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陸地に向かって押し寄せる荒波をせき止める防波堤。
この防波堤を築造する工法の一つとして
ケーソンという巨大なコンクリートの函体を
海底に並べるように沈設する方法がある。
波を受け止めるケーソンの土台部分にあたるのが「基礎マウンド」だ。

捨石で築造される防波堤の土台

 基礎マウンドとは平易な表現を用いるならば「石を台形上に積上げて築造される土台」といえる。混成堤や直立堤など、外部からの圧力に対して自重で抵抗する重力式構造物を築造する際、その下部に捨石を投入してマウンドを形成し、構造物の基礎を施工する作業が基礎マウンド工だ。この工法は防波堤だけではなく係船岸や護岸の建設にも用いられる。基礎マウンドの主な特徴としては以下の点があげられる。
@基礎地盤の不陸を補正して構造物の安定を図る
A構造物の荷重を分散して均等に地盤に伝える
B構造物に作用する波力をマウンド内部と基礎地盤との間の摩擦力で吸収する
C波や潮流による構造物底面における地盤の洗掘を防止する
 かつては海底地盤上に直接捨石を投入し、マウンドを築造する場合が多かったが、近年、海底地盤の軟弱な部分を掘削したり、さらに良質土砂と置換えて地盤改良を施した上に捨石基礎を施工する工法が主流となっている。
 基礎マウンドは台形のステージのように築かれる。その高さは波の強さ、ケーソンヤードでの製作寸法制限、水域の水深からの各種制約、全体の工費などを勘案して決定される。また、マウンドの肩幅は波の荒い施工場所では港外側が5m以上、港内側では港外側の2/3程度に設計されることが多い。法面の勾配は港外側が1:2〜1:3、港内側は1:1.5〜1:2程度とされる。
 捨石の材質は硬質で強度に優れ、耐久性に富んだものが要求され、扁平や細長い捨石は不適当だ。現場の状況や波力にもよるが10〜500kg/個程度の捨石が用いられる。
 これら石材は使用目的によって大きさを選別し、台船、グラブ付運搬船(ガット船)、土運船などの運搬船で施工場所に運ばれる。ガット船は各種条件下で能率的に施工するのに適している。捨石の投入はグラブを取付けたクレーンで行う。耐波性があり移動作業に適しているが、荷役には時間を要する。広い施工区域での大量施工に適しているのが土運船だ。投入方法には船底の扉を開いて行う底開式、船全体を左右に開口して行う全開式などがある。
 投入位置は旗を取付けたポールやブイなどの標識によって明確にしておく必要がある。施工ポイントの位置決めにはGPS衛星を活用した高精度な測量が可能となった。ソナーとGPSを組合わせることで海底の状態もより正確に把握できる。こうしたシステムによって得られたデータをもとに投入のシミュレーションを行い、短時間で効率的な運搬船の配船計画も立案できるようになった。
 大水深における捨石投入の際には潮流や投入角度によって捨石が拡散してしまう可能性がある。そのため運搬船にホッパーを取付け、トレミー管を用いて狙った位置に捨石を施工することもある。また施工時の海中の濁りを極力押さえるため、汚濁防止枠を船から海底に降ろして投入するなど、環境に配慮した施工方法も導入されている。


●防波堤断面図 ●捨石の投入
●重錘による均し ●捨石均し機(4足歩行型)

機械化する捨石均しとマウンドの仕上げ

 投入された捨石は海底に雑然と積上げられた状態だ。安定した土台を確保するにはこれらの捨石を平らに並べ替え、均す必要がある。均しには「荒均し」と、「本均し」がある。荒均しは被覆石や根固ブロック、法面など直接上部構造物と接していない部分を整える作業、本均しは捨石天端の石の面を組み直し、緩みが発生しないように堅固な構造を目的とした工事だ。海底におけるこうした作業は、潜水士による鋼製の定規やレールを用いた施工が一般的だった。均し精度では、許容範囲(本均しでは±5cm、荒均しでは±50cmなど)が定められているため、高い施工精度を保つためにも人力が必要だったのだ。しかし最近では、大水深における施工や、外海など厳しい環境下での急速施工が求められるようになってきたことから、海中作業における機械化について、研究開発が急速に進められ、均し作業も人力を用いずに行えるようになってきた。
 捨石均し機の主な方式として以下のバリエーションがある。
@海上の支援台船から動力の供給を受け、4足歩行しながら均しレーキ、均しローラーで均していく方式
A重錘を自由落下させその重みで締固めと均しを行う方式
B起振式着座型ダンパーで締固めと均しを行う方式
C捨石を投入しながら連続して均す方式
 海中における施工の機械化は最も困難な分野のひとつとされてきたが、コンピュータ制御などの研究が急速に進み、人の手による作業の正確さに勝るとも劣らない施工効率にすぐれた水中作業機械が開発されている。これらロボットともいえる捨石均し機によって、潜水士がもぐることのできない大水深での施工も可能となった。また急速施工の実現は結果的にコストの低減にも貢献する。
 築造された基礎マウンドの上に直立ケーソンなどの上部構造物が据付けられる。ここで防波堤などの場合洗掘防止工が施される。洗掘とは、波浪や潮流によって構造物の前面などが侵食されることだ。新たに設置された構造物によってそれまでの地形と波の均衡が破られるために発生する。まさに足下を浚われることのないよう洗掘防止は必須といえる。基本的には割石やコンクリート製のブロックによってマウンド全体を覆い、洗掘や流出を防ぐ工事を指す。法尻部における洗掘防止工では小段状に捨石を投入したり、捨ブロック、アスファルトマット、合成樹脂系マットを用いて法尻を保護するなどの工法が一般的だ。特に混成堤などの基礎マウンドは、構造物の安定性を確保することが非常に重要であるため、基礎マウンド上を根固ブロック及び被覆材で保護する必要がある。根固ブロックや被覆材の重量は、マウンドの深度、施工場所の波浪状況などを考慮して決定される。被覆石の均しは、個々の石の噛合わせに充分配慮し、隙間をできるだけ少なくしなければならない。
 こうして築造された海底の巨大なステージの上に防波堤となる直立ケーソンなどが設置される。次回はこのケーソンの本体工について解説する。

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