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室蘭港と内浦湾 提供:室蘭市

【港湾概要】
【水域】約1,240ha
【陸域】約370ha
【バース数(公共、民間含む)】公共42バース、民間62バース
【入港船舶】6,572隻(2008年実績)
【総トン数】2,544万t(2008年実績)
【取扱貨物量】3,258万t(2008年実績)
【貿易額】7,986億円(2008年実績)
「鉄のまち」を中心に典型的な臨海工業港として発展してきた室蘭港。天然の入江を活用した穏やかな良港も、道内最深の−16.5m岸壁や耐震強化岸壁、広域防災フロートを抱えるなど、今日では施設面の充実した「機能的な港」になっている。社会・産業構造の変化、環境分野ニーズの高まりにいち早く対応し、リサイクルポートとして新たな事業も展開中だ。最近では夜景の美しい港として観光需要も高まっている。総合的な機能を持つ港湾として、新たな姿への成長を目指す室蘭港を紹介する。
工業港として発展
 1872(明治5)年に開港した室蘭港は、1892(明治25)年の鉄道開設をきっかけに石炭の積み出し港として発展。1907(明治40)年の日本製鋼所、1909(明治42)年の輪西製鉄所(現新日本製鐵)の設立で、「鉄のまち」として成長していく。戦後は、セメントや石油精製といった臨海型の産業の立地やその施設規模の拡大によって、産業港湾として機能を高めていった。1965(昭和40)年には東北・北海道地区では初の特定重要港湾の指定を受け、フェリーやコンテナなどの航路が相次ぎ開設された。大都市・札幌に近く、陸上交通が確保されている上に、後背地に産業集積地があったことなどから、国内外の流通の玄関口として重要な役割を維持してきた。
 天然の入江は良港を形作る一方で、港の後背地の面積を確保するのが難しく、これを補うように埋立事業が活発に行われた。

◇道内最深の−16.5m◇
 今日までに埋立・造成された土地は841万m2にも及ぶ。戦後の高度経済成長期に、鉄鋼産業など民間企業が主導的に推進して構築されたものが多く、民間主導の港づくりとして、ふ頭群や防波堤などの工事が次々と行われた。企業名の付いたふ頭が多く、道内最深の −16.5m岸壁は、民間企業の専用施設だ。
 産業拠点港としての色彩が濃く、中心エリアに位置する新日鐵ふ頭は鉄鉱石・石炭を輸入し、鋼材を国内各地に移出する。−16.5m岸壁をもつだけでなく、荷役作業の荒天待機をなくすための全天候型バースを1990(平成2)年に建設した。そのやや南に位置する日鋼ふ頭は、鋼材を移入し、原子力発電などの発電機系機器類を移出・輸出する。2010年3月には世界最大級の14,000トン水圧プレスを稼働させ、最高水準の鍛造技術を有する。もう一つの拠点施設である新日精ふ頭も道内最深の−16.5mのシーバースを持ち、原油を輸入し、重油・石油製品を輸移出。道内で需要の高い灯油や軽油の精製拠点にもなっている。1984(昭和59)年に造船を休止した函館どつく室蘭製作所も湾内にあり、これまで船舶修繕や橋梁の組み立て作業に使用してきたが、2010年1月に新造船の建造を26年ぶりに再開している。
広域防災拠点へ
 市内の道路混雑緩和を目的に、1998(平成10)年に完成した国道37号白鳥大橋。橋長1,380m、主塔間720m。建設当時では国内で
10番目、東日本最大のつり橋で、その外側の崎守地区には、公共ふ頭として−14m の岸壁が整備されている。国際コンテナ航路の拠点として、韓国・釜山との間に定期便が就航する。主に製紙原料を輸入し、鋼材を輸出する。
 崎守ふ頭の整備が進み、コンテナ取扱量の増加に伴い、同ふ頭地区の臨港道路の重要性も高まった。国道37号のバイパス道路として一般車両の利用もあり、車両の大型化、交通量の増大、法面など道路施設の老朽化といった課題解決に向け2003(平成15)年から線形改良などの工事が進められている。
 こうした施設の老朽化に伴う改良事業は、西2号ふ頭でも進む。あわせて、狭かったエプロンを拡幅し、荷役作業の効率化も目指す。エプロンの拡幅工事はふ頭上屋が岸壁に迫って用地が確保できなかっため、地中に打ち込んだ鋼管杭同士を斜材(ストラット部材)で連結する水中ストラット形式が採用されている。同形式の採用で、エプロンを既存岸壁から約4.5m前出しする事業も海上作業期間が短縮でき、本年度中に完了する予定だ。

