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穏やかな別府湾の南に開けた大分港

 九州の東の玄関口に当たる重要港湾・大分港。背後地に立地する鉄鋼や石油化学、石油精製、電力などをはじめとする企業の原材料調達や製品出荷などを支える物流拠点として、地域経済を牽引してきた。2018年の取扱貨物量は全国の港の中で12位、九州の港では北九州に次いで2位を誇る。近年の大分港では、取扱貨物の増大と新規航路の開設などを背景に内航RORO船の需要が急増。これに対応して2020年には、複合一貫輸送ターミナルの整備事業が新たにスタートしている。

【港湾概要】
■港湾区域面積 3,965ha
■臨港地区面積 1,334ha
■入港船舶数(2018年) 2万9,168隻(外航1,789隻、内航2万7,379隻)
■取扱貨物量(2018年) 6,374万t
■コンテナ貨物量(2019年速報値) 6万1,740TEU
■港湾管理者 大分県
 
九州を代表するものづくり産業の集積地
 
国内有数の臨海工業地帯
 穏やかな別府湾に面した大分市。東九州では最大、九州全体でも福岡、北九州、熊本、鹿児島の各市に次ぐ人口を抱える中核市だ。海や山の自然に恵まれ、古くから東九州の要衝として重要な役割を担ってきたが、1964年に新産業都市に指定されたのを契機に臨海部への基幹産業の集積が飛躍的に進み、九州一の製造品出荷額を誇る工業都市としても発展してきた。製造品出荷額の全国市町村別順位で大分市は14位と福岡市や北九州市を上回り、九州で1位。九州を代表するものづくり産業の集積地となっていることを示している。
 こうした地域の経済・産業の発展を支える基盤として重要な役割を果たしてきたのが大分港である。東西25km、横長に開けた大分港には国内有数の臨海工業地帯が形成され、鉄鋼や化学、エネルギーなどの分野で日本を代表する多くの企業が生産拠点を構えている。大分港はこれらの立地企業の原材料や製品の輸出入に対応するため、外貿コンテナ輸送による国際物流拠点、また東九州と首都圏や近畿圏をつなぐ国内物流拠点の機能を果たしてきた。
 大分港の年間総貨物取扱量は6,000万tを超す。取扱貨物には、鉄鉱石や鋼材、石油製品など背後地の産業を支える品目が多い。中でも鉄鉱石は輸入貨物の代表品目。大分港には日本で唯一、世界最大級の鉄鉱石運搬船(40万トン級)が満載で接岸できる日本製鉄大分製鉄所の専用シーバース(水深30m、延長620m)があることでも知られる。
 
東西25kmにわたって築かれた大分港
 
海・陸の接点として重要な地位
 大分港発祥の地とされる西大分地区は約450年前、当時の領主・大友宗麟がポルトガルや明との交易を営む貿易港として隆盛を極めたといわれる。大友氏滅亡後は貿易も衰微したままだったが、明治に入って近代港湾としての整備が始まり、大正初期にかけて阪神地域との海上交通が活発化。鉄道の開通と相まって東九州における海・陸の接点として重要な地位を占めるようになった。
 1927年、第2種重要港湾に指定。内務省の直轄事業で防波堤や岸壁の修築、浚渫などが行われた。第2次世界大戦で港湾機能は大きな打撃を受けたが、終戦後は、復興資材の積み出し港として活動を再開し、港湾機能も徐々に回復。1950年の港湾法制定に伴い翌1951年には重要港湾に指定され、大分県が港湾管理者となった。
 1959年、大分・鶴崎臨海工業地帯の建設計画に伴い大分港は近代的工業港として大きく変貌することに。日本経済が高度成長に踏み出す中、エネルギー資源確保を目的とした石油配分基地、木材積出埠頭用地の整備が行われ、臨海工業地帯の造成が開始された。1964年の大分地区新産業都市の指定を経て産業基盤としての港湾機能の整備がさらに進められ、近代的な大型工業港へと発展した。
 
