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天保12年創業、湯浅醤油の老舗「角長(かどちょう)」

街一帯が博物館とギャラリー
 湯浅広港の北側の流れる運河沿いを歩いていくにつれ、時代をさかのぼるような感覚に包まれる。周辺に古式ゆかしい蔵造りの建物や民家が並びはじめるのだ。「蔵造り」を標榜する街は全国に見られるが、往時の建物を近年になって復元したケースもある。その点、湯浅町は掛け値なしの「昔ながら」といえる。かつての醤油蔵をそのまま住宅として使用している民家もあるのだ。
 1841(天保12)年創業の「角長」は、いまも湯浅の醤油づくりの伝統を守りつづけている。煙突から立ち上る醤油の香りに誘われ店を訪れると、はす向かいの「湯浅醤油職人蔵」に案内された。ここは1866(慶応2)年に建てられた仕込蔵を利用し、桶や搾り器のほか醤油づくりの民具が展示されている。昔の職人たちが額に汗して醤油づくりに打ち込む姿が目に浮かぶようだ。
 職人蔵を出て歩みを進めると、道沿いには連子(れんじ)格子の趣深い民家が並んでおり、格子に四角いオブジェが飾られていることに気づく。蒸籠(せいろ)箱を利用し、古道具や詩歌などを展示した「せいろミュージアム」である。これは地域住民による「湯浅町熊野古道研究会」の手によるもので、随所の民家の軒先にせいろアート作品を展示し、街一帯をギャラリーとするプラン。四つ角に設けられた辻行灯とともに、つい散策の足を緩めてしまう心憎い演出である。
 
等身大の街の魅力
 湯浅町の街並みが与えてくれる安らぎ、その理由について湯浅町総務企画課まちづくり推進室の栖原丈博氏に話を聞いた。
湯浅町総務企画課
まちづくり推進室
栖原 丈博 氏
 「『身の丈に合ったまちづくり』が湯浅町のテーマ。新しい集客スポットを設けるのではなく、この町に昔からあったものをそのままの姿で残し、訪れる方々に楽しんでいただこうというものです。醤油や味噌、海産物、みかんなど豊富な特産品も含め、湯浅町ならではの資産を全国のみなさんに知っていただければと思います」(談)
 
 
湯浅町に代々伝わってきた手づくり醤油。岡山産の大豆に岐阜産の小麦など原材料の栽培地は江戸時代から変わらず、吉野杉の桶で1年以上かけてじっくり仕込まれる。
毎年10月に行われる「ゆあさの鯖っと鰺まつり」
シロウオの「四つ手網漁」は湯浅町の伝統漁法
民家の軒先の連子格子に蒸籠箱を利用した作品がディスプレイされた「せいろミュージアム」
醤油発祥のもととなった金山寺味噌の店では、昔ながらの製法を踏襲しつつ、今でも量り売りをしている
伝統的な醤油づくり道具が展示された「湯浅醤油職人蔵」
地元の有志の手によるアート作品が展示されている「湯浅町ふれあいギャラリー」

めしあがれ
三宝柑
江戸時代から和歌山城内に原木があったとされ、その味わいと希少さから、城外不出の果実として藩主に献上されていたという。
紀南から紀中地方にかけて栽培されており、全国に出荷される9割以上をこのエリアで産出。なかでも湯浅産が最高級とされている。
湯浅ちりめん
カタクチイワシ、マイワシ、ウルメイワシの稚魚の「しらす」。大釜で茹でた「釜揚げしらす」、天日干しした「ちりめん」、煮詰めた「佃煮」まで、湯浅湾で獲れたしらすには定評があり、「湯浅ちりめん」の名で全国に根強い愛好者を持つ。

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