◇国内4番目の防災フロートを配備◇
 室蘭は有珠、樽前、駒ケ岳、恵山の各活火山に近接している。比較的、火山災害の影響を受けにくいという地形的特長を持つものの、
2000年の有珠山噴火の際には、海上輸送の拠点として活躍。陸上輸送寸断という災害時における港湾機能の重要性を再認識させた。
 2003年に西1号ふ頭に完成した広域防災フロート(浮体式防災施設)は、災害時に備えて配備されたものだ。大きさは長さ80m×幅24m。積雪寒冷地仕様とし、鋼製二層デッキという構造で1,000トン級の貨物船の接岸が可能だ。国内4番目の整備となり、平常時は港内の係留施設や、臨時のヘリポートとして利用されるが、災害時には被災岸壁の代替岸壁として住民の避難や緊急物質の輸送などに威力を発揮する。広域派遣を前提としており、外洋へのえい航もできる。
 岸壁にも防災対策を実施している。震度6弱クラスの地震にも耐えられる耐震強化岸壁を、市街地や官庁街、広域避難場所にも近いフェリーふ頭に整備した。この工事では国内の公共事業で初めて改良型鉄鋼スラグを地盤改良の中詰材に用い、2008年に本体工事がほぼ完了。一部残工事を現在も進めている。

室蘭港位置図 室蘭港入口に架かる白鳥大橋 提供:室蘭市
鉄からリサイクルポートへ
◇旧ドライドックを「オフドック」に
 産業港湾として発展し、国際貿易・国内流通の要所に位置付けられる室蘭港だが、近年は環境事業の拠点という色彩も濃い。臨海工業港で産業立地空間の確保が可能という立地特性から、2002年に広域的なリサイクル施設の立地に対応した廃棄物輸送拠点港湾である「リサイクルポート」の1次指定を受け、港内の企業群の環境事業に貢献している。
 家庭から排出されるプラスチックを集めて再度プラスチックの原料に利用する取り組みや、廃棄物セメントの原料化・燃料化、石油精製過程の副産物を改質しての耐酸性土木・建築資材への活用など、各企業がさまざまな環境事業を展開。北海道や東北、関東甲信越など16道県のPCB(ポリ塩化ビフェニル)廃棄物の無害化処理を行う企業もある。
 西1号ふ頭は、周辺企業から集まった金属くずを、工業原料として韓国・中国を含む内外への搬出拠点になっている。また、西2号ふ頭ではシップリサイクルとして、老朽船舶の解体実験のモデル事業が本年度始まった。環境に対する国民の関心が高まる中、リサイクルポートの役割は今後さらに高まっていくだろう。

◇望まれるフェリー航路の復活◇
 多機能型の港湾への展開が図られる中で、本州各地とを結ぶ定期フェリーの休止という暗いニュースもある。八戸、大間、大洗などに続いて、青森港とのフェリー便が2008(平成20)年12月に休止。白鳥大橋をくぐって入港してくる定期フェリー便は姿を消した。
 ただ、内浦湾をう回する陸上輸送より海上輸送の方が効率が高く、ニーズも根強くあることから、地元ではまず貨物フェリーの復活を目指している。その夜景が「室蘭八景」の一つに数えられる室蘭港も、人と物が集まる賑わいがあってこそだ。

環境事業の拠点にも 提供:室蘭市 崎守ふ頭での荷役 提供:室蘭市


選定進む国際バルク戦略港湾
 資源、食料などのバルク(ばら積み)貨物輸送の世界的な獲得競争を勝ち抜くため、国土交通省が国際バルク戦略港湾の選定作業を進めている。大型船による一括大量輸送の拠点となる港湾を絞り込んで整備して、激しい国際競争に打ち勝とうという狙いだ。
 企業活動の国際化の進展に伴い、船舶の大型化が世界的な潮流になっている。同省が国際バルク戦略港湾を選定して集中投資する理由の一つだ。拠点港湾に選ばれるには現在でも、主力の輸送船舶が満載状態で入港できるよう、バード面の整備は重要で、加えて、将来のさらなる船舶の大型化を見据えた港湾整備を進めておかなければならない。
 わが国主要港の中でこの水準を満たしている港は少なく、同省は入港に支障を来しそうな品目を優先的に整備する目的で、まず、「穀物(トウモロコシ、大豆)」「鉄鉱石」「石炭」の3品目を上げた。品目ごとに予想される船舶の将来規模は異なり、国際バルク戦略港湾に求めている岸壁水深は=表=の通り。将来の大規模船舶が入港・通行できる航路、泊地、岸壁(水深・延長)、防波堤、荷役機械を整備しておかなければならない。室蘭港も国際バルク戦略港湾に関心を寄せているようだ。
 仮に国際バルク戦略港湾に指定されなくても、バルク拠点港で減載した大型船舶が寄港するような立地にあれば、喫水調整機能や内航フィーダー輸送の拠点港としての役割も必要になる。こうした場合に備え、大型船舶が安全に入港できるための機能を整えておくことが求められる可能性もある。
(国土交通省資料を参考に作成)


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