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博多港の全景 提供:福岡市

【港湾概要】
【臨港地区】7,807ha
【バース数】72バース(専用バース20外数)
【入港船舶】30,991隻
【取扱貨物量】3,224万t
【コンテナ取扱量】84.9万TEU
【船舶乗降人員】196万人(うち外国航路が84.6万人)
(いずれも2012年速報値)
 「那の津」「袖の湊」と呼ばれ、古くから大陸との交流窓口として栄えてきた博多港。海の中道など三方を陸に囲まれた天然の良港で、東アジアに近い地理的優位性や近接した鉄道・道路・航空などの多様な輸送モードを生かし、近年人的・物的交流が一段と活発化している。2011(平成23)年には国際海上コンテナ取扱個数が85万TEUを超えるとともに、2012(平成24)年には外国航路船舶乗降人員が約84.6万人となり、20年連続で日本一になる見込みだ。成長するアジアの活力を国内・九州内に取り込むゲートウェイとして、博多港は進化を続けている。
東アジアの成長を取り込むゲートウェイ
港内の浚渫土を活用し、埋立地を拡大
 博多港は、遣隋使・遣唐使の時代から国際貿易港として栄えてきた商業港。北に張り出した志賀島、海の中道、能古島に囲まれた自然の良港で、平清盛の日宋貿易や大内政弘の勘合貿易の拠点港にもなった。鎖国になって一時活気を失ったが、明治時代に入り、特別貿易港などに指定され、再び米や麦などの輸出が盛んになった。
 1899(明治32)年には正式に開港指定され、本格的に国際貿易港としてスタートした。この頃から、遠浅の博多湾を浚渫し、その浚渫土を利用して各種の港湾施設が整備された。1927(昭和2)年には第2種重要港湾に指定されるとともに、国の直轄工事として第1期修築工事も開始され、現在の中央ふ頭の一部が完成した。1936(昭和11)年には博多港築港記念大博覧会が盛大に開催された。
 戦後、大型の埋立工事が相次いで実施された。1951(昭和26)年に重要港湾に指定されたが、ふ頭などの整備が進むのに併せ、1990(平成2)年に特定重要港湾に昇格。2008(平成20)年には水深15m岸壁も整備され、2011(平成23)年に日本海側拠点港の総合的拠点港に選定され、重点的な機能強化が期待されている。
北米・欧州航路を生かし、コンテナ貨物が急増
背後地に企業進出や街づくりが進む
 博多港は、大別すると「アイランドシティ」「香椎パークポート」「箱崎ふ頭」「東浜ふ頭」「中央ふ頭」「博多ふ頭」「須崎ふ頭」「荒津」などの地区で構成される。このうち、アイランドシティは国や福岡市、博多港開発株式会社の3者が整備を進めているもので、全体面積401.3haのうち約8割にあたる324.5haの埋め立てが完了している。国際物流拠点の形成を目指し、外貿コンテナターミナルとして水深15m岸壁や同14m岸壁などが整備されているほか、成長性の高い産業の集積や豊かな緑地空間を持つまちづくりも進みつつある。
 アイランドシティのまちづくりについては、福岡市初となる施設一体型小中連携教育校や、産業集積を牽引する中核機能である「福岡ビジネス創造センター」、整形外科病院、保育所、特別養護老人ホーム、スポーツ研修施設、まちづくりの拠点である「アイランドシティ・アーバンデザインセンター」などが開設され、まちづくりが目に見える形で進んでいる。
 昨年10月には太陽光発電、燃料電池、蓄電池など創エネ・省エネ機器を積極的に導入したスマートタウン「COゼロ街区」の住宅販売も開始された。
 香椎パークポートはアイランドシティ同様に外貿コンテナターミナルが整備されている。水深13m岸壁をはじめ、同11m、同7.5mの岸壁などがあり、完成自動車がこのふ頭から輸出されている。区域内には大規模な公園・緑地、スポーツ施設などもある。
 
