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徳山下松港徳山地区  提供:山口県

【港湾概要】  
【港湾区域】 14,589ha
【バース数】 30バース(公共) 105バース(専用)
【取扱貨物量】 5,162万t(以下2009年データ)
【取扱コンテナ個数】 101,957TEU
(うち外貿51,443TEU、内貿50,514TEU)
【貿易額】 8,428億円
(うち輸出3,750億円、輸入4,678億円)
 豊後水道のほぼ正面に位置し、瀬戸内海の「西の玄関口」となる徳山下松港。周囲を笠戸島や大津島などに囲まれ、天然の良港として古くから栄えてきた。近年では背後に形成された周南コンビナートをはじめとする臨海工業地帯を支える工業港として重要な役割を果たしている。2008(平成20)年には全国初の臨海部産業エリア形成促進港に指定。5月31日には、宇部港とともに国際バルク戦略港湾(石炭)にも選定され、臨港部の産業の安定的な発展に向け、港湾物流の一層の効率化が期待されている。
貨物取引高の9割鉱産品と化学工業品
瀬戸内海の西の玄関口
 大小の島々に囲まれた徳山下松港は、広い静穏域が確保された天然の良港で、14,589haの港湾区域は全国で5番目の広さを誇る。江戸時代中期頃、財政難にあえぐ毛利氏が米・塩・紙による殖産政策「三白政策」を実施し、その際に徳山や下松などの各地に商港を開いたのが、現在の港の基礎となっている。
 ちょうどこの時期、日本海側から下関を通り大阪へと向かう「西廻り航路」の開発や北前船の登場もあり、この地で生産された良質な米・塩・紙は全国に知れ渡り、それを買い付けに大阪商人が同港におしかけ、海運時代の隆盛期を迎えた。
 その後、明治時代に入ると鉄道などの陸路の発達などから海運業は徐々に後退。しかし、静穏域の広い同港には化学工業や造船業など〝みなと〟に依存する企業が進出。1904(明治37)年、徳山市(現周南市)に海軍練炭製造所が開設されたのを契機に、大正から昭和にかけて石油、鉄鋼、化学、輸送機械などの企業が次々と進出し、全国屈指の石油コンビナートが出現した。
 企業進出は徳山地区に限らず、新南陽、下松、光地区にも拡大。西日本地区の代表的な臨海工業地帯が形成されていった。戦後は復興の好景気も手伝って同港の利用が増加。1951(昭和26)年には重要港湾となり、高度成長期の1965(昭和40)年には、この地域が「工業整備特別地域」に指定され、翌年の1966(昭和41)年には特定重要港湾に指定された。今年4月の港湾法改正で現在は国際拠点港湾となっている。
典型的な臨海工業港
 徳山下松港は典型的な臨海工業港で、港湾取扱貨物は石炭、石灰石、原油などの鉱産品と、セメント、石油製品、化学薬品などの化学工業品が全体の9割を占め、そのほとんどが民間企業の専用施設で取り扱われている。近年ではコンテナ貨物が急増し、東南アジア航路や韓国・中国航路など外貿コンテナ航路も数多く就航している。
 一方、港湾施設の整備は戦時中軍港であったこと、誘致企業の大半が大企業であり、各社がそれぞれ専用施設をもっていたことなどから、公共施設の整備がやや立ち遅れていたが、船舶の大型化や貨物のコンテナ化などに対応するため、近年、整備が急ピッチで進んでいる。
 循環資源移入量が多いことも特筆すべき点で、リサイクルポートにも指定されている。製造とリサイクルを合わせて行う産業が同港には集積しており、廃棄物のセメント化をはじめとするリサイクル事業や技術開発が積極的に行われている。2007(平成19)年には循環資源移入量が全国第1位となっている。
日本を代表する企業群が立地
 現在の徳山下松港は、新南陽、徳山、下松、光の4地区に分かれている。各地区には日本を代表する大手企業の工場などが立地。原材料を輸入し、それを製品化して国内外に輸出・移出している。素材型産業が多く、全国のものづくり産業の素材供給拠点となっている。
