 工事実施に伴う協議、承諾事項等について速やかに事務処理を行う。
(7)書類30%オフ
 段階検査における必要書類を簡素化し、検査業務にかかる負担を軽減する。
(8)三者連絡会
 発注者、受注者(元請、下請)が一堂に会し、試行工事の趣旨、実施方法等の確認を行うことにより目的意識の共有化を図る。
(9)下請評価
 優良な下請企業を評価するとともに、その評価が将来の入札・契約に反映されるようなシステム作りに努める。

さまざまな課題に今後どう対応するのか
 価格と品質が総合的に優れた公共調達システムを構築するために試行を行ってきたプロジェクトXは本年度に3年目を迎えた。国交省港湾局が調べた試行結果アンケートでは「検査回数の増加により書類作成の負担が増加した」、「工期の短い工事での適用は避けてほしい」などの否定的な意見がある反面、「資金繰りに余裕ができた」などの肯定的な意見も多数寄せられている。本年度は従来よりも多くの施策を試行し、試行適用案件も大幅に増やしており、これらの結果を十分に検証し、それを次年度以降にフィードバックしていくことが重要になるだろう。
 一方、国交省全体としての公共調達システムの検討については、これまでの「建設生産システムにおける発注者責任に関する懇談会」から、それを引き継ぐ形で今年7月に設置された「国土交通省直轄事業における公共事業の品質確保の促進に関する懇談会」で、検討が進められることになった。主要課題としては、技術ダンピングの防止など総合評価落札方式の改善や、設計変更の円滑化、次期の競争参加資格審査に向けた見直しなどがテーマに上げられている。
 国交省港湾局でも、これらの議論を踏まえつつ、今後さらにプロジェクトXに磨きをかけ、当初の目標に掲げた「品質確保」「キャッシュフローの改善」「双務性の向上」が達成されるようブラッシュアップしていく方針だ。
(日刊建設工業新聞社)

請負業者のキャッシュフローを改善
出来高部分払い・総価契約単価合意方式の仕組み
 公共調達のあり方が変わりつつある。入札契約方式は価格と価格以外の要素(技術提案など)で落札者を決定する総合評価方式一般競争入札が主流となっている。こうした落札者決定の仕組みだけでなく、「施工プロセスを通じた検査方式」、「出来高部分払い方式」、「総価契約単価合意方式」などの取り組みも加速している。
 国土交通省港湾局は、これらの施策を同一工事で実施する「プロジェクトX」を、2009年度に97件の工事で試行する。港湾局が進める出来高部分払いなどの仕組みをまとめた。

■ 試行工事件数は97件 ■
表1
2009年度「プロジェクトX」の対象工事
  • 長期期間の工事(180日以上)
  • 期間が短くても不可視部分の確認が重要な工事
  • 1事務所で複数件実施
港湾工事種別         (件数)
港湾土木 78
港湾しゅんせつ
港湾鋼構造物
空港等土木
空港等舗装
一般土木
合計 97
 国土交通省港湾局は、公共工事の品質確保や受発注者間の双務性の向上、請負業者のキャッシュフローの改善を目的に、2007年度から出来高部分払いなどを柱とした試行工事を進めている。通称「プロジェクトX」と呼ばれるもので、2007年度は10件程度の工事を対象に施工プロセスチェックと段階検査、出来高部分払いを試行した。
 2008年度にはこの取り組みをさらに拡大。設計変更の円滑化を目指し「総価契約単価合意方式」の実施、発注者と元請業者及び下請業者間で試行の趣旨・目的及び段階検査・出来高部分払いの実施方法等の確認や情報の共有を行う「三者連絡会」の実施なども含めた試行工事を53件実施した。2009年度はこれまでの施策に加え、▽入札工事説明会▽見積参考資料の入札前開示▽下請業者の評価▽書類削減(30%オフ)▽クイックレスポンスの各施策も同時に行う。試行件数は97件を予定している=表1=。

■ 部分払い額は請負金額の7割 ■
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図1 出来高部分払いのイメージ
 各施策のうち、特に注目されるのが出来高部分払いの取り組みだ。出来高部分払いは請負業者の請求を受け、工事の出来高に応じて出来高額を部分払いする。請負代金額の2割をまず前払い金として請負業者に支払い、その後の工事の進み具合(出来高)を検査・確認しながら、部分払いを行う。部分払い額は前払い金(請負金の2割)と、完成後に精算される請負代金額(出来高の1割)を除いた請負代金額の7割分の支払いとなる=図1=
 港湾局では部分払いを円滑に行うため、2008年度から総価契約単価合意方式を採用している。同方式は契約そのものは従来と同じ総価契約とするが、受・発注者が事前に各工種の単価を合意し、部分払いの際にその合意された単価をもとに支払金額を決める。単価の協議及び合意は契約日から14日以内としている。

■ 諸経費込みの単価を合意 ■
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図2 標準出来高確認指針
 単価合意の対象となる各工種の単価は「諸経費込みの単価」として、直接工事費および共通仮設費(積上げ分)に、率計上されている経費(イメージアップ経費、現場管理費、一般管理費等)を費用案分し、合算した額として算出する。諸経費込みの単価を合意する項目および単位は、発注時の工事数量総括表が基本となるが、各工種ごとの支払い合意単価項目及び単位等は「標準出来高確認指針(案)」を参考に合意する。
 合意する諸経費込みの単価の目安は、発注者の積算での諸経費込みの単価に落札率をかけた金額のプラスマイナス10%程度を限度とする。数量の増減および新工種の追加など変更が生じた場合は、従来積算で算出した発注者側の諸経費込みの単価に落札率をかけた単価をもとに再度、単価協議・合意を行う。
 「標準出来高確認指針(案)」は出来高確認を現場の実態に即して、簡便に行うことを目的に作成され、合意する項目や単位等について標準的に示している。
 細工種(細別)の単価項目を設定し、合意された単価項目ごとに出来高確認のための単位や項目内容、確認手段及び確認資料などを明示。例えば、ポンプ浚渫工では、ポンプ浚渫と排砂管設備があり、合意する項目及び単価はポンプ浚渫も排砂管設備も浚渫土量の「m3」当たり単価として設定し、浚渫土量の確認手段は深浅測量(3測線程度)またはレッドによる測深での現地確認、確認資料は出来形管理等(出来形管理表、出来形管理図、出来形進捗図など)による資料での確認とされている=図2=。こうした内容はすべて受・発注者間で交わす「単価及び出来高確認方法合意書」の中に盛り込まれる。

■ 1カ月1回程度の支払いを予定 ■
 出来高部分払いは、請負者から提示された計画工程表(施工計画書上の計画工程表を想定)に基づき、請負者の申請に応じて発注者が段階検査などを行った上で支払われる。支払いのタイミングは1カ月1回程度を想定しているという。
 公共工事の品質を確保し、請負業者のキャッシュフローの改善にもつながる出来高部分払い制度。提出書類や検査業務などの煩雑さが敬遠され、これまであまり普及してこなかった。港湾局の取り組みがこうした業務の煩雑さを解消し、普及の糸口となるのか。今後の試行工事の状況が注目される。
(日刊建設工業新聞社)

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