日常生活の中でその行動が制限されることが少なくない障害者の方にとって、スキューバダイビングは“別世界”ともいえる自由を体験させてくれる。その喜びは何ものにも替え難い |
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障害者ダイビングは、インストラクターやアシスタントなど、サポートチームが付いて行われる。担当医の許可も必要だ |
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IAHD JAPANのサポートを得て、重度の障害をもつ方が憧れの沖縄でダイビングを体験した |
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札幌在住の中田真優美さんが障害者ダイビングに出会ったのは、小樽の祝津(しゅくづ)で開かれた海のイベントに参加したときのことでした。
「障害者の方の体験ダイビングが行われていました。私が所属するダイビングスクールのオーナーが障害者ダイビングのインストラクター資格を持っていて、私はそのサポート役としてお供したのですが、陸の上で障害者の方がウェットスーツに着替えるのをお手伝いするだけのことがとても難しくて…」(中田さん)
シーズン中は一般のスキューバダイビングのアシスタントインストラクターを務めている彼女の本業は、看護士。身体に問題を抱える人には比較的馴染みのあった彼女でさえ、とまどいを覚えたといいます。
この体験をきっかけに、障害者のダイビングトレーニングと指導者の育成を行うIAHD JAPANで学び、水中で障害者ダイバーの動きをアシストする「ダイブパートナー」の資格を取得。これまで15名近くの方のダイビングをサポートしてきました。
「ダイビングを体験された障害者の方が一様におっしゃるのは『海の中は身体が楽』ということ。水中は重力が軽く感じられ、脚の不自由な方でも手で水を掻けば前に進めます。陸上よりも海の中のほうがバリアフリーなんですね」(中田さん)
身体の自由を味わいたい、海の中の別世界を体験してみたい。そうした願いを持つ障害者の方がインターネットや口コミで中田さんたちのことを知り、訪ねてくるのだとか。
障害者ダイバーをアシストする難しさについて、中田さんは次のように話しました。
「どこまでサポートすべきかを見極めることですね。障害者の方にとって普段自分ではできない動きが水中では可能になる喜びを感じているのに、つい手を貸しすぎてしまいがち。でも、明らかに必要なとき以外は手を出さないことが大切です」
自分でできることは自分でやってもらうという考え方は、中田さんが本業の看護士として患者さんに接する際の姿勢に通じるものがある。
アシストした障害者の方が喜ぶ様子を見ること、そして自分のスキルアップを実感することに大きなやりがいを感じているという中田さんには、次なる目標があります。
「より多くの障害者の方のダイビングをアシストするため、手話の勉強をしています。相手の話が聴こえない、自分の話を伝えられないという状態は、水中では健常者も同じ。水中でみんなが手話でコミュニケーションできれば、それこそ本当にバリアフリーです。手話は難しくて苦労していますが、だからこそがんばれるんです」(中田さん)
スロープのついたビーチが少ないなどの課題があることも確か。しかし中田さんたちの地道な活動が、バリアフリーの海を着実に拓いていくのです。 |