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写真左 経済産業省「マンガン団塊採掘システムの研究開発プロジェクト」の海洋実験用集鉱機[写真提供:産業技術総合研究所]
写真右 マンガン団塊の一種であるマンガン・クラスト。堅い地盤の上に分布する[写真提供:海上保安庁海洋情報部]

海底資源の採鉱技術
 マンガン団塊の採鉱技術については、1960年代から、日本を含む先進各国によって研究開発が進められてきた。いろいろな採鉱方法が検討されたなかで、もっとも有望とされているのは流体ドレッジ方式と呼ばれるものである。この方式は海底で曳航式あるいは自走式の採掘装置がマンガン団塊を集め、これをパイプラインの中に発生させた水流によって海面まで輸送するものである。コバルト・リッチ・クラストについては、海底の基盤岩に固着しているマンガン酸化物を剥がしたり、掘削したりする工程が付加されるものの、基本的なシステム構成は、マンガン団塊と同様と考えられている。
海の底は資源の宝庫

 日本はよく、「資源のない国」と呼ばれる。四方を海に囲まれた国土は狭く、アメリカやロシア、中国、あるいは石油が豊富な中近東などとくらべて、資源が少ないことは確かだ。ただし、地球の表面積の70.8%は海であり、この海の資源を有効に活かせるのならば、海に囲まれた日本はむしろ資源の豊富な国とも言える。そして実際、深い海の底、海底にはいまだ採取されていない豊富な資源が眠っている。こうした海の底に眠っている資源が、海底資源である。
 海底資源は主に「海底石油・ガス」、「マンガン団塊」、「熱水鉱床(温泉沈殿物)」、「ガス・ハイドレート」の4つに分類される。「海底石油・ガス」からは、その名の通り石油や天然ガスが有用資源として採取できる。「マンガン団塊」は鉄・マンガン団塊(多金属団塊)とマンガン・クラスト(コバルト・リッチ・クラスト)に分けられ、マンガン団塊からは銅やニッケル、コバルトやマンガンが、マンガン・クラストからは、主にコバルトが有用資源となる。「熱水鉱床(温泉沈殿物)」では亜鉛や銅、鉛、銀や金などが有用資源となり、「ガス・ハイドレート」は主にメタンが有用資源として注目されている。


[出典](財)日本水路協会 海洋情報研究センター
商業化された海底石油・ガス
 海底資源のなかで、現在、実際に採掘・精錬技術が実用化されているのが「海底石油・ガス」である。これらは堆積物中の有機物が、地質時代を経て生成されたもので、地上で採掘される石油や天然ガスと同じものである。これらは海底数km下の貯油層に、液体状およびガス状に分布している。
 日本近海では福島県の磐城沖(ガス)や新潟沖(石油・ガス)、海外ではペルシャ湾や北海、インドネシア沿岸などが主な産地となっており、多くの石油会社が商業ベースでの探査・採掘活動を行っている。各社が保有する精錬技術もたいへん高い。多くの場合、これらの資源は浅い海や大陸棚に位置していることから、海上に、一見ヘリポートのように見える巨大なプラットホーム(掘削櫓)を建て、海底のボーリングを行う。
 現在、世界各国で石油の需要が増えるなか、地球全体の石油埋蔵量の4分の1とも言われている海底資源としての石油開発は、掘削技術が完成していることもあいまって、世界各国の注目を集めている。また、石油とともに産出される天然ガスも、注目される海底資源であり、これらについても、すでに実用的な海底資源として、世界各国で利用されている。

可能性を秘めた多様な資源
 一方で「海底石油・ガス」以外の海底資源は、いずれも現在、採掘技術に関して一部で試みられているものの、その多くはまだ概念設計の段階であり、精錬技術についても実験室レベルでの段階にある。しかし、これらの資源は、近い将来、その採掘や精錬の実用化が期待されていることも、また事実である。
 「マンガン団塊」は、鉄やマンガン酸化物が海水から沈殿し、凝集したもので、マンガン・クラストは海山の山頂や斜面の表面に、鉄・マンガン団塊は水深4500〜6000mの深海底に分布している。日本近海では深海型の大規模な分布こそないものの、各地の海山に散在しているという。「熱水鉱床(温泉沈殿物)」は海底火山の活動によって湧出する熱水から沈殿した鉱物で、厚さ数10mほどの泥状や塊状で分布しており、日本近海では沖縄トラフや南方諸島の海底火山周辺が主な産地となっている。
 これらの海底資源に比べ、さらに未知の海底資源となるのが、「ガス・ハイドレート」である。これは水分子内にメタンなどの気体分子が取り込まれたシャーベット状のガス水和物で、一般的にはメタン・ハイドレートと呼ばれている。産状としては水深100〜1000mほどの比較的浅い海底に層状に分布しており、日本近海では北海道周辺や本州南方沖の大陸斜面に、有望な産地があると思われる。しかし、その探査活動や精錬技術は基礎研究が始まったばかりの段階であり、資源として実用化されるのはしばらく先のことだという。
 このように海底には、人類が未だ発見していない数多くの資源が眠っており、未来の地球を支えていく存在であることは間違いない。


[出典]独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物流通機構
未来の資源メタンハイドレート
■日本近海のメタンハイドレート分布予測
 メタンを中心に、その周囲を水分子が取り囲んだ物質であるメタンハイドレートは、一見、氷に似ており、しかし火をつけると燃えることから、「燃える氷」とも呼ばれている。メタンハイドレートは、1mを溶かすと164mのメタンガスとなり、さらに石油や石炭などと比較すると燃焼する際に排出する二酸化炭素の量がおよそ半分であるという点からも、将来の地球のエネルギー資源を支える可能性を持つ、海底資源として注目されている。さらに日本近海は、世界最大のメタンハイドレートの埋蔵量を持つとも言われている。このため、もし石油の採掘量が減少し、そのコストの高騰から、仮にメタンハイドレートが主なエネルギー資源となった場合、日本は世界最大の資源大国になるとの予測もある。
 現状では、メタンハイドレートの商業化は実現されていない。海底に分布するメタンハイドレートは、海底の地中に氷のような結晶としてあるため、液状の石油やガスのように、容易に掘削・精錬することができず、それを実現するとなると、非常に高いコストとなってしまうからである。近い将来、より低コストな採集技術ができることに期待したい。

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