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原材料や製品の一大物流拠点

 東京湾の湾奥部に位置する国際拠点港湾・千葉港。南北6市にまたがり、海岸線の総延長は約133km。港湾区域面積は全国の港で最大の2万4,800haにおよび、「日本最大の港」とも称される。背後地には石油化学や鉄鋼をはじめ多くの企業が立地し、原材料や製品の一大物流拠点となっている。2018年には港湾計画が改訂され、船舶の大型化など新たな時代の要請に対応するふ頭の再編事業など、2030年代を見据えた取り組みも始まっている。

【港湾概要】
■港湾区域面積 2万4,800ha
■臨港地区面積 346ha
■貿易額(2018年) 4兆8,605億円(輸出8,961億円、輸入3兆9,644億円)
■取扱貨物量(2018年) 1億5,319万t
■コンテナ取扱個数(2018年) 10万291TEU
■港湾管理者 千葉県
 
京葉臨海工業地帯を支える「日本最大の港」
 
貨物取扱量は全国2位
 千葉港は、多くの船が行き交う東京湾の最も奥、北東部の一角を占め、北から南へ順に市川市、船橋市、習志野市、千葉市、市原市、袖ケ浦市と曲線を描いて6市にまたがっている。千葉港の港湾区域は、東京湾の湾奥部のほぼ東半分を占める広大な水域で、その広さは全国一を誇る。貨物の総取扱量は1億5,000万tを超え、名古屋港に次いで全国2位(2018年集計)。日本を代表する国際貿易港の一つとなっている。
 京葉臨海工業地帯の基盤的港湾として、臨海部の埋め立てと企業誘致によって発展してきた工業港だけに、プライベートバースなどの企業専用施設が多いのも千葉港の特徴だ。民間企業が所有する専用岸壁で取り扱う貨物量は、全体の92%を占めている。
 南北に連なる広大な千葉港は、北から順に「葛南」「千葉」「市原~袖ケ浦」の大きく3つの地区に分けられる。葛南地区(市川市、船橋市、習志野市)は、葛南西部、葛南中央、葛南東部の3地区で構成され、機械、金属、石油化学、鉄鋼、セメントなどの取扱企業が集積した工業港として発展してきた。中でも葛南中央地区は、関東一円から東海・東北地方までを背後圏とする鋼材輸入基地として重要な位置を占めている。
 千葉港は東京湾内の輸入鋼材取扱量の約79%(2016年)を占める国内最大級の鋼材輸入港。特に葛南中央地区には千葉港の輸入鋼材の大半が集中する。同地区の中枢である船橋中央ふ頭は、総面積133haという広大な埋立地を生かして鋼材や金属くずなどの輸出基地となっている。
 千葉地区(千葉市)は千葉北部、千葉中央、千葉南部の3地区からなり、千葉港の中心に当たる。鉄鋼、石油、食品などの企業が立地した専用岸壁と、完成自動車の専用岸壁、コンテナターミナルを持つ公共ふ頭があり、一大物流拠点を形成している。
 中でも、千葉港の公共貨物の3分の1以上を取り扱う海運の中枢拠点となっているのが千葉中央地区だ。コンテナターミナルや自動車貨物取扱岸壁を有し、千葉港の拠点地区の一つである千葉中央ふ頭と、千葉港発祥の地として近隣の商業施設と共ににぎわいの場にもなっている出洲ふ頭で構成される。
 千葉中央地区の主要な輸出入取扱貨物が完成自動車。その首都圏向け集積基地として、国内外の多く自動車メーカーが公共埠頭の自動車船取扱岸壁を利用している。
 南の市原~袖ケ浦地区(市原市、袖ケ浦市)は、八幡、五井、姉崎、北袖ケ浦、南袖ケ浦の5地区が含まれる。昭和30年代から始まった臨海部の埋め立てを契機に、石油化学工業をはじめとする大手企業が多数進出し、飛躍的な発展を遂げてきた。現在では、全国屈指の石油化学コンビナートである京葉臨海工業地帯の中核を担っている。
 特にエネルギー産業では、複数の火力発電所に加え、世界最大級の液化天然ガス(LNG)貯蔵能力(254万kL)を誇る「袖ケ浦LNG基地」が立地。ここで受け入れたLNGは都市ガスとして利用されるほか、火力発電所の燃料としても利用されるなど、首都圏各地へのエネルギー供給拠点の役割を担っている。
 
石油化学や鉄鋼など多くの企業が立地 ふ頭再編事業が始まる千葉中央地区
 
千葉港における貨物取扱量
 
高度経済成長を支えた工業港
 1940年、当時の内務省土木会議で「東京湾臨海工業地帯計画」が決定され、その一環として、千葉地区では千葉市が、船橋地区では国が直轄で埋立工事に着手したのが、現在へと続く千葉港の整備の実質的な始まりである。戦後の1953年には千葉港と船橋港の港湾区域が決定し、千葉県が港湾管理者になると、翌1954年7月1日には、国際貿易港として関税法上の「開港」に指定された。
 開港以来、千葉港は基幹産業が集積する京葉臨海工業地帯の基盤的港湾として着実に成長。日本の高度経済成長を支える役割を担った。
 工業港的な機能の強い港湾として発展してきた千葉港だが、近年は国際貿易港としての成長も著しい。商業港的機能を充実させる目的で港湾施設の整備を進めるとともに、国際海上コンテナ輸送の進展に対応するため、1990年代半ばからは外貿コンテナの取り扱いも始まった。2011年には全国で18港ある国際拠点港湾の一つに指定された。
 また、日本一長い人工海浜(約4,320m)や緑地などの整備により、海洋レクリエーションの場として多くの市民に利用されているのも、千葉港の持つもう一つの特徴といえる。東京湾の最奥部に広がる干潟や浅瀬は、開発が進んだ東京湾に残された貴重な自然環境として市民に親しまれている。生物の生息や東京湾の水質浄化など、環境維持にも大きく貢献している。
 千葉市の中心部に近い千葉中央地区では、千葉港の玄関口にふさわしいにぎわいのある親水空間の整備も進められ、2018年に「みなとオアシス千葉みなと」として登録された。
■ 千葉港のあゆみ
位置図
 
