title
title
title
Back Number


 4市1村(名古屋市、東海市、知多市、弥富市、飛島村)に及ぶ広大な臨港地区を有し、周辺に自動車、産業機械、航空宇宙、鉄鋼、電気製品といった我が国を代表する「ものづくり産業」が集積する名古屋港は、「総取扱貨物量」「輸出額」「貿易黒字額」「完成自動車輸出量」が全国第1位。旺盛な中部圏の生産活動を物流面から支援するとともに、国際競争力の一層の強化に向けて港湾施設機能の拡充・強化に取り組んでいる。

【港湾概要】
■港湾区域面積 8,167ha
■臨港地区面積 4,288ha
■入港船舶数 29,243隻(2020年)
■総取扱貨物量 16,855万t(2020年、前年比86.7%)
■コンテナ取扱貨物量 2,471,146TEU(2020年、前年比86.9%)
■港湾管理者 名古屋港管理組合
 
金城ふ頭・飛島ふ頭を大掛かりに再編整備
 
自動車運搬船の大型化に対応
 名古屋港の2020年の総輸出量4,105万tのうち、1,838万tと品目別内訳(重量ベース︶で約45%を占めるのが完成自動車。新型コロナウイルスの世界的な大流行による経済活動の停滞や半導体の供給不足の影響で前年(144万台)より落ち込んだものの、輸出台数は約111万台と実に42年連続で全国第1位の座をキープしている。
 完成自動車の積み出し拠点として活用されているのは、主に国内向けが潮見ふ頭と空見ふ頭、海外向けが金城ふ頭と弥富ふ頭、それにトヨタ自動車専用の新宝ふ頭(民間施設)。金城ふ頭と弥富ふ頭は、海外生産された完成自動車をいったん名古屋港に集積させ、再び世界各地へ輸送する「トランシップ」(2020年は約14万台)も行っており、完成自動車のハブ機能を果たしている。
 物流の効率化を目的とした船舶の大型化の傾向は自動車運搬船においても例外ではなく、名古屋港では2009年ごろから60,000GT(総トン数)以上の大型船の入港隻数が年々増加。年間の自動車運搬船入港隻数に占める60,000GT以上の大型船の割合は、2009年の14%から2018年には32%まで増大している。このクラスの運搬船は、満載時に水深12mを必要とするが、これに対応可能な岸壁は限られることから、水深不足のために積み荷を軽くするといった「喫水調整」が行われており、物流効率の面で改善が求められていた。さらに金城ふ頭は、自動車積み出し岸壁と一般貨物岸壁が混在していることに加え、モータープールがふ頭内に点在していることで、非効率な横持ち移送にかかるコストの抑制が課題となっていた。
 これらの課題を解消し、「ものづくり中部」の柱である自動車関連産業の国際競争力を維持・強化することを目的として、名古屋港湾事務所は2015(平成27)年度から金城ふ頭地区のふ頭再編改良事業に着手した。大型自動車運搬船に対応した水深12mの耐震強化岸壁をふ頭南東部に新たに整備するとともに、この岸壁の背後に用地を造成し、点在していたモータープールを集約する事業。今回のふ頭再編改良事業によって、自動車を取り扱う水深12mの岸壁の延長は再編前の240mから再編後は600mに増強される。これまで点在していたモータープールは、集約化により蔵置可能台数が54.2万台から56.8万台に増大するという。
 
 
護岸工事と並行して岸壁改良工事施工
 新設する耐震強化岸壁の築造工事は2018(平成30)年12月に始まった。延長は260mで、本体は9函のケーソンで構築する。ケーソンの据え付けには、4,100t吊りと国内最大の起重機船「海翔」が使用され、2020(令和2)年7月に2函、今年5月に4函の据え付けが実施された。並行して残る3函の製作も進められており、2022(令和4)年度に水深12mの岸壁が概成する見通しだ。金城ふ頭の施工現場では据え付けが完了したケーソンから順次、裏込め工、上部工が開始されているが、港湾管理者が施工する護岸工事との同時施工となるため、作業船などが錯綜しないよう、相互に工程の調整を行いながら施工に当たっている。
 
