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 開港から162年を迎える横浜港。首都圏有数の観光スポットであると同時に、我が国産業の国際競争力強化を支える総合物流拠点でもある。昨年の貿易額は合計9.8兆円(前年比16.7%減)と全国第3位。また国際コンテナ戦略港湾の一翼を担い、コンテナ貨物取扱量は2020年の速報値で全国第2位を誇る。アジア主要国とのコスト競争が激しさを増す中で、コンテナ船の基幹航路の維持・拡大を図るため、ふ頭の再編改良やコンテナターミナルの再編整備が進んでいる。

【港湾概要】
■港湾区域面積 7,260.5ha
■臨港地区面積 2,936.8ha
■総取扱貨物量 9,362万t(2020年、前年比84.6%)
■コンテナ取扱貨物量 3,819万t(2020年、前年比89.3%)
■入港船舶数 28,992隻(2020年、前年比89.8%)
■港湾管理者 横浜市
 
基幹航路の維持・拡大へターミナル再編整備
 
需要に持ち直しの兆し
 国内五大港の一つ、横浜港は1859(安政6)年6月2日の開港以来、巨大消費地の東京とその背後に広がる首都圏の旺盛な経済活動を支える商業港として、また京浜工業地帯の一翼を担う工業港としての役割も果たしながら、我が国の国際競争力の維持・拡大に欠かせない国際戦略港湾として発展・成長を続けている。
 過去5年の取扱貨物量は1億1,000万t前後で推移してきたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、2020(令和2)年には前年比15.4%減の9,362万t(速報値:横浜市港湾局)と落ち込み、2018(平成30)年に305万TEU(20フィート型換算個数)を誇ったコンテナ取扱個数も2020年は266万TEU(前年比11.1%減)への減少を余儀なくされた。主力の自動車関連貨物は、工場の一時閉鎖や生産調整の余波を受けて2020年5月に前年比55.5%減と大幅に落ち込んだが、同12月には1.7%減まで持ち直している。
 さらに、2021(令和3)年上半期の統計速報によると、コロナ禍の長期化による影響は続いているものの、外貿の取扱貨物量は前年同期比で11.4%増となり、前々年同期比で6.2%減とパンデミック前の貨物量に近づきつつある。主要品目である完成自動車・自動車部品の輸出量も前年を上回っており、港勢の回復をけん引している。
 横浜港では、コンテナ貨物の取扱量の増加や船舶の大型化に対応するため、埋め立てによるふ頭用地の整備や岸壁の大水深化改良、ふ頭・コンテナターミナルの再編整備が継続して進められている。背景には、船社間のアライアンス(連携)の進展による国際基幹航路の再編や寄港地の集約化といった動きがある中で、アジアの主要港での競争が一層激しくなっていることが挙げられる。このため、我が国に寄港する基幹航路の維持・拡大への取り組みは、国際戦略港湾である横浜港にとって一段と重要になっている。
 
 
本牧ふ頭と大黒ふ頭を再編改良
 横浜港の主要コンテナターミナルである本牧、大黒、南本牧の3つのふ頭地区の再編整備事業から見てみよう。横浜港の物流の中心的役割を担う本牧ふ頭は、1963(昭和38)年に埋め立てを開始し1970(昭和45)年に完成。在来船からRORO船、フルコンテナ船まで多様な荷役に対応し、とりわけコンテナ取扱個数は横浜港全体の約5割を担う物流拠点となっている。本牧ふ頭には現在、3つの突堤があるが、当初はA~Dの4つの突堤があった。コンテナ船の大型化とコンテナ貨物の増加に対応するため、旧B突堤と旧C突堤の間を埋め立てて一体化し、2005(平成17)年にBCコンテナターミナルとして供用を開始した。国土交通省関東地方整備局京浜港湾事務所は現在、横浜港国際海上コンテナターミナル再編整備事業の一環として、本牧ふ頭ではBC突堤とD突堤で水深16mの岸壁整備や荷さばき地の舗装工、航路・泊地の浚渫などを直轄事業で推進している。
 本牧ふ頭と人工島・扇島の中間に位置する大黒ふ頭は、横浜港初の本格的な島式ふ頭として1971(昭和46)年から1990(平成2)年にかけて造成された。総延長5,250m、計25のバースを有するとともに、延べ床面積32万㎡と国内最大級の物流施設「横浜港流通センター」が立地し、首都高速道路のインターチェンジもあるなど、首都圏の一大流通拠点となっている。
 大黒ふ頭では、横浜港の主要輸出品目である完成自動車と大型建設用機械の取り扱いに対応するため、コンテナバースから自動車専用船バースへの機能転換が進められており、2022(令和4)年には日本最大級となる延長1,400m連続岸壁が完成し、大型の自動車専用船が5隻(ふ頭全体で11隻)同時着岸できるようになるという。京浜港湾事務所は本年度、大黒ふ頭地区ふ頭再編改良事業として水深12m岸壁の本体工、上部工、航路・泊地の増深改良などを実施している。
 本牧ふ頭のA突堤と大黒ふ頭を結ぶのが、1989(平成元)年に完成した横浜ベイブリッジ。桁高は海面から55mあるが、ここを通過して内港地区にある大さん橋国際客船ターミナルへ行けない超大型客船の受け入れにも、大黒ふ頭が対応している。
 
