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雄物川の旧河口部に開けた秋田港

 秋田県の中央部を流れる1級河川・雄物川の旧河口部に築かれた秋田港。古くは秋田杉や米など特産品の移出港、北前船が往来する日本海北部の要港として栄え、現在も国内外との重要な交易・交流拠点の役割を果たしている。さらに近年、大きな関心を集めているのが、周辺で計画が相次いでいる洋上風力発電事業だ。風況に恵まれた秋田県の沿岸域が適地として注目され、発電施設の建設や維持管理の拠点としての秋田港に熱い視線が注がれている。四方を海に囲まれた日本で最有望の再生可能エネルギーといわれる洋上風力発電。秋田港の新たな役割に地元の期待も大きい。

【港湾概要】
■港湾区域面積 約2,960ha
■臨港地区面積 約810ha
■入港船舶数 2,593隻(1,739万7,309総トン)
■取扱貨物量 745万1,601t
■船舶乗降人員 12万2,770人
■港湾管理者 秋田県
  (数字は2018年)
 
恵まれた風況と再エネ海域利用法が追い風に
 
海岸線に立ち並ぶ巨大風車
 JR秋田駅から車で約20分、秋田港の一画に整備された観光・交流施設「みなとオアシスあきた港・道の駅あきた港」。中心施設の「ポートタワーセリオン」は全面ガラス張りの展望塔だ。エレベーターで上がった地上100mの展望室は360度の大パノラマ。足元に広がる秋田市街と秋田港、西に日本海、東に奥羽の山々を一望の下に見渡せる。
 眼下の秋田港の風景にアクセントを与えているのが、海岸沿いの陸地に点々と立ち並ぶ白い巨大な風車。この一帯が風力発電の適地であることをうかがわせる。
 再生可能エネルギーの一つ、風力発電。中でも海域を利用する洋上風力発電の普及拡大に向けて秋田港は今、男鹿半島を挟んで北にある同じ秋田県の能代港とともに関係者の大きな注目を集めている。秋田県の沿岸域は、常に安定した風が得られるとされ、風力発電に最も適した有望区域の一つとなっているためだ。
 従来の港湾区域(港内)に加え、一般海域(沖合)を利用した洋上風力発電事業を解禁する「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」(再エネ海域利用法)が2019年4月に施行された。同法に基づき、国土交通省と経済産業省は洋上風力発電事業の「促進区域」を指定するため、風況や地盤条件などを考慮し、2020年7月時点で全国で14の候補区域を抽出。このうち8区域を「準備を直ちに開始する有望な区域」に選んでおり、うち1区域は促進区域に指定されている。秋田県の沿岸からは候補区域に4区域が選ばれ、「秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖」、「秋田県由利本荘市沖(北側)、同(南側)」、「秋田県八峰町及び能代市沖」の3区域は有望区域に入った。
 
ポートタワーセリオンの展望室から望む秋田港 洋上風力発電の作業基地と想定される飯島地区の岸壁(右下)
 
環日本海交流の活発化支える
 雄物川の河口に開けた秋田港は、1941年に土崎港町と秋田市の合併によって改称されるまでは「土崎港」と称していた。その繁栄の歴史は室町時代にまでさかのぼる。江戸時代に日本海から瀬戸内を通って大阪に至る「西廻り航路」が開設されると北前船が往来し、海運の発達とともに港の隆盛が続いた。
 明治に入り、和船、帆船から汽船の時代になると、流砂の堆積などによる河口移動への対策が急を要し、築港運動が起こった。1885年には内務省の土木技師・古市公威の指導で初めて係船岸壁となる「古市波止場」が完成。1902年には「近代港湾工学の父」とも称される廣井勇を招き「廣井波止場」も完成した。大正に入ると築港運動が本格化。増水や流下土砂による埋没など河川港の宿命からの脱却を図るため、雄物川を分流する放水路の開削工事が1917年に国の直轄事業で始まり、1938年に完成した。
 太平洋戦争終戦前日の1945年8月14日の「土崎大空襲」で港は壊滅的な打撃を受けた。終戦後の経済混乱で港の整備は窮地に立たされたが、軍艦3隻を沈めて航路を漂砂から守る防波堤を築くなど工夫を重ね、復興への道を歩み出した。近代港湾としての整備は1965年に秋田湾地区が新産業都市の指定を受けて本格化した。同年、大型港湾への第一歩として1万トン級の船舶が接岸できる岸壁が完成。その後、大浜地区の掘り込みや外港地区の埋め立てが展開された。1983年5月26日の日本海中部地震では、大型岸壁25バース中20バースに被害を受けたが、2カ年で復旧し、港湾の機能を取り戻した。
 環日本海交流が活発化する中、1990年代からは韓国や中国との間のコンテナ航路が開設され、2012年には国際コンテナターミナルが供用。1999年からは苫小牧、新潟、敦賀を結ぶ定期フェリーも就航している。2018年にはクルーズターミナルの供用も始まった。
■秋田港のあゆみ
秋田港の各地区と防波堤
 
