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近年の人工島やウォーターフロント開発など新たな防波堤整備にあたっては、波の反射を低く押さえるといった性能面だけでなく景観などのソフト面における考慮も求められる。今回は、軽量で安定した構造を持ち、高波浪海域や軟弱地盤地域にも対応できるうえ景観の点でも多くの可能性を持つ「半円形ケーソン」を宮崎県の「宮崎港」における実証実験を中心にご紹介したい。

図−1 半円形ケーソン基本設計断面図

図−2 半円形ケーソン据付概要図

写真−1 製作完了した半円形ケーソン

写真−2 クレーン船による半円形ケーソンの据付作業

写真−3 1/4円のアーチ部

カマボコ型の断面で波の力は
ケーソンを安定させる方向に

 半円形ケーソンは、その名のとおり円の1/2を切り取ったようなカマボコ型の断面を持ち、しかも、内部が空洞となっている(図1)。こうした形状から生まれる施工上、構造上の特徴を整理すると次のようになる。

●軽量で安定性がよい

 半円形のケーソンに作用する波力は、円の中心に向かうことになる。これによって水平波力が低減されるだけでなく、鉛直波力も下向きにケーソンを押さえつける方向に働く。そのため、耐波安定性を実現したうえで軽量化を図ることが可能になる。

●回転力が生じない
 通常の函型ケーソンの場合、波力はケーソンを押し倒す(回転させる)ように作用する。これにより、ケーソンが設置されている地盤にかかる力も、内海部に向かって大きくなる。これに対して、半円形ケーソンの場合は、波力が円の中心を通るため、回転力が発生しない。設置地盤にかかる力も、全体に均一に近くなる。空洞構造による軽量化とあわせて、軟弱地盤での活用範囲が拡大する。

●強度を確保しやすい
 曲面構造であるため、平面に比べて部材の強度が確保しやすい。

●景観性に優れている
 曲面構造により、圧迫感が少なくなる。そのため、景観性の面でも優れている。


半円形ケーソンの
基本的な3つの構造形式

 こうした特徴を持つ半円形ケーソンは、曲面壁の透過孔の有無から3パターンの構造形式が考えられる。

1.基本型
 壁面に孔を持たない不透過構造。最も耐波安定性が高くなるが、その反面内海への波の伝達率も高くなる。この形式のバリエーションとして、内海側に孔を開けることで伝達率を低減する背面消波タイプが考えられる。

2.消波型
 ケーソンの外海側に孔を開けた構造。空洞となっている内部が遊水室として機能することにより、反射波や伝達波を低減することができる。耐波安定性は基本形に比べると低くなる。

3.透過型
 ケーソン全面に孔を持つ構造。空洞の内部を経て、波や潮位変化に伴って水はケーソンを通過する。耐波安定性は低くなるが、湾口部など湾内の生物環境に配慮しなければならない地域への対応が可能になる。


宮崎港での実証試験にむけて
さまざまな課題を検討

 この半円形ケーソンの実用化に向けて、運輸省第四港湾建設局は宮崎港で本格的な実証実験を行うことになった。試験堤として、2函の標準堤とともに、波力によるケーソンの滑動を試験するため、設計値より軽量の滑動堤を加えた3堤を宮崎港外港地区に設置することとなった(図2)。

●基本構造
 天端高及び設置水域は、既設のケーソンに合わせて、天端高+5.5m、設置水域ー5.0mに設定し、基本構造が選定された。結果的に最も耐波安定性が高く経済的な、基本型背面消波タイプが採用された。さらに、前面にも基本型としての波圧特性が変わらない程度の孔が設けられることとなった。

●細部構造および施工

 製作にあたっては、底版とアーチ部を一体で製作する一体型方式と、分割して製作し、組立てるプレキャスト方式の2方式が検討された。経済性、安全性、製作工期、技術新規性などの面から検討が加えられたが、最終的に採用されたのは、1/4円に2分割されたアーチ部を底版に連結するプレキャスト方式となった。
 アーチ部分にはPC(プレストレストコンクリート)構造が取り入れられ、RC構造の底版との接合部は、鉄筋構造とされた。アーチ部底版部それぞれのベースプレートはアンカーボルトと無収縮モルタルで固定された。
 また、アーチ部は底版との接合部分に縦方向の、アーチ部同士の接合部分に横方向の緊張(プレストレス)が加えられ、一体化が図られた。


貴重なデータを新たなケーソンの
実用化に向けて活かす

 ケーソンの製作は、宮崎港内港地区にヤードを整備し行なわれた。底版部、アーチ部それぞれのヤードで製作された部材は組立て完成後(写真1)、クレーン船で吊り出し、据付が行なわれた(写真2)。
 平成4年度に製作・据付が実施されたこの半円形ケーソンには、設計施工上の課題を検証するため、各種の計器が設置され、約2年間、各種のデータが計測された。観測期間中に幾度かの台風にも襲われたが、滑動堤を含め3函のケーソンに滑動は観測されなかった。収集されたデータは、この可能性に満ちた新たな形状のケーソンの本格的な実用化に向けて活用されていくことになる。

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