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国土が狭い日本では、古くから新天地を求めて海上の埋立が行われてきた。
戦後の高度成長期には、時代の要請にこたえ全国各地に埋立地や人工島が生まれていく。
その実現を数々の海洋土木技術が支えてきた。
近年は、かつての港湾や工業用地としての利用から、都市機能をも包含した用途転換傾向もみられ、環境との調和が大きテーマになっている。

■ 人工島建設の工程 ■
1.人工島を造成する海域の海底地盤を改良し安定した地盤を造る

2.人工島を形作る護岸を建設する

3.外周護岸の完成

4.外周護岸内を土砂で埋立てていく

5.埋立地をさらに改良してより強固な地盤にする

6.人工島の完成

緩傾斜石積護岸(消波工)
埋立の歴史が技術を進歩させる

 江戸時代に海外交易の窓口となった長崎・出島を始め、人工島の建設の歴史は古い。

 明治時代には近代技術による港湾建設技術が確立され、やがては昭和30年代に急増した臨海工業地帯の埋立造成、40年代の神戸六甲アイランドなどの出島式埋立造成、60年代の東京湾横断道路、関西新国際空港の建設へとつながっていく。

 少し古いデータになるが、平成2年度末での埋立・干拓の造成面積は、約1360m2。わが国の国土面積の0.5%に相当する。農業用地、工業用地が中心である。

 これまで建設されてきた人工島を3つの視点からみる。まず面積の大きさでは東京国際(羽田)空港をトップに、大阪南港、神戸ポートアイランドが代表的だ。水深では南本牧ふ頭、川崎人工島、木更津人工島がある。さらに陸地からの距離では関西国際空港、川崎人工島、木更津人工島などが代表格である。

 では人工島はどのようにして構築されるのか。埋立の基本的な流れをみる。

 一般的には、まず計画されている人工島の周囲に護岸を建設する。こうしてまわりの海と遮断し、その内側に浚渫した土砂や陸上から運んできた土砂、さらには廃棄物などを投入して埋立てていき陸地を造るのだ。海底の地盤が悪い場合には、海底地盤の改良が必要になる。また埋立で出来上った陸地は地盤が安定していないので、早期に利用する場合はこちらも地盤改良が行われる。

 言葉でいえば単純だが、それぞれの過程でいくつもの技術が必要になる。研究開発も活発で、こうした活動による技術的な裏づけがあって初めて、人工島は現実のものとなるのである。現在、日本の港湾内に建設されている人工島は100以上を数える。


護岸整備から始まる人工島建設

 人工島建設の本格的な建設は、護岸から始まるといえる。護岸の構造形式には、捨石式、セル式、矢板式、重力式(ケーソンなど)、消波ブロック被覆といった方法があり、施工条件に応じて選択し、組み合わせて施工される。

1.基礎
 地盤の凸凹の補正、上部構造物の安定、波浪や潮流からの基礎部の洗掘などを防ぐため、基礎捨石が投入される。投入した捨石はやはり凹凸があるため、敷き均し作業が不可欠。潜水夫の人力による場合が多かったが、最近では水中捨石均機など機械も発達してきた。
 地盤が軟弱な場合は、捨石投入に先立ち改良工事が必要になる。安定した地盤を確保するため、グラブ浚渫船やポンプ浚渫船で軟弱土を除去し、そのあとに石や良質の砂を投入して置換する方法や、砂杭などを打設して地盤改良する工法もある。

2.護岸本体
 捨石式は比較的水深が浅い場所に設けられる。矢板式は鋼矢板やコンクリート矢板で護岸をつくるもので、二重矢板などがある。セル式とは鋼矢板などでセル構造とするもので、埋立土の浸出防止効果が高いのが特徴だ。重力式はケーソンやL型ブロックなどのプレキャストコンクリート部材を使う場合と場所打コンクリートのものがある。
 また消波ブロック被覆護岸とは、捨石式や重力式などの前面に消波工を設けた護岸のことで、関西国際空港などに採用されている。
 護岸の建設はクレーン船などによる機械化施工が進んできた。またケーソンに代表されるように、陸上部や海上のドック・ヤードでブロックをつくり、現地に運んで護岸を築造する方法など、工業化による合理的な施工法もとられている。



早期利用を実現する地盤改良技術

 こうして建設された護岸で仕切られた内部に、土砂などを投入して埋立て、人工の島を構築していくのである。浚渫土砂の場合、浚渫船で採取した土砂をパイプで圧送したり、土運搬船で搬入する方法がある。

 ただし人工島は、埋立てただけでは不同沈下を生じる可能性があるため、早期に利用するときには、地盤を締め固めて安定させる改良が不可欠だ。

 とくに関西国際空港の第一期工事では、大水深、軟弱地盤、大規模急速施工といった厳しい条件を克服するため、さまざまな技術が駆使された。サンドコンパクションパイル工法、振動棒締め固め工法、動圧密工法などだ。さらに地盤の沈下や変形を把握するための最新の沈下管理システムも導入されており、規模と技術の両面で屈指の人工島といえる。これらの技術は、現在建設中の関西国際空港の第二期工事や中部国際空港にも応用されている。



環境との調和掲げ、多面的な利用

 近年、人工島の用途が大きく変わってきた。従来の鉱工業、港湾への供用だけでなく、人々が楽しむための場所としての転換だ。居住エリア、生活エリアとしての都市機能を擁した人工島建設が期待されている。

 また、ゴミ問題を解決する切り札の1つとして、廃棄物を活用した海面処分場にも注目が集まっている。環境問題は人工島の建設においても大きなテーマであり、環境と調和する人工島建設を可能にする技術開発が日々進められている。

 地球環境問題が深刻化するなかで、海洋資源を活用して人間と自然の共生を図ろうとする気運も高まり、その拠点としての人工島への期待も大きい。

 こうした課題に取り組みながら、豊かな国土を形成するための救世主として人工島の夢は広がっていく。


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