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ブルースが似合う函館の夜景

港町ブルース Minatomachi Blues
作詞:深津武志、補作:なかにし礼、作曲:猪俣公章、編曲:森岡賢一郎、歌:森進一。
1969(昭和44)年4月15日、ビクターレコードより発売。100万枚を超える大ヒットとなる。森進一のシングルとしては、この曲が最大の売り上げ枚数を記録している。その年には、東映の『夜の歌謡シリーズ 港町ブルース』として、鷹森立一監督、野川由美子、浦辺粂子、谷隼人、梅宮辰夫、そして森進一自身も歌手役として出演し、映画化された。

時代を代表する大ヒット曲
 高度経済成長華やかなりし昭和30〜40年代、夜の盛り場にはいつもブルースが流れていた。『柳ヶ瀬ブルース』や『伊勢崎町ブルース』、『別れのブルース』など、それらの歌は、1日の仕事を終え、酒場のカウンターで一杯の酒を傾ける男たちの、心の癒しとなったものだ。
 1969(昭和44)年4月15日、こうしたブルース歌謡の金字塔とも言える名曲のひとつ、『港町ブルース』が発表された。歌うのはその前年に、デビュー3年目にして第19回NHK紅白歌合戦に出場し、独特の歌いまわしから、青江美奈と並んで「ため息路線」と言われた歌手・森進一である。
 作詞・深津武志、補作・なかにし礼、作曲・猪俣公章、編曲・森岡賢一郎。北は北海道・函館から南は鹿児島まで、全国各地の港町を歌詞にちりばめた「ご当地ソング」でもあるこの歌は、その叙情あふれるメロディと森の優れた歌唱力も手伝い大ヒットとなる。
 発売から2週間あまりでオリコン・チャートのベスト10に入り、以後、5週間にわたって1位にランク。この年に発表された歌謡曲としては、由紀さおりの『夜明けのスキャット』についで、年間第2位のミリオンセラーに輝く。これにより、『港町ブルース』は森進一のシングル最大の売り上げを記録、第2回日本有線大賞や第11回日本レコード大賞・最優秀歌唱賞を受賞。さらに年末の紅白では、出場2回目にして、この曲の大ヒットによりトリを務めるという栄誉を飾った。まさに、時代を代表する大ヒットであったといっても、過言ではないだろう。

 
港町ブルースに登場する港

誰もが共感できる舞台と物語
 ブルース歌謡であると同時に、ご当地ソングの代表曲でもある『港町ブルース』。その歌詞は、1番から6番まで、日本の主な港町を舞台に、女の立場から別れた男への想いを歌い上げている。
 この歌詞は、雑誌『平凡』により募集された歌詞を作詞家のなかにし礼が補作、猪俣公章が作曲したものだ。歌詞の募集に際しては、全国各地から3万7582通もの歌詞が寄せられたという。その中から選ばれたのが、深津武志が作詞した現在の『港町ブルース』の歌詞である。
 「背伸びして見る海峡を」で始まる歌詞。1番の舞台は北海道屈指の港町・函館である。「あなたにあげた、夜をかえして」というフレーズから、港を去っていった男を想う、女の哀歌となっている。一方で2番の舞台は、宮古、釜石、気仙沼と、東北の港町。「流す涙で割る酒は、だました男の味がする」と、1番とは対照的に、惚れた男のために他の男をそでにする切ない女心が歌われる。
 このように、1番から6番まで、舞台となる港町はもとより、そこに歌われる多彩で切ない恋物語は、だれもが1つは心当たりがあるような多面的な展開となっている。そんなある種の親しみやすさと、分かりやすいメロディ。そしてなにより、気鋭の歌手・森進一のたぐい稀なる歌唱力が、この曲を昭和を代表する名曲にしたのだろう。

 
JASRAC 出 0810595-801

四半世紀を超えても歌い継がれる
 『港町ブルース』に登場する港町は実に数多い。函館(北海道)、宮古・釜石(岩手)、気仙沼(宮城)、三崎(神奈川)、焼津・御前崎(静岡)、高知(高知)、高松(香川)、八幡浜(愛媛)、別府(大分)、長崎(長崎)、枕崎(鹿児島)となる。いずれの港町も、当時も今も変わらず、日本を代表する港湾の数々である。
 この曲の発表当時、森進一は作中に登場する港町はもちろん、全国の港々をキャンペーンして回り、大きな反響を得たという。
 こうして生まれた大ヒット曲が、気鋭の歌手にひとつの方向を与えたのだろう。以降の森進一のシングル曲には「波止場女のブルース」「波止場町」「放浪船」「襟裳岬」「北航路」「十六夜舟」「東京みなと」ほか、港や海を題材にした曲が多数見られる。
 あれから38年、港町の風景も当時とは様変わりしているかもしれないが、潮風薫る波止場でふと口ずさみたくなる不朽の名作として、今後もこの曲は歌い継がれてゆくだろう。
 
最後のコーラスに歌われた鹿児島は、森進一が幼少のころ暮らしていた港町
 
2000(平成12)年、気仙沼港の「港ふれあい公園」に建てられた港町ブルースの歌碑。お披露目には森進一も立ち会った


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