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釧路港全景 提供:北海道開発局釧路開発建設部 |
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石川啄木の「しらしら氷かがやき千鳥なく釧路の海の冬の月かな」で知られる道東最大の都市、釧路。水産業や石炭など産業の隆盛に合わせるように釧路港も発展してきたが、現在ではわが国有数の食糧供給基地として、大量の穀物飼料原料(トウモロコシ等)を取り扱っている。また、釧路市には製紙業の工場が立地しており、紙製品関連貨物の取り扱いも多い。 釧路港は東港と西港の2港区に分かれ、発祥は東港区。1899(明治32)年に開港した。産業の発展に伴い入港予定船舶の沖待ちが常態化するなど手狭になったことから、1969(昭和44)年から自然海浜を埋め立て、西港区を開発することになった。西港区は現在では物流機能中心の役割を担い、同港取扱貨物量の8割を占める。後背地の酪農や畜産エリアへの穀物輸入拠点として不可欠な存在になっている。 現在の西港区は4つのふ頭がくしの歯のように並び、主に穀物・飼料(トウモロコシ)を取り扱っているのは東側から2番目の第2ふ頭だ。酪農・畜産業の拠点港なだけに、従来も、港湾機能を拡張する計画があったが、2011(平成23)年5月に国土交通省から「国際バルク戦略港湾」に選定されたことで、計画の早期具体化に期待がかかっている。 バルク戦略港湾は資源、エネルギー、食糧などの安定的かつ安価な供給のために物流コストの削減や輸送サービスの向上などを行う港をいう。穀物では釧路港のほかに鹿島、志布志、名古屋、水島、鉄鉱石では木更津、水島・福山、石炭では徳山下松・宇部、小名浜の各港がそれぞれ選定されている。 釧路港を管理する釧路市が国土交通省に提出した計画書によると、わが国の穀物類輸入は北米の穀倉地帯からが大半を占める。釧路港は関東の港湾に比べると海上航路が短いという優位性がある。現行、釧路港は他港に寄港した後のセカンドポートという位置付けだが、北米からのファーストポートになれば、輸送期間は1日程度短縮できる。 苫小牧、石巻、八戸、新潟の各港とは、ユーザー間での連携に対して合意が図られており、船舶の共同配船等による輸送効率の向上にも役立つというのも、国際バルク戦略港湾の選定につながった。 こうした輸送網を実現するために、釧路港では、第2ふ頭から約150m沖に、突堤式のマイナス16m岸壁(延長320m)を新設・整備する。既存の第2ふ頭はマイナス12m岸壁で、延長が480mあり、2バースとして運用しているが、食糧・飼料関係の船舶が頻繁に離着岸している。沖出し整備すれば、既存岸壁の機能を休止することなく新バースの建設ができる。 段階的に整備する方針で、2015年度までの第一段階では、パナマックス船対応のマイナス14m、2020年度までの第二段階で、ポストパナマックス船対応のマイナス16mに増深する計画だ。荷役機械の整備も含めて、完成後には現行1時間当たり1,200トンの総荷役能力が、2,400トンに倍増することになる。新設した岸壁の外側を外航本船が利用し、内側を内航船が利用する計画で、外航本船から内航船への直接荷役が可能となる。時間当たりの荷役効率が向上し、物流コストの削減につながる。 既存の航路水深もマイナス14mで、2020年度までにマイナス16mにする予定だ。いずれも予算的な措置ができ次第、整備に入る見通し。 |
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位置図 | 提供:北海道開発局釧路開発建設部 飼料の荷役状況 |
提供:北海道開発局釧路開発建設部 西港区第2ふ頭 |
