title
title
title
Back Number


 広島県東部、岡山県との県境に位置する福山港は、鋼管地区に国内最大級の製鉄所が立地し、鉄鉱石の輸入量と鋼材の輸出量が全国トップ。取扱貨物の8割以上を鉄鋼関連貨物が占めるが、背後には製造業を中心に1,140の事業所が立地、約4万人の雇用を創出しており、備後都市圏の物流を支える重要港湾として発展してきた。我が国産業の国際競争力を維持・拡大するとともに、今後も増加が見込まれる物流需要や、地域産業が取り組むグローバル化の動きに対応するため、福山港ではふ頭再編改良事業が進められている。

【港湾概要】
■港湾区域面積 4,790ha
■総取扱貨物量 4,069万t(2019年)
■コンテナ取扱貨物量 8.3万TEU(2019年)
■入港船舶数 12,021隻(2019年)
■入港船舶総トン数 3,782万t(2019年)
■港湾管理者 広島県
 
入港船舶の大型化と施設の老朽化に対応
 
オンリーワン企業が多数立地
 福山港は、福山城主の水野勝成が1622年の築城時に外堀と海を結ぶ約1.4kmの運河を掘削し、その北岸に船だまりをつくったのが始まりとされる。江戸時代は南部に位置する鞆の浦(鞆地区)が北前船の寄泊地や潮待ち所として栄え、城下町の発展に寄与したという。江戸後期から明治期にかけて一文字地区の干拓が行われ、箕島(箕島地区)と陸続きになる。1934年には内務省指定港湾となり、修築事業が本格化。内港地区での物揚げ場の整備や航路(-4m)の浚渫が進む中、1961年10月、日本鋼管(現JFEスチール)の誘致が決定したことで、鉄鋼関連では国内トップクラスの貨物量を取り扱う我が国有数の工業港として大きな発展を遂げてきた。
 JFEスチール西日本製鉄所は、福山港内にある「福山地区」と、直線距離で約30km離れた水島港内の「倉敷地区」の2カ所に生産拠点を置き、福山地区では鋼板、厚板、鋼矢板、レールなどを、倉敷地区では鋼板、厚板、棒鋼、線棒などをそれぞれ製造している。福山港の「鋼管地区」に立地するJFEスチール西日本製鉄所(福山地区)は、1966年に第1高炉の操業を開始してから46年10カ月後の2013年5月に粗鋼生産量4億tを達成。単一事業所としては鉄鋼業界で初めてのメルクマールとなるものであり、さらに2017年度には2,000万tと全国1位の粗鋼生産量を誇っている。
 我が国最大の製鉄所を擁するだけに、福山港の取扱貨物の80%以上を鉄鋼業関連貨物が占めている。福山港での鉄鉱石の輸入量は年間約1,574万t、鋼材の輸出量は約422万t(2019年港湾統計)と、いずれも全国1位。JFEスチールは国際競争力の一層の強化を図るため、積極的な設備投資により国内生産拠点の生産性向上に取り組むとともに、需要が伸びている北米、中南米、アフリカ、中東、南アジアといった遠隔地向けの出荷能力の強化を図る方針。このため福山港の果たす物流拠点としての役割がより重要性を増している。
 福山港の西方には国内有数の造船メーカー、常石造船の製造拠点である常石工場が立地している。主力のばら積み貨物船の最大建造船舶は18万tクラス(長さ約292m、船幅約45m)に及び、20万t船(長さ約310m、船幅約48m)まで対応可能な4つの修繕専用ドックを所有している。常石造船はフィリピン、中国に造船工場を持つほか、パラグアイにも拠点を置く。インドネシアなど東南アジア向けの造船資機材の輸出量が今後さらに増加する見込みで、立地企業が進めるグローバル化への対応も福山港の役割の一つとなっている。
 福山港周辺にはこのほか、スーツ販売量が全国1位の青山商事や、食品トレー容器のエフピコ、巻き上げ機械装置の日本ホイスト、工作機械のホーコス、化学工業品の日本化薬福山、さらに三菱電機、福山ガス、中国電力と、オンリーワン・ナンバーワン企業が多数立地し、雇用創出をはじめ地域経済に活力をもたらしている。
 
