title
title

Back Number

潮の干満により姿が見え隠れする干潟。干潟は、プランクトン類や海藻類、魚類など、多くの海生生物を育む場所であるとともにそうした海生生物を捕食とする鳥類にとっても貴重な場所である。今回は、生物にとって重要な環境である水際を人工的に再生した広島港五日市地区の人工干潟を例にご紹介したい。

五日市地区の埋立処分場の右側に見える干潟が、再生された「人工干潟」(平成11年4月撮影)

図1 埋立事業の概要

写真1 鳥類の観察を楽しむ探鳥会の人々

図2 人工干潟の施工手順模式図

八幡川河口の埋立事業により
計画された約24haの人工干潟

 広島県は、広島市の中心部から約7kmに位置する広島港五日市地区において平成13年度の全体完成を目標に昭和62年度より流通拠点港づくりに加え、港湾環境、住居確保、都市基盤施設の整備と廃棄物処理場の確保を目的とした154haの埋立事業を進めている(図1)。この事業にともない、県内有数の水鳥の飛来地として知られる八幡川河口の自然干潟が大部分消滅することになった。そこで、計画されたのが埋立地東側に約24haの人工干潟を造成することだった(表1)。

 事業全体の先陣をきって昭和62年から平成2年にかけて造成された人工干潟は、すでに完成から10年を経て、現在では多くの水鳥たちが飛来する場所となりバードウォッチャーたちでにぎわう(写真1)。


鳥類保護のための方針を決定し
キメ細かな事前調査を実施

 人工干潟造成事業の計画にあたっては、港湾計画と鳥獣保護事業計画の調和を図るために考慮する事項として以下の3項目が挙げられた。

1. 鳥類の採餌・休息の場を確保するため、自然干潟は極力保全するとともに埋立地の外緑部河口側に自然干潟と同程度の人工干潟を造成する。
2. 干潟以外を利用する野鳥の採餌・休息の場を確保するため、埋立地内の八幡川河口側に野鳥公園の設置を検討する。
3. 鳥類の安全確保のために次の措置を講ずることを検討する。
・八幡川河口域に埠頭等の荷揚げ施設及び泊地を設けないこと。
・野鳥公園内に水鳥の避難用水面を設けること。
・八幡川河口域の海岸線は緑地とすること。
・八幡川河口域の埋立工事は、冬鳥の渡来期を避けるように工事日程を考慮すること。
・工事中は鳥類に恐怖を与えないようにし、常にこの地域が鳥類の安全圏であるように配慮すること。

そして自然干潟における鳥類の飛来状況や海生生物類が事前調査され、できるかぎり自然干潟に近い環境の人工干潟が設計された。

施工方法も実験を重ね
生物の生育に適した環境に

 干潟の土砂の流出を防ぐため、埋立地側の護岸と沖側の潜堤それぞれに地盤改良工事を施したうえで捨石によるマウンドを造成し、そこに浚渫粘性土を投入し海砂で覆うという設計に対し、施工方法においては
◎浚渫粘性土投入後の土質強度確保
◎浚渫粘性土投入後の安定勾配確保
◎浚渫粘性土投入後の体積変化の把握
などいくつかの課題が発生した。
 こうした課題に対し、投入方法の検討や投入後の土質変化の測定など、実験的な施工と測定が重ねられることにより、最終的には
 C.D.L. −2.00m以深:
   バージ船による浚渫粘性土の直接投入
 C.D.L. −2.00〜+1.00m:
   ベルトコンベア台船による浚渫粘性土の投入
 C.D.L. −2.40〜+2.00m:
   ベルトコンベア台船による海砂の投入
 C.D.L. +2.00以高:
   クラムシェルによる海砂の投入
という施工方法がとられた。設計も一部変更が行なわれ、より自然に近い環境が創造されることになり、浚渫粘性土約140万m3、海砂約35万m3が投入された(図2)。


事後調査の実施と、改良
工事計画でよりよい環境を

 完成した人工干潟に再び水鳥や海生生物たちが戻ってくるかは工事期間中を含め継続調査された。周辺地域を含めた広島湾内全域では天候等による影響を除けばほぼ一定数が確保されたことが確認された。さらに人工干潟の沈下についても継続調査が実施され、沈下部分を補うとともにより多様性を持つ地形づくりを目指して、改良工事も進められようとしている(表2)。

 豊かな生物を育む干潟という環境を、人の手でに再現するために。常に最新の海洋土木技術は、活かされている。

<資料提供> 広島県

Back Number