 
増加するコンテナ貨物と船舶の大型化に対応
 
南本牧ふ頭に大水深耐震強化岸壁誕生
 東京港、川崎港とともに「京浜港」として国際コンテナ戦略港湾に指定されている横浜港で、最新鋭の高規格コンテナターミナルが整備されたのが、南西部に位置する南本牧ふ頭である。水深16m、延長700m(350m×2)の連続岸壁として使用できるMC-1、MC-2ターミナルが2001(平成13)年に供用を開始した。増大するコンテナ貨物、より大型化するコンテナ船に対応するため、MC-3ターミナルが2015(平成27)年に、MC-4ターミナルが2021(令和3)年に完成。これにより、MC-1~4すべてのターミナルの一体利用が可能になった。
 MC-3、4ターミナルは国内最大の水深18mを実現。延長900m(400m+500m)の連続岸壁により、世界最大級のコンテナ船への対応を可能にした。南本牧ふ頭の建設場所は京浜港の中で最も東京湾の入り口に近いことから、現地水深が約30mと深いうえに、海底地盤が軟弱な土質であったため、難度の高い施工条件となった。軟弱地盤の改良には、強く締め固めた砂杭を多数打設するSCP(サンドコンパクションパイル)工法と、軟弱地盤にセメントを混合し固化するCDM(深層混合処理)工法が用いられた。MC-4ターミナルの岸壁工事に導入されたSCP船は最大深度約48mまで、CDM船は同じく約54mの深さまで地盤改良を実施。こうした条件下での「大水深耐震強化岸壁」の築造は世界初の快挙という。
 全長が約400m、幅が約60mもある巨大なコンテナ船に対応する岸壁の構築には、鋼板セル工法が採用された。分厚い鋼板でできた円弧状のセルブロックを5枚接合して直径24.5m、高さ32mの巨大な円筒(鋼板セル)を組み立て、CDM工法で改良した海底地盤の上に、大型起重機船で据え付けていく。鋼板セル1函は約400t。これを連続して据え付けた後、鋼板セル内に揚土船で土砂を投入する。次に、隣り合うセル同士の隙間を埋めるように、セルと同じ高さ(32m)のアークと呼ばれる円弧状の部材で連結、一体性を高めることで耐震性の強化を図る。続いて、ガントリークレーンの基礎を含む上部工を施工し、岸壁を仕上げる。
 こうして出来たMC-3、4ターミナルには、我が国最大の「24列対応」(全幅方向にコンテナを24列積んだコンテナ船に対応)のガントリークレーンが据え付けられ、荷役作業の効率化によるリードタイムの短縮や生産性の向上効果が期待されている。
 本牧、大黒、南本牧と3つのふ頭地区で横浜港の国際競争力の強化に向けたコンテナターミナルの整備が進む一方、ふ頭間を流動するコンテナ貨物車両が増加したことで、交通渋滞の発生という新たな課題も生じている。京浜港湾事務所では2009(平成21)年度から南本牧ふ頭と本牧ふ頭を結ぶ臨港道路の整備に着手、物流関連車両の陸上輸送機能の強化を図っている。
 南本牧・本牧ふ頭地区臨港道路整備の第I期事業(延長2.5km)で、南本牧運河をまたいで高速道路に直結する「南本牧はま道路」が2017(平成29)年に開通。これにより、南本牧ふ頭へのアクセス道路が複線化され、物流関連車両の動線確保と同時に、防災力の向上が図られた。さらに、臨港道路の第Ⅱ期整備区間(3.5km)には本牧ふ頭から山下ふ頭までの延伸が追加された。
 
地盤改良が進む新本牧ふ頭地区
 
我が国最大、水深18mの耐震強化岸壁が供用
 
新本牧ふ頭の建設がスタート
 基幹航路の維持・拡大を目的とした横浜港の国際海上コンテナターミナル再編整備事業には、本牧ふ頭地区での水深16m岸壁や荷さばき地などの整備に加え、もう一つの大規模プロジェクトが含まれる。「新本牧ふ頭」の建設である。本牧ふ頭D突堤から突き出る形で、第1期に約38ha、第2期に約50haの埋め立てを行い、水深18mの岸壁を備えたコンテナターミナルを創出するもの。2020(令和2)年から地盤改良工事が始(取材協力・資料提供/国土交通省関東地方整備局京浜港湾事務所)まっている。2031(令和13)年には最新鋭の新たな物流拠点が横浜港に誕生しているはずだ。
 新本牧ふ頭の整備では「港湾整備BIM/CIMクラウド」の導入が試みられている。調査・設計や施工時に得られた情報を、標準化された3次元モデルとして登録し、クラウド上にCIMの統合モデルを作成、これを工程管理や品質・出来形管理、検査・監督などに活用する仕組み。施工者などのプロジェクト関係者には同クラウドへのアクセス権が付与され、施工の効率化や建設現場の生産性向上につなげることができる。
 「港湾整備BIM/CIMクラウド」の構築に向けては、2020年度に地盤改良工を3次元モデル化の対象として施工情報を追加したプロトタイプを作成。本年度はステップ2として基礎工、護岸・岸壁工事への拡張を実施するとともに、監督検査を試行する。来年度以降は、施工情報を追加して詳細化を図りながら、監督検査などの機能を追加。2023(令和5)年度中には埋め立て管理ができるようにシステムを拡張していく計画だ。物流拠点となるふ頭の高規格化が進む一方で、それを築く施工技術も着実に高度化しているようだ。

Topics Yokohama port
横浜ハンマーヘッド
国内クルーズ再開
 2019年の訪日クルーズ旅客数は215.3万人と3年連続で200万人を超えたが、2020年は一転、前年比94.1%減の12.6万人にとどまった(速報値:国交省港湾局)。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、クルーズ船の運航が休止されたためだ。2019年の横浜港へのクルーズ船の寄港回数は188回で、那覇港(260回)、博多港(229回)に次いで全国第3位。日本船社が運航するクルーズ船に限れば、寄港回数は横浜港が第1位(101回)だ。そうしたクルーズ需要に応えようと、2020年11月から2社が、翌月にはもう1社が国内クルーズを再開。日本外航客船協会が策定した感染予防対策ガイドラインや自社の対策マニュアルに従って安全・安心な運航に努めている。
 横浜港ではクルーズ船の受け入れ機能の強化に向け、老朽化桟橋の耐震化や新港ふ頭ターミナルの整備に取り組んできた。赤レンガ倉庫や商業施設の横浜ワールドポーターズ、遊園地のよこはまコスモワールドなどに近接した新港ふ頭地区には、商業施設やホテルを併設した新しいタイプの客船ターミナルとして「横浜ハンマーヘッド」が2019年10月末に開業。横浜ハンマーヘッドは今年、新型コロナのワクチン大規模接種会場としても使用された。

山下ふ頭再開発
 横浜市は2015年9月に「山下ふ頭開発基本計画」を策定し、観光やMICE(国際的なイベント)を中心に、新たなにぎわい拠点を創出する「ハーバーリゾートの形成」を打ち出した。その後、シンボルとなる大規模集客施設としてカジノを含むIR(統合型リゾート)の誘致を目指したが、今年9月の市議会で山中竹春市長がIRの誘致撤回を正式に宣言。これにより、山下ふ頭開発基本計画も見直しが必要になりそうだ。
 山下ふ頭は面積約47ha。再開発に向け、民間事業者の移転が進んでおり、倉庫などの移転跡地は現在、ライブ会場や“動くガンダム”のガンダムファクトリー横浜に暫定利用されている。
 

(取材協力・資料提供/国土交通省関東地方整備局京浜港湾事務所)

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