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提供:宮崎港湾・空港整備事務所 |
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オランダ人技師・デレーケが設計 |
細島港は最初に開発された「商業港地区」、第二次大戦後に整備された「工業港地区」、物流拠点として建設した「白浜地区」の3地区で構成する。臨港地区は276ha、港湾区域は1,289haの規模。最も長い歴史を持つ商業港地区は、古くは宋・明貿易の寄港地や倭寇の基地として利用され、江戸時代には近隣大名が参勤交代のため船を出航させた。 明治時代に入ると四国・阪神方面との定期航路が開かれ、内務省土木局に招へいされたオランダ人技師ヨハニス・デレーケの設計による港湾整備と鉄道開通により、貨物量が激増した。国から重要港湾の指定を受けたのは1951(昭和26)年。臨海工業地帯の造成や工業港地区の港湾整備が始まった。さらに背後地の日向・延岡地区が1964(昭和39)年、新産業都市建設促進法に基づき新産業都市に指定されたことが弾みとなり、東九州の産業・経済活動を支える拠点として、大きく発展した。 |
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細島港の施設配置 提供:宮崎港湾・空港整備事務所 |
企業立地や工場増設相次ぐ |
細島港の貨物取り扱いは、工業港地区と白浜地区が中心となる。岸壁にはコンテナ船やRORO船などが定期的に寄港するほか、輸入石炭や移入雑穀、セメントなどを取り扱っている。過去10年の取扱貨物量は2009(平成21)年の377.8万トンを底に増加基調にあり、2012(平成24)年は435.0万トン、2013(平成25)年は443.5万トンと推移、2014(平成26)年は440.8万トンまで増えている。 工業港地区には、化学工業や金属、飼料、セメントなど多くの企業が立地する。金属鉱や石炭といった原料や燃料を輸移入し、合成樹脂や鉄鋼、化学製品などを輸移出するという産業構造によって、2014(平成26)年の取扱貨物量で見ると輸移入の326.5万トンに対し、輸移出は111.2万トンと3倍近い開きがある。 港の背後地では高速道路網の整備が進んでおり、東九州自動車道や九州中央自動車道で工事区間の相次ぐ開通により、九州各地との時間距離が短縮。九州の海路の中で首都圏や中部圏に最も近く、関西圏にもアクセスしやすい地理条件から、港湾整備との相乗効果により、大手製材メーカーが進出するなど最近10年間の細島港周辺では企業立地が39件、設備投資が約740億円、貿易額も約2倍とストック効果を発揮している。 |
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提供:宮崎県県土整備部港湾課 |
港湾計画を改訂 |
工業港地区と白浜地区の臨海部で企業の設備投資が進み、背後地の高速道路網整備も着々と行われている。宮崎県は取扱貨物量をさらに拡大し船舶大型化にも対応するため、細島港で施設整備や既存ふ頭の再編、背後用地の造成を実施する必要があると判断。これまでの港湾計画を2016(平成28)年2月全面的に改訂した。新計画は平成40年代前半を見据え、①物流・産業②安全・安心③交流・環境の3項目でそれぞれ目標を設定。このうち物流・産業では、地域産業の発展を支えていく物流・生産の一大拠点を作るため▽バルク貨物取扱機能の強化▽既存ふ頭の再編による内貿ユニットロードターミナルの機能強化▽企業立地の促進に向けた新規の土地造成などに取り組む方針を打ち出した。 具体的には、輸入バルク貨物船の大型化に対応するため、工業港地区の入り口部分に水深−15m、延長300mの公共ふ頭(工業港18号岸壁)を計画。これにより、7万トン級の貨物船の利用が可能で物流の効率化が図れる。公共ふ頭の背後には、24.5haの工業用地も確保する。 また、岸壁前面には同水深の泊地を整備するとともに、外港地区には船舶が港内へ進入するための航路も水深−17m、幅員350mを確保。港内の静穏性を確保・向上するため、現在工事中の北沖防波堤(延長450m)を、さらに150m延長する計画も盛り込んだ。 白浜地区は林産品等の外内貿拠点を整備するため、既存ふ頭の再編と新規ふ頭の整備、企業による専用ふ頭整備を進める。水深−10mの公共岸壁と同−5.5mの専用岸壁を計画。岸壁ごとに物流施設・機能も再編・再配置する。 安全・安心には、南海トラフ巨大地震等への対応として、白浜地区に避難場所となる緑地を計画するとともに、同地区に大規模地震・津波発生後に早期に港湾機能の回復を図り、地域経済活動を維持するため幹線貨物輸送対応の耐震強化岸壁を計画している。 交流・環境では、細島港で最も長い歴史を持つ商業港地区で、プレジャーボートの係留施設を整備するとともに、地域住民の憩いの場となる親水空間、レクリエーション緑地などを作って観光・交流拠点にする計画としている。 |