新たな時代の要請に応え、港湾計画を改訂
 
ふ頭再編事業がスタート
 港湾管理者の千葉県は、千葉港の整備・管理・運営の指針となる港湾計画を定めている。2017年1月に県は、20~30年後を見据えた「千葉港長期構想」を策定。これと連動し、千葉港の港湾計画の改訂を行った。2002年の前回改訂から15年以上が経過し、千葉港を取り巻く社会・経済情勢も大きく変化していたためだ。改訂案は、千葉県地方港湾審議会と国の交通政策審議会港湾分科会での審議を経て正式決定し、2018年12月に新計画が告示された。
 新計画は、コンテナ貨物や完成自動車の取扱量増大への対応や、効率的な荷役と船舶の大型化に対応した公共ふ頭の物流機能強化、各地区の親水空間とにぎわい空間の連携を図る海上交通のネットワーク化、安全な市民生活を支える防災機能の強化などに取り組むことを打ち出した。2030年代前半を目標年次として、「グローバル化、地域間競争の時代の県内企業を支える千葉港」「県民の生活と安心を支え、県民と共にある千葉港」「環境を守り、人々が海を感じふれあえる千葉港」を将来像に掲げている。
 新計画に盛り込まれた港湾施設整備の柱になっているのが、千葉中央地区のふ頭再編事業だ。千葉中央地区では、コンテナ、完成自動車、RORO、一般貨物と荷姿の異なる貨物を多く取り扱っているが、それぞれ利用する岸壁や荷さばき地の配置が混在しており、非効率な荷役が発生している。
 コンテナの取扱量は既にターミナルの能力を超過。RORO船の大型化ニーズにも対応できていない。完成自動車はヤード不足のため臨時野積場への横持ちが発生。岸壁延長が不足しているために大型の自動車専用船が隣接岸壁にはみ出して着岸するといった問題も起きていたという。
 
千葉中央地区のふ頭再編計画
 
RORO船用岸壁から、2021年着工目指す
 
ヤード拡張、岸壁機能強化
 ふ頭再編事業では、こうした問題を解消するため、岸壁と背後用地の一体的な利用を可能にする機能配置と、船舶の大型化ニーズに対応した岸壁機能の強化を柱に進められる。
 コンテナヤードを拡張し、岸壁の増深・延伸、連続2バース化を行うほか、自動車ヤードの拡張と集約も実施。ROROヤードの集約と岸壁の機能強化、一般貨物ヤードの集約も進める。千葉中央ふ頭と出洲ふ頭の間にある水域(約28ha)を埋め立てて新たなヤード用地を造成する。
 事業は、埋め立てや用地造成を県、岸壁の増深や機能強化を国が分担して進める。国土交通省関東地方整備局は、出洲ふ頭の先端にある延長220mのRORO船用の岸壁の増深・機能強化から工事に着手する計画だ。現在基本設計に入っており、「2021年の着工を目指す」(千葉港湾事務所)という。
 切迫する大規模地震への備えとして、従来の緊急物資等輸送用岸壁に加え、機能強化したコンテナ岸壁とRORO船用の岸壁を新たに「幹線貨物輸送用岸壁」に位置付けることも新計画に盛り込まれている。
 
みなとを憩いとにぎわいの場に
 千葉港を都市のにぎわい拠点として活かす取り組みも進んでいる。その中心となっているのが、千葉市街に近い千葉中央地区。県と市は、千葉港のにぎわい創出を目指し、JR京葉線の千葉みなと駅の海側一帯で、土地区画整理事業と連携した親水空間の整備を進めている。
 旅客船などが発着できる浮桟橋や円形広場(展望デッキ)、緑地などの整備に取り組み、2016年に浮桟橋1基と緑地の一部、旅客船ターミナル等複合施設がオープン。2018年には2基目の浮桟橋も完成した。
 緑地は、公園緑地と港湾緑地を一体的に利用できるよう園路や植栽のデザインを統一。公園部分は海を眺望できる空間を確保し、芝生広場を設けている。広場を利用して「千葉湊大漁まつり」やフリーマーケットなどさまざまなイベントも開催されている。
 これらの施設に、周辺施設の「千葉ポートタワー」や「千葉ポートパーク」などを含めた9施設が2018年3月、「みなとオアシス千葉みなと」として登録された。
 千葉ポートパークにある千葉ポートタワーは、千葉県民500万人突破を記念し1986年にオープンした千葉港のシンボル施設。レストランなども備えたガラス張りの展望塔で、地上113mの展望フロアからは広大な千葉港を一望できる。ここから見る千葉港の夜景も人気があるという。
 船橋市や習志野市などの東京湾沿いに広がる約1,800haの干潟「三番瀬」も市民の憩いの場になっている。広大な干潟には多くの水鳥が集まり、夕暮れの美しい風景などでも知られる。東京都心からも近い潮干狩り場として、春から初夏にかけて多くの人でにぎわう。

市民の憩いの場としてにぎわう千葉みなと港湾緑地 みなとオアシス登録を記念したモニュメントの除幕式
 

(取材協力・資料提供/国土交通省関東地方整備局千葉港湾事務所、千葉県)

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