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広島港出島地区  提供:広島県

【港湾概要】
【港湾面積】7,320ha
【臨港地区】748ha
【バース数】55バース(公共バース)
【取扱貨物量】1,394万トン(2014年速報値)
【コンテナ取扱量】225,776TEU(2014年速報値)
 阪神と九州のほぼ中間に位置し、古くから瀬戸内海の海上交通の要衝として栄えてきた広島港。人口約120万人の国際都市、広島市を中心に2市2町を背後に抱え、中国・四国地方の物流、人流の拠点港であるとともに、自動車産業をはじめとする地域産業の国際物流の玄関口でもある。取扱貨物量は2008(平成20)年のリーマンショック後に落ち込んだものの、その後は順調に回復。2014(平成26)年のコンテナ貨物量は、22.5万TEUで過去最高を記録。大型クルーズ旅客船の寄港回数も急増している。
 
太田川のデルタ地帯の先端に位置し、瀬戸内海の海上交通の要衝
 
戦前は陸軍の軍用港として使用
 広島港は一級河川太田川河口デルタの先端に位置し、海上に点在する島々や半島により年間を通じて波静かな天然の良港として知られている。16世紀末に毛利輝元が広島城を築城した際に水陸交通の便を整え、船着場運河などを建設したことが港の始まりで、1889(明治22)年に難工事の末、宇品築港事業が完成したことで、近代港湾の機能を整えた。
 その後、日清戦争から第二次世界大戦まで旧陸軍の軍用港として利用され、その間、1922(大正11)年に「宇品港」が埋立法による港湾に指定され、1932(昭和7)年に港湾区域を拡大。現在の名称である「広島港」に改称された。戦後、1948(昭和23)年に貿易港として開港指定されて以降、1951(昭和26)年に重要港湾、1992(平成4)年に特定重要港湾、2011(平成23)年に国際拠点港湾に指定されている。
 
自動車関連産業が多数立地し、地域の基幹産業を支える物流拠点
 
港湾計画を変更し、宇品地区のふ頭を再編
 広島港は、港湾施設が東西に約20kmにわたって広がっている。主要な地区は東から「海田地区」「宇品地区」「出島地区」「五日市地区」「廿日市地区」の5地区となる。
 このうち、広島港の中枢となる宇品地区は、1948(昭和23)年に開港し、1953(昭和28)年に広島県が港湾管理者となった。同年、宇品外貿ふ頭改修事業に着手し、1970(昭和45)年に−10m岸壁が4バース、1988(昭和63)年に−10m岸壁の第5番目のバースが完成した。マツダをはじめ自動車関連産業が多数立地し、地域の基幹産業を支える物流拠点の役割を担っている。
 「宇品地区は、港としての歴史が古く、広島港の海の玄関口となっています。特に自動車関連産業が多く立地し、近年、自動車専用船の大型化への対応や港湾施設の老朽化への対応、大規模地震発生時の物流機能の確保などが指摘されていました。このため、今春港湾計画が変更され、国が本年度から『ふ頭再編改良事業』として、岸壁や泊地・航路の増深化(−10m→−12m)や、ふ頭用地の確保などを進めます」(広島県土木建築局港湾漁港整備課)。
 物流だけでなく、人流の機能も備える。1975(昭和50)年に宇品県営桟橋旅客施設が完成。その後、2003(平成15)年には新たな宇品旅客ターミナルが供用を開始し、島嶼部や四国地方との定期旅客船が数多く就航。現在、1日112便が運航され、年間200万人以上の人々が利用し、瀬戸内海の海上交通の結節点となっている。
 
広島港の位置図
提供:広島県
 
2014年のコンテナ取扱量が過去最高に
 
東アジア方面を中心とした国際コンテナ航路
 広島港でコンテナターミナルが整備されているのが出島地区と海田地区。このうち、出島地区は2003(平成15)年に中国・四国地方で最大の−14m岸壁が完成し、5万トンのコンテナ船の係留が可能となっている。
 「出島地区は外国貿易ゾーンと位置付け、県内企業のコンテナ需要に対応できるようにしています。2011(平成23)年に新たに3基目のガントリークレーンを設置。2013(平成25)年には広島港新国際CFS(コンテナ・フレート・ステーション)を整備し、小口混載貨物の詰めや取り出しのための作業場を設けました」(広島県土木建築局港湾漁港整備課)。
 一方、海田地区は広島港の最初のコンテナターミナルとして、1987(昭和62)年に「海田コンテナターミナル」を整備。背後圏にはセメント工場や建設資材関連、広島ガス(LPG)、自動車部品センターなどが立地する。コンテナには主に自動車部品などが取り扱われている。
 国際コンテナ定期航路は現在、東アジア方面を中心に、中国航路が週6便、韓国航路が週9便、台湾・東南アジア航路が週1便、台湾航路が週1便、北米航路が月1便が就航中。神戸港などへの国際フィーダー航路が週9便あるほか、国内RORO航路も週3便ある。
 
