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国際旅客船拠点形成港湾に指定された清水港
提供:中部地方整備局 清水港湾事務所

 遠景に富士山を望み、三保の松原で有名な三保半島に抱かれた天然の良港、清水港は風光明媚な環境や立地に恵まれ、江戸と大阪を結ぶ中継基地、交通の要衝として古くから栄えてきた。特産のお茶をはじめ、マグロ油漬け缶詰、みかんなどの食品から玩具、日用品、さらにオートバイや自動車部品、楽器、精密機械まで、有数の「ものづくり県」にふさわしい総合港湾へと発展してきた。1899(明治32)年の開港から今年はちょうど120周年。さらなる発展へ向けて官民の連携による様々な取り組みが展開されている。

【港湾概要】
■港湾区域面積/ 1,268ha
■臨港地区面積/ 502ha
■取扱貨物量(2018年)/ 1,894万(t外貿1,278万t、内貿615万t)
■入港船舶数(2018年)/ 8,097隻(外航1,850隻、内航6,247隻)
■港湾管理者/ 静岡県
 
官民連携で活発なみなとまちづくり展開
 
ものづくり県を支える総合港湾
 2011年に国際拠点港湾に指定された清水港の外貿貨物取扱量を見てみよう。2018年の輸出量は重量ベースで455万(t前年比6.9%増)、輸入量は824万t(27.0%増)。輸出貨物は自動車部品、紙・パルプ、産業機械、LNG(液化天然ガス)、二輪自動車が多くを占める一方、輸入貨物はLNGが全体の54%と過半を占め、化学薬品、紙・パルプがこれに続く。外貿貨物のうち、コンテナの占める割合は輸出が90.1%、輸入が22.4%と、輸出はほとんどがコンテナ活用となっている。
 「意外と知られていませんが静岡はトップクラスの『ものづくり県』で、著名な立地企業も多く、自動車部品や機械装置などは単価も大きい」。中部地方整備局清水港湾事務所の木全啓介企画調整課長が現況を説明してくれた。静岡県の製造業の事業所数(9,079事業所)は全国第5位、その従業者数(40.3万人)は第3位、製造品出荷額(16.7兆円)も全国第4位の実力を誇る(いずれも経済産業省2018年工業統計速報による)。
 国際海上コンテナターミナルは袖師(そでし)地区の袖師第1ふ頭と新興津(しんおきつ)地区の新興津ふ頭にある。袖師コンテナターミナル(水深-12m、延長720m=240m×3バース)は主に近海航路の定期コンテナ船と定期RORO船が利用。新興津コンテナターミナル(水深-15m、延長700m=350m×2バース)は欧米・東南アジア航路の大型船が利用している。定期コンテナ航路は2019年5月時点で合計28航路。内訳は近海が13航路、東南アジアが12航路、極東ロシア、欧州、北米が1航路ずつ。「日本の5大港以外で欧米の定期コンテナ航路があるのは清水港だけ」(木全課長)であり、航路数は引き続き増加傾向にあるという。
 
三保半島に抱かれ、遠く富士山を望む清水港
 
大型ガントリークレーンを設置
 メインターミナルの新興津ふ頭では、コンテナ車両がゲートに並び始めてからコンテナヤードを通過しゲートを出るまでの所要時間が平均12分と全国的にも短いのが特徴。「清水港VAN」による事前予約やコンテナ輸送ドライバーのタブレット対応などの運用効果によるものだが、コンテナ車両の待ち時間が短ければ、より計画的な貨物の運送が可能になり、「ポートセールスにおいても清水港の優位性を示すもの」(木全課長)と言える。
 清水港の2018年のコンテナ取扱量は56万7,460TEU(TEU:20フィートコンテナ換算の取扱個数)。内訳は外貿48万3,450TEU、内貿8万4,010TEU。また2017年の我が国の港湾別コンテナ取扱量ランキングでは、清水港は全国9位。リーマンショックで一気に落ち込んだコンテナ取扱量も、ようやくそれ以前の水準まで持ち直してきた。清水港では荷役能力を強化するため、23列対応の大型ガントリークレーン1基(既設は18列対応)を2020年3月までに設置する計画だ。
 