作業基地を想定し、ふ頭用地の地盤を強化
 
風力発電計画めじろ押し
 こうした動きと前後し、促進区域指定後の発電事業者公募に向けて民間企業による洋上風力発電プロジェクトの構想が相次いでいる。2020年3月時点で、一般海域では秋田港に近い由利本荘市沖などで2件の計画が既に発表されている。北隣の能代市沖や、その北の青森県つがる市沖などまで含めると周辺での計画は9件に上る。さらに、先に解禁された港湾区域の洋上風力発電や、沿岸部の陸上風力発電も含めると、北東北の日本海沿岸は風力発電計画がめじろ押しの状況だ。
 港湾区域の洋上風力発電として秋田港内では既に、丸紅など13社が出資する特別目的会社「秋田洋上風力発電株式会社」が事業者に選定され、2022年の稼働開始を目指している。
 洋上風力発電のメリットは、陸上よりも安定した風を得られることに加え、経済性に優れた大規模な施設を建設しやすいこと。ただし、その施設の建設や維持管理には、巨大な部材の荷役と保管・輸送などに対応できる広大な敷地と、重量物の保管に耐えられる頑丈な岸壁などが必要になる。国土交通省は今年2月に施行された改正港湾法で、拠点となる作業基地を近隣の港に整備し、発電事業者に長期間貸し付ける制度を導入した。
 基地港への利活用が期待される港の一つが秋田港だ。東北地方整備局は飯島地区にある水深11mの耐震岸壁を作業基地と想定。直轄事業で「飯島地区岸壁地盤改良工事」として背後のふ頭用地を地盤改良し、地耐力を大幅に高める工事を進めてきた。今夏に工事が完了すると、地耐力は1㎡当たり最大35t(通常は3t)となり、風車のタワーなど重量物の保管にも耐えられるようになる。
 港が風力発電の作業基地になることには、地元の期待も大きい。秋田県は6月、県内の一般海域で洋上風力発電事業が行われた場合の経済効果の試算を発表した。風車の据え付けや送電網などの直接投資を9,469億円、うち県内企業の受注額を2,434億円と見込む。地元企業にとっても新たな受注機会や雇用が生まれるチャンスと期待されている。
 
ふ頭用地の地耐力を高める地盤改良工事
 
物流・交流の拠点としても重要な役割果たす
 
外貿コンテナ取り扱い過去最高
 秋田港には現在、5万t岸壁1バース、4万t岸壁1バースなど計28バースの公共岸壁が整備され、県内物流の拠点としても早くから重要な役割を果たしてきた。コンテナ航路は1995年11月に韓国・釜山港との間に開設。コンテナ貨物の増加とともに航路開設も進み、2011年7月には韓国・中国航路が開かれた。
 同年11月には日本海側拠点港の国際海上コンテナ分野に選定され、2012年4月に国際コンテナターミナルが供用を開始。2015年1月にはコンテナヤードが拡張され、年間処理能力が7万TEUから10万TEUに拡大するなど、日本海側における東アジア地域やロシア沿海州地域との交易・交流拠点として機能強化が図られた。
 外貿コンテナは、韓国航路が週3便、中国・韓国航路が週2便就航。2018年は5万271TEU(外貿実入り)の取り扱いがあり、さらに2019年は5万1,204TEU(外貿実入り、速報値)と過去最高を記録した。2018年の取扱貨物量は、石油製品、木材チップ、重油などを中心に745万1,601t(輸出52万5,236t、輸入145万4,653t、移出153万440t、移入394万1,272t)となっている。
 1999年7月に開設された苫小牧東~秋田~新潟を結ぶフェリー航路(週6便、うち週1便は敦賀まで延伸)も貨物物流の一端を担うとともに、多くの旅行者にも利用されている。
 近年のクルーズ需要に対応するため、2018年4月にはクルーズターミナルも整備された。同年のクルーズ客船の寄港数は過去3番目となる17回、翌年には過去最高の21回となるなど、広域観光の拠点として地域経済の発展に寄与すると期待されている。
 
秋田港コンテナ取扱貨物量
 
市民や観光客に憩いの場を提供
 秋田港では1988年から本港地区の再開発を目的とした「ポートルネッサンス21事業」が進められ、1994年に市の港湾文化交流施設のポートタワーセリオンがオープン。周辺のイベント広場や商業施設、駐車場なども相次ぎ整備され、2005年7月に「みなとオアシスあきた」(2015年「みなとオアシスあきた港」に改称)として登録。2010年7月「道の駅あきた港」にも登録され、市民の憩いの場や人気の観光スポットとして親しまれている。毎年7月には「秋田港海の祭典」が催され、セリオンの来館者数は2019年度まで4年連続で100万人を突破した。
 2020年は新型コロナウイルスの影響で不透明になったが、クルーズ船の寄港も毎年増加。夏の秋田竿燈まつりに合わせて寄港する船もあり、背後の豊富な観光資源を生かしたクルーズ船観光の拠点にもなっている。JR東日本秋田支社は2018年4月、既存の貨物用線路を利用し、クルーズ船の寄港に合わせて秋田港駅と秋田駅の間(約9km)を約15分で結ぶ「秋田港クルーズ列車」の本格運行を始めた。
 秋田港には海洋レクリエーション基地としての顔も。飯島地区にはプレジャーボートを受け入れるマリーナが整備されているほか、昨年には国土交通省の「釣り文化振興モデル港」にも指定された。立ち入りが規制されていた外港地区の沖へ延びる北防波堤を、安全対策を施した上で釣り人に開放する取り組みが進んでいる。昨夏の2回の試験開放には大物を狙って160~170人を超す人が訪れた。

ポートタワーセリオン
 
JR東日本が運行するクルーズ列車(2018年4月18日) 釣り人への試験開放が始まった北防波堤
 

(取材協力・資料提供/国土交通省東北地方整備局秋田港湾事務所)

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