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わが国の国土づくりや経済成長に貢献してきた埋立は、
同時に環境に影響を与える側面をもつことを否定することはできない。
だからこそ、埋立にあたっては海域や生態系への影響などについて、
入念で慎重な検討が行われてきた。
可能な限り自然環境の消失や環境負荷を抑えた計画、設計、施工が基本である。
最近では、廃棄物に象徴される環境問題を解消する方法の1つである、
廃棄物処分場としての埋立が脚光を浴びている。

■汚濁拡散防止枠船
多様に展開される環境保全型手法

 埋立に際しては、干潟や藻場に生息する生態系や海水浄化のメカニズムなど環境機能を解明し、保全・再生する取り組みがされている。埋立に伴う環境変化の予測手法、海水汚濁の防止対策工法、生物の生息・生育が可能な環境を創出し、自然を再生し共生するさまざまな技術が産官学で研究開発されてきた。さらに事業の効果をモニタリングし、その結果を事業に反映させるアクティブ・マネジメント手法を始め、計画づくりから維持管理までの段階で、積極的なアプローチが試みられている。
 埋立工法を代表する1つであるポンプ船による埋立では、浚渫の際にカッターの掘削で土砂が舞い上がり周囲に汚濁を発生する課題が指摘されてきたが、その対策として、低汚濁浚渫システムなどが開発されている。このシステムによって濁りの発生をできるだけ抑制し、同時に掘残をなくして確実な浚渫を可能にした。
 もう1つの代表的な工法である土運船による埋立でも、海底付近まで達する特殊なジャンクションを用いて、水質汚濁を防止しながら処理土を直接的に投入する工法などがある。
 水の浄化も埋立に関連した大切な技術だ。自然の海岸線は浄化能力をもっているが、埋立や都市化の進展で自然の浄化能力を超えた場合に汚濁の心配がある。このため自然の浄化能力をさらに高め、本来の姿に回復させる海域浄化システムなどが開発されている。
 埋立などでやむを得ず藻場に影響を与える際には、その対策として藻場の大規模な移植工事に適したアマモ移植機械施工も開発されている。これらに合わせて、生物生息のメカニズムの解明なども進んできた。
 これら以外にも人工環礁やラグーンなどで海環境を創造しながら、陸域部の空間も有効活用する新しいコンセプトの人工島の提案、干潟や海浜の造成だけでなく完成後の維持管理やモニタリング技術なども開発されている。


「海洋生物と共生する」緩傾斜護岸

 埋立地に設けられる護岸は、海洋生物とのふれあいの場であり、環境に配慮する埋立において重要な役割を担うところだ。関西国際空港Ⅱ期を例にみる。
 関空Ⅱ期では、延長13kmのうち約9割にⅠ期と同様な緩傾斜石積護岸を採用した。海底の軟弱地盤を改良して砂を盛り、捨石で覆ってその上に消波ブロックを据付けている。捨石部は上部と下部からなり、上部の捨石が施工されて初めて、護岸が水面を切るような状態ができあがることになる。また海草類が着床しやすくするためと、波で洗われにくくするように、表面に溝を付けた環境共生型の消波ブロックも護岸西側に分散して5カ所にわたって計画された。
 さらにⅠ期空港島の護岸から、藻が根付いている藻礁ブロックをⅡ期に移設したり、Ⅰ期護岸の成熟した藻をⅡ期護岸に移して効率よく藻場ができるようにするなど、キメ細かい施工がなされている。
 一方で工事中には、初期の段階から汚濁防止膜を工事区域のほぼ全周に張り巡らせ濁りを防止した。工事中の対策だけでなく、工事完成後も環境監視を続け、環境にやさしい空港島をめざす。
 その一環で関空では「エコ愛ランド・プラン」が策定された。この計画は、空港に関わるあらゆる事業者の参加で環境保全活動を推進するもので、護岸部の藻場の造成もその1つとなる。
 こうした綿密な計画と施工で空港島の緩傾斜護岸には、数多くの魚介類が生息するようになり、国内外から注目を集めている。現在では、空港島の周囲の水域は、産卵や稚魚が育つ貴重な場所として、採捕禁止区域に指定されるまでになった。
 関空Ⅱ期に象徴されるように、埋立にあたっては、自然との共生をめざした環境共生護岸などが開発されている。多段式にブロックを重ね護岸に干潟の機能をもたせることで、生息する環境が異なる多様な生物が共生できる水辺の空間を創出するようにしたものなど多彩だ。水の循環を維持して泥の乾燥を防ぎ、動植物の生育を促進する工夫が凝らされている。


■海藻着生用ブロック据付イメージ(関西国際空港の緩傾斜護岸)
関西国際空港で付近の海中では、施工されたブロックに海藻類が着生し、魚介類の生息も確認されている。
(写真/資料:関西国際空港株式会社)

■市民と連携した浜辺整備事業
(東京都大田区の平和島運河埋立工事)
(イメージ図:大田区)
水辺の復権を象徴する埋立に

 埋立(地)には、廃棄物処分場の不足という問題を解決する、もう1つの環境への貢献が期待されている。特に処分地の不足は緊急かつ深刻なものがあり、減量化・リサイクルを行った上で、なお処分が必要な廃棄物は海面に埋立処分されてきた。東京港や川崎港、大阪湾などで受け入れている。
 平成14年7月には、廃棄物海面処分場で埋立に使われる廃棄物等の減量化施設が、民活法の特定施設として追加された。内陸部の最終処分場の絶対的な不足もあり、これを契機に廃棄物海面処分場の役割はますます重要になっている。
 埋立には、高度経済成長期の過程で大幅に消失した大都市臨海部の緑の回復という期待も大きい。これは、都市再生プロジェクト第三次決定として「臨海部における緑の拠点の形成」が選ばれたことに象徴される。先導的事例として東京港中央防波堤内側、大阪湾堺臨海部、同尼崎臨海部で「臨海部の森づくり」がスタートした。
 廃棄物埋立処分場跡地の有効活用に加えて、ヒートアイランド現象の緩和、さらに多くの人々が集い親しめる空間の創出という役割も担う。こうした役割に対する期待の高まりは、同時に利用者の視点に立った整備と維持管理の必要性を喚起し、これまで以上に推し進める相乗効果を生んだ。
 環境保全型埋立は、干潟や海浜の造成とともに沿岸環境を創造する代表的なメニューである。保全・再生・創造のための積極的な取り組みは、今日ではスタンダードなアプローチ手法といえるまでに浸透してきた。
 よりよい環境を創出するため、行政と企業、市民ボランティア・NPO団体らが連携した活動も始まっている。利用や整備手法の計画段階からの協同作業が実践されはじめた。
 こうした取り組みの延長に21世紀の埋立があり、環境に貢献する埋立の理想形の1つがある。



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