金城ふ頭地区のケーソン据え付けには国内最大の起重機船を使用
 
東南アジア航路の貨物量が急増
 コンテナ物流はグローバル経済を支える重要な社会インフラの一つだ。名古屋港には現在、飛島ふ頭と鍋田ふ頭に計5つのコンテナターミナルが立地し、13バース、27基のガントリークレーンを備える。これらはNUTS(名古屋港統一ターミナルシステム)と呼ばれるIT活用のコンピューターシステムで一元管理され、荷役作業の効率化や処理時間の短縮化が図られている。
 名古屋港は世界23の国や地域の101の港とコンテナ船定期航路網で結ばれており、2020年度の外貿コンテナ取扱量は輸入が2,140万t、輸出が2,002万t。ここ十数年の取扱個数は20フィートコンテナ換算(TEU)で250万TEUを前後する水準で堅調に推移している。近年、特に目立つのが東南アジア航路の貨物量の増加。リーマンショック後の2009(平成21)年に少し落ち込んだ後、右肩上がりで増加を続け、2010年の約60万TEUから2019年までの10年間で約120万TEUと倍増する勢いだ。東南アジア航路の貨物量の増加に加え、コンテナ船の大型化の進展も顕著で、今後は必要水深15mの4,300~6,000TEUクラスが主流となる見通しだ。
 名古屋港のコンテナターミナルのうち、東南アジア航路を主に取り扱う飛島ふ頭のNCBコンテナターミナルの岸壁の一部は供用開始から40年以上が経過し、経年劣化から桟橋上部工の梁部にひび割れや鉄筋露出が発生、大規模な改修が必要となった。東南アジア向け貨物量の増加とコンテナ船の大型化、さらに施設の老朽化に対応するため、名古屋港湾事務所は2016(平成28)年度から飛島ふ頭東地区のふ頭再編改良事業に着手した。岸壁、泊地、航路・泊地を従前の水深12mから15mに増深するとともに、延長700m(350m+350m)の耐震強化岸壁に造り替える。
 第1期のR1岸壁(延長350m)の改良工事には2017(平成29)年度に着手。既設桟橋の撤去と新しい桟橋部の鋼管杭(長さ60.5m、径1.5m)打設が完了し、上部工に移っている。直轄事業部分は2021年度内の完成を目指しており、2022年度にはガントリークレーンが設置され、供用される見込み。第1期が完了次第、第2期のR2岸壁(延長350m)の改良工事に着手できるよう、並行して詳細設計が進められている。周辺の岸壁を供用しながらの改良工事であり、物流への影響を最小限とするため、ここでも施設管理者やターミナル利用者など多くの関係者との連絡・調整が重要になっている。
 
飛島ふ頭東地区ではR1岸壁の上部工に着手(PC桁据え付け状況)
 