国際クルーズ拠点形成港湾に指定
 訪日クルーズ旅客を2020年に500万人に増加させる目標を観光ビジョンに掲げ、政府は受け入れ環境整備を後押ししているが、清水港では全国に先駆けて国際クルーズ拠点の形成に向けた取り組みが行われてきた。清水港には1990年2月、豪華客船の代名詞ともいえるクイーンエリザベスⅡが初寄港。これを受け同4月に、官民連携による「清水港客船誘致委員会」が発足し、国内外の船社への積極的な誘致活動が始まった。
 清水港へのクルーズ船の入港実績を見ると、国内外を合わせ2013年=8回、2014年=13回、2015年=10回、2016年=16回と推移してきたが、2017年には38回と急増、2018年は33回、2019年も40回超の寄港が見込まれている。当初は国内客船が多かったが2016年以降は外国客船の方が圧倒的に多くなった。乗客数は2017年実績で5万5,273人(国内客船4,365人、外国客船5万908人)に達している。
 クルーズ船の寄港数が2017年に急増した要因の一つが、ゲンティン香港のスーパースター・ヴァーゴの就航。ゲンティン香港は、台湾や香港を発着するクルーズなどアジアを中心に運行するクルーズ会社グループで、スタークルーズ、ドリームクルーズ、クリスタルクルーズの3つのクルーズブランドを傘下に有している。静岡県はアジア最大のクルーズ船社、ゲンティン香港と連携して清水港を国際クルーズ拠点化することで合意。2017年1月に、国土交通省の「官民連携による国際クルーズ拠点を形成する港湾」の第1次募集で横浜港などと共に6港湾の一つとして選定され、同7月には「国際旅客船拠点形成港湾」の指定を受けた。
 2017年7月施行の改正港湾法では、国際クルーズ拠点として国が指定した港湾を対象に、民間による受け入れ施設整備を促す協定制度が創設された。この制度は、港湾管理者とクルーズ船社との間で、港湾管理者がクルーズ船社に岸壁の優先使用を認める一方、船社は旅客施設を整備するとともに他社の使用も認める内容の協定を締結することができる、というもの。国の指定を受け、静岡県は同12月、「清水港国際旅客船拠点形成計画」を発表。2030年を目標に、ゲンティン香港が運営するクルーズラインの母港化と、北東アジアクルーズの東日本における拠点化を目指す方針を打ち出した。
 この計画に沿って、ゲンティン香港は2020年までに清水港日の出地区にCIQ(税関・出入国管理・検疫)機能付き旅客施設を整備。クルーズターミナルの運用開始後はゲンティン香港が運航するクルーズ船が週1回寄港し、さらに2030年までに清水港を発着するクルーズを週1回実施する計画。これによりクルーズ船の寄港数は飛躍的に増加する見通しだ。
 
クルーズ船の定期就航へターミナル整備
 
老朽化対策と併せクルーズ拠点化を後押し
 清水港の国際クルーズ拠点機能を担う日の出地区は、岸壁の老朽化が進行していることから、港湾施設の長寿命化を狙いとした岸壁改良工事に2018年に着手。既存の日の出1―3号岸壁(延長340m)を2022年までの5カ年計画(第1段階2018~19年、第2段階2019~22年)で「新1号岸壁」に改良する。隣接する既存の日の出4―5号岸壁(延長480m)はクルーズ船専用の「新2号岸壁」として活用。ゲンティン香港などのクルーズ船が新2号岸壁に入港した際にも新1号岸壁で他のクルーズ船を受け入れ、“大型クルーズ船2隻同時着岸”を可能にする構想だ。
 新1号岸壁の改良工事には「深梁工法」が採用されている。これは桟橋の既設鋼管杭に深梁と呼ばれる工場製作の補強部材を杭と杭を横方向につなぐ形で設置することで、水平力に対する耐力を高める工法。大型重機が不要で岸壁を供用しながら桟橋の補強ができるなどの利点がある。
 
