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Cover Issue  高知市から土佐湾沿いを東へ約60km、海洋深層水で話題の室戸市の手前に位置する奈半利町。この小さなみなとまちが、近年にわかに活況を呈している。奈半利港に隣接する海岸で発見されたサンゴの群生が、近隣の住民はもちろん専門の研究者からも注目を集めているのだ。みなとまち活性化の取り組みと特徴的な自然資源との相乗で、奈半利の町に“元気”が湧き起こる。

奈半利港の歩み  現在の奈半利港の北西に流れる奈半利川の河口は、古来より海上交通の要衝であった。江戸時代の二代目土佐藩主山内忠義の頃には百数十隻が入れる港が造られ、上方や土佐沿岸の通い船が多数寄港したと記録されている。その後、奈半利川の氾濫により河口の港は土砂で埋もれてしまう。
 奈半利川の奥地の豊富な森林資源を地域の活性化を図るためには積出港の修造が不可欠であり、地元では明治から昭和にかけて築港運動が行われた。住民の悲願が実ったのは1948(昭和23)年、指定港湾に編入され、1953(昭和28)年に現在の場所に着工。苫小牧港(北海道)に次ぐ戦後2番目の掘込港湾として、1960年以降も本格的な整備が進められた。
 今後は陸上交通との連携による輸送力の強化、地域の防災・復旧活動拠点としての機能の拡充を目的に、整備が進められていく。

アクセス
[空路]高知龍馬空港から車で約1時間
[車]高知市から国道55号線、約1時間20分
[鉄道]土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線奈半利駅下車、
    徒歩5分

住民の願いから生まれた港が、いま再び期待の的に

地域の宿願だった新港の築造 
 高知県東部の土佐湾沿いは、南端の室戸岬を頂点に、北西へ平坦な海岸線がつづく。その緩やかな曲線を四角くくり抜いたような形で奈半利港は造られている。徒歩でも一周できるほどの小規模な港の船だまりには小さな漁船や作業船が係留され、穏やかな海面に揺られている。
 当地の港の発祥地として記録に残っているのは奈半利川の河口付近だが、土砂が堆積する影響を被るのは河口港の宿命。元の港も例外ではなく、江戸時代に起きた川の氾濫で土砂に埋もれた。
 明治以降、奈半利では新しい港の築造を求める声が強く上がっていたにもかかわらず、昭和に入るまで実現に至らなかったのは、経済的な障壁とともに、冒頭に挙げた地形上の問題もあった。海岸線のどこにも港に適した地形はなく、しかも波の荒い太平洋に面しており、毎年のように台風が上陸してくる町である。
 長年に渡る検討を経て割り出された答えは、陸地を掘り込んで静穏な水域を確保し港湾として利用する掘込港湾の築造であった。
 地域の人々の宿願であった奈半利港築造は1953(昭和28)年に着工。計画決定や予算確保に奔走したのは奈半利町の初代町長、藤村六郎氏であった。いまでも町で語り継がれる功績者が残した次の言葉に、奈半利の人々が抱いていた港への思いが表れている。
 「特定の人の名を残さず無名の方々が『よってたかって』この港を造るところに奈半利港の価値があり、それに何も求めずに奉仕できた方々に本当の人生の意義がある」。一方、「わたしは新港開設のために生まれてきたような人間です」と公言し、その他の町政はすべて助役以下に任せっきりだったという、いわゆる土佐人気質“いごっそう”を感じさせるエピソードが残っている。

[写真左]静かな佇まいを見せる奈半利港

陸上・海上が連携した交通網の整備
 1960年代以降も防潮堤や防波堤、防砂堤、波除堤の築造、航路開削、護岸などの整備が進められ、近代的な港として奈半利港は生まれ変わった。現在は砂・砂利やセメント、窯業品、水産品の移出入拠点として機能している。
 陸上交通については、2002(平成14)年に南国市の後免駅から奈半利駅までの42.7kmを結ぶ“日本最後のローカル新線”「土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線」が開通。また徳島県の阿南市を起点として、奈半利町に隣接する安芸市を終点とする阿南安芸自動車道も整備が進められている。
 一方、海上交通を担う奈半利港では、より大型の船の入港に対応すべく、航路の拡幅・増深整備が進んでいる。多様な輸送ルートの確保により地域の生活と産業の発展を担う構えだ。

[写真左から1枚目]江戸時代に港が開かれていた奈半利川の河口
[写真左から2枚目]1953(昭和28)年頃、海岸に積出桟橋が整備された(高知市民図書館寺田正写真文庫所蔵)
[写真左から3枚目]現在、航路の拡幅・増深整備が進められている
[写真左から4枚目]なはり港緑地公園は、災害時にはヘリポートとして利用される


奈半利町総務企画課
竹崎和伸 課長補佐
県東部地区の災害時対策拠点
 現在、奈半利港の貨物取扱量は年間約56,000t。決して多いとはいえないが、地域住民の生活に密着した重要な役割を担っている。奈半利町総務企画課の竹崎和伸課長補佐に話をうかがった。
 「昔はマグロ漁業の基地だったこともありますが、いまは物流がメインとなり、わたしが幼いころよりも港の規模は大きくなりました。しかし、注目すべきは、奈半利港は高知県東部地区の災害時対策拠点ということ。この地区の港で唯一耐震岸壁が整備されています。また背後地の『なはり港緑地公園』は、平常時は町内のイベント会場や野球場・ゲートボール場などに利用されていますが、災害時には救援用のヘリポートとして活用できるようになっています」
 高知県の太平洋岸は、東南海・南海地震の防災指定地域であり、また室戸岬一帯は例年台風の被害が報道される。地震と津波、台風と高潮という自然災害が想定される地域において、奈半利は救援活動の人的・物的輸送の拠点に位置づけられているのだ。

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