 新南陽地区には東ソーや日新製鋼、日本ポリウレタン工業など化学、鉄鋼などの工場群があり、これらの企業は専用ふ頭、専用施設を持っている。公共施設は新南陽ふ頭や平野ふ頭がある。
 徳山地区は、山陽本線徳山駅南側に隣接し、九州の竹田津(大分県)を結ぶフェリーふ頭やコンテナターミナルなどがあり、徳山下松港の中心的な地区となる。公共施設の晴海ふ頭には−10m岸壁4バースをはじめ、−12m岸壁やガントリークレーンなどを備えた徳山コンテナターミナルがある。同ターミナル沖合には、県内最深となる−14m岸壁1バースの公共施設(計画では2バースを整備)があり、背後のふ頭用地や港湾関連用地とを合わせて臨海部産業エリアの指定を受けている。同地区にはトクヤマ、出光興産、日本ゼオンなどの企業が立地している。 笠戸島に近接する下松地区は、東洋鋼鈑、日立製作所などの工場や中国電力下松発電所がある。公共施設は下松第1ふ頭や下松第2ふ頭があり、笠戸島には親水緑地や海上遊歩道などの緑地も整備されている。東部に位置する光地区は、武田薬品工業や新日本製鐵などの企業があり、公共施設として島田ふ頭がある。

  徳山下松港の位置図。
新南陽、徳山、下松、光の4地区には
それぞれ大企業が立地している。
光地区、手前は虹ヶ浜海岸
提供:山口県
港湾施設を充実させ、企業活動を促進
増深工事の浚渫土を有効活用
 天然の良港として栄えた徳山下松港だが、近年の輸送船の大型化への対応は待ったなしの状況にある。これまでのように各社が自社専用岸壁を独自に整備するのでは対応が難しく、大規模な港湾インフラ整備が求められている。同時に地震や高潮など自然災害への備えも進めていかなければならない。
 現在、同港ではいくつかの港湾工事が進められている。国土交通省中国地方整備局が進めているのが新南陽地区国際物流ターミナル整備事業だ。船舶の大型化に対応するため、1997(平成9)年度から−12m岸壁1バースの整備と、泊地、航路(いずれも−12m)の浚渫を進めている。岸壁と泊地はすでに工事を終えているが、航路浚渫は整備中で現在−10mで暫定供用中だ。「航路浚渫も平成20年代後半には終える予定」(中国地方整備局宇部港湾・空港整備事務所)という。
 臨海部の各企業の要請もあり、増深化工事は急ピッチで進められているが、その一方で浚渫土砂の処分が課題となっている。「2005(平成17)年度から周南市と連携して、浚渫土砂を大島地区の干潟造成の中詰め材として有効活用している。干潟造成はI期・II期に分けて実施し、I期はほぼ完成。II期も生物の生息状況などをモニタリングしながら事業を進めている」(中国地方整備局宇部港湾・空港整備事務所)。
 ただ、干潟造成だけでは浚渫土砂の処分が思うように進まないため、数年前から新たな処分地の確保が急務となっていた。このため、山口県と国が処分先の確保について協議。その結果、県が2005(平成17)年度から国庫補助事業として進めていた「N7埋立事業」のうち、土砂処分場(21.4ha)護岸を国直轄事業として早期に整備を進め、処分地を確保することにした。この決定を受け、国土交通省中国地方整備局は2010(平成22)年度から工事に着手。2013(平成25)年度には完成させる予定だ。
 隣接する廃棄物処分場(4.7ha)護岸は県単独事業として引き続き進め、同時期の完成を目指している。N7埋立事業内には民間企業の東ソーも埋立免許(7.6ha)を取得し、すでに護岸整備を終えている。
徳山地区の晴海9号岸壁
提供:山口県
全国初の臨海部産業エリア形成促進港に指定
 徳山下松港は、エネルギーの原材料となる石炭などのバルク貨物が企業の国際競争力を支える重要な役割を担っている。山口県では、立地企業のさらなる発展に向け、こうした石炭などの輸送コストの低減策を検討。国に対し、民間企業への「公共ふ頭の長期一体貸付制度」を提案していた。2008(平成20)年にはこの提案が制度化され、全国初の臨海部産業エリア形成促進港に徳山下松港が指定された。