外港防波堤は津波対策のため粘り強い構造化が進められている 日の出岸壁(-12m)改良工事。吊り下げている鋼製部材が「深梁」
 
みなと色彩計画で国交大臣賞受賞
 清水港のユニークな取り組みの一つに「みなと色彩計画」がある。富士山の自然景観と調和した「港の景観」を地域が一体となって共創することを目指した試み。スカイブルーとホワイトを、基調となるシンボルカラーとしたうえで、港内の地区ごとに定めたイメージに合うよう建物の屋根や外壁、構造物のベースカラーを設定し、改築や更新に合わせて事業者がアドバイザー会議と協議し決定した色彩計画を実行していくという活動。静岡市を事務局に、市民・地元企業・学識者・行政からなる協議会が設置されたのは1992年。清水港での色彩計画に基づく景観形成の実施件数は累計1,100件を超えている。
 一般的なガントリークレーンは航空法の規定により赤と白に塗り分けられているが、清水港内では、関係機関との協議を経て水色と白を基調とした爽やかな色合いに塗られたガントリークレーンの姿も目に留まる。富士山を背景とした清水港の統一感のある景観は、船で入港してくる旅客を歓迎する「おもてなしの心」を表現しているようにも映る。「清水港・みなと色彩計画」の取り組みは、港の景観形成の模範として2015年度「手づくり郷土賞」の国土交通大臣賞を受賞している。
 
高速道路ネットワーク整備で背後圏拡大
 
港湾計画改訂へ長期構想議論
 2020年度に予定される中部横断自動車道路・新東名高速道路の全線開通によって、清水港は「2時間圏」が甲信越・首都圏に拡大し、物流拠点としての存在感をさらに増すことになる。道路ネットワーク整備と、コンテナターミナルをはじめとした港湾施設整備の相乗効果によって、例えば長野県産の新鮮野菜や山梨県産の果物などを鮮度を保ったまま輸出できるようになるなど、今後も貨物取扱量の伸びが期待されている。特に農水産物は需要拡大が望める品目として県も輸出促進に力を入れている。
 清水港を取り巻く環境は今、大きく変化しようとしている。ただ現在の港湾計画は2004年に改訂されたもので、既に目標年次(2015年)を経過しており、次期計画の策定が待たれている。港湾管理者の静岡県は、清水港の港湾計画改訂に向けて、概ね20年後を見据えた清水港の将来像を検討することを目的に、「清水港長期構想検討委員会」を設置し、2018年11月から議論を重ねてきた。最終案に関するパブリックコメントを踏まえて取りまとめられた清水港長期構想は、開港120周年記念事業の一環で今年7月13日~8月4日に開催される「海フェスタしずおか」の式典で発表される予定だ。
 
みなと色彩計画に沿ったガントリークレーン
 
【地元を挙げて開港120周年祝う】
 清水港は2019年8月4日に開港120周年を迎える。静岡市は清水港開港120周年記念事業実行委員会を組織し、清水みなと祭り(8月2~4日)など様々なイベントと連携しながら、4月から12カ月にわたり記念事業を実施している。次代を担う子供たちをはじめ幅広い人々を対象にした記念事業を通じて、みなとに親しみと愛着を持ってもらうとともに、みなとまちが育んできた文化の継承も図っていきたい考え。
 海の日を挟んだ7月13日~8月4日にかけては「海フェスタしずおか」が同時開催される。清水港日の出ふ頭では寄港船舶の一般公開が予定され、練習帆船「海王丸」、海洋気象観測船「啓風丸」、グラブ浚渫船「第361良成丸」、巡視船「いず」のほか、中部地方整備局が保有する浚渫兼油回収船「清龍丸」も披露される(公開日などは海フェスタしずおか情報サイト清水港開港120周年記念事業ホームページで要確認)。
 

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