14年間で2.3倍に拡大したコンテナ貨物
表−1 コンテナ取扱個数の推移    出展)博多港港湾統計
 博多港の2012(平成24)年の貨物取扱量は、外貿・内貿合わせ約3,224万トン。2009(平成21)年にリーマンショックの影響で一時落ち込んだものの、2010(平成22)年には約2,968万トンと回復し、その後順調に伸びている。主な輸出品はタイヤ製品や完成自動車、再利用資材(古紙)、自動車部品など。輸入品は家具装具品、麦、肥料、衣類などである。
 コンテナ取扱個数は、EU経済が低迷する中、過去最高を記録した前年とほぼ同程度の約84.9万TEU(前年比0.1%減)を確保し、1998(平成10)年実績(36.3万TEU)に比べると、14年間で約2.3倍に膨らんでいる。急拡大の背景には国内外の主要な港にダイレクトで結ぶ航路網がある。国際コンテナ定期航路では韓国や中国、東南アジア諸国との航路が週192便、北米・欧州航路が週2.5便など、国内長距離定期航路では東京便が2航路週6便、沖縄航路が週11便などがある。
 福岡市港湾局港湾振興部の小西盛時振興課長は「北米・欧州航路などダイレクトに世界の港を結ぶ航路や、規模ではなく機能を重視した港湾サービス、陸海空を使った多彩な輸送体制などが博多港の特徴です。この特徴を生かし、今後もコンテナ取扱個数を伸ばしていきたい」という。
 
図−1 博多港の各ふ頭の位置    提供:博多港湾・空港整備事務所
スピーディーで機能重視の輸送体制を目指す
国際・国内一体型RORO船ターミナルを整備
 箱崎ふ頭は、1973(昭和48)年に竣功した博多港最大のふ頭。コンテナ以外にも一般的な貨物を取り扱い、穀物や青果などの食品、木材、自動車、輸送機械など、さまざまな貨物が集まっている。食品工業団地や大規模な流通センターも整備され、道路や空港、鉄道などの施設とも直結している。
 福岡市港湾局計画部の荒木慎二計画課長は「都市高速道路のランプ2カ所がふ頭に直結し、九州自動車道や福岡空港へダイレクトにつながっているほか、JR貨物の臨港線が隣接し、各種の輸送モードを利用できます」という。
 2011(平成23)年12月には、博多港などが「グリーンアジア国際戦略総合特区」(申請者=福岡県・北九州市・福岡市)に指定され、環境を配慮した効率的な輸送体制の整備が今後進められる見通しだ。
 具体的には国際RORO船(上海〜博多、週2便)と、国内RORO船(博多〜東京、週6便)を一つの場所に集約し、「国際・国内ROROターミナル」を整備する。「国内と国際のRORO船を集約し、ICタグを活用した車上通関などを実現することで、物流の円滑化や通関手続きの簡素化を進めます。JR貨物の臨港線も活用し、レールアンドシーなどの輸送体制も整備していきたい」(福岡市港湾局港湾振興部の小西盛時振興課長)。また、シームレスな手続きをもう一段進めるため、民間事業者らで構成するワーキンググループを設置し、規制緩和の要望などを聞いているという。
低層倉庫群を高度化倉庫に再開発
 東浜ふ頭は、砂、砂利、セメント、鉄鋼などの建設資材の荷さばき、保管施設が立地している。このほか、マレーシアから輸入しているLNG(液化天然ガス)なども取り扱っている。
 中央ふ頭は旅客を中心に日用品や水産品などを扱っている。旅客では韓国・釜山港との高速船航路やフェリー航路がある。クルーズ客船の寄港も多く、2012(平成24)年に外航クルーズ船寄港数で日本一にもなっている。ちなみに外航クルーズの寄港数は91回、内航クルーズも含めると112回(2012年実績)ある。
 中央ふ頭には以前、低層の倉庫群が立ち並んでいたが、1993(平成5)年に地区内の空地を利用して高度化倉庫を建設。垂直搬送機や流通加工施設などを導入した、高度な物流拠点に生まれ変わった。「ふ頭内の土地はほとんどが市保有地であり、業界の協力もいただいたことから、倉庫群の再開発が進みました。また、福岡国際会議場やマリンメッセ福岡など、さまざま施設も整備され、多くの外国人も訪れています」(福岡市港湾局の荒木計画課長)。博多港国際ターミナルを利用する外国航路船舶乗降人員は約84.6万人(2012年)で、港では20年連続日本一となっている。
エネルギーやにぎわいのある施設も整備
 博多ふ頭は、壱岐・対馬、五島航路など離島への定期航路や市営渡船のターミナルがある。博多ポートタワーや博多港ベイサイドミュージアムをはじめ、ベイサイドプレイス博多には海産物市場や飲食店などもあり、にぎわいのある交流拠点づくりが進められている。
 須崎ふ頭は、海外から輸入した穀物を主に扱い、大規模な保管施設などがある。1時間に400トンの穀物を吸い上げるニューマチックアンローダーや大規模なサイロなど、最新の荷役機械、保管施設を備え、九州の重要な穀物流通基地となっている。
 荒津地区は、128基の貯油施設のある石油中継基地が整備されている。年間363万トン(2012年実績)の石油や重油などを取り扱い、九州で消費される石油製品が、この石油中継基地から各地に届けられる。
 
