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海底面の表層に強固な岩盤層が少ないわが国において
岸壁などの重量のある構造物をいかにして支えるか。
軟弱地盤の克服は港湾土木の大きな課題だ。
そこで、地盤改良や基礎マウンドの築造技術とともに
海中において長期間、確実に構造物を安定させる基本的な手法として
鋼鉄製の杭や板を支持層まで打込む鋼製の本体工による技術が開発された。

鋼製の本体工とは

 鋼製の本体工とは、構造物本体の主な部材としてH型鋼や鋼管杭、鋼矢板などの鋼製材料が用いられている工種全般をさす。
 鋼管杭は文字どおり筒状に加工された鋼製の杭、鋼矢板は断面係数が大きくなるよう特殊な断面を持つ鋼材のことだ。これらを土中に隙間なく打込み土留めや遮水、また上部の構造物を支える基礎工を目的として施工される。あらかじめ陸上で製作された材料を用い直接地盤に打込むため、海底地盤の整地、床掘やマウンドを施工する必要がなく、海中での作業も少なくて済む。工程もシンプルで急速施工に適している。しかし、打込む際の振動や騒音が生じやすく、腐食なども含めたこれらの対策が必須となる。
 鋼製材料を用いた構造物には鋼管杭を基礎とした桟橋、ドルフィン、ジャケットや、鋼矢板、鋼管矢板、鋼板などを用いた矢板式係船岸、鋼板セルなどがある。今回はそれぞれの部材と基本的な工法について考察してみよう。

■鋼矢板の種類 ■鋼管矢板による護岸の整備
■鋼管矢板による橋脚などの井筒基礎 ■作業船による斜杭の打込み

施工性、経済性に優れた鋼製の本体工

 「鋼管杭」はその断面剛性が大きく基礎杭として非常に適した部材といえる。強固な地盤に打込まれた鋼管杭は、その先端に力が十分に伝達され大きな支持力を発揮する。曲げモーメント(外力によって生じる部材を曲げようとする力)に対する抵抗力も大きいことから水平方向の抵抗にも強靱な耐性がある。地震などの横方向からの大きな荷重にも十分耐えることができる。こうした性質から耐震強化岸壁の整備にも広く活用されている。また、製造可能範囲が非常に広く、地形や地盤といった施工現場の諸条件に対応して外径や肉厚など種々の仕様を使い分けることができる。現在、直径2500mmを超える大口径のものや、溶接による継ぎ杭によって杭長が100m以上にもなる鋼管杭の施工も可能となった。
 打込んだ後に杭頭部を切りそろえても強度が低下することはない。杭頭部は簡単な処理でその上に施工されるコンクリートと容易に接合することができ、柱などの上部構造との直接溶接も可能だ。こうした比較的簡易な施工特徴は作業効率の向上に有効で、工期も短期間で済むことから工費の節減にもつながる。鋼管杭は高度成長期の昭和30年頃に登場、活発に採用されるようになり、昭和40年代中ごろからはその年間製造量が100万t前後を推移する代表的な建設資材となった。
 この鋼管杭に継手を溶接し接合できるようにしたものが「鋼管矢板」だ。断面性能に優れ、曲げ剛性が大きい鋼管矢板は構造物の大型化、大水深化や軟弱地盤における施工の増加にともない港湾土木だけではなく河川、都市土木など幅広い分野で活躍している。橋梁の基礎工事などに用いられる鋼管矢板井筒基礎は、この鋼管矢板を現場で円形や小判型、矩形などに連続して閉合させ、鋼製の井筒を形成する基礎工だ。杭とケーソンの中間的な構造といえるが、杭による基礎と比較してさらに大きな曲げ剛性と鉛直支持力を得ることができ、設計荷重に対して適切な基礎断面を調整できるので経済性も高い。橋梁の長大化、基礎の大型化にともない鋼管矢板径も大口径の採用が増加している。
 「鋼矢板」にはU字型、Z型、組合せ型、直線型などの種類がある。最も一般的なU字型はその名の通り断面がUの字になっている鋼矢板だ。その両端にある継手をしっかり組合わせて、連続した鋼鉄製の壁体を構成することで土留めや遮水などに活用される。鋼矢板の幅は400mmのものに加え、施工枚数が少なくて済む600mm幅が一般的だが、最近ではさらに経済的な900mm幅も開発された。このU字型鋼矢板を二枚向かい合わせて溶接したものが組合せ型鋼矢板で、大きな断面性能を有している。両端に継手を施された直線型鋼矢板とともに岸壁や防波堤、埋立の締切りなどにも用いられる。直線型鋼矢板は矢板を筒状に閉合してその中に中詰めを施し、独立した一つの堤体としても活用される
 確実に、長期に、安定して構造物を支える鋼管杭、鋼管矢板、鋼矢板などの鋼製の本体工は、港湾土木においてもその施工性、経済性を背景に基礎的な技術となっている。

鋼管杭の海上打設工法

鋼管杭の打設
(写真:鋼管杭協会)
 鋼管杭、鋼管矢板の打設は、油圧ハンマーやディーゼルハンマーによってラム(錘)を杭に落下させて打撃する方法と、重錘の回転によって発生する振動を加えながら打込むバイブロハンマーを用いた打設に大別される。ディーゼルハンマーは、ラムの落下とそれに伴うシリンダ内の爆発力により駆動し、大きな打撃力が得られる。構造が簡単で施工効率に優れている。ラムを油圧シリンダで持上げて落下させる油圧ハンマーはディーゼルハンマーに比較して油煙の飛散がなく、騒音が低減できる利点がある。またラムを落下させる高さも自由にコントロールできる。バイブロハンマーは鉛直振動を発生させ、その振動を鋼杭に伝達させながら打込んでいく。
 海上における施工では、これらの杭打機等を装備した杭打船を用いる工法と、海上に桟台を建設してその上に杭打機を設置して打設する工法がある。桟橋やドルフィンなどの海上施設の建造には杭打船を用いることが多い。現在、稼動する杭打船は鋼杭を支える櫓の傾斜が船首方向だけではなく、斜め前、側方向にも設定でき、より複雑な角度で正確に鋼杭を打ち込めるようになっている。
 次回はジャケット工法、セル工法など鋼製の本体工の応用工法をみていく。
 

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