複合一貫輸送ターミナル整備事業がスタート
 
陸上高速交通とも連携
 1994年、大分県地域輸入促進計画(FAZ)が国に承認された。その中心となるのが、大分港の大在コンテナターミナルだ。環太平洋諸国との物流拠点を目指して多目的国際ターミナルの整備が進められ、1996年11月、5万トン級の大型コンテナ船の接岸が可能な九州初の水深14m岸壁とガントリークレーンが供用を開始した。
 大在コンテナターミナルは22haの広さがあり、大型冷凍冷蔵庫や燻蒸庫、電源設備などを完備。365日、24時間フルタイム稼働のコンテナ貿易施設となっている。定期コンテナ航路は釜山、台湾、上海航路が週6便運航。北米や欧州、東南アジア向けに神戸港との国際フィーダー航路が週に3便運航されている。大在コンテナターミナルのコンテナ取扱貨物量は2019年速報値で6万1,740TEU。2年連続で前年を上回った。取扱貨物は、輸出では銅板や樹脂、輸入では医療機器や製鉄副原料などが多い。
 大分港は、陸上の高速交通体系との連携が充実している点も大きな特徴だ。大分県では、大分市を中心に県内各主要都市まで60分以内で往来できる道路網が整っている。大在コンテナターミナルは東九州自動車道の宮河内ICから至近距離にあり、周辺に最先端技術を持つ企業が集積していることも強みになっている。
 大在コンテナターミナルの西隣に位置する大在西地区で2020年、新たな港湾施設の整備事業が始まった。「大分港大在西地区複合一貫輸送ターミナル整備事業」。需要が急拡大している内航RORO船用の新たな岸壁や埠頭用地を整備する計画だ。総事業費156億円、事業期間10年の大型プロジェクトとなる。
 大分港で現在、RORO船が利用しているのは大在地区の岸壁。ただしここは水深が7.5mしかなく、喫水調整のために積載台数を制限せざるを得ないのが現状。減載入港を強いられる状況では拡大する輸送需要に対応できない。シャーシ置き場の不足も深刻だ。岸壁近くのシャーシ置き場が狭いため、離れた置き場への横持ち輸送が頻発。決められた荷役時間内に積み込み・積み降ろしを終えるには大量のトラクターヘッドが必要になり、コストの増大にもつながっている。シャーシ置き場の不足は荷役できる貨物量の制限にもつながる。
 一方で、RORO船による貨物輸送は需要の大幅な拡大が続いている。大分港では、内航RORO船の貨物車両台数が2016年(1.5万台)から2019年(5.9万台)にかけて約4倍に急増した。取扱貨物量も同じ期間に169万tから624万tへと4倍近くに増えている。2016年10月、川崎近海汽船が大分~清水(静岡)の航路を新たに開設したのがきっかけだ。1隻体制・週3便で運航を開始したが、2018年3月からは2隻体制・週6便へと増便したこともあり、取扱貨物量が大幅に増えた。大分港の内航RORO船航路は現在、東京~九州・瀬戸内航路の週3便と合わせて2航路・週9便となっている。
 こうした状況を背景に新事業では、RORO船が2隻同時着岸できる水深9mの岸壁2バース(延長240m、220m)と泊地(2.4ha)、沖合の西防波堤(135m)、中防波堤(100m)を国の直轄事業で整備。加えて県が岸壁の背後にシャーシ置き場となる埠頭用地(21ha)や護岸(125m)、貨物輸送を円滑化するための臨港道路(340m)を整備する。
 
国内最深を誇る日本製鉄専用シーバース
 
総事業費156億円、期間10年の大型プロ
 
県もRORO船利用後押し
 貨物需要の増大とトラックのドライバー不足を背景に、陸上のトラック輸送から海上輸送へのモーダルシフトが進展していることから、今後も新規航路の開設やRORO船の大型化が進むとみられている。RORO船は災害時の陸上輸送の代替手段としても期待されている。
 県も2017年にRORO船利用助成事業を開始。2018年には九州各県で「大分県RORO船利用促進セミナー」を開催し、「大分県RORO船利用促進協議会」を設立するなど、RORO船の利用拡大を後押ししている。
 2020年11月28日、大分市内のホテルで広瀬勝貞大分県知事や国土交通省の髙田昌行港湾局長をはじめ約50人の関係者が出席して大分港大在西地区複合一貫輸送ターミナル整備事業の着工式が開かれた。県は2017年に策定したビジョン「九州の東の玄関口としての拠点化戦略」で大分港の大在地区を物流拠点と位置付けており、広瀬知事は「新たな岸壁の整備で一層の発展に期待する」と挨拶。髙田局長は「整備の一日も早い完成を目指す」と決意を示し、テープカットで着工を祝った。
 2020年度は、岸壁築造の準備段階として既設消波ブロックの撤去と土留め矢板の打設工事が始まっている。
 
 
新たなRORO船ターミナルの建設場所 テープカットで着工を祝った式典
 
かんたん港園、みなとオアシス九州第1号
まちづくり活動に高評価
 近代的な大型工業港として発展してきた大分港は、水際線のほとんどが工業用地や物流施設で占められており、誰もが気軽に立ち寄れる親水空間や活気ある交流拠点の拡充も求められている。そうした中、大分港発祥の地とされる西大分地区は、東九州における海の接点として重要な役割を果たすとともに、海を身近に感じることのできる場所として、地域の人々に親しまれてきた。
 西大分地区には、神戸~大分を結ぶフェリー「さんふらわあ」が発着する岸壁があり、フェリー埠頭に隣接した区域に親水空間の「かんたん港園」が整備された。
 「かんたん港園」の名は、西大分地区が古くは「かんたん港」と呼ばれていたことに由来する。かんたん港園は、大分県による港湾環境整備事業が2011年度に完了し、一帯がウッドデッキと芝生の公園になった。別府湾を望む魅力的な海辺空間は、市民の憩いの場や観光スポットとして大分市の新たなにぎわいの拠点になっている。
 地元のNPO法人を中心としたまちづくり活動によって、周辺の古い既存倉庫群が飲食店や雑貨屋、古着屋、ライブハウスなどとして再利用され、年間を通じてさまざまなイベントが催されている。
 2007年4月には「みなとオアシスかんたん港園」として、九州では第1号のみなとオアシスに登録された。2006年度には「手づくり郷土賞(地域活動部門)」、2016年度には「おおいた景観大賞(特別賞)」、2017年度には「手づくり郷土賞(大賞部門)」に選定されるなど、港を中心としたまちづくりの取り組みは高い評価を受けている。

にぎわいのまちづくりが進む西大分地区
 

(取材協力・資料提供/国土交通省九州地方整備局別府港湾・空港整備事務所)

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