泊地・航路の増深化工事の本年度内完成
 五日市地区は、主に建設機械など産業機械の輸出や完成自動車の移入を取り扱う広島都市圏西部の物流拠点となっている。岸壁は−4.5m〜−12.0mがあり、広島港の唯一の耐震強化岸壁(−12m)もある。大規模な地震が発生した場合の緊急物資などの輸送拠点、また避難場所や緊急物資の補完基地などの防災拠点としての役割も担っている。同地区の臨港道路で交通渋滞が頻繁に発生するため、広島県が2012(平成24)年度から4車線化に向けた整備を進めている。
 廿日市地区は、1978(昭和53)年に木材専用港として開港。−10m岸壁が2バース、−12mドルフィンが1バース、−10mドルフィンが3バースあり、全国でも有数な木材供給拠点となっている。また、広島ガスの液化天然ガス(LNG)の輸入基地もあり、製造業の生産活動や市民生活を支えている。
 「LNGは広島港の輸入貨物の44%を占めていますが、航路・泊地の水深不足で、輸送の主流である15万m3級の大型船舶に対応できていませんでした。LNGの安定的かつ安価な供給を目指し、2012(平成24)年度から官民が連携して航路などの整備を国が進めています」(広島県土木建築局港湾漁港整備課)。航路・泊地の増深化工事は本年度中にも完成する見通しだ。
 
出島地域は外国貿易ゾーンとなる
提供:広島県
廿日市地区
提供:広島港湾・空港整備事務所
 
一定貨物を増加させた荷主に助成措置
 広島県では2011(平成23)年度に港湾機能のソフト・ハード両面の強化を目指し「広島県みなと振興プラン」を策定。また、瀬戸内海の魅力的な観光資源を活用した地域活性化策を盛り込んだ「瀬戸内海の道構想」も同年に策定。この両プランに沿って、国際物流や国際交流を担う港湾施設の整備や港湾運営の効率化などを進めている。具体的には「港湾運営の民営化」「ポートセールスの強化」「集客・交流機能の強化」などを展開中だ。
 港湾運営の民営化では、2011(平成23)年の港湾法改正で、港湾運営会社制度が創設されたことを受け、出島地区・海田地区のコンテナターミナルについて、公設民営の考え方のもと、港湾運営の民営化制度の導入を検討中だ。
 ポートセールスの強化では、コンテナ航路ネットワークの維持・拡充の強化を進めている。具体的には県内港にコンテナ定期航路の開設または増便する船社に対する入港料および岸壁使用料の免除や、県内港を使用し一定以上の貨物が増加する荷主企業に対する助成制度を実施している。また、地元金融機関との連携を活用して、海外に進出している県内企業へのセールス活動やセミナー開催などを展開中だ。
 
輸出の9割以上が自動車関連で占める
 広島港の2014(平成26)年取扱貨物量は1,394万トンで、前年比0.6%減となった。内訳は輸出423万トン、輸入187万トン、移出308万トン、移入477万トン。このうち、輸出は自動車関連が約9割を占め、輸入は5割弱が液化天然ガス(LNG)で、日用品、自動車部品、製材などがこれに続く。移出はフェリーが37%、完成自動車が36%、自動車部品が16%となる。移入は完成自動車が26%、フェリーが23%、セメントが13%、砂利・砂が8%となっている。
 一方、コンテナ貨物取扱量は2008(平成20)年のリーマンショック前まで20万TEUで推移していたが、リーマンショック後に取扱量が急減。その後、景気の回復などで徐々に回復し、現在リーマンショック前の水準まで回復している。出島地区では日用品や中国向け自動車部品、海田地区ではマツダの自動車部品や金属製品などの取り扱いが多い。「2014(平成26)年は22万TEUを超える取扱量となり、過去最高となった」(広島県土木建築局港湾漁港整備課)。
 
