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高松港の中心地(玉藻地区と朝日地区) |
四国・香川県の中心都市、高松市。瀬戸内海に門戸を開き、海上交通の要衝として古くから重要な位置を占めてきたのが高松港だ。穏やかな瀬戸内の島々を望む「多島美」で知られ、背後圏の活発な産業活動と、近隣の島々や本州との人々の盛んな往来を支えている。近年は特に、港の周辺に立地する大手メーカーなどの増産投資や輸出が活発化。モーダルシフトが進む中で四国を代表する海の物流拠点としての成長が著しい。こうした現状に対応し、今年度から新たに複合一貫輸送ターミナルの整備事業がスタートする。 |
活気づく深夜のフェリーターミナル |
大型のフェリーが発着する高松港朝日地区のフェリーターミナル「高松東港ヤード」。そろそろ日付が変わろうとする深夜、フェリーの入港に合わせて大型のトラックやトレーラーが続々と集まってきた。街が寝静まるこの時間は、ターミナルが一日のうちで最も活気づく時間帯でもある。 水深6mの岸壁に接岸したのは、ジャンボフェリー株式会社が運航するフェリー「りつりん2」。高松港と神戸港の間を4時間15分で結ぶ。ふ頭の駐車スペースは、乗船を待つ車両で既にあふれかえっている。接岸したフェリーから下船した大型トラックが次々と夜の街へと走り去っていく。 フェリーに乗り込んだトラクターに引かれてシャーシの下船が終わると、いよいよ乗船開始だ。トレーラー、大型トラック、4トン車、乗用車の順で積み込んでいく。有人トラックと違い、トレーラーはシャーシとトラクターとの切り離し作業に時間がかかる。乗船待ちの駐車スペースは狭い上に、有人トラックやシャーシなどが混在し、入り切れずに場外で待機するトラックもある。積み込みの責任者は順番を間違えないよう、慎重に車両を送り出していく。狭い駐車スペースと車両甲板の間を大型車両が縦横無尽に行き交う緊迫の時間だ。ドライバーの腕も試される。 毎日、この一連の作業を1時間で終えなければならない。積み込みを終えた午前1時、フェリーは神戸へ向けて無事出航した。 |
■高松港のあゆみ | ![]() 大型車が続々と集まるフェリーターミナル |
立地企業の増産とモーダルシフト |
高松港のフェリーターミナルは近年、右肩上がりで利用が拡大している。フェリー航路が輸送する国際フィーダーコンテナが増加傾向にあるためだ。2018年にフェリーで取り扱った国際フィーダーコンテナは前年比7.5%増の5万7,000TEU(20フィートコンテナ換算)。2019年は5万9,000TEUに上り、コンテナターミナルと合わせると、高松港全体で6万3,000TEUの国際フィーダーコンテナを取り扱っている。 ジャンボフェリーは神戸港との間に1日4往復(2隻)が就航しており、国際コンテナ戦略港湾である阪神港への集貨の一翼を担う。夜間に高松港を出る便は、貨物を早朝に神戸や中部地方へ届けることができる点が荷主のニーズに合致し、利用が多い。 フェリーの利用が増えている背景には、背後地に立地する企業の増産投資が活発化し、貨物需要が急拡大していることがある。その代表が、建設機械メーカーの株式会社タダノだ。同社は高松港香西地区に約215億円を投じて建設用クレーンの新工場を建設。2019年8月に操業を始めた。工場からバージ船でフェリーターミナルまで製品を運び、神戸港を経由して世界各国に供給しており、工場をさらに拡張する計画もある。 ほかにも周辺に立地する基礎素材や化学品、医薬品、生活用品などの大手メーカーが相次いで生産能力の増強と輸出拡大に乗りだしており、貨物需要の拡大が続く。 一方で、全国的に深刻化しているのがトラックのドライバー不足。トラック輸送を海上輸送に切り替えるモーダルシフトが進む。このため最近はフェリーへの積み残しが顕在化。2018年には高松港発で707台が満船のため乗船できなかった。特に夜間に出航する便に積み残しが多い。海上輸送への切り替えは輸送コストの削減にも直結するだけに、積み残しの増加は深刻な問題だ。 |
高松~神戸 フェリー輸送台数のうちトラック輸送 |
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タダノの工場から運ばれてきた建設用クレーン | 岸壁や泊地の整備が始まるフェリーターミナル(左側) |
物流機能を強化、防災拠点にも |
こうした現状を踏まえ、物流機能の抜本的な強化を図ろうと、国土交通省は2020年度から朝日地区で複合一貫輸送ターミナルの整備事業に乗りだす。プロジェクトは岸壁(水深7.5m、延長200m)と泊地(水深7.5m、面積5.4ha)、ふ頭用地(1.4ha)、サイドランプ(乗降施設)などで構成され、総事業費は73億円。岸壁と泊地を四国地方整備局が直轄事業で整備し、既存のフェリーターミナル北側の遊休地等を活用し、フェリーターミナルを拡張するのは香川県、乗降施設は民間がそれぞれ整備を担当する。事業期間は2025年度まで。四国地方整備局は「早期の現地着工を目指す」(高松港湾・空港整備事務所)としている。 ジャンボフェリー株式会社が運航しているフェリーは3,700総トン級、積載台数68台(12mトラック換算)の2隻。いずれも船齢が30年を超えている。同社は今後、より大型の新造船へと段階的に更新する計画で、岸壁もこれに対応できるよう整備を進めていく。 岸壁は耐震強化施設として整備する予定で、南海トラフ地震など大規模地震の発生が切迫する中、緊急物資の海上輸送拠点、背後圏の経済活動の維持、さらには四国全体の防災拠点といった機能を確保する意味でも重要な事業になりそうだ。 香川県内にはタダノや大型アクリルパネルメーカーの日プラ株式会社をはじめ、日本を代表する企業の生産拠点が多く立地している。これらの企業活動を支え、新たな物流ニーズに応えていくために港湾機能をどう高めていくか。また災害時に離島への緊急物資の供給をどう行っていくか。 四国地方整備局では今後、港湾管理者の香川県と協力し、そうした観点から将来を見据えた高松港の在り方も検討していく方針だ。 |
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瀬戸内国際芸術祭の会場を結ぶ離島フェリー | 多くの人でにぎわう「美讃」の一般公開 |
(取材協力・資料提供/国土交通省四国地方整備局高松港湾・空港整備事務所) |
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