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●左:高知県室戸市の海洋深層水取水施設
●中:取水管の敷設風景(写真:(株)本間組)
●右:佐渡海洋深層水分水施設(写真:(株)本間組)

植物の光合成量と呼吸量が等しくなる光の強さの深さを補償深度といい、経験的に海表面の光の強さの1パーセントが到達する深さとされている。また、海水の透明度の約3倍の深さに相当することが知られている(透明度とは直径30cmの白い円盤を海中に沈めて見えなくなる深さ)。
 
深層水の大循環
 
海洋深層水の定義と特性
 地球の表面積の3分の2は海で覆われている。自然再生・循環性のある資源が求められるなか、無尽蔵といえる海の水を資源として活用できれば、解決に向かう問題は少なくないはず。そんな観点から海洋深層水の資源利用の実現を考える時代が始まっている。海洋深層水とは何か。そして、どのように活用できるのだろうか。
海洋深層水という名称にはなじみがあるが、その定義はあまり知られていない。そもそもこの名は資源利用を意図して付けられたものだ。科学的には「光合成による有機物生産よりも微生物による有機分解が大きく、かつ海水の上下混合や人間活動の影響が少ない、補償深度(左図参照)より深いところの資源性の高い海洋水」と定義付けられる。一定以上の深さにあるため他の自然や人間の影響を受けにくく、資源として利用しやすい特性を持つということである。
 海洋深層水の特性とは、主に次のようなものだ。
清浄性
人間活動に伴う汚染物、有害な微生物や病原菌、水質を悪化させる分解性の有機物や濁りなどが少ない。
富栄養性
生物、特に植物に必須な無機栄養素などがバランスよく、豊富に存在する。
低水温性
水温が冷蔵庫内のように低い。
水質安定性
水質の変化が少なく、物理・化学・生物学的に安定している。
 海洋深層水は表層水と混じり合うことがほとんどなく、世界中の大洋をゆっくり循環しながらその特性が保たれ、さらには海水循環のなかで絶えず再生され枯渇の心配がない。
 資源利用という観点に立てば、清浄性は優れた培養・飼育水や漁獲生鮮物の清浄水として、また多様な製品の原材料として、富栄養性は肥料や補助栄養物として、低水温性はエネルギー生産の冷熱源として活用できる。
水産分野における資源活用
 海洋深層水の資源性が初めて注目されたのは1960年代。アメリカ・コロンビア大学が淡水製造、エアコンディショニング、養殖などへの利用を提唱し、カリブ海のセントクロ島に海洋深層水利用研究のための実験施設が建設される。この研究により、熱帯地域でも水産養殖が可能であること、小規模取水でも生物生産の効果があることなど、水産分野における海洋深層水の資源性が実証されたが、肉食中心の食文化のアメリカではさほど脚光を浴びなかった。
 日本では生物生産を目的として、1976年から海洋科学技術センター(現・独立行政法人海洋研究開発機構)が研究に着手し、その利用技術が概念化されたのは1984年。そして1989年に高知県室戸岬で海洋深層水が取水されはじめ、現在に至るまで水産分野を中心としたさまざまな分野で、海洋深層水の資源性が実証されてきている。現在、日本の海洋深層水利用施設は計画・建設中を含めると16施設に上る。海外の4施設にくらべて圧倒的な数である。
 世界が直面する資源問題といえば、資源枯渇や化石燃料の利用による環境破壊が上げられる一方、食品の安全性への危惧と健康被害、食糧不足も現実の脅威として意識されてきている。栄養が豊富なうえ安全性と安定度が高い海洋深層水の資源利用は、まず食糧問題への解消へ向けて突破口を開くことができそうだ。そもそも海中の食物連鎖、植物・微生物などの生命活動が海洋深層水の生成に深く関わっているだけに、食糧という生命の源を生み育むことが早道だろう。そして将来、海洋深層水の資源利用がさらに普及・定着する時代、わたしたちと自然との共生は日常生活に根ざしたものとなり、環境破壊の深刻度はいまよりも低減されているはず。少なくともそう願いたい。

消費者がダイレクトに実感出来るメリット
 1980年代の後半から日本で海洋深層水が取水され始めて15年余り。この間に全国各地へ海洋深層水の利用が浸透していき、地域振興へのチャレンジを啓発していった。こうした進展のなか、1989年に海洋深層水製品がヒットし、ビジネスとして、日常的に利用するアイテムとして海洋深層水の知名度は飛躍的に向上。学術的な呼称である「深層水」に対し、資源活用を前提とする場合は「海洋深層水」と表現され、各分野の関心を集めることとなった。一般的に「深層水」は海面下数千メートル単位の海水を指すが、「海洋深層水」は−200〜−800mほどの海水で、飲料や食品、化粧品への利用が多く見受けられる。海洋深層水の特性が多くの消費者にダイレクトなメリットとして実感されれば、資源利用の本格化も加速することだろう。
海洋深層水を活用して開発された商品
[監修]NPO法人日本海洋深層水協会

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