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茅ヶ崎海岸のシンボルの烏帽子岩

サザンオールスターズ Southern All Stars
1978年「勝手にシンドバッド」でデビュー。インパクトの強いパフォーマンスでコミックバンドと誤解されることもあったが「いとしのエリー」の大ヒットをきっかけに、日本を代表するロックグループとして名実ともに評価を受ける。以降数々の記録と記憶に残る作品を世に送り続け、時代とともに新たなアプローチで常に音楽界をリードする国民的ロックバンド。2000年リリースの「TSUNAMI」が自己最高セールスを記録、第42回日本レコード大賞を受賞。

日本のウエストコースト
 神奈川県の湘南地区は「日本のウエストコースト」と評されることがある。本家のカリフォルニアでは、温暖な気候に恵まれ、陽気でオープンな人々が海に集いサーフィンなどを楽しむ。横浜や横須賀といったアメリカ文化が色濃い街の影響を受けながら適度にローカルで、マリンスポーツの盛んな湘南に、アメリカの西海岸のイメージを重ねることは、あながち突飛ではないように思える。
 茅ヶ崎駅南口から海岸へまっすぐに伸びる大通りには、一般的な商店や海辺の街らしいマリンスポーツショップが建ち並ぶなかに、ジャズやロック、ポップスを流すバーが点在する。洋楽の世界に「ウエストコーストサウンド」という言葉があるが、茅ヶ崎も音楽が盛んな土地で、有名なミュージシャンを輩出している。歌手から作曲家の道を歩んだ平尾昌晃、日本人離れした声質と声量で知られる尾崎紀世彦は茅ヶ崎出身。音楽だけではなく映画にも大活躍した加山雄三は横浜生まれの茅ヶ崎育ちで、先に挙げた大通りは「加山雄三通り」の通称を持つ。この3名はそれぞれロカビリー、カントリーウエスタン、サーフミュージックといったアメリカの流行音楽をベースに、日本のポピュラーミュージックの黎明期を支えた。
 そして、彼らが活躍した時代から40年あまりを経た現在、いわゆる“J−POP”と呼ばれる成熟した音楽シーンを、この地にゆかりの深いバンドがリードしつづけている。茅ヶ崎出身の桑田圭祐が率いるサザンオールスターズである。

ヒット曲に歌われた茅ヶ崎
 1982年に発表された「チャコの海岸物語」は、チャート2位にランクインする大ヒット曲となった。
 メロディもアレンジも歌唱も、ムード歌謡風あるいは60年代グループサウンズ風ともいえるような、哀愁を帯びた楽曲。歌詞は、タイトルが示すとおり海岸を舞台にした恋人が描かれてはいるが、彼らのほかの作品にも顕著に見られるように、文脈を無視したフレーズが随所に散りばめられており、切なげな心情は伝わってくるものの具体的なシーンがなかなか像を結ばない。
 ところが、前奏からメランコリックな調子で1番、2番、間奏へとつづき、再びコーラスへ戻る箇所で「エボシ岩が遠くに見える」と具体的なモチーフ。「烏帽子岩」とは茅ヶ崎海岸の沖に見える、いわば当地のシンボルである。間奏の後に再び現れるコーラスパートという、リスナーが歌の展開を期待する箇所に、作詞者の桑田圭祐は自分が生まれ育った街の風景を持ってきたのだ。
 桑田は湘南を舞台にした曲をいくつも書いているなかで、明らかに茅ヶ崎限定の曲も目立つ。自分の才能を初めて世に問い、大ヒットとなったデビューシングル「勝手にシンドバッド」は「砂まじりの茅ヶ崎」と歌いだされる。また、アルバム収録曲には「ラチエン通りのシスター」「パシフィックホテル」があるが、前者は茅ヶ崎に在住していたドイツ人貿易商の名を引いた実在の通りを舞台に、桑田の初恋が描かれた曲。後者はかつてラチエン通りの先に建っていたホテルで、ここのボウリング場で、高校時代の桑田はアベレージ200以上を誇るジュニアボウラーとして名を馳せていたという。
 サザンオールスターズの30年に及ぶキャリアは、一貫して順風満帆という印象だが、低迷気味の時期もあった。デビューシングルから5曲連続でチャートのトップ10入りを果たし、コミカルなイメージながら実力も備えた本格派バンドとして定着したが、つづいて発表されたシングル8曲のセールスは振るわなかった。
 14作目の「チャコの海岸物語」は、彼らにとって起死回生の一発だったといえる。その作品に、デビュー曲同様、茅ヶ崎の風景が歌われているのは偶然ではなく、彼らの返り咲きへの意気込みが表れているといえよう。

[参考資料]「地球音楽ライブラリー サザンオールスターズ」TOKYO FM出版

 
2000年に行われたサザンオールスターズ茅ヶ崎ライブを記念し、茅ヶ崎の頭文字をかたどったモニュメント「サザンC」が建てられた
 
茅ヶ崎海岸周辺の土産店では「サザンビーチ」ブランドのグッズが売られている
 
1982年のヒットシングル「チャコの海岸物語」
 
駅と海岸を結ぶ「サザン通り」
 
桑田佳祐の初恋が歌われた「ラチエン通り」
 
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