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志布志港 提供:鹿児島県 |
国土交通省は今年5月末、同港を国際バルク(ばら積み貨物)戦略港湾に選定。今後、港湾施設などの整備を加速させ、穀物飼料を安定的かつ安価に送り出す供給拠点に発展させる方針だ。南九州の国際物流拠点港を目指す同港の現況をレポートする。 |
志布志港は、鎌倉時代の日宋貿易の中継港になるなど、諸外国との地理的な優位性を活かし、古くから栄えてきた。徳川幕府による鎖国時代にも、国内外との交易を続け、立派な屋敷が建ち並ぶ「志布志千軒町」が現れるなど、独特な繁栄ぶりを見せた。ただ、明治時代に入ると、開国により全国の港が門戸を開いたため、志布志の海運業は徐々に衰退していく。 再び志布志港が脚光を浴びるのは大正時代末期のこと。明治時代後期に、九州南東部の交通の要地として古い港の再興を望む機運が高まり、1919(大正8)年に志布志港の修復が本格的に開始された。旧港は、志布志湾に注ぐ前川の河口を港として利用していたため、川底が浅く、大型船の着岸ができない。このため、浚渫などの築港作業が実施され、当初計画の倍となる12年の歳月を要し、1931(昭和6)年に整備が終了した。大正時代末期には、陸上交通となる鉄道志布志線も開通。さらに、演習地としての寄港も増えた海軍の要請もあり、志布志港は再び活気を取り戻していった。 戦後の1953(昭和28)年には地方港湾、1969(昭和44)年には重要港湾の指定を受け、それ以降、急速に港湾の整備が進み、鹿児島県東部地域の拠点港として、その地位を確立していった。 |
現在の志布志港は、本港など4つの地区に分かれている。時代の変化に応じる形で、これらの地区は東側から本港、外港、若浜、新若浜の順に順次整備が行われていった。 本港地区は大正時代から昭和30年代にかけて整備された。昭和初期には阪神諸港との間で定期船が就航し、昭和30年代には鉄道や道路など港湾周辺地区の陸上輸送も利用し、大隅半島の農林・水産品やそれらの加工品を運び出す拠点となった。現在は漁船や遊漁船など小型船の係留施設として活用され、物流拠点機能は、新たに整備された他の3地区に移されている。 外港地区は、昭和40〜50年代にかけて、港湾の用地不足の解消や長距離フェリーを含む大型船の寄港を可能にする目的で整備された。第1・第2突堤があり、第1突堤は東京方面の定期船や内港不定期船の係留場所として利用されている。水深10m岸壁もあり、大型の貨物フェリーも就航している。 一方、第2突堤は新若浜地区国際コンテナターミナルが供用開始されるまで、コンテナターミナルとして利用されていた。現在でも、ほぼ全体が指定保税地域に指定されており、税関手続きの簡易・迅速な処理が可能だ。ふ頭には、くん蒸上屋が備えられている。 若浜地区は1979(昭和54)年に港湾計画に位置づけられ、1987(昭和62)年に供用を開始した。供用後すぐに飼料製造会社(現在6社)やサイロ会社(現在6社)が立地し、国内有数の飼料生産基地となっている。地区内には若浜中央ふ頭、旅客船ふ頭、若浜南ふ頭があり、サイロ会社専用のドルフィン桟橋(シーバース)も設けられている。 このうち、若浜中央ふ頭は、長距離フェリー志布志〜大阪航路が毎日就航し、国内物流や人流の拠点となっている。一方、若浜南ふ頭は外内貿の貨物船が利用。2004(平成16)年に整備された旅客船ふ頭は耐震強化岸壁で、不定期の旅客船が利用するなど観光の海の玄関口としての機能や、災害時の防災拠点としての機能を備えている。 |
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本港地区、外港地区、若浜地区、新若浜地区の順に整備が進んだ。 提供:鹿児島県 |
新若浜地区は、外貿コンテナ貨物量の増大などに対応するため、1997(平成9)年度から整備に着手。5万トン級の貨物船が接岸可能な水深14mの岸壁を有する「国際コンテナターミナル」が2009(平成21)年3月に供用を開始した。外港地区にあった従来のコンテナターミナルに比べ格段に施設能力をアップさせている。 具体的には、ターミナル面積は約19haとし、従来施設の約2倍に拡大。主要な港湾施設は水深14m岸壁(1バース、延長280m)をはじめ、ガントリークレーン(13列5段対応、1時間当たり30個)2基、リーファーコンセント(440v)50口、混載貨物仕分けなどができる多目的上屋などが整備されている。 現在、国際定期コンテナ航路は台湾・フィリピン航路、台湾・香港航路、中国航路、韓国航路などがあり、「港湾施設の機能強化で、2010(平成22)年の外貿コンテナ取扱量は約8万4,000TEUと過去最高を更新した」(鹿児島県土木部港湾空港課)という。 各地区での港湾施設整備は一段落し、港内では現在、沖防波堤の工事が進められている。ただ、国際バルク戦略港湾の選定を受けたことから、今後ドルフィン桟橋の増設や航路浚渫などが計画されている。 |
志布志港の特長は、毎年約1,000万トン前後の取り扱い貨物量の半分以上をフェリーが運んでいる点だ。フェリーは大阪航路、東京・沖縄航路などがあり、特に大阪航路は肉や魚、野菜など南九州で生産されたものを毎日運び、近畿地方に供給され、都市部の食生活を支えている。フェリーを利用することで、「国内物流のモーダルシフトとして環境負荷を和らげる役割も担っている」(同)という。 フェリーを除く一般貨物のうち、4分の3は海外からの貨物となる。輸入している貨物は「とうもろこし」や「その他穀物」など配合飼料の原料とタイヤ工場向けの「ゴム樹脂」が中心となる。一方、輸出は「ゴム製品(タイヤ)」や「紙・パルプ(古紙)などが大半を占める。 外貿コンテナ取扱量(TEU)の輸出入割合は輸入が約80%を占め、輸出が約20%となっており「今後はこの輸出入の割合の改善工夫が急務となっている」(同)。 |
もう一つの大きな特長が、前述したように畜産王国である〝南九州〟を背後に抱え、その物流拠点となっている点だ。畜産生産額(肉用牛・豚肉・鶏肉)は鹿児島・宮崎・熊本の3県をあわせ全国の約3割を占めている。 また、鹿児島県の飼料生産量は2008(平成20)年で413万トンと全国1位(シェア17%)を誇る。その生産を支えているのが志布志港と鹿児島港に立地している飼料工場だ。なかでも飼料用のトウモロコシの輸入量は茨城県の鹿島港に続く全国第2位となる。全国的にみると、トウモロコシの輸入量は減少傾向にあるが、志布志港は増加傾向を維持。これは輸入した配合飼料の原料を飼料工場がある国内の港へ二次輸送する「中継基地」としての役割が高まってきているからだ。 太平洋に面し、東京より上海(中国)に近い志布志港は、九州南部の中核的な国際港湾であるとともに、国内の食料を支える物流拠点、さらには飼料供給基地でもある。同港が今後、「南九州の国際物流拠点港」としてさらに発展していくためには、官民が共同して知恵を出し合い、大型船の対応や国際コンテナターミナルの効率的な運営など、一層の港湾機能の強化が必要となりそうだ。 |
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外港地区(左側が第一突堤、右側が第二突堤) 提供:鹿児島県 |
サイロが建ち並ぶ若浜地区。 |
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