海外の大型クルーズ客船の誘致活動を展開
 
五日市地区の岸壁を大型旅客船の接岸可能に
 「瀬戸内海の道構想」では、戦略テーマの一つとして「船と航路とみなと賑わい」を掲げ、クルーズ客船の誘致・受け入れ体制の充実や臨海部の賑わい空間創出を提案している。この構想に沿って、広島県ではクルーズ客船の誘致活動を強化。大型のクルーズ客船に対応できるような整備も進めている。
 「昨年のクルーズ客船の寄港は18隻でした。おかげさまで年々増加しています。ただ、宇品地区にある係留施設は約8万総トンまでしか対応できないため、2014(平成26)年度に五日市地区の貨物岸壁を改良し、大型のクルーズ客船の対応を可能にしました。2015(平成27)年度には早速、その五日市地区の岸壁に8万総トンを超えるクルーズ客船3隻の寄港が予定されています」(広島県土木建築局港湾振興課)。
 クルーズ客船は2015(平成27)年度に31隻の寄港が予定されており、このうち、8万総トンを超えるのは「クァンタム・オブ・ザ・シーズ」(米国、約16.7万総トン)、「セレブリティ・ミレニアム」(米国、約9万総トン)、「クイーン・エリザベス」(英国、約9万トン)となる。
 港を活用した賑わいづくりでは、宇品・出島地区を対象に「賑わい創出に係る基本方針」を2012(平成24)年8月に策定。利用率が低くなった県所有の港湾関係の倉庫のある地域一帯を「宇品デポルトピア」と命名し、結婚式場やインテリアショップなどの賑わい施設への転換を展開中。同時にプロムナードや案内施設の整備も進めている。
 広島県土木建築局港湾漁港整備課では、こうしたクルーズ客船の誘致や賑わい空間の創出などを進めることで、観光などの地域産業の活性化をはかるとともに、「広島県みなと振興プランが2015(平成27)年度が最終年度となります。広島港が中国・四国地方の物流拠点としてさらに発展できるように引き続き企業ニーズにあった港湾機能を強化していきたい」としている。
 
宇品地区に大型クルーズ船が寄港
提供:広島県
 
宇品地区のふ頭再編改良事業に本年度から着手
 広島港では現在、国際競争力の強化や老朽化対策などを目的に廿日市地区の航路・泊地整備事業と宇品地区のふ頭再編改良事業が行われている。
 廿日市地区の航路・泊地整備事業は広島ガスの液化天然ガス(LNG)を受け入れるための岸壁、航路・泊地、泊地(いずれも既存施設は−8.5m)を−12mに増深し、標準LNG船(17万m3積み)の接岸を可能にする。2012(平成24)年に着手し、本年度中に工事を終える計画だ。総事業費は74億円。
 企業合理化促進法に基づくエネルギー港湾事業として官民による産業投資(航路・泊地整備)で実施しているもので、民間の専用泊地の浚渫は国が民間から受託して整備を行っている。浚渫土量は全体で約200万m3。すでに50万m3を浚渫済みで、残りを本年度中に施工する。
 「隣接する場所でかきの養殖を行っているため、浚渫作業は6〜9月に実施します。浚渫船4隻を投入する予定ですが、このうち1隻はポンプ浚渫船で24時間作業をする計画です。残りの3隻はグラブ浚渫船で昼間だけの作業となります。浚渫土は近くの貯木場に大半を入れ、一部を出島の埋立地に運ぶ計画です」(国土交通省中国地方整備局広島港湾・空港整備事務所)。
宇品地区
提供:広島港湾・港湾整備事務所
 宇品地区のふ頭再編改良事業は、2015(平成27)年度から新規事業化されたもので、宇品地区にある公共岸壁5バース(いずれも−10m)のうち、2バースを−12m化(延長260m)し、耐震強化岸壁にリニューアルする。同時に老朽化が深刻な背後の県営上屋を撤去し、効率的な荷役に対応したふ頭用地を確保する。
 「この事業は完成自動車の輸出が増大する中で船舶の大型化に対応すること、老朽化した既存施設を更新すること、耐震岸壁を整備し大規模地震発生時に対応することの3つの目的があります。本年度は調査・設計を行い、来年度から工事に着手します。航路・泊地の浚渫(−12m化)は順次工事に着手する予定です」(広島港湾・空港整備事務所)。総事業費は62億円。事業期間は2018(平成30)年度まで。
 このほか、広島港湾・空港整備事務所では海岸事業として高潮対策も展開している。
 

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