 これを受け、トクヤマや出光興産など民間企業と周南市は共同出資会社「周南バルクターミナル株式会社」を同年8月に設立。県は、徳山地区の晴海9号岸壁及び背後地を同9月に臨海部産業エリアの区域に指定し、一体貸付が実現した。
 2010(平成22)年7月にはI期工事が完成し、石炭の取り扱いを開始。2012年(平成24)年には完全操業となり、年間200万トン以上の石炭などが取り扱われる予定だ。
船舶大型化の対応に向け公共ふ頭の整備進む
県内初の耐震岸壁を整備中
 徳山地区では、山口県が晴海ふ頭で−10m耐震強化岸壁整備事業を進めている。既存岸壁である晴海5号岸壁(延長170m)を耐震化するもので、完成すれば県内初の耐震岸壁となる。
 県では2006(平成18)年度に事業着手。岸壁背後の地盤を事前混合処理し、地震時にかかる土圧を少なくすることでケーソンの変位を抑える。工事は上部工とケーソンをそのまま残し、現在背後地の埋立地を掘削している。完成は2013(平成25)年度を予定。
 輸送・荷役コストを削減し、立地企業の国際競争力を高めるには大型船舶による大量輸送と荷さばきの効率化が欠かせない。国や県は、こうした船舶の大型化に対応するため、今後も引き続き港湾施設の整備を進める。なかでもバルク(ばら積み)の物流効率化には注力する考えだ。徳山地区の臨海部産業エリアがバルクターミナルとして2012(平成24)年に本格稼働を予定しているのに加え、国際バルク戦略港湾に選定されたことで、徳山下松港を石炭の一大集積地に発展させる方針だ。日本を代表する企業群を支え、産業活動の活性化のためにも、港湾インフラが一層強化されることを期待したい。

造成が進む大島干潟
提供:中国地方整備局宇部港湾・空港整備事務所
提供:山口県
新南陽地区
宇部港とともに国際バルク戦略港湾に選定 山口県の石炭取扱高は国内第1位
 国土交通省は5月31日、バルク(ばら積み)を取り扱う大型港湾の中から、国際競争力のある港を集中整備する「国際バルク戦略港湾」に徳山下松港・宇部港(石炭)など10港を選定した。国際バルク戦略港湾は、資源や穀物などを運ぶバルク貨物船の国際拠点港を創出し、低コストで安定的な輸送を実現するのが目的。昨年から同省が穀物、鉄鉱石、石炭の三品目を扱う大型港湾を対象に選定作業を進め、効率的なターミナル運営や消費地への近さなどから選定を行った。今後、大型船に対応した岸壁整備などが重点的に実施される。同省では2012年度予算の概算要求に反映させる方針だ。
 両港の港湾管理者である山口県によると、石炭ユーザーである出光興産、宇部興産、中国電力、東ソー、トクヤマらと連携し、岸壁改良などを実施し、2015(平成27)年までに両港でのパナマックス船(必要水深14m程度)の石炭の満載入港、2020(平成32)年までに徳山下松港でのケープサイズ(同19m程度)の同満載入港への対応を可能にする。具体的には徳山下松港下松地区に公共桟橋(−19m)を整備し、同港他地区や宇部港との連携を行うことで、大型船による大量一括輸送による物流コスト削減が実現でき、コールセンターを介して全国の石炭ユーザーが物流コストの削減効果を享受できる計画だ。山口県では航路浚渫などの総事業費として約500億円を見込んでいる。
 山口県は全国有数の自家発電量を有する周南コンビナートなどを抱えていることや、全国への配送拠点になっていることから石炭取扱量が全国1位となっている。県では2020(平成32)年には石炭輸入量が現状の370万トン多い計1,670万トンに達すると予測している。


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