■ 位置図 ■ 福山港の沿革
 
■ 取扱物の推移 ■ コンテナ取扱物の推移
 
滞船コストを削減し、貨物輸送の効率向上
 
福山港の主な課題を3つに整理
 備後都市圏の物流を支える重要港湾、福山港の課題には、どのようなものがあるのだろうか。管轄する中国地方整備局広島港湾・空港整備事務所は、事業の必要性・緊急性を踏まえて、大きく次の3つを挙げる。
①バルク貨物の輸出量の増加と船舶大型化への対応、②岸壁延長不足への対応、③既存施設の老朽化への対応―の3つだ。
 日本の鋼材は高品質で代替性が低いという特質に加え、海外販路の拡大によって福山港からの鋼材輸出量は今後も堅調な需要が見込まれている。世界経済の成長に伴う造船関連資材の需要や、本邦自動車メーカーのインドなど海外工場向けの鋼材輸出量も着実な増加が見込まれる中で、特に需要の大幅な増加が期待される遠方諸国向けの鋼材輸出では貨物船の大型化が進んでいる。しかし福山港は大型船の受け入れが可能な岸壁の整備が不十分なため、積み荷を減らす「喫水調整」が必要になるなど非効率な輸送形態を解消することが1つ目の課題。
 福山港に就航する定期コンテナ航路は2021年7月末現在、韓国航路が週4便、中国航路が週6便、台湾・東南アジア航路が週1便、神戸港とのフィーダー航路が週1便。1996年に韓国・釜山とのコンテナ航路が開設されて以降、順調に取扱貨物を増やし、年間約8万TEU(20フィートコンテナ換算)で推移している。これらのコンテナ船は輸送効率を高めるために大型化しており、日本に寄港する東南アジア航路のコンテナ船の85%が1.5万t以上の船舶で占められる。福山港も例外ではなく、2016年から3万tクラスのコンテナ船が寄港するようになったものの、国際コンテナターミナルのある箕沖地区の岸壁の必要延長不足から他航路の船舶との2隻同時接岸ができずに「滞船」が頻繁に発生。1回の滞船時間は平均で約9時間にも及び、大きな機会損失が生じていることが2つ目の課題。
 箕島地区にある4つの岸壁が供用開始された年代を見ると、1号岸壁(水深5.5m、延長480m)が1974年、2号岸壁(水深7.5m、延長260m)が1978年、3号岸壁①(水深7.5m、延長130m)が1987年、3号岸壁②(水深7.5m、延長130m)が1999年と22~47年経過し、はらみ出し、ひび割れ、上部工の開き、防舷材の損傷といった老朽化の進行が顕著となっている。引き続き荷役岸壁として利用するためには多くの修繕費用が必要となるうえに、将来にわたって維持管理コストの増加を招く恐れがある。内港に近い、沖浦、一文字、新涯の各岸壁は水深が4.5~5.5mと比較的浅く、既に利用状況も低調なことから、増え続ける維持管理コストを抑制するためにも、ふ頭再編による老朽化施設の不荷役化と、機能移転・集約化が必要になっている。これが3つ目の課題となる。
 