国際バルク戦略港湾の整備計画とは別に、現在、西港区では国際物流ターミナル事業の整備が進んでいる。沖合に島式の防波堤(延長2,500m)を、第4ふ頭の西方に新西防波堤(延長1,800m)をそれぞれ新設する計画となっている。 第4ふ頭は、釧路港の背後圏の製紙工場で使用される石炭を主に取り扱っているほか、金属くずの積み出しにも利用されている。ところが、近隣河川や浅海域から供給される漂砂の影響で港内航路・泊地の埋没現象が発生しやすく、維持浚渫費用が負担になっている。 そこで、第4ふ頭の西方に、新西防波堤を整備し、近隣河川からの漂砂の流入を防ぐ工事が進められている。 また、近年の取扱貨物量は横ばいとなっているが、港内静穏度を確保し、港湾利用の安全性の向上などのため、沖合に島式の防波堤を整備中だ。防波堤は東西方向に約2,500mの延長があり、静穏度の向上に期待がかかる。荒天時には港内での避泊が可能なことから、海難事故の防止にも役立つ。島防波堤、新西防波堤とも現在工事中で、完成は2017年度を予定している。 さらに、第4ふ頭の西側を拡張するとともに、マイナス9mの耐震強化岸壁を整備する計画もある。西港区初の耐震強化岸壁で、RORO船(車両甲板のある貨物船)対応の岸壁を第4ふ頭の西側に整備する計画だ。現在、RORO船とバルク船舶が混在利用している第1ふ頭から移転させる。第1ふ頭には石油桟橋があるほか、今後はLNGの取り扱いも始める予定。民間事業者によるLNG基地の建設計画も進んでおり、2015年にも受け入れをスタートさせる。 |
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提供:北海道開発局釧路開発建設部 西港区 |
提供:北海道開発局釧路開発建設部 木材チップの輸入 |
釧路港発祥の東港区は現在、市街地に近いこともあり、ウォーターフロント開発が活発に進む。昨年3月には現時点での釧路港唯一の耐震旅客船岸壁が完成し、今年3月に完成した背後の緑地と一体的な利用が図られている。岸壁水深はマイナス9m、延長310m。釧路の海の玄関口として、国内外の旅客船需要に対応している。緑地には、歓送迎デッキや野外ステージを備え、市街地に近い立地とともに、同港に賑わいをもたらしている。 ウォーターフロント地区の中核施設ともいえるのが「釧路フィッシャーマンズワーフMOO」で、鮮魚市場や各種物産、飲食店がそろい、観光名所の一つになるなど、市民に親しまれる施設になっている。 東港区内の副港地区は、釧路の水産業を支える中心基地として機能しており、好魚場に恵まれ、1979(昭和54年)から 13年間、水揚げ日本一を記録している。現在では、北米やロシアなどからの輸入もあり、多くの水産加工業が集積し、全国へ生鮮品や加工品が出荷されている。 道東最大の都市を支え、市民生活と密接に結びつく釧路港だが、地震・津波対策という課題を抱えている。2011(平成 23)年3月11日の東日本大震災では、最大で高さ2.1mの津波が観測され、港湾区域の多くが津波によって浸水した。幸いにして人的被害は免れたが、航路や泊地に津波漂流物が集まり、港湾機能が一時的に休止に追い込まれる事態となった。また、1993(平成5)年発生の釧路沖地震では液状化被害も起きた。 釧路市では2013年度までの2カ年の予定で、「港湾BCP(事業継続計画)」の策定を進めている。港湾施設や港湾機能の被害を最小限にとどめるとともに、大規模津波に対しては津波の発生頻度に応じた防災対策、減災対策を検討する。 港湾内の企業と連携して防護・避難対策を強化し自然災害のリスクに応じた防災力を確保する狙いだ。東港区は近くに丘陵地があるが、西港区は平坦な土地が続き、津波発生時に避難場所となるような高所がない。津波で生産や港湾の活動が停滞すると、日本経済にも大きな影響を与えかねない。他港との連携にも留意した計画を検討中という。 |
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提供:北海道開発局釧路開発建設部 耐震を強化した旅客ターミナル |
提供:北海道開発局釧路開発建設部 石炭の荷揚げ状況 |
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出典:釧路市 |
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