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多くの企業の工場などが集積し、生産・輸出入の拠点となっている水島港
提供:中国地方整備局宇野港湾事務所

 白壁の街並みが残る「美観地区」などが国内外から多くの観光客を引き付ける岡山県倉敷市。48万人の人口を抱える中核市・倉敷市のもう一つの顔が、数多くの大手企業が製造拠点を構える工業都市の顔である。市南部の瀬戸内海沿岸に開けた水島臨海工業地帯は、全国でも有数の規模を誇る一大工業地域。その屋台骨を支えているのが、原材料や製品の輸出入拠点となっている国際拠点港湾・水島港だ。2011年には「国際バルク戦略港湾」にも選定され、大型船による輸入穀物の連携輸送を実現するための施設整備も本格化している。

【港湾概要】
■港湾区域面積/ 8,211ha
■臨港地区面積/ 2,643ha
■取扱貨物量(2017年)/ 8,460万t(外貿5,517万t、内貿2,943万t)
■入港船舶数(2017年)/ 3万1,266隻
■港湾管理者/ 岡山県
 
背後に一大工業地域、岡山県の製造業の拠点
 
工業港と商港で機能分担
 水島港は、倉敷市内を北から南へ貫流する1級河川・高梁川の河口を挟んで、東側の水島地区と西側の玉島地区の2地区からなっている。
 このうち水島地区は、鉄鋼や石油コンビナートを中核とする水島工業地帯の玄関口として、工業港の機能を担う。各企業の生産活動に必要な原材料や製造品が取扱貨物の中心で、民間の専用ふ頭が大半を占めている。
 一方、玉島地区は旧玉島港の港口部の大規模な埋め立て事業によって築かれ、内外貿の公共ふ頭を中心として商港の機能を担ってきた。
 水島地区が「生産ゾーン」、玉島地区が「物流ゾーン」という位置付けで機能分担をしているのが水島港の特徴の一つにもなっている。
 岡山県が今年2月にまとめた「水島臨海工業地帯の現状」(2018年度版)によると、水島工業地帯に立地する事業所数は857カ所(2016年)。約2.2万人の雇用を生み出し、製造品出荷額は約3.1兆円と、岡山県全体(約7.1兆円)の44%を占めている。名実ともに岡山県の製造業の拠点である。
 水島港の総取扱貨物量(2017年)は、外貿5,517万t、内貿2,943万tの合計8,460万t。全国の港湾で第10位、中国・四国地域では第1位を誇る。輸入では原油、鉄鉱石、石炭、輸出では鋼材、石油製品、化学薬品などの品目が多くを占めている。
 玉島地区の人工島「玉島ハーバーアイランド」では、中国、韓国、東南アジアとの物流拠点として国際物流ターミナル(コンテナ)が整備され、1998年に4号ふ頭(水深7.5m)、2002年に6号ふ頭(水深10m)が供用を開始。翌2003年4月に水島港は全国で23港目の特定重要港湾(現国際拠点港湾)に昇格した。2013年、6号ふ頭で水深12mの耐震岸壁が供用を開始。現在、4基のガントリークレーンが稼働するコンテナターミナルとなっている。
 2019年4月現在、水島港からの国際定期コンテナ航路は2カ国1地域への18航路で、週19便(韓国11、中国7、台湾航路1)が運航されている。
 
 
コンテナターミナル
提供:中国地方整備局宇野港湾事務所
 
高梁川の河口を挟んで東が水島地区、西が玉島地区
提供:中国地方整備局宇野港湾事務所
 
穀物輸送の効率化目指すバルクターミナル整備
 
鉄鉱石と穀物で国際バルク戦略港湾に
 港湾の機能と競争力を強化する政策の一環として国土交通省は2011年5月、ばら積み貨物船の大型化に対応する「国際バルク戦略港湾」を全国から11港選定。水島港は全国で唯一、鉄鉱石と穀物という2品目を対象にした国際バルク戦略港湾に選ばれた。
 水島港の鉄鉱石の輸入量は約1,293万t(2015年港湾統計)と全国5位。背後地のJFEスチール西日本製鉄所の粗鋼生産に利用されている。さらに、穀物のとうもろこし・豆類の輸入量は約170万t(2014年港湾統計)と全国4位。背後地には配合飼料や植物油脂、製粉などの企業の生産拠点が集積し、これらとサイロ企業を合わせて食料・飼料コンビナートを形成。近畿・中国・四国地方一円の穀物輸入拠点として重要な役割を果たしてきた。
 国際バルク戦略港湾政策は、大型化するばら積み貨物船に対応できる拠点港湾を整備し、個々の企業の中型船による輸送から、企業間連携による大型船を活用した一括大量輸送への転換を促進する政策だ。
 近年、ばら積み貨物船の大型化が進んでいるが、大型船に対応できる港湾は国内では限定的。このため各港湾では中型船による非効率な海上輸送を余儀なくされてきた。このままでは、資源・エネルギーのほぼ100%を輸入に頼る日本は、激化する世界的な資源獲得競争で大きな後れを取ることになる。そうした危機感がこの政策立案の背景にあった。
 