 
箕沖地区岸壁延伸改良事業の概要
 
ふ頭の再編に併せ、港湾施設を改良整備
 
箕沖地区で岸壁延伸工事が進捗
 岸壁が大型船非対応のため入港船舶が喫水調整を行うなど非効率な輸送を余儀なくされていること、コンテナターミナルの岸壁の必要延長不足のため滞船が発生していること、さらに港湾施設の老朽化が進行していることを受けて、福山港では我が国の基幹産業である鉄鋼業や造船業、機械工業などの国際競争力の維持・強化を図ることを目的として、2018年度からふ頭の再編と併せ、港湾施設の改良事業が進められている。
 まず箕沖地区は、第2バースを80m延伸して延長250mとし、第1バース(延長170m)と合わせ延長420mを確保。これにより韓国航路と東南アジア航路のコンテナ船2隻同時着岸が可能となり、沖待ちの解消による滞船コストの削減が図られる。箕沖地区の岸壁延伸改良によって国際フィーダー航路の増便が実現し、以前は水島港までコンテナ貨物を陸送していた荷主が福山港から国際フィーダー航路を活用できるようになり、生産能力の増強や輸送コストの削減といったメリットが得られる。 水深不足から低利用となっている沖浦、一文字の両岸壁と既に荷役の取り扱いがない新涯岸壁は、荷役岸壁としての機能を廃止し利用転換を図ることで維持管理コストを削減。沖浦、一文字岸壁で取り扱っていた貨物は箕島地区に集約する。箕島地区では水深12mの岸壁を新たに整備し、3万tクラスの大型貨物船の入港を可能にする。
 福山港のふ頭再編改良事業では、国の直轄事業として岸壁の延伸や新設に併せ、航路・泊地の整備(箕沖地区:水深10m、箕島地区:水深12m)が行われる。連動して広島県が行うふ頭用地の整備により、箕島地区でのバルク貨物とコンテナ貨物の混在が解消されるほか、箕沖地区ではふ頭用地の不足から通路にまであふれていたコンテナの取り扱い状況が改善されることになる。
 箕沖地区では、岸壁延伸部のジャケット据え付けや裏込め、床版取り付けが完了。2022年3月の完成を目指している。箕島地区は2021年度末までに設計と事前調査を完了し、2022年度から岸壁改良工事が本格化する見通しだ。
 国際バルク戦略港湾の福山港のふ頭再編改良事業は、地域産業の国際競争力の強化に加え、フィーダー航路の充実に伴う集貨の促進によって国際コンテナ戦略港湾である阪神港の基幹航路の維持・拡大への貢献も期待されている。

Topics Fukuyama port
観光需要が期待される「鞆の浦」
 国内最大級の製鉄所が立地し、臨海工業港のイメージが強い福山港だが、港湾区域の南部の鞆地区には景勝地として知られる「鞆の浦」が含まれる。沼隈半島(広島県福山市)の先端にある鞆の浦は、豊後水道と紀伊水道がぶつかる瀬戸内海の中央に位置し、潮の干満の差が大きいことから、江戸時代に「潮待ちの港」として栄えた。
 鞆の浦と仙酔島や弁天島を含む瀬戸内海一帯は1934年に日本初の国立公園「瀬戸内海国立公園」に指定され、観光地としても発展。現在も残る港町の古い町並みは2017年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されるとともに、2018年には日本遺産に認定されている。日本遺産は、地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリーを文化庁が認定するもので、「瀬戸の夕凪が包む 国内随一の近世港町~セピア色の港町に日常が溶け込む鞆の浦~」がストーリーのタイトルになっている。同じく2018年には「潮待ちの港 鞆の浦」が国土交通省から全国126カ所目のみなとオアシスに登録され、みなとを核とした住民参加による地域振興の取り組みが始まっている。
 鞆の浦は映画やドラマのロケ地としても人気が高く、明言はされていないが宮崎駿監督の人気アニメーション映画『崖の上のポニョ』の舞台ではないかというのが、ファンの間の定説となっている。鞆の浦には坂本龍馬ゆかりの史跡も数多く、中でも1867年に鞆の浦沖で起こった「いろは丸沈没事件」は日本で最初の海難裁判事故として有名である。こうした観光資源を活用した歴史的まちづくりがクルーズ需要の喚起などにつながれば、福山港の魅力はさらに高まることになりそうだ。
 

(取材協力・資料提供/国土交通省中国地方整備局広島港湾・空港整備事務所)

Back Number