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太平洋南海沖海溝の3次元表示 [資料提供]海上保安庁海洋情報部 |
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海底を構成する多様な地形 |
地上の地形に「山」や「丘」、「谷」や「平地」があるように、海底地形にも、上記の大きな分類よりも細かい地形の分類がある。 地上の山に当たるものが、「海山」である。海山は周辺から独立した円錐形の海底地形であり、複数の海山が連なる地形を「海山列」という。「海丘」は海山ほどの大きさではない、小規模な海底の高まりを指す。 地上の谷に当たるものには、狭く深いくぼみを「海底谷(こく)」と呼び、海底扇状地や深海平原にある細長いくぼみは「深海長谷(ちょうこく)」と呼ばれる。一方で「海溝」は、たいへん深く長い海底のくぼみを指す。また、海底谷や深海長谷の縁にできる堤状の地形は「海底堤防」、中央海嶺の軸部にあるくぼみ状の地形は「中軸谷」などと呼ばれる。 大陸に接する「大陸棚」や大規模な広さをもつ平坦地である「海台」、海溝よりも浅く平らな底を持つ「舟状海盆」などは、地上の地形で言えば平地や盆地と言えるだろう。 これらの海底地形は直接的に船などの運航には関連が薄いが、海運などにかかわりの深い海底地形の名称もある。「礁(しょう)」は海面やその付近にある岩であり、「瀬」は沖合いの浅瀬で、これらは時として海上航行に危険を及ぼす。一方で「堆(たい)」は水深は浅いものの船舶などの運航には支障をきたすことのない深さを持つ海底の隆起である。 |
複数の海盆で構成される日本海 |
それでは身近な海底地形の例として、日本海の海底地形を見てみよう。日本海は平均水深1,350m、面積はおよそ130万m2。中央部にある水深1,000mほどの浅瀬は「大和堆」と呼ばれる。その北側に広がる「日本海盆」は日本周辺の縁海では最も深く、最深部は水深約3,700mに及ぶ。また大和堆の南西には「対馬海盆」、南東には「大和海盆」があり、2つの海盆を分ける水深1,000mほどの海底は「隠岐海脚」と呼ばれている。 一方で日本海に接する海峡はどれも水深が浅いのが特徴であり、宗谷海峡は水深約50m、対馬海峡や津軽海峡も最深部が水深140mほどとなる。また日本海に接する沿岸付近の地形を見ると、中国地方の沿岸は大陸棚が発達しているが、北陸沿岸は富山湾をはじめ急深で複雑な海底地形である。東北沿岸は阿賀野川や信濃川などの河川から流れ出た堆積物によってできた、細長い大陸棚が特徴となっている。 |
![]() 海上保安庁の調査により小笠原東方海域の多数の海山が発見され、「春の七草海山群」と命名された。 |
![]() 音響測深機を用いて作成された精密海底地形図 [資料提供]海上保安庁海洋情報部 |
海底地形の変化が起こす海溝型地震
![]() 政府の特別機関、地震調査研究推進本部が作成した 「全国地震動予測地図」 |
左の図は、今後30年以内に震度6以上の地震が起きる確率を表した「全国地震動予測地図」である。赤みの濃いエリアほど確率が高い。特に関東から四国にかけての太平洋沿岸域が目立つが、これは海底地形と大いに関係がある。 太平洋の日本沿岸海域には大規模な海溝が存在する。その地下深部では、海洋プレートが大陸プレートの下に潜り込んでいる。両者の境界部分はたわみ、やがて限界に達して跳ね上がるときに、大きな地震が発生する。これを海溝型地震という。2003年9月に発生した十勝沖地震、2004年に20万人以上もの津波による死者を出したスマトラ沖地震もこの型である。 マグニチュード8以上の海溝型地震は100〜200年周期で発生するとされており、その発生メカニズムから、大規模な津波を伴う可能性がきわめて高い。 図が示すとおり、東海や東南海・南海、宮城県沖・三陸沖、根室沖などが、近い将来、海溝型地震が発生するであろうエリアだ。人災はともかく、天災を未然に防ぐことはほぼ不可能。ならば、災害が発生する時期と規模を予測するとともに、発生地域の被害を最小限に抑えるため港湾整備などの対策を講じる必要がある。 |
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