 
提供:福岡市
アイランドシティ
提供:福岡市
箱崎ふ頭
 
世界をつなぐ、36航路月間202便が就航
自立式汚濁防止膜を採用し、施工効率アップ
 港内での工事は現在、直轄で進める航路の浚渫工事がある。浚渫土は「シーサイドももち地区」前の海域にある〝くぼ地〟の埋め戻しに利用されている。くぼ地の埋め戻しは二重トレミー管工法を採用。汚濁防止膜も設置し、周辺海域の濁りに対して細心の注意を払っている。
 工事を担当する九州地方整備局の酒井浩二博多港湾・空港整備事務所長は「これまで海上交通路を確保するため、狭い範囲に垂下式汚濁防止膜を設置し、非効率な工事となっていました。施工効率と濁りの原因を分析し拡散状況を検討した結果、防止膜を海面から垂らすのではなく、海底に設置する自立式の防止膜に変える予定です。これにより施工効率をこれまでの1.5倍程度高める計画です」という。
 くぼ地の埋め戻しは、中央航路の浚渫土を利用する。中央航路は現在、水深12m、幅200mで暫定供用中。これを幅300mに広げる計画で、その浚渫土を活用する。東航路も水深14mで暫定供用しているが、15mに増深する予定で、この浚渫土の利用も計画している。現在泊地部分の15m化の浚渫工事を進めている。埋め戻し作業はのりの養殖時期を避け、夏期の4〜9月に実施している。
大型コンテナ船に向けたターミナル機能の強化
 博多港は、2011(平成23)年に日本海側拠点港に応募した「国際海上コンテナ」、「国際フェリー・国際RORO船」「国際定期旅客」「外航クルーズ(定点クルーズ)」のすべてのモードで最高評価で選定された。
 国際海上コンテナについては、アジアや北米、欧州など15カ国・地域の47港と36航路月間202便(2013年3月現在)が就航するという強みを生かし、各港とダイレクトな物流ネットワークをさらに拡大させていく方針だ。さらに、「京浜港や阪神港の国際コンテナ戦略港湾のバックアップ機能としても、コンテナ船の大型化に対応した、ターミナル機能の強化を進めていきたい」(福岡市港湾局の荒木計画課長)という。
 国際フェリー・国際RORO船については、中国・上海を結ぶ国際RORO船と東京を結ぶ国内RORO船を一カ所に集めて、国際・国内一体型RORO船ターミナルを整備する計画だ。国内外のRORO船を上手に活用し、コンテナ船よりも早く、飛行機よりも安価な中間的な輸送モードを確立する考えだ。国際定期旅客と外航クルーズでは、韓国、中国からの観光旅行客の誘致をさらに進めるとともに「日本人のアウトバンド振興に努めていきたい」(福岡市港湾局の小西振興課長)という。
 博多港は、スピーディーで機能的な輸送体制を前面に打ち出し、着実に進化を遂げている。
 
提供:博多港湾・空港整備事務所
中央ふ頭
 
荷役機械を電動化し、エコ港湾へ
 博多港では、エコ対策にも積極的に取り組んでいる。アイランドシティでは、港湾荷役機械からの二酸化炭素(CO)排出量を抑えるため、トランスファークレーンの動力を軽油から電動に切り替えた。レーンチェンジも効率的にできるよう世界初のタイヤマウント形式を採用した。「全面電動化などにより、トランスファークレーンのCO排出量を年間約70%削減しました」(九州地方整備局の酒井浩二博多港湾・空港整備事務所長)。
 博多港の電動化の特徴として、給電システムを無人化していることがある。これにより、容易にレーンチェンジが可能となっている。
 一方、香椎パークポートでは位置エネルギーを電気に変換して荷役や走行に活用する蓄電池を搭載したハイブリッド・ストラドルキャリアを開発・導入し、CO排出量を約30%削減した。
 酒井所長は「エコ・コンテナターミナル(電動化荷役機械など)への関心は高く、海外からの視察者も多い。今後、海外での港湾物流プロジェクトなどにもこうした取り組みを紹介していきたい」という。
既存のトランスファークレーン 電動のトランスファークレーン
 

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