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機能強化を図る白浜地区 提供:宮崎港湾・空港整備事務所 |
新計画における事業推進 |
企業立地が進み、港周辺の工業用地も残り少なくなっている。新計画では工業用地の新規造成や大水深岸壁の整備、港ににぎわいをもたらす親水空間の創出などを行う方針だ。地元はもちろん、九州全域の産業・経済活動を支える「扇の要」として機能強化を図ることで、県は地域活性化にこれまで以上に寄与できるとしている。 |
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南沖防波堤の位置 提供:宮崎港湾・空港整備事務所 | 南沖防波堤の現況 提供:宮崎港湾・空港整備事務所 |
南沖防波堤は水深約30mの海底にマウンドを築き、その上にケーソンを設置する。水深が深く波浪も高いため、ケーソンには「半没水型上部斜面堤」と呼ばれる構造形式を採用。波浪を受ける面を斜めにすることで堤体に作用する水平波力を低減できると共に、波力が下向きに働く効果も生まれ、結果としてケーソン断面の縮小による建設コストの縮減につながる。 防波堤の基礎になる捨石マウンドには3種類の石材を使用。港外側の先端部に1個当たり1トン、中央部に同5〜100kg、両サイドには同500〜700kgの石材を設置。底開式投入船とガット船で水面下から石材を投入した後、ケーソン据え付けのためにマウンドを均す。 マウンドの均し作業は一般的に潜水士が行う。ただ南沖防波堤の建設現場は大水深で潜水士にかかる水圧が高く、身体的な負担も大きくなる。よりリスクが少なく、安全に工事を進めるため、この現場では着工時からマウンド均し作業を機械化する取り組みが引き継がれている。採用しているのは、起重機船に搭載したクレーンで重錐を上下させ、マウンドの法面や平面を転圧する施工方法。着工当初は潜水士の目視とレベルで高さなどを管理していたが、その後の技術開発で光波測距儀によるリアルタイム施工管理システムを実用化し、海底での施工状況が陸上で確認できるようになった。 大水深での作業が大幅に減ったことで潜水士が減圧症、酸素中毒症などを発症するリスクが低減できるようになった。クレーンオペレーターの習熟度アップと管理システムの導入によって施工品質の確保も容易になり、工事の円滑な推進に役立っている。 南沖防波堤は現在、14函のケーソン設置が完了し、施工延長も390mに達している。2011(平成23)年3月の東日本大震災で大津波により防波堤が崩壊したことを教訓に、港内側の防波堤背後地に補強材を配置し津波に対応する構造に設計を変更。防波堤を伸ばす作業と同時並行で補強工事を行っている。 工事の完成は2020(平成32)年を予定。宮崎港湾・空港整備事務所は「細島港は船舶の入港数や取扱貨物量が年々伸びている。港の安全を確保するため、今後も安全と品質の確保に重点を置き、事業を進める」としている。 |
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重錘均し機械施工の概念図 提供:宮崎港湾・空港整備事務所 | 南沖防波堤の完成イメージ 提供:宮崎港湾・空港整備事務所 |
日本港湾協会「ポート・オブ・ザ・イヤー2015」に選定
日本港湾協会(宗岡正二会長)が「ポート・オブ・ザ・イヤー2015」に細島港を選定した。細島港は積極的なインフラ整備や企業誘致、賑わい創出といった活動を推進。行政、企業、市民が一体になった取り組みは〝元気のある港〟として、マスコミにもたびたび取り上げられた。ポート・オブ・ザ・イヤーは同協会が発行する情報誌『港湾』の読者投票で決まる。2003(平成15)年から選定がスタートし、これまで名古屋港や大船渡港、中津港などが選ばれている。細島港は高速道路整備と連携した物流インフラの強化、官民一体の企業誘致、港湾の施設や自然環境を生かしたイベント開催などを展開。既存インフラのストック効果を具体化した事例として、港湾関係者から高い評価を受けている。 細島港は東九州の貿易・物流拠点として、今後も地域経済・産業の発展で重要な役割を担っていく。表彰式は1月20日に行われ、賞状と楯が贈られた。受賞理由や具体的な活動内容は『港湾』3月号で紹介されている。 |
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