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左から高橋君、大村君、関田教授、大和田君、吉成君。春休み中にもかかわらず取材に協力いただいた

東海大学海洋学部海洋土木工学科(静岡県静岡市)関田ゼミ
海に関わる仕事をしたい。船に乗る仕事に就きたい。海洋環境保全のためにできることはないか。小さな動機から大きな夢をはぐくみ、海洋土木工学の研究に進路をとった、東海大学海洋学部の学生たちに話を聞きました。自らの研究成果を語る学生は照れながらも、誇りと確信をたたえた頼もしい表情を見せていました。

自由落下式アンカー“弾丸タイプ”と“ロケットタイプ”の比較実験に用いられた、約10分の1スケールの模型

関田ゼミには、昨年度はマスター2名を含む9名が、今年度はマスター1名を含む11名が所属。『海洋開発論』『海洋構造物』『海洋建設工法』と、海洋開発の意義から理論、実務までを学ぶ。学生に関数電卓を持たせ、パソコンがない環境で波の荷重を算定させるといった、海の現場に即した演習も行われる
 
 同ゼミの最近の主な研究テーマは、波浪や地震・津波などの荷重に対する海洋構造物の応答や信頼性・耐久性評価、浮体係留施設や着底・浮体式洋上風力発電施設の建設技術、海底パイプラインなど。自然災害や環境、エネルギー問題に関わる最前線の研究に取り組んでいます。

 「学生たちは環境問題に意欲的。そこで海洋の自然エネルギー利用の研究を検討し、国内では風力がもっとも可能性が高いと考えました。海上風力発電設備、特に変動風荷重による疲労が少なく、かつ大陸棚の地形に適した浮体式設備を研究しています。浮体式とは、文字どおり海面に構造物を浮かばせて、アンカーなどで海底に係留する方式です」(関田教授)

 「先生の授業を通じて風力発電やエネルギー問題へ関心が高まりました」と語るのは、今春卒業の高橋陽平君。高校から土木科に学び、東海大学出身の恩師の勧めで同校へ進学。卒業後は地元企業への就職が決まっています。

 高橋君と同級で、春からはマスター(大学院生)になる大村優太君も「風力発電や防災、環境問題と海洋構造物についてもっと勉強したい」と意欲的にコメント。彼は『平板アンカー』の研究を行ってきました。「通常のアンカーは作業船などから海底に杭を打設する方式ですが、これは船から海底に板状のアンカーを落とし、ワイヤーで引きずりながら水平に埋めていくものです。昨年度、乾燥した砂での実験が成功したので、つづいて実際の海底と同じ湿潤状態での実験を行いました」(大村君)

 関田教授は「その論文が終わったら、新方式の風車タワーの研究をやってもらいたい」と、密かに温めていたテーマを披露。大村君は宿題を突きつけられた格好となりました。

 新しい杭式アンカーを開発し、修士課程を終えたのは吉成岳彦君。彼が開発したのは弾丸状のタイプと、そこに4枚のフィンが付いたロケット状のタイプの2種類で、いずれも自重を利用して海底へ埋め込む『自由落下式』。製作や打設のコストが抑えられるとか。両者を比較した結果、フィン付きのほうが深く海底に貫入して係留力に優れ、かつ命中精度も高いことがわかりました。

 彼が海洋工学を志すきっかけとなったのは「海が好きだったのと、高校生のころに関田先生のメガフロート開発の新聞記事を読んで興味を持ちました」(吉成君)

 昨年度のもう一人のマスター、大和田洋一君は風車の振動や免震を研究。彼の進学の動機は同校の海洋実習にありました。「海洋系の大学でも、学校で船を保有しているケースは少ない。さらに、当校のように国際航路を走れる船を持っている大学は稀です。卒業後は、海洋作業船で仕事をするために、海洋調査船に乗って実務経験を積む予定です」(大和田君)

 同学科では一年生で1泊2日、二年生で2泊3日、四年生で6泊7日の海洋実習を実施。その際、マスターが同行し、教員の補助として海水や土の調査方法について下級生の指導にあたる『チューター制』を採用しています。「技術開発と哲学をバランスよく教えたい」という関田教授のモットーに応えたカリキュラムです。

着底型洋上風車の模型。台風の影響や地震の発生が多い日本の自然条件に対応する海上風力発電設備開発のための、耐震性・制振性の実験に用いられる。関田教授は、海上風力で起こした電気で海水を分解し、水素を取り出す研究プロジェクトに携わっている。  

 
大和田洋一君(海洋工学専攻)
大和田君は卒業後に、海洋調査船に乗り、実務経験を積む
  静岡県静岡市の東海大学海洋学部キャンパス。
同大学の建学の地である

新しい海洋土木技術の芽
本文で紹介した平板アンカー。左ページの自由落下式アンカー同様、150m程度の水深に対する経済的な係留方法として開発された。海底に斜めに食い込ませ、船で引っ張ることで水平に埋設する

大村優太君(海洋土木工学科)
 
標識灯などの海上重量構造物にかかる波の水平力と垂直方向の揚圧力を低減する実験に用いられた模型。ブロック状の部分に穴を開けることで揚圧力を逃がすことができ、穴の数が多く直径が大きいほうが、より効果が高かった

高橋陽平君(海洋土木工学科)

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