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穀物サイロなどが集積する国際バルク戦略港湾国際物流ターミナル

 北海道東部の最大都市・釧路。「阿寒摩周」「釧路湿原」の二つの国立公園をはじめとする雄大な自然に恵まれ、広大な背後圏で営まれる酪農、国内有数の水揚げ量を誇る水産業、豊富な森林資源を生かした林業や製紙業など産業活動も活発だ。こうした地域資源の活用と道東地域の経済活動を支えてきたのが、太平洋に面した釧路港だ。2011年には「国際バルク戦略港湾」に選定され、2018年に全国10バルク戦略港湾のトップを切って穀物輸入の拠点施設となる「国際物流ターミナル」が完成。2019年に供用を開始した。日本の食料供給基地を支えるインフラとして一段と重要性を増す釧路港の「今」をリポートする。

【港湾概要】
■港湾区域面積/ 2,695ha
■臨港地区面積/ 350ha
■取扱貨物量(2017年)/ 1,581万t(外貿284万t、内貿1,297万t)
■入港船舶数(2017年)/ 1万782隻
■港湾管理者/ 釧路市
 
穀物バルクターミナルが始動、全国で第1号
 
北米から穀物大型船が入港
 2019年4月5日、北米西海岸のシアトル港から飼料用原料となる5万4,000tのとうもろこしを積んだ大型外航船「MANOUSOS P」が、釧路港をファーストポートとして初入港した。接岸したのは、西港区第2ふ頭に完成した国際物流ターミナルの水深14m岸壁。4月9日には、ターミナルの運営会社・釧路西港開発埠頭株式会社や市の関係者らが出席して歓迎セレモニーが開かれた。船長に花束が贈られ、蝦名大也市長から記念品が贈呈されるなど、早春の港は華やかな雰囲気に包まれた。
 MANOUSOS Pは全長約228m。釧路港での荷下ろしで喫水が浅くなったMANOUSOS Pは残りのとうもろこしと共に名古屋港へ向かった。
 釧路港は2011年、国際バルク戦略港湾に選定された。国際バルク戦略港湾は、資源・エネルギー・食糧などの安定的かつ安価な輸入の実現に役立つ大型船に対応した港湾機能の確保によって、安定的・効率的な海上輸送網の形成を図ることを目的とした国の政策。釧路港は、鹿島(茨城)、志布志(鹿児島)、名古屋(愛知)、水島(岡山)の4港と共に穀物分野のバルク戦略港湾に選定され、国際物流ターミナルの整備が2014年度に始まった。
 パナマックス船など大型船舶による穀物の大量一括輸送を可能にするため、182億円の事業費をかけ、水深12mの既存岸壁の前に水深14mの岸壁を新設。アンローダーやベルトコンベヤーなどの高性能な荷役機械も整備し、試験運転を経て2019年3月に供用を開始した。
 日本の港の中で釧路港は、世界最大の穀物生産地である北米に最も近く、しかも背後圏には日本を代表する一大酪農地帯を抱えている。そうした地理的優位性も、全国の国際バルク戦略港湾のトップを切って穀物の国際物流ターミナルが完成したことの背景にある。
 2016年には国土交通省から、荷役機械に対する税制優遇などがある「特定貨物輸入拠点港湾(穀物)」にも全国で初めて指定されており、穀物輸入拠点港としての機能強化への期待は大きい。
 実際、国際物流ターミナル周辺では関連民間企業が次々と穀物用サイロの増設や飼料工場の建設などの設備投資に動いている。民間投資の誘発額は2019年3月時点で約116億円に上ると見込まれており、背後圏では酪農業や食料品製造業等の投資も誘発されている。
 釧路港の外貿取扱貨物量284万tのうち264万tが輸入。これを品目別に分けると、とうもろこしが84.3万tと全体の32%を占めて最も多い。これらを原料にした飼料が背後圏の酪農地帯に供給され、ここで生産された生乳が釧路港からRORO船によって大消費地の首都圏などへ供給されている
 
「背後圏の発展と共に港拡張」
 釧路港は、釧路川の河口部に位置する場所(現在の東港区)に江戸時代、松前藩の交易所が置かれたのが始まりとされる。明治時代には北海道開拓の拠点の一つとなった。背後圏の開発や産業発展と共に港の拡張が進展。戦後は1951年に重要港湾に指定され、1969年からは物流拠点機能拡充のために西港区の整備が進められてきた。
 東港区は古くから石炭や木材の輸送拠点、また全国有数の水揚げを誇る漁業基地として発展した。現在はクルーズ船が寄港する旅客船バースも整備され、ウオーターフロントの賑わいや市民の交流の中心地ともなっている。
 西港区は第1~4ふ頭が供用され、物流の中核を担っている。第1ふ頭では釧路の基幹産業の一つである製紙業の製品が扱われ、木材チップ船や製品出荷用のRORO船が利用。第2ふ頭は国際バルク戦略港湾の中核施設としての穀物利用と主に生乳の出荷を行うRORO船が利用。コンテナヤードのある第3ふ頭は中国・韓国へ週4便の外貿コンテナ船が就航。水産品や雑貨の輸出入に利用されている。第4ふ頭では製紙燃料となる石炭の輸入や東南アジア向けの金属くずなどが取り扱われている。
釧路川の河口から西側へ拡張されてきた釧路港
 