 
国際バルク戦略港湾政策とは…
  拠点となる港湾を指定し、効率的な海上輸送ネットワーク構築のための支援措置を講じることで、各港湾単位での中型船による海上輸送から、企業間連携による大型船を活用した一括大量輸送への転換を促進するのが目的。選定された港湾で順次、バルクターミナルの整備を推進する。
 例えば、日本の農業分野で最大の出荷額(約3割)を占める畜産業に不可欠な配合飼料の約半分はとうもろこし。主に北南米から輸出され、パナマ運河を経由して日本へ運ばれる。
 パナマ運河は2016年に供用した拡張整備で、より大型の船舶が通航可能になった。とうもろこしは世界的な荷動き量の増大や遠隔地からの輸入増に伴い、近年はバルク貨物船が大型化している。穀物の国際バルク戦略港湾は水島港のほか釧路、鹿島、名古屋、志布志の計5港が選定されている。
 
地元の期待大きく、工事にも注目集まる
 
初のジャケット式桟橋に大きな注目
 ばら積み貨物の一つ、穀物の輸入拠点として期待される水島港では2017年、大型穀物船を活用した効率的な共同輸送を実現するための「国際物流ターミナル整備事業(バルク)」が始まった。近畿、中国、四国地方の畜産業に必要不可欠な配合飼料の原料などとして用いられる穀物を積んだ大型船による共同輸送に対応できる岸壁、航路・泊地、ふ頭用地、荷役機械を玉島、水島の両地区で整備する計画だ。総事業費に約260億円が見込まれる一大プロジェクトである。
 先行して事業が進んでいるのが、「玉島ハーバーアイランド7号ふ頭」の施設整備だ。延長320m、水深12mの岸壁と航路・泊地を国が整備。港湾管理者の岡山県が、船からばら積みの穀物を陸揚げするアンローダーと呼ばれる荷役機械やサイロへ運搬するベルトコンベヤーなどとふ頭用地を整備する。来年春ごろの完成を目指して工事が進んでいる。
 岸壁の整備には、荷役形態や現地の施工条件などを考慮し、経済性と施工性に優れたジャケット式桟橋が採用された。初めてのジャケットの据え付け作業が行われたのは2018年10月15日。「中国地方整備局管内の港湾では初めてのジャケット式桟橋ということもあり、地元では大きな注目を集めた」と事業を担当する中国地方整備局宇野港湾事務所の佐々木隆之企画調整課長は振り返る。
 当日は600t吊りの起重機船が現場へ出動。長さ64m、幅20m、高さ、16.4m、重量375tのジャケットを3時間ほどかけて所定の位置へ据え付けた。現場では岡山大学の学生や県と倉敷市の職員ら計50人が作業の様子を見学。テレビ局も取材に訪れたという。現在は既に桟橋上の床版を敷き終えており、舗装を行うとほぼ完成。並行して岸壁前の航路・泊地を掘り下げる浚渫工事や荷役機械の設置などが急ピッチで進められることになる。
 一方、水島地区では水深14mへの岸壁や航路・泊地の増深などが計画されており、今後、諸調整がつき次第、整備が始まる予定となっている。
 
大型穀物船の受け入れに向けて整備が進む岸壁の完成イメージ

提供:中国地方整備局宇野港湾事務所
 
地元の大学生や自治体の担当者ら多くの人が見学したジャケットの据え付け作業

提供:中国地方整備局宇野港湾事務所
 

 
倉敷みなと大橋が水島・玉島地区直結
距離・時間短縮、災害時の経路確保にも期待
 広大な高梁川の河口部を挟んで東西に分かれる水島港の水島地区と玉島地区。両地区の間を行き来する貨物トラックなどの大型車両の交通円滑化は、かつて水島港の大きな課題の一つだった。この問題を解決したのが、2017年3月25日に開通した水島港臨港道路の「倉敷みなと大橋」だ。
 全長2,564mで2車線。両地区側のアプローチ部に挟まれた高梁川の渡河部だけでも1,279mの長さがある。
 倉敷みなと大橋が開通する前まで、両地区を行き来する大型車両は高梁川を上流側へ大きく迂回して国道429号の霞橋や水玉ブリッジラインの水島大橋を利用するしかなかった。遠回りの上に、貨物車両と一般車両が混在して慢性的な渋滞が発生。多くの無駄な時間と費用がかかっていた。
 倉敷みなと大橋が両地区を直結したことで、移動距離が11.5kmから9kmへ、移動時間が17分から12分へとそれぞれ短縮。交通量の分散によって、慢性的な混雑状況の緩和にもつながっている。
 さらに、想定される南海トラフ巨大地震など大規模災害の発生時には、玉島地区の海上輸送拠点(水深12m耐震強化岸壁)からの緊急物資の輸送経路や住民の避難経路を確保するのにも役立つと期待されている。
 
幅が1km以上ある高梁川の河口部をまたぐ倉敷みなと大橋
提供:中国地方整備局宇野港湾事務所
 
倉敷みなと大橋の整備効果
提供:中国地方整備局宇野港湾事務所
 

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