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提供:小名浜港湾事務所

【港湾概要】
【港湾面積】1,999ha
【バース数】71バース(うち商港公共ふ頭38バース)
【取扱貨物量】1,744万トン(2013年実績)
【コンテナ取扱量】13,386TEU(2013年実績)
【入港船舶隻数】5,253隻(うち商船3,495隻・2013年実績)
【貿易額】3,691億円(2013年実績)
 2011(平成23)年3月11日に発生した東日本大震災で甚大な被害を受けた小名浜港(福島県)。被災後3年半が経過し、野積み場の工事が一部残っているものの、物流を担う主要な岸壁は2013(平成25)年度末にすべて復旧。取扱貨物量も震災前を上回る水準まで回復している。昨年12月には国土交通大臣からバルク貨物の輸入拠点として「特定貨物輸入拠点港湾(石炭)」に全国で初めて指定された。震災を乗り越え、着実に発展を遂げる小名浜港を紹介する。
 
「常磐・郡山地区」新産業都市指定を契機に工業港として発展
 
大陳情団「白だすき隊」が予算確保に奔走
 小名浜港は、江戸時代に納付米の積出港として栄えた。明治になると、小野田炭坑から産出される石炭を京浜地区に送る輸送基地として発展。ただ、1897(明治30)年に常磐線上野〜平(現いわき駅)間が開通したことを契機に、石炭輸送が鉄道にシフトし、同港は漁港としての性格を強めた。
 大正に入ると、東京〜塩竈間の避難港として港の修築工事が行われた。地元から商港を望む声が高まり、昭和に入り商港修築工事が開始された。ただ、整備予算が付かず、思うように工事は進まなかった。地元町民らは商港への情熱が収まらず、白いたすき掛け姿の大陳情団「白だすき隊」を組織し、内務省に予算確保を要求した。その結果、予算が復活し、その時に整備された港湾施設が現在の小名浜港の礎となった。
 戦後は重化学工業を中心とした臨海工業地帯を支える物流拠点港としての整備が進んだ。1964(昭和39)年の「常磐・郡山地区」新産業都市の指定を契機に、港湾整備が一気に加速。国際貿易港としての港勢を拡大した。
 2011(平成23)年3月11日の東日本大震災で港湾施設は大きな被害を受けたものの、被災した企業の事業再開や港湾施設の復旧に伴い、石炭などエネルギー関連を中心に取扱貨物量は震災前の水準を上回るまで回復している。
 
年間200万人弱の観光客が訪れ、親水空間としても栄える
 
近郊の火力発電所に石炭や重油などを供給
提供:福島県
にぎわいゾーンの1・2号ふ頭
 現在の港湾空間を大別すると、東側から水産ゾーン(漁港区)、にぎわいゾーン(1号、2号ふ頭)、物流関連ゾーン(3号、4号、5・6号、7号、藤原、大剣の各ふ頭)、危険物関連ゾーン(大剣ふ頭の一部、専用桟橋)、緑地レクリエーションゾーン(いわきサンマリーナ)の5地域となる。このほか物流関連ゾーンの沖合に人工島による東港地区を整備中だ。
 係留施設の大半は公共岸壁で、民間企業による専用岸壁は危険物関連ゾーンにある小名浜石油のシーバースと桟橋(1〜3号)だけとなる。
 にぎわいゾーンの1号・2号ふ頭は商港として最初に整備されたふ頭だが、施設の老朽化に伴い、現在は親水空間「アクアマリンパーク」として再整備されている。同パークには観光物産センター「いわき・ら・ら・ミュウ」、海洋科学館「アクアマリンふくしま」、いわきの食と物販の施設「小名浜さんかく倉庫」などがある。
 「アクアマリンパークの各施設も被災しましたが、早期再開とともに復興に向けた熱心な取り組みにより、最近では年間200万人弱の観光客が訪れるようになりました。また、いわき市では同パークの道路を挟んで向かい側にある福島臨海鉄道貨物ターミナルを移転し、小名浜市街地とを結ぶ都市センターゾーンを設ける再開発を計画しています。現在、いわき市は開発事業者としてイオンモールと基本協定を締結し、2016(平成28)年の『まち開き』に向け各事業を実施しています」(福島県土木部港湾課)。
 物流関連ゾーンは、主に石炭を扱う3号ふ頭(7バース)、セメントや化学工業品を扱う4号ふ頭(6バース)、石炭や鉱産品を扱う5号ふ頭(1バース)と6号ふ頭(3バース)、7号ふ頭(5バース)、製材などを扱う藤原ふ頭(4バース)、コンテナや危険物を扱う大剣ふ頭(8バース)がある。
 このうち、5、6、7号ふ頭は、大水深岸壁を有しており、福島県の沿岸部にある火力発電所に石炭を供給する中心施設として利用されている。コンテナターミナルは大剣ふ頭にあり、韓国・中国を結ぶ国際航路が週2便、京浜港を結ぶ国際フィーダーが週1便就航している。
 外洋に面しているため、西防波堤(第1、第2)、沖防波堤、三崎防波堤など数多くの防波堤(総延長約10,000m)が整備され、港内の静穏度の確保だけでなく、荒天時の船舶の待避場所としての機能もある。
 
小名浜港の港湾施設
 
2014年3月末までに東日本大震災で被災した主要な岸壁を復旧
 
被災岸壁を暫定供用しながら本格復旧工事
提供:福島県
1・2号ふ頭の被災状況(上)と復旧状況(下)
 2011(平成23)年3月の東日本大震災では、小名浜港のすべての港湾施設が甚大な被害を受けた。防波堤などの効果により、津波の最大浸水高は5.13mと相馬港(福島県)に比べ小さかったものの、地震の揺れにより地盤沈下や液状化などが各施設で発生。岸壁のはらみ出しや護岸の滑動、クレーンの損傷などにより、一時港湾機能はマヒした。
 「震災後すぐに被災状況や航路障害物の調査などを行い、啓開作業を開始しました。5日目の16日には緊急物資輸送岸壁として藤原ふ頭1号・2号岸壁の供用を開始。29日は大剣ふ頭にタンカーが入港し、燃料不足の解消に寄与しました」(福島県土木部港湾課)。
 本格的な復旧工事は、物流機能を確保しながら実施しなければならないため、応急復旧工事を実施して暫定的に岸壁を供用させながら、他の岸壁で本格復旧工事を行うという手順で実施。このため、「各岸壁の利用者との利用調整が大変でした」(福島県土木部港湾課)。岸壁の復旧工事は国土交通省東北地方整備局小名浜港湾事務所と福島県とで分担して実施。2014(平成26)年3月末までに主要な岸壁が本格復旧し、現在福島県が担当する野積み場などの整備が急ピッチで進められている。
 
石炭輸入の急増で、震災前を上回る
 小名浜港の2013(平成25)年の取扱貨物量は1,744万トン。震災時の2011(平成23)年には1,192万トンまで落ち込んだが、近隣地域にある火力発電所のフル稼働により石炭などの取扱量が大幅に増加。震災前の2010(平成22)年の1,485万トンを上回る水準まで回復している。
 取扱貨物の品目をみると、石炭が全体の約半分(49%)を占め、重油が11%、原油が7%、石油製品等が6%、金属鉱が6%であり、火力発電所などの燃料供給拠点に加え、金属鉱(銅鉱石、亜鉛鉱など)や化学薬品などの工業原料の輸入拠点でもある。
 「石炭の輸入は今後もさらに増加する見通しです」(福島県土木部港湾課)。東京電力が広野火力発電所などに新たな発電設備(IGCC)の計画も打ち出しているためだ。IGCCは、石炭をガス化して利用する発電方式。ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせて発電する「コンバインドサイクル発電」を使うことで、従来の石炭火力発電より高い熱効率で発電することができる。今年、東京電力が福島県の復興支援の一環として、2基新設する方針を打ち出している。稼働は2020年に少なくとも1基を竣工させる予定だ。
 一方、2013(平成25)年のコンテナ取扱貨物量は13,386TEU(20フィートコンテナが1TEU)。震災時の2011(平成23)年には4,869TEUまで落ち込んだが、ガントリークレーンの復旧やコンテナ航路の再開などにより、取扱量は徐々に回復しつつある。
 
■小名浜港における取扱貨物量の推移   ■小名浜港におけるコンテナ貨物の動向
 
ケープサイズ船( 12万トン級)に対応した岸壁(−18m)を整備
 
昨年12月、全国初の特定貨物輸入拠点港湾に指定
提供:小名浜港湾事務所
石炭船が入港している6号ふ頭
 小名浜港は今後、エネルギー供給拠点としてさらに発展する可能性を秘めている。その起爆剤となるのが2011(平成23)年に国土交通省から選定された国際バルク戦略港湾(石炭)としての拠点機能の強化だ。
 2008(平成20)年度から新たな国際物流ターミナルとして東港地区(人工島)が事業化され、−14m岸壁の整備が進められていたが、石炭の国際拠点港としてケープサイズ級船舶(12万トン級)の寄港を可能にするため、2013(平成25)年度に岸壁、航路・泊地などの水深を−18mに見直し、再事業化された。
 昨年12月には改正港湾法に基づき、国土交通大臣が特定貨物輸入拠点港湾に全国で初めて小名浜港を指定。この指定により、荷さばき施設などの取得にかかる固定資産税の特例などの措置を受けられるようになった。
 港湾管理者である福島県は、この指定を受け今年6月に関係地方公共団体や港湾利用者などで構成する「小名浜港特定貨物輸入拠点港湾利用推進協議会」の初会合を開催。港湾施設の効率的な利用促進を図るための「特定利用推進計画」の作成に着手した。
 「特定貨物輸入拠点港湾は、大型船を活用し共同配船や共同調達により海上輸送コストを削減しようというものです。現在、海上輸送の共同化の実現に向けて特定利用推進計画の策定に取り組んでいるところです」(福島県土木部港湾課)。
 小名浜港では、大水深岸壁の不足により滞船(沖待ち)が常態化していた。2012(平成24)年には、震災により岸壁が使用できなかったこともあり、沖待ち延べ日数は1,411日に達し、取扱貨物を円滑かつ効率的に輸送するには、沖待ちの解消が急務となっていた。
 「東港地区の−18m岸壁を2018(平成30)年度までに完成させたいと思っています。ただ、早期の完成が望まれていますので、2017(平成29)年度には暫定水深で供用を開始できればと思っています。その暫定供用までには整備中の臨港道路の整備も終える予定です」(東北地方整備局小名浜港湾事務所)。
 バルク貨物を扱う公共バースで−18m耐震強化岸壁の整備は国内初で、東港地区の供用開始は、小名浜港だけでなく、福島県にとっても震災復興の目玉事業となる。早期の完成に期待したい。
 
暫定水深で2017年度には一部供用開始を目指す
提供:小名浜港湾事務所
整備が進む臨港道路(橋梁)
 小名浜港では現在、東日本大震災で被災した岸壁の復旧工事が一段落し、東港地区国際物流ターミナル整備事業がメイン工事になっている。同ターミナル整備事業は3号・4号ふ頭の沖合に人工島を造成し、新たな物流拠点とそのアクセスとなる臨港道路を整備する。
 2008(平成20)年度に事業化され、−14m岸壁の整備が進められていたが、石炭などの効率的な輸送を実現するため、事業計画の見直しを実施。岸壁をケープサイズ船などの入港が可能な−18mの耐震強化岸壁(延長370m)に変更し、2013(平成25)年度に再事業化された。
 国土交通省東北地方整備局小名浜港湾事務所は、護岸整備や用地造成を行う福島県と連携し、岸壁整備や臨港道路(橋梁)、航路・泊地(−18m)などの整備を現在進めている。このうち、臨港道路は3号ふ頭から新たに造成する人工島を結ぶ延長1,805mの道路。橋梁部が927mで、幅員は車道部7.0m(2車線)、歩道部3.5〜4.5m(片側)となる。構造は中央の航路部が5径間連続PCエクストラドーズド橋で、両端が4径間連続PC箱桁橋となる。
 「橋梁部は小名浜港の象徴的な構造物となるため、学識者らによる景観検討委員会を設け、景観に配慮した構造になっています。すでに下部工(橋脚部)は完成し、現在主塔や桁の張り出し工事を進めています。暫定水深で岸壁を供用する2017(平成29)年度までには橋梁を含む臨港道路を供用させる計画です」(小名浜港湾事務所)。
 航路や泊地(−18m)の浚渫工事は2015(平成27)年度から本格化させる。浚渫土量約400万m3はすべて人工島の埋立に使用する。本年度は付帯工事となる汚濁防止対策の工事を行っている。一方、岸壁工事は本年度から本体工事に着手。桟橋方式の岸壁の杭打ち工事を開始する予定だ。同事業の進捗率(予算ベース)は2013年度末で55〜60%となる。
 このほか、沖防波堤と第2沖防波堤の整備工事も実施中だ。沖防波堤は計画延長2,540mのうち、現在2,360mを整備済み。第2沖防波堤は計画延長860mのうち、整備済みが150m、残る710mを今後整備する予定だ。「小名浜港の防波堤は港内の静穏度の確保だけでなく、荒天時の船舶の待避場所としても機能します。避難港としての役割も果たし、海難事故を防ぐ狙いです」(小名浜港湾事務所)。
 

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