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高知港 提供:高知県 |
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高潮被害を契機に新港計画がスタート |
一方、高知新港は1970(昭和45)年の10号台風で高知市内が大規模な高潮被害を受けたことを契機に港内整備が検討され、外洋に面した三里地区に国際物流拠点となる新港の整備が計画された。事業は1988(昭和63)年に開始され、まず防波堤工事に着手。その後埋立工事などを行い、1998(平成10)年に一部供用が開始された。 現在、西側に−8m岸壁(延長240m)と−12m岸壁(延長240m)が供用しており、ガントリークレーン、シップローダーが設置され、国際コンテナ貨物やバルク貨物の取り扱いのほか、大型客船や調査船等の寄港など幅広い利用が行われている。 |
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提供:高知港湾・空港整備事務所 高知新港 |
石灰石の輸移出が5割を越える |
高知港の2012(平成24)年の総取扱貨物量は449万トン。2001(平成13)年には1,160万トンの取扱貨物量があったが、燃料費高騰に伴うフェリー航路の撤退や公共事業縮小に伴うセメント生産の終了、代替品移行に伴う蛇紋岩の取り扱い減少などにより、全体としては減ってきている。 一方、鉄鋼やセメント生産向けに背後の土佐山から産出される良質な石灰石(取扱貨物量の5割超)の輸移出をはじめ、石油製品、石炭などの輸移入は、順調に推移している。特に石灰石と石炭の荷役や客船等が競合する高知新港では、岸壁の混雑による機会損失や沖待ちが発生しており、その解消が求められている。 高知新港で扱うコンテナ貨物量は徐々に伸びている。「韓国・釜山を結ぶ外貿コンテナ航路が週2便あり、2012(平成 24)年のコンテナ貨物量は11,197TEUです。まだまだ規模は小さいですが、着実に増やしていきたい」(高知県土木部港湾振興課)。 主な品目は韓国やタイ向けの炭酸カルシウム、マレーシアや中国、韓国向けのコンデンサー紙、韓国向けのコンバインなどで、輸入は米国からのパルプ、中国からの稲わら、インドネシアからの農業用資材などとなる。 |
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■高知新港の取扱貨物量(バルク)の推移 | ■コンテナ取扱貨物量の推移 |
椰子ガラを利用したバイオ発電が稼働 |
浦戸湾の内港地区には最近、エネルギー関係施設もできている。西孕地区では、土佐発電株式会社(太平洋セメントと四国電力、電源開発の3社が出資)が2005(平成17)年よりIPP(卸電力)事業に進出しており、契約最大電力は15万kwで、これは県内供給量の20%に相当する。イーレックスニューエナジー株式会社も輸入バイオマス(椰子ガラ)を利用した発電事業を展開。約2万kwを2013(平成25)年6月から供給している。 「IPP事業によるエネルギー関連事業や、大型客船の寄港による観光事業などに力を入れています。高知新港で今春に−11m岸壁(耐震強化岸壁)と、−12m岸壁が供用を開始しますが、これによって両事業に弾みがつけば良いと思っています」(高知県土木部港湾振興課)。 大型客船は2013(平成25)年に「サン・プリンセス(77,000トン級)」や「コスタ・ビクトリア(75,000トン級)」などが高知新港に寄港するなど、着実に寄港が増えている。 |
高知港の外洋で最大津波16mが襲来 | ||
仮にその規模の地震が発生した場合、高知港付近で最大震度が7程度、最大津波高が約16mと予測され、その津波は約 20分で襲ってくるという。また、1946(昭和21)年に発生した昭和南海地震では、広範囲な地域で地盤沈降が発生し、長期間にわたって浸水状態が続いた。 高知県では、南海トラフ地震に備え、さまざまな観点から防災・減災対策の検討や、その施策の実施に取り組んでいる。「地震による防災・減災対策は県の最優先課題となっています。国が示した発生頻度の高い津波(L1)と、発生頻度は低いが最大級の津波(L2)に分けて、その対策を検討しています」(高知県土木部港湾・海岸課)。 国や高知県は仮にL1クラスの津波でも、現状の防災施設では甚大な被害が発生すると予測。具体的には①外洋にある第一線防波堤は津波により倒壊②浦戸湾内部の護岸などは液状化により倒壊③広域的な地盤沈降(約2m)により市街地の地盤高は満潮位を下回るなどの事象が起き、高知市中心部は長期的な浸水被害を受けると予想。同時に高知港の港湾機能も停止し、緊急物資輸送や復旧・復興活動に大きな障害がでると見ている。巨大地震となるL2クラスの津波が発生すれば、さらに大きな被害が発生する。 |
発生頻度の高いL1津波に対応した対策 | ||
「高知港の防災対策は、基本的に2003(平成15)年の中央防災会議が想定した東南海・南海地震(M8.6)を対象に検討したものです。三つの防護ラインを設け、L1規模の津波が発生しても、地元の方々の生命と財産を守るというのが狙いです」(四国地方整備局高知港湾・空港整備事務所)。 三重防護のうち、第1ラインは外洋の桂浜防波堤、南防波堤、東第一防波堤が対象で、この三つの防波堤を粘り強い構造へ補強する。第2ラインは浦戸湾外縁部・湾口部が対象で、第3ラインは浦戸湾内部の護岸などを対象とし、それぞれ地盤沈降などに対応した堤防の嵩上げや液状化対策などを行う。 「外洋の防波堤を補強することで、津波エネルギーを減衰させ、津波の進入や北上を低減させます。さらに、浦戸湾内部はゼロメートル地帯が多く、津波が襲ってくる前に堤防や護岸が壊れると、甚大な被害が発生するため、堤防などの嵩上げや液状化対策などを行います」(四国地方整備局高知・港湾空港整備事務所)。 |
石油備蓄基地の液状化対策や長期浸水対策も検討 |
高知県ではこのほか、石油備蓄基地の液状化対策や長期浸水対策などの検討も進めている。湾内のタナスカ地区には石油・ガスなどのエネルギー関連施設が立地し、県内消費の約90%以上を取り扱っている。仮にこの地区の貯蔵施設が地震の揺れや地盤の液状化、津波などで破損し、湾内に石油などが流れ込むと、大きな被害が発生するとともに復旧や復興の大きな障害にもなる。このため、高知県では石油基地等地震・津波対策検討会(河田恵昭座長)を設置。民間事業者とともに液状化対策などの検討を進めている。 長期浸水についても高知市と共同で設置した「南海トラフ地震対策連携会議」の中にワーキンググループを設け、止水・排水対策などを検討している。 「高知県では、地震・津波対策を加速させるという方針を打ち出しています。港湾施設もこの方針に沿って、防災・減災対策を強化していきます。粘り強い構造への補強や液状化対策、嵩上げ、避難路の整備などのハード面の強化だけでなく、避難誘導などのソフト面の対応も組み合わせ、防災対策を進めていきます」(高知県土木部港湾・海岸課)。 高知県はすでに河川堤防の液状化対策工事や水門・陸こうの自動化、各種の防災訓練などを行っており、今後ハード・ソフトの両面で防災対策を加速させていく考えだ。 |
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提供:高知港湾・空港整備事務所 高知新港の工事の実施状況 |
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