北米から最短距離、背後に酪農地帯の優位性生かす
 
初のジャケット式桟橋採用
 今回の国際物流ターミナルの整備には、建設技術や完成後の施設の維持管理面からもさまざまな工夫が取り入れられた。
 新たに整備した水深14m岸壁は延長300m。既存の西港区第2ふ頭の水深12m岸壁の利用に支障を来さないよう、150m沖合に位置している。稼働率の高い水深12m岸壁の利用者への影響を最小限に抑えるためには、短期間で完成させることが必要だった。そこで岸壁本体には、鋼管で組み立てた立体トラスを海底地盤に打ち込んだ鋼管杭にかぶせるジャケット式桟橋構造を採用。上部工のコンクリート床版にはプレキャスト部材を活用し、海上での作業時間を大幅に短縮した。
 釧路港でのジャケット式桟橋の採用は初めて。ジャケットは1基が長さ24.6m、幅20.0m、高さ14.0m、重量167tで、これを11基使用。三重県津市と北九州市で組み立てたものを海上輸送し、国内最大級の1,800t吊り旋回式起重機船で据え付けた。
 災害時やメンテナンスの際に岸壁が利用できなくなるのを避けるため、施設の強靱化と長寿命化も図った。
 ベルトコンベヤーの下に設置された床版が劣化すると、補修中は長期にわたって荷揚げができなくなるリスクがあるため、鉄筋に代え塩害劣化の恐れがない炭素繊維複合材を用い、床版を長寿命化した。潮の干満や波しぶきの影響を受けるジャケットには、さびや腐食を防ぎ、長期の耐久性が期待できるステンレス金属被覆と超厚膜形成塗装が採用されている。さらに、釧路港が地震多発地帯に位置することを考慮し、岸壁を耐震化するとともに、民間企業が設置する荷役機械には免震構造を採用した。暴露試験用のテストピースを使った施設点検の省力化も取り入れた。
 
MANOUSOS Pの初入港を歓迎する関係者 RORO船により釧路港から生乳が首都圏に毎日運ばれる
 
 
岸壁の建設・維持管理効率化へ多様な技術導入
 
技術に高評価、相次ぎ表彰
 こうした工夫は、国、港湾管理者、民間が「釧路港国際バルク戦略港湾施設整備検討会」を組織して取り組んだ成果だ。2019年9月には国土交通、総務、文部科学、厚生労働、農林水産、防衛の各省が共同で行う第3回「インフラメンテナンス大賞」でメンテナンス実施現場における工夫部門の優秀賞を受賞した。
 2019年5月には日本港湾協会からも、港湾の整備や管理で特に優れた技術を取り入れた事業などを表彰する「日本港湾協会技術賞」が授与されている。計画段階からメンテナンスを十分に考慮したインフラ整備のお手本ともいえそうだ。
 
岸壁工事では11基のジャケットを据え付けた
 
みなとオアシス
新元号で登録第1号 クルーズ船のおもてなしで賑わう霧の街
 「みなと」を核としたまちづくりを促進するため、住民参加による地域振興の取り組みが継続的に行われる施設を国土交通省港湾局が登録する「みなとオアシス」。2019年5月1日、全国128カ所目のみなとオアシスに「釧路みなとオアシス」が登録された。元号が令和になって全国第1号という記念すべき登録。現地では5月15日、クルーズ船の寄港に合わせて登録証交付式が行われた。
 釧路みなとオアシスの代表施設は、水産加工品やお土産の販売店と飲食店を備え、年間70万人の旅行者が訪れる釧路市を代表する情報発信・交流拠点「釧路フィッシャーマンズワーフMOO&EGG」。クルーズ船の寄港時には市民が一体となって盛り上げるおもてなしイベントを繰り広げる。
 釧路といえば「霧の街」。この霧を逆に楽しもうと、7月には「くしろ霧フェスティバル」が開かれる。霧に包まれた夜空を鮮やかに彩るレーザーとサウンドが織りなす幻想的な雰囲気が人気のイベントだ。このほかにもさまざまなイベントが四季を通じて市民と観光客を楽しませる。

フィッシャーマンズワーフMOO&EGG 寄港したクルーズ船
 

(取材協力・資料提供/国土交通省北海道開発局釧路開発建設部)

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