浚渫土砂の新たな処分場整備へ
 一級河川・庄内川から名古屋港に流下する土砂は年間約30万㎥に及ぶとされる。航路や岸壁前面の泊地の埋没を防ぎ、港湾機能を維持するためには継続的な浚渫が欠かせない。また、船舶の大型化への対応や港湾機能の強化に向けて実施しているふ頭再編改良事業でも岸壁や泊地などの増深に伴い浚渫土砂が発生する。これら大量の浚渫土砂を受け入れてきたのが、名古屋港沖に造成されたポートアイランド。高潮防波堤(中央堤)を挟む形で1974(昭和49)年度から3期に分けて護岸工事が行われ、総面積は約257ha。当初の埋立計画地盤高は5.3mで、約3,000万㎥の浚渫土砂を受け入れる計画だったが、既にポートアイランドの地盤高は当初計画を10m以上超過、仮築堤を3段目までかさ上げ整備し、約1,800万㎥を仮置きしている状態にあり、2020年代前半には受け入れ限界に達する見通しという。
 中部地方整備局は名古屋港で発生する浚渫土砂の新たな処分場について検討を進める中で、名古屋港から約15km沖合に位置する愛知県常滑市セントレア地先の公有水面を候補地に選定し、2015(平成27)年度から埋立事業の環境影響評価手続きに着手。環境アセスメントの配慮書に相当する検討書から始まり、方法書、準備書、評価書の作成を経て、愛知県に提出していた公有水面埋立承認願書が今年5月25日に承認され、新しい土砂処分場の整備計画にゴーサインが出た。
 埋め立て面積は約290ha。埋め立て土量は約3,800万㎥。中部国際空港の既設護岸を利用する形で、まず空港西側の約230haを4工区(西Ⅰ~Ⅳ工区)に分け15年かけて埋め立てた後、南東工区の約60haを埋め立てる。新しい土砂処分場の整備に向け、名古屋港湾事務所は2021年度、対象区域の現況を詳細に把握するための深浅測量や磁気探査・音波探査、土質調査などに加え、埋め立て事業が周辺海域の航行安全に及ぼす影響の検討などを行う計画だ。
 県や地元経済界は、浚渫土砂の処分場を整備するための空港沖の埋め立て事業で新たに造成される用地を空港拡張用地と捉え、2本目滑走路の整備構想の実現につなげたいとの思いがある。物流機能の増強を図る名古屋港と中部国際空港との連携は、中部のものづくり産業の飛躍だけでなく、我が国の国際競争力の強化にも大いに貢献するに違いない。

中川運河沿いの魅力向上へ
「名古屋みなとまちづくり宣言」
 名古屋港には博物館やテーマパークのある金城ふ頭、水族館や遊園地のあるガーデンふ頭のように触れ合いや賑わいを生む交流拠点も数多く立地している。これら臨海部の観光資源を生かしつつ、名古屋港と一大ターミナルの名古屋駅を結ぶ中川運河沿岸エリアの魅力をより一層引き出すためのまちづくりビジョンが「名古屋みなとまちづくり宣言(案)-オオサンショウウオ構想-」として今年5月に公表された。まとめたのは学識者、民間企業、地元まちづくり団体、行政関係者らで構成する「名古屋港賑わい空間活性化のための魅力向上検討会」(座長・水尾衣里名城大学教授)。中川運河を中心にあおなみ線と地下鉄名港線で囲まれた範囲を「みなとまちエリア」と定め、港と運河で結ばれた地域の魅力向上策を約3年にわたって検討してきた。
 同構想では、名古屋のみなとまちエリアのさまざまな資源の活用を基本に、①新たなものづくり産業や賑わい施設等の立地促進、②水辺の空間整備、③水辺に親しめる機会の創出、④回遊性・アクセス性の向上を図り、情報の共有・発信、市民や企業が主体となって連携する枠組みづくりに取り組む。具体的には、優先度の高い施策として、倉庫など物流施設の転用や運河沿い企業の移転誘導、運河沿岸の土地利用緩和など商業・賑わい施設が立地するための施策を検討。跳ね上げ橋など港由来の歴史資源の活用やプロムナードの整備も検討する。回遊性やアクセス性の向上では、船着き場の増設やクルーズ船ターミナル施設整備、名古屋駅とささしまライブ地区をつなぐ地下道と動く歩道の新設、中川運河を活用した新たな回遊コースなども提案した。
 海から陸地へ発展してきた、名古屋のみなとまちエリアの歴史と形状をオオサンショウウオがたどった進化の道と姿になぞらえ、ビジョンのタイトルとした。金城・ガーデンふ頭エリアはオオサンショウウオの尻尾・後ろ足に位置し、まちの賑わいを発展させる推進力を担い、背骨に位置する中川運河は名古屋都心と港をつなぎ、エリア全体の骨格を支え、頭部に位置するささしまライブは都心と港を融合し、多様で感性豊かなまちの顔となるエリアに位置付けた。ユニークな構想には、人が集い、多様な生物が生息する環境となることへの願いも込めた。2021年度中に「宣言」として取りまとめる。
 

(取材協力・資料提供/国土交通省中部地方整備局名古